第十四話 不穏
摂津国・大坂城
「これより、此度の論功行賞を行う。長門、頼んだ。」
「はっ。まず、小出吉英・吉親については斬首といたします。」
「元は豊臣恩顧の家とはいえ、最後は徳川を選んだのだ。ここは他の恩顧の家への見せしめとすることにした。」
「北条氏信については斬首といたします。」
「北条は水野六左衛門を見捨て我が身かわいさに逃げ帰ったこと、我らから見ても酷いものであった。よって斬首とする。」
「はっ。水野六左衛門の亡骸につきましては、徳川に受け渡しまする。」
「重臣がなくなっておると言うのに、徳川は亡骸を寄越せとは言っておらん。故にこちらから送りつけてやることにした。水野の倅は又兵衛に預けることとなった。」
「水野殿と直接刃を交え、その実直さに武士として感服致した。それ故殿に許しを頂き、水野殿の倅を預かることと相成り申した。」
「父の分も、お主が育ててやれ。続けよ長門。」
「はっ。此度得た和泉一国に関しては後藤殿に、河内一国に関しては毛利殿にと殿は申されております。」
ちょっと待ったと言わんばかりに、勝永は進み出た。
「殿、大変ありがたきお話ではございますが、此度の戦の戦功第一第二は長宗我部殿と後藤殿にございます。長宗我部殿を差し置いて、某が河内を頂くわけには参りませぬ。」
「始めは儂も、そう思っておったのだがな…」
「某が望むのはあくまで土佐。ここは狭山攻めで功のあった毛利殿が適任だと申し上げたのでござる。」
「そういうことなら、ありがたく頂戴いたしとうございます。」
「これからも戦は続く、儂は誰かを粒立てるつもりはない。功があれば誰でも恩賞を与える!」
大坂城下・青木屋敷
「このようなもの八百長ではないか!」
「青木殿、少々声が大きいぞ。」
「出陣するのは牢人衆ばかりで我らにはお呼びがかからず、功を挙げるのは奴らばかりじゃ!」
「我ら家臣団こそが豊臣を支えていると言うのに…」
「今の殿は豊臣のご血筋ではないことは既に明らかじゃ。我らのような譜代の不満も溜まっておる。今こそ立ち上がるべきでは無いか、薄田殿。」
「そうじゃな。だが立ち上がるにしても豊家の縁者を擁さねばならん。やはり宇喜多殿か?」
「宇喜多殿はならぬ!あれは牢人衆じゃ、いざというとき、我らの味方にはならぬ。」
「では、青木殿は心当たりがあるのか?」
「ある。孫七郎殿よ。」
「孫七郎殿?」
「そうじゃ。孫七郎殿は宇喜多殿ほど牢人衆との関わりも強くない。第一、あのお方が太閤殿下や今の豊臣を本心から良く思っているわけがない。」
「どうやら、それしかないようだな。だが我らだけではどうにもできぬ。ここは徳川を利用するか?」
「そうしよう。お主は城内で我らと志を同じくする者を集めてくれ、儂は徳川との連携と孫七郎殿を説得する。」
「心得た。」
「これが成れば、我らの天下じゃ!」
『わっはははははっ!』
二人は大笑いした後、不敵な笑みを浮かべた。




