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紅い侍  作者: 柴崎龍
第一章 父の教え
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第八話 謁見



大坂城・本丸御殿



「面を上げよ。」



「はっ。」



「左衛門佐。この前の軍議でお主が話した、策、儂に聞かせよ。」



「殿、某がこれより話すことは紛うことなき事実にございまする。もしこれが誤りであったなら、直ぐに某を斬ってくだされ。」



「そこまで言うか。良かろう。申せ。」



「それではこちらをお読み下さい。」



秀頼は例の書状を手に取る。



「それは、父の遺品でございます。」



「こ、これは…」



秀頼は動転し、怒りや悲しみ、悔しさなどの感情が一気に溢れ、今にも気を失いそうになっていた。



「これは何じゃ。何故安房守がこんなものを持っておる。儂をからかっておるのか?儂は!太閤殿下の子じゃ!修理の子などではない!」



「心中、お察し致します。これは父が大谷刑部殿の筋から手に入れたものでございまする。」



「刑部から?奉行衆は知っておったのか?」



「奉行衆と一部の人間のみに、隠されておりました。」



「だ、だがこんなもの確証がない!太閤殿下は晩年、病床の中家康らに色々な書状を書かされたと聞いておる。これは罠じゃ!豊臣を分裂させる罠じゃ!」



「某も、その可能性もあるかと思い城中を詳しく調べた結果、殿がお産まれになるまでに様々奉行衆が行っていた隠蔽等の書状を数点、新たに発見致しました。こちらがそれらの実物になりまする。」



「何と…」



秀頼は絶句した。



「その一部始終を、よく知る者も呼んでおります。」



家臣に引き連れられてやってきたのは、淀の乳母で治長の実母である大蔵卿局であった。



「ううっ…うっ…」



大蔵卿局は崩れるようにして泣いていた。



「のう、儂は殿下の子であろう、何とか申せ。」



秀頼は問いかける。



「申せぇ!申せぇ!」



大蔵卿局の涙が、その事実を肯定していることは誰の目にも明らかであった。



「もうよい。こやつを下がらせよ。気分が悪い。のう、左衛門佐。」



「はっ。」



「左衛門佐、この事誰かに話したか。」



「宇喜多殿と福島殿にお話しいたしました。」



「備前と市兵衛なら、良い。されど、儂はこれからどうすれば良いのだ。どうすれば…」



「ただ、この書状、全て真とは限りませぬ。」



「何が言いたい。」



「先程、殿は晩年、殿下が意思のはっきりしないまま、様々な書状を書かされていたと仰せになられました。」



「そうじゃな。」



「この事実も、最期まで殿下にははっきりと伝えられなかった可能性がございます。」



「母上や修理と奉行衆がこれを隠蔽したと言うわけか。」



「あくまで、の話でございますが。」



「よし、わかった。徹底的に調べ上げよ。容赦はするな。儂は許さぬぞ。全ての事実が明るみになれば、淀と修理を儂の前に連れてこい。それまでは奴らと会わぬ。病にでもかかったと言っておけ。大蔵卿局は幽閉し、牢に閉じ込めよ。」



「はっ。」



「左衛門佐よ。」



「何でございましょうか。」



「お主は、殿下の実子でない儂を、豊臣の主と認めてくれるか?備前や市兵衛も、儂を主と仰いでくれるのか?」



「左様なこと、考えるまでもござらぬ。例え殿が殿下の実子でなくとも、殿下は殿を愛し、後継者として認め、諸大名に次期当主として支えるよう命じたのです。殿をおいて、豊臣の主となれるものはおりませぬ。」



「左衛門佐、その言葉信じてよいな。」



「無論にございまする。」



「よし。豊臣が再び世の静謐を取り戻した暁には、備前を筆頭に、七大老を作りたい。お主もその一人となれ。」



「勿体無きお言葉にございまする。」



豊臣家は本格的に動き始めた。



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