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紅い侍  作者: 柴崎龍
第二章 豊臣の反攻
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第三十一話 焦り



大和・伊勢国境周辺



福島正則率いる大和侵攻軍の第一軍は秀頼からの出撃命令を受け、大和国境に入ろうとしていた。



「大和に入ったようです。」



「そうか、宇陀松山までそれほど遠くはないな。孫七郎殿、一つだけ言っておく。」



「何でしょう。」



「殿はそなたの武功を期待しておる。某を気にすることはない。我が弟の首、とって参れ。」



「心得ました。」



「そなたに討たれるならば、我が弟もそこまでの男だったのだろう。」



気が重さを隠しつつ、正則は宇陀松山城に向かっていくのだった。



大和国・宇陀松山城周辺



「そろそろか。」



「はっ。あちらに見えますのが宇陀松山城でございまする。」



「左様か。では、ここに陣を敷く。全軍に伝えよ。」



「御意。」



そう家臣に伝えてからしばらくして、福島軍の動きが止まった。



「皆の者、この宇陀松山城を一刻も速く落とさねばならん。儂に遠慮などいらん!存分に暴れて参れ!」



『おう!』



そして福島隊、秀持隊が総攻撃を開始した。秀持隊は正則の意を受けて門を打ち破るという成果をあげたが高晴も負けじと戦い、両者一進一退の攻防が続くのだった。





大和国・宇陀松山城



秀持は思った以上の敵の攻勢の激しさに面食らっていた。



「押せ!なぎ倒せ!進むのじゃ!」



戦の経験がそう豊富ではない秀持は、焦りを抱きつつあった。



「こんなところで止まっていては殿に顔向けが出来ん…どうすれば!」



大和国・宇陀松山城



「秀次の倅、やりおるな。前線が進まぬ。」



高晴もまた、焦りを覚えていた。そんな時だった。



「殿!福島正則隊が一部前線を突破いたしました!」



「来たか、兄上…いや、正則!皆の者、これより我々は打って出る!修理!お主は秀次の倅のところへ行け!思いっきりぶつかってこい!」



「はっ!」



ちなみに修理とは福島正晴のことで、福島高晴の嫡男である。



「皆の者、怠けるな!儂について参れ!」



この時、高晴とその軍勢の士気は最高に達していた。



大和国・宇陀松山城



「殿!福島高晴の部隊がこちらに突進してきています!」



「殿!孫七郎様の軍勢にも高晴の嫡男、正晴の軍勢がやってきているようです!」



「本気になったか助六郎…今日でお主の息の根、止めて進ぜよう!」



しばらくするとこちらの方に向かってきている軍勢が見えた。正則は今宇陀松山城から少しだけ離れた場所にいるため、前から向かってくる軍勢と向かい合わせになっているという形だ。



「来たな。皆の者、攻撃の準備をせい。」



そしてその軍勢は近くまで来て馬を止めると、その軍勢から一人の男が現れた。



「助六郎か…」



正則の心中は、とてつもなく複雑であった。転生する前の現代人であった自分の記憶には、この男はただの敵であるが、もう一つの福島正則としての記憶では、血を分かつ兄弟そのものであった。



「福島正則!某は福島掃部頭高晴である!ここで決着をつけようではないか!」



「もちろんじゃ!助六郎!手加減はせぬぞ!」



「兄上!その首!必ず某が取ってみせまする!」



こうして福島兄弟の最終決戦が行われるのだった。



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