110話 双子の姉
その後、エマが軽くルール説明を済ませるとゲームは開始された。
ちなみにジジ抜きとは、ゲーム前にジョーカーではなく数字のカードを一枚ランダムに抜いておいてからババ抜きと同じようにプレイするものだ。
ババ抜きでははじめからジョーカーが手札に残るのを避けつつプレイするが、ジジ抜きでは最後に1枚だけ残るカードが終盤になるまでわからないので、ババ抜きよりドキドキ感の増したゲームとなっている。
今回は、さっきと違ってつつがなくゲームが進行していく。
そして、ここからは本当に負けたら1枚衣類を脱ぐという、野球拳ルールが採用されているので、さっきよりリアクションの声が大きくなっている気がする。
一応、言っておくが、水着をみんな下に着ていて、ただ見せるだけじゃつまらないからこういうスタイルを取っているだけだ。
そしてプレイヤーも全て女性。異性のいかがわしい視線もそこには存在していない。みんなの親交を深める為のレクリエーション的なものだと思ってくれて構わない。
俺、はまあその……今はドアに耳を引っ付けて少しでも向こうのきゃっきゃしてる声を楽しみたいわけじゃなくてだな……えっと、そうそう! 妹だ、妹たちがさっきみたいにセインやエマにちょっかい出されないか心配しているだけだ。
エマの水着を見れるという口車に乗せられてひょいひょい付いてきたわけではなくて、あくまで妹たちを思っての行動だ。勘違いしないでもらいたい。
「本当に、脱がなきゃダメですか?」
妙の声だ。俺はドアに体ごと押し付けて一音も聞き逃すまいと耳をすませる。妹のピンチだ、状況を正確に把握しなくては!
「仕方ないよ妙。負けたんだから」
「環……だって」
どうやら負けが続いた妙は、もう靴下もとっくに脱いでしまっていて、後は制服を犠牲にするしかないようだ。
みんなの視線に躊躇する妙だが、ルールはルールだ。かわいそうだが仕方ない。
「うぅ、わかりました。脱ぎます……」
妙はちょっとだけ泣きそうになりながら制服に手を掛ける。
最初から話し合いで決めたルールではあるが、みんな衣服をまとっている状態の中で一人だけ肌をさらすのはめちゃくちゃ恥ずかしいだろう。セインやアリアといった今日初めて会う人たちの目もあるし、人見知りの妙にはこたえる状況だ。
「ちょっとこの部屋、暑くないですか?」
聞こえたのは環の声。
「そうかな?」
「はい、めっちゃ暑いです」
「エアコン付けようか?」
「いえ、大丈夫です。服脱ぐんで」
「……そっか。じゃあ向こう向いとくよ。みんなもほら」
エマは環の意図を察してエアコンを付ける提案を取り下げる。
「環? ほんとに暑いの?」
「うん。うわ、めっちゃ涼しいよ妙」
ガバッっと服を脱いだ環。それに続いて妙もゆっくりと制服を脱ぐ。
「ほんとだ。涼しいかも」
「でしょ。お、水着似合ってるじゃん」
環はぶっきらぼうに言う。妙は嬉しそうに笑って、
「なに言ってんの。選んでくれたのお姉ちゃんじゃん」
「こういうときだけお姉ちゃんって。あんたはもう」
環は照れくさそうにして、ゴソゴソと服をしまった。
勇気の出ない妹の妙に、姉である環は一緒に服を脱いであげたのだ。
こんな状況で妹の成長が見れるとは。このゲームにわくわくして傍聴していた自分の汚らわしい心が浮き彫りになって辛い。
「もういいですよみなさん、こっち向いて。あれ、セインさんなんで泣いてるんですか?」
「違うの……なんて自分が愚かな人間なんだろうって思ったら涙が止まらなくて」
「ごめんね妙ちゃん。ありがとうね環ちゃん」
エマが二人に温かく声を掛ける。雫は一言も発しないが、温かい視線を二人に送っているに違いない。
「なるほど、そういうのもありか」
「あんまりジロジロ見ないでくださいっ」
アリアが水着の感想を言い始めた。妙が恥ずかしそうにしている。
「なにを言ってる。水着とは見映えてこそのものだろう。そうん、二人ともすごく似合っている」
「それは、ありがとうございます」
環がまんざらでもなさそうだ。こういうアリアの歯に衣着せないところは立派な長所だ。
「いや、しかしあれだな。二人は顔はほんとによく似ているが、こうしてみると胸のサイズが明らかに違うな。なにか原因でもあるのか?」
「……こっちが聞きたいですよ」
「あ、最低アリア」
そして、アリアの歯に衣着せないところはどうしようもなない短所にもなりえる。
「ん、単純に疑問で聞いたんだが? 他意はない」
「他意がないからって言って相手が不快にならない保証はないんだよアリア」
エマですらフォローしようもない状況になり、その後、環が機嫌を取り戻すまでけっこうな時間を要した。
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