111話 双子の共謀
「うわ、雫だいぶ攻めたねそれ」
「そんな言い方しないでエマ」
「雫ちゃん似合ってるよ! かわいい!」
「あ、ありがとう」
もうジジ抜きは10回目くらいに差し掛かり、いよいよここで雫が水着姿を晒すことになった。
恥ずかしそうにしてる雫にエマやセインがくいついているが、その二人も既にゲームに数度負けて水着になっている。
ちなみに負けたら身に付けている衣服を1枚ずつ脱ぐというルールだったが、水着が露出してしまう場合はもう上下の服を一緒に脱いでしまおうという特別ルールが途中、設けられている。
水着はやはり上下ともに揃ってお披露目したいし、上だけ脱いだり下だけ脱いだりしてちぐはぐな姿のままの方が恥ずかしいからということだ。
確かに水着というものは上下揃ってこそ魅力が発揮されるものだと思うし、これでゲームに当てる時間が少なくなっていいことずくめだ。
雫へのだいぶ攻めたというエマの言葉がなにをもって攻めているのか至極興味があるが、残念ながらまだお目にかかれそうなタイミングはやってこない。
「じゃあ、もう一回やりますね」
環が場に出きったトランプをかき集めてシャッフルする。それをみんなに配って再びゲームが開始される。
「すまないなタクミの妹」
「環です私の名前。その呼び方お兄ちゃんのついでみたいで嫌です」
「悪かった。環、か。で、妙?」
「そうですそうです」
アリアが妹たちの名前を反芻して覚えている。さっきのこともあるせいかちょっとアリアへのあたりがキツい気がする。
「アリアさん、観念してください。残るはあなただけなんですから」
「そうだな。受けて立とうじゃないか」
まだ水着になっていないのはアリアだけ。他の五人はもう水着姿になっている。
「最後の一人って、だいぶハードル高いですよね。さぞ立派なものなんでしょうね」
「なんだ、なんの話だ」
「環ちゃん、落ち着いて」
エマの苦笑する声が聞こえる。環はムダに張り切って隣のアリアに自分の手札を引かせた。
みんな着々とペアになったカードを捨てていき、そろそろプレイヤー達の中であの数字がジジなんじゃないかと候補が絞られはじめる頃。
残るプレイヤーはアリア、環、妙の3人。手札もだいぶ少なくなっており、いつ誰があがってもおかしくない状況だ。
「二人ともなんかさっきから目くばせしてないか? 私の手札途中から全然減らないし」
「目くばせ? アリアさん、私たちがそんな卑怯なことすると思いますか? してないよね妙?」
「バレなきゃいいんですよバレなきゃ」
「どっちの言うこと信じればいい? 意見が二分しているが……」
困惑するアリアだが、それでもゲームは進んでいく。
見えないのでなんとも言えないが、目くばせしてアリアが負けるように誘導するくらいあの二人ならやりそうだ。
セインやエマ、そして雫も気づいているだろうが、もう既にアリア以外が負けても意味のないゲームなので、多少ルールの穴をついて協力するくらいは目をつむってくれているのだろう。
妙が先に抜け、残るは環とアリアだけ。
「さあ、アリアさん。引いてください」
差し出した環の手札は残り1枚。つまり、アリアの負けが確定したということだ。
「クソ。そんなことが……」
悔しそうに嘆くアリア。環と妙がハイタッチしお互いを讃える。
「アリアの水着楽しみだなー!」
「セイン様、人が悪いですよ」
「だって一緒に買いに行ったのに私がちょっと目を離したらもう自分の分買っちゃってたから。試着とかちゃんとしたの?」
「一応は、しましたけど」
「なら問題なしだね! さ、着替えた着替えた!」
「ちょ、セイン様やめてください自分で脱ぎますから!」
「私が脱がせてあげようか?」
「私に触るなエマ! さっきのようにはいかないぞ!」
ワチャワチャと楽しそうにしている。セインと妹たちもクスクスと笑いながら傍観していた。
「わかった、着替えるからせめて別の部屋に移動させてくれ」
「えー、アリア逃げない?」
「逃げません。ただ、ちょっと心の準備が」
懇願するアリアに渋々みんな了承し、アリアはバッと立ち上がる。
「エマ、部屋を借りるぞ」
「え、なんで私の部屋? 自分の部屋があるでしょ」
「お前の部屋にしかあの大きい鏡はないからな。じゃあ、少し待っててくれ」
「アリア! ああもう行っちゃった」
ん、アリアはエマの部屋に向かっているのか? エマの部屋ってここだよな?
……マズイマズイ早く隠れねえと!!
少し間を空けてから状況を理解した俺は急いでクローゼットの中にダイブする。
間一髪、俺が身をクローゼットを閉めるとアリアがやってきた。声を殺してアリアがいなくなるのをただただ待った。
布の擦れる音が妙に艶かしく感じ、罪悪感に苛まれる。今、ここにいるのがバレたらどうなることやら。
真っ暗闇で視覚が奪われているだけに聴覚がだいぶいつもより過敏になってしまっている。
しばらくしてアリアの動きが止まり、なにも聞こえなくなる。ただ部屋にいる気配はする。
俺はゆっくり10秒に1cmくらい動いてクローゼットの小さい隙間から外の様子を観察することにした。
すると、うっすらとアリアの後ろ姿が確認できる。ほんとうっすらと。体の輪郭がギリギリわかるくらい。だから今服を着ているかどうかもわからない。
姿見の前に立つアリアは立ったまま、なにか考えているようだ。だが、決意を固めたのか、自分の胸のあたりに手をかけ、なにかを外していく。
すると胸のあたりの輪郭が、明らかに膨らんで行ったのがわかった。
ガタッ!!
マズイ! ついびっくりして体をぶつけてしまう。アリアも物音でビクッとなり、動きを止める。
俺が死を覚悟したと同時、コンコンと強めにドアがノックされた。
「ねえ、アリアまだー? 入るよー」
なかなか着替えの終わらないアリアに痺れを切らせてエマが入ってくる。
「おい、返事を聞いてから入れ!」
「いいじゃん私の部屋だし。うわ、アリアさっきも見たけど相変わらずすごいねー」
「ちょ、やめろ!」
エマがアリアにちょっかいを出す。そのお陰でどうやら俺の存在はバレずに済んだようだ。




