第二十八話 悪夢
摂津国・大坂城周辺
「それで、策というのは。」
「これをご覧頂きたい。」
全登はそう言うと大坂城の絵図を広げ、策を話し始めた。
「まず、高梨殿。今この陣に真田殿お抱えの忍びは居られますか。」
「おりまする。棟梁の男をお呼びします。佐助!」
「はっ。」
「お主が佐助か。」
「はっ。猿飛佐助と申しまする。」
「では、佐助。お主にやってもらうのは孫七郎殿の救出じゃ。」
「して、段取りは。」
「孫七郎殿の居場所は、既に見当がついておる。二の丸下の地下牢じゃ。孫七郎殿はそちらにおられる。」
「承知いたしました。」
「この城に今は大軍はおらぬとはいえ、天下に聞こえた名城。どこに何があるかわからぬ、しかと注意せよ。」
「はっ。」
「敵方にはあらかじめ、実は本丸に隠し通路があり、我らはそこから攻め掛かるという噂を流しておりまする。」
「隠し通路でござるか。知りませなんだ。」
内記が驚いたように言った。
「そんなものはございませぬ。」
「どういうことでござるか!?」
「つまり、本丸に兵力を集中させ、二の丸の監視の目を少なくすることで孫七郎殿の救出をしやすくするということにございます。」
「なるほど。」
「ここからは、高梨殿の出番にござる。」
「ほう。」
「佐助が孫七郎殿を救出した後、地下牢を爆破していただきたい。」
「爆破…」
「爆音に気づいた兵たちが地下牢に向かったら、某がここから大筒を一斉に大坂城に撃ち込み混乱している最中に高梨殿に攻勢をかけていただきまする。」
「そして淀と大野修理を生け捕りにする。」
「その通りにござる。」
「これなら、真っ向からぶつかるより犠牲は済みましょう。」
「一刻も早く大坂城を落とし、淀と大野修理を討たねばなりませぬ。実行は、明日の明朝。」
大坂城・本丸御殿
治長は夢を見た。大坂城が燃え、自分と茶々が磔にされる、そんな悪夢だった。
「茶々様!!!ゆ、夢であるか…」
そう呟いた後も嫌な気配は微塵も拭えなかった。あの夢が徐々に現実に近づいている、治長はそう思えて仕方なかった。
「なんじゃ!なんじゃ!」
「どうやら二の丸の辺りが突如爆破されたようにございます!」
「それはまずい。敵方に孫七郎殿を取られるわけには行かぬ!今すぐ茶々様を天主に逃がせ!儂は地下牢に向かう!」
複数の侍大将と兵を城の各門へ向かわせ、治長は少ない手勢で地下牢に向かった。
「煙で前が見えぬ…」
兵たちも徐々に咳き込み始める。治長もあまりの煙に苦しみ始めていた。
「ぐ、ぐわっ!」
兵の一人が突然倒れ、苦しみ始める。
「何じゃ!煙か!」
「いや…煙ではございませぬ!恐らくこれは忍!」
「忍だと?」
「ああっ!」
また一人と続々と倒れていく。
「弓兵前へ!槍兵は弓兵の近くを守れ!徐々に後退するぞ!」
佐助率いる忍らは焙烙玉のようなものを投げつけ、多くの手裏剣を放つ。淀軍はその餌食となった。
「ここは退く!儂は茶々様の元へ向かわねばならぬのじゃ!」
地下牢から命からがら逃げ出した治長は衝撃の光景を目にした。




