126.デイリークエスト 調査編
数時間に及ぶ話し合いの末、夜空と新月の合成メンバーが決まった。
夜空は呪術猿×3、音楽猿×1、射手猿×1
新月は聖歌猿×1、音楽猿×3
それぞれの合成結果はこんな感じだ。
『名前 夜空 LV44
種族 魔法猩々
戦闘力 ☆☆☆☆☆+
スキル ひっかき&投擲→猿体術(new!)、睡眠→悪夢(new!)、
呪い→呪法(new!)、指揮、火魔法、風魔法、多重詠唱、
詠唱強化(new!)、共同詠唱(new!)
忠誠度 最良』
『名前 新月 LV39
種族 聖歌猿
戦闘力 ☆☆☆☆+
スキル ひっかき&投擲→猿体術(new!)、演奏、歌唱、癒しの歌、
憩いの歌、魔防指揮、オーケストラ、
祈祷(new!)、進撃讃歌(new!)、聖火聖唱(new!)
忠誠度 最良』
ひっかきと投擲が猿体術とかいうスキルに統合された。
月光や月影にはなかったし、遠距離や後方支援タイプの為のスキルなのだろう。
他にも元々持っていたスキルが上位版へと変更され、新たなスキルも増えた。
特に夜空の『共同詠唱』、新月の『進撃讃歌』、『聖火聖唱』は凄まじく強力なスキルだ。
パーティーメンバーには欠かすことのできない存在となるだろう。
「ウッキィ……」
「夜空、どこか違和感があるのか?」
夜空は俺の方へ来ると、体をこすり付けてくる。
何故、いつもみたいにくっ付くんじゃなく、体をこすり付けているんだろうか?
猿のマーキング?
「……ウキキッ♪」
やがて夜空は満足したように、いつもの調子に戻った。
なんだったんだ……?
まあいいか。とりあえず次はスキルの検証だな。
夜空、新月、月光、月影の合成後の実力を確かめるために、訓練場で検証を行った。
雷蔵が相手を買って出てくれた。
やはり上位版となったスキルの効果はすさまじく、雷蔵ですら月光、月影の二体相手には厳しい戦いを強いられていた。
新月のバフが加われば、雷神形態ですら、何度も後れを取った。
そこに夜空が加われば、完全に黒星。
「ウガォゥ……」
夜空たちに負けてしょんぼりしている。
……いや、むしろ合成で強化された四人相手に勝負が出来てる雷蔵の方が凄い気がする。
実際、俺でも正面切っての戦いでは勝つのは不可能だろう。
(これで合成をしたら、いったいどれだけ強化されるんだ……?)
雷蔵のポテンシャル凄い。
合成候補が居ないのが悔やまれる。
「うーむ、それにしても新月のバフ性能がかなり上がったな……」
夜空、月光、月影の三人だけなら、雷蔵にも勝ちの目があった。
それを完全になくしたのが、新月のバフだ。
やっぱバッファーって大事だな。
「きゅ!?」
俺の呟きに雲母がビクリと震える。
もしや自分のお株を奪われると思っているのだろうか?
雲母の『加速』は現状、唯一無二のスキルだからそんな心配はないんだけどな……。
(とはいえ、雷蔵や雲母も強化したいのは事実……)
合成(共存)という、新たな可能性が分かった以上、出来ることはしておきたい。
掲示板でちょっと調べてみるか。
すると、気になる項目を見つけた。
「……これは」
水曜日と木曜日のデイリー『調査クエスト』。
掲示板の情報によれば、主な内容はデイリーダンジョンと同じマッピング。
報酬はポイントと防具。
戦闘はないが、様々なモンスターが出現し、行動や交渉次第ではカード化することも出来るらしい。
「なるほどな、ここで仲間を集めろって事か」
メインストーリー以外で仲間を増やす方法はこれか。
デイリークエストのそれぞれの目的も分かってきたな。
討伐が戦闘訓練、調査が仲間集め、採取が素材収集、ボスクエストが実践ってところか。
強化素材と割り切ることなど出来ないが、新しい仲間が出来るんなら大歓迎だ。
早速、やってみるとしよう。
(……にしてもデイリーダンジョンに関する書き込みも増えて来たな)
ぽるんがにポイントを譲渡し、中級者、上級者スレをいくつか眺めてみると、デイリーダンジョンに関する情報も目に入った。
殆どは『戦国乱世』に関することだったけど。
(やっぱり、どのデイリーダンジョンにも『えねみー』は居るのか……)
『戦国乱世』には将軍と女王と呼ばれる『えねみー』が居るらしい。
女王は大河さんに、将軍はバルカンってプレイヤーにそれぞれ倒されたそうだ。
(……大河さん、すげぇ)
あの人、単独で『えねみー』倒してるよ。
書き込みを見る限り、火力だけならプレイヤーの中でも最上級。
すげぇなSMバニーメイド女王様。
あとなんで秀吉がゴリラ? 猿じゃないの?
現実に戻ったら、後で連絡入れなきゃな。色々聞きたいこともあるし。
本当は先にセイランの色魔法の検証をする予定だったが、そっちはもう済んだ。
既に井口がやってくれていた。
検証は一通り終え、要点を紙にまとめ、説明もしてくれた。
……この優秀さを人間の時に発揮してくれていればなぁ。
小雨の『世界扉』、『迷宮扉』は共にCT6時間。
なので一日で最大4回発動可能だ。
セイランの『色魔法』については実戦で見るのが楽しみだ。
ナトゥリアが訓練に付き合ってくれたらしい。
(まずはデイリークエスト、次に大河さん連絡が取れれば『戦国乱世』の確認。それが終わってからメインストーリー。最後にデイリーダンジョンだ)
井口は早く『終末世界』に行きたいだろうが、それは最後だ。
あそこは毎回、EXシナリオ並みの難易度だからな。
出来ることは事前に全部しておきたい。
というわけで、まずはデイリークエスト『調査』だ。
『デイリークエストを開始します』
『デイリークエスト 調査
クリア条件 マッピングを10%以上広げる
又は新しいモンスターを3種類見つける
成功報酬 ポイント+10、ランダム防具』
『なお、調査クエストでは戦闘行為は行えません』
『モンスターからの攻撃も無効化されます』
『ご注意ください』
……なるほど、力ずくで仲間にすることは出来ないってことか。
そこはプレイヤーの腕次第ってことね。
面白い。やってやろうじゃないか。
――いつものごとく光が収まり、視界が開ける。
目の前には湿原が広がっていた。
「……なんだか月曜の討伐クエストのフィールドに似てるな」
マッピングを確認すれば、自分が居る場所以外は真っ黒な状態で、右下に1%の表示があった。
マッピング形式は、『終末世界』と同じやり方のようだ。
まずは雷蔵たちを呼び出す。
メンバーは雷蔵、雲母、夜空、小雨、セイラン、井口、月光、月影、新月の九名。
射手猿の満月は待機だ。
雷蔵たちにデイリークエストの内容について説明する。
勝利条件や、モンスターを仲間に出来るかもしれないこと、戦闘行為は行えないことも。
「ここで新たな仲間を集めるって事ですか。本当にゲームみたいですね」
「まあな」
興味深そうに周囲を眺めている井口とは対照的に、雷蔵たちはやる気満々といった感じだ。
新しい仲間が出来るかもと期待しているのだろう。
そう思っていると、さっそく前方の茂みからモンスターが現れた。
「ギギィ……」
「ギィ……」
「ウガォゥ……」
出てきたのはホブゴブリンが1体、ゴブリンが2体か。
「ウガォゥ」
すると雷蔵が前に出る。
ここは自分に任せてくれと言っているようだ。
ふむ、同族だしここは俺が下手に手を出すよりも雷蔵に任せてみるか。
雷蔵は武器を構えることなく、ゴブリンたちへと歩み寄ってゆく。
ある程度の距離まで近づくとなにやら構えをとって、雷神形態になった。
……え、なんで?
「ウガォォオオオオオアアアアアアアアアアア! ウガォゥウウウウウウウウ!」
ビリビリと大気を震わすほどの咆哮。
放たれる圧倒的な殺気と威圧感。
まるで命が惜しければ俺たちの仲間になれとでも言っているようだ。
「「「ギ……ギィィィ~~~」」」
当然、ゴブリンたちは涙目になって逃げだした。
「ゴァ……!?」
雷蔵は「えっ」とまるで予想外だったかのような声を上げる。
雷神形態を解除し、こちらへ振り返り、首をかしげる。
「……いや、あれは誰だって逃げるだろ」
「ゴァゥ!?」
雷蔵は膝から崩れ落ちて落ち込んだ。
むしろなんであれでいけると思ったんだ?
戦闘に関しては文句なしだが、意外とコミュニケーションに関しては不器用なのかもしれない。
「その……あれだ。次は俺もサポートするから、頑張ろう」
「……ウガゥ」
雷蔵はしょんぼりとしながら頷いた。
まあ、失敗もいい経験だ。
クエストを続けるとするか。




