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119話 アルベール

「アルベール様、起きてますか?」

 

 赤がノックしても反応がない。ガチャガチャとドアノブを動かすが、鍵が掛かっていてこちらから開けることができない。


「もう、仕方ない」


 赤はため息をついてドアから少し距離を置く。そして右の手のひらを上向きにして目をつむり集中し始める。


 しばらくして手のひらに光が集まっていき、なにやら形成されていく。輝きがなくなると手のひらにちょこんと鍵らしきものが乗っていた。


「よし、なんとかこれで」

「いや、そこはドア突き破れよ。見た目的に」

「なに言ってるんですか。そんなことしたら後処理が大変でしょ」

「そんな無骨な見た目で後先考えた行動すんなよ」

「滅茶苦茶な言い分だ。そんな考えでよく魔王様倒せましたね」

「ちょ、褒めんなよ」

「褒めてないです」


 牛の顔をした魔物に苦笑されてしまった。


 赤は鍵を早速鍵穴へと差し込むがすんなり入らずカチャカチャと音を立てて手こずっているのがわかる。


「クソ、やっぱりダメか」

「なんで? それ合鍵かなんかじゃないの?」

「いえ、これは僕が鍵の形を想像して作ったんです」

「そりゃあ無理に決まってるね。てかそんなことできんだ逆にすごい」

「おっかしいなー、こんな形だと思ったんだけど。こんなんだったよな?」

「いや、兄じゃ、もっと長い形状だった気がします」

「は? こんくらいのサイズだって!」

「もういい。私に任せてな」


 エマはドアの前に立って手をかざす。すると中からカチャリと音がする。ドアノブはクルッと回り、ついにドアを開けることに成功した。最初からエマにお願いすればよかった。


 中は暗くてなにも見えず、冷気が漂っている。急に洞窟の中っぽくなってきた。


 エマがゆっくりと一歩踏み出すと「うぎゃっ」と声が聞こえて思わず後ずさる。


「え、なになになんか踏んだよ私!」

「下がれエマ! 至近距離だと不利だ」


 アリアがエマを後ろに回し、臨戦態勢を取る。緊張が走り、額から汗が一筋垂れていく。


 そして次に聞こえたのはパチっという音。それと共に部屋は明るくなり、エマが踏んだものの正体が明らかになる。


 部屋は広さは十畳もないくらい。隅っこにかわいいぬいぐるみがいっぱいのベッド、本が乱雑に並べられた本棚が置かれており、中央に部屋の大きさに合ってない大きめのテレビが確認できた。そしてドアの前にはタオルケットにくるまった人の姿が確認できる。


「ん、誰……電気消して」

「そうはいきません」

「起きてください。客人の前ですよ」

「ちょっと待って。一回電気消して。そしたら起きるから」

「絶対ですね」

「うん、私が嘘言ったことある?」

「…………」

「ちょっと、そこは『もちろんないです』って答えてよ。食い気味に」

「……わかりました。とりあえず消します」


 赤は仕方なさそうに電気を消した。さっきのパチッって音は部屋の電気のスイッチだったらしい。しかし、しばらくして寝息が聞こえてきたので、またパチっとスイッチはオンされ部屋が明るくなる。


「嘘つき」

「自虐ですか。いい心掛けですね」


 赤が青に合図し、ガバッとタオルケットが剥ぎ取られる。すると、寝間着の眠そうな女性が出現した。


 エマが誤って踏んだものの正体はどうやらアルベール――俺たちをここに転移させ呼び出した張本人だった。


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