第二十七話 意義
和泉国・岸和田城
「真田左衛門佐!その首貰い受ける!」
兼相の高揚感は最高潮になっていた。たった一筋の希望の光を、みすみす逃すわけにはいかないという将としての覚悟でもあった。
「後方から援軍が来ている、儂らは進むだけぞ!」
誰かが言う。大逆転の勝利があるかもしれない、と思ったのも束の間だった。凄まじい音の銃声が聞こえ、目の前の足軽隊が崩れた。
「なっ、何が起きている…」
「これは敵わん!逃げろ!」
「退け!退け!」
これはまずい。兵達が続々と退いていく。
「退くな!未だ勝機はある!」
先程の銃声の出所は真田隊ではなかった。
「皆の者、かかれ!」
こちらに向かって突進してくる。こうなれば何もかも捨てて抵抗するしかない。
「おらぁ!!!!!」
槍を片手にただただ突き進む。そこにある一人の男が立ち塞がった。
「豊臣家家臣・豊臣孫七郎秀持である!薄田殿、勝負願いたい。」
「孫七郎、何故ここにおる!」
「援軍である高梨殿に助けていただいた。因みにその時に淀と修理は磔になり殺されたぞ。」
「何?」
「大坂は落ちた、既に勝敗はついておる。さあ、最後くらい覚悟を見せよ。」
「つまりはこの戦も、後の祭りということか。相分かった。橙武者の底力、お主に見せてくれようぞ。」
「望む所じゃ!」
両者の刃はぶつかり合う。しかしその隙を、兼相は見逃さなかった。
「貰った!」
秀持はその突きを華麗に避ける。
「橙武者、その首儂に預けて貰おうか!」
予想していなかった反撃に兼相は狼狽えた。その一瞬が、命取りとなった。
「薄田隼人、討ち取ったり!」
大坂城・本丸御殿 岸和田城の戦い前日
「それは、真なのか…」
そう言い放つ治長の悲痛な叫びは静寂に包まれた本丸御殿に響き渡った。
真田の別動隊が大坂城周辺に現れたというのだ。今まで沈黙を続けていた淀がこう言う。
「それでは、民部は…」
「恐らく、敗れたものかと。」
「兵はほぼ青木殿や薄田殿の所に出払っておるぞ!茶々様、どういたしましょうか。」
「わらわは四国の援軍を待つ。」
「とのことじゃ、家臣どもに伝えてこい!」
「しょ、承知致しました。」
摂津国・大坂城周辺
幸村から別動隊として三千の兵を任された高梨内記は大坂に到着。城攻めにとりかかろうとしていた。
「皆の者、よく聞け!これより我らは大坂城を攻め落とす!天下に聞こえた名城じゃが、案ずるな!淀や大野修理は戦の準備などまともにしておらん!迅速にここ大坂を落とし、孫七郎殿をお救いするぞ!」
『おう!』
「皆の者、何か策のあるものはおるか!」
「某に、策が御座いまする。」
「明石殿!生きておられたのですか!」
「あれから何とか難を逃れ、何度も死の淵に立ちながらも、何とか戻って参りました。今は時がない、まずは、策を。」




