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109話 ババ抜き

 話し合いの末、ゲームはトランプのババ抜きをすることに決定した。


 テレビゲームの案もあったが、人数が多いし経験者が圧倒的有利だとの意見があり、それならそこまで経験の差が出ないトランプ、かつローカルルール等の複雑なルールのないババ抜きをしようと意見がまとまった。


「なるほど、ババってのがジョーカーってことね」

「ほう、2つ数字が揃ったら。はあ、なるほど」


 ルールを知らないセインとアリアを見かねて、最初はエキシビションとして一戦やることになる。ババ抜きを知らない二人にうちの妹達は驚いている。


「やっぱり皆さんって外国の方なんですか?」

「え、(たえ)ちゃん私に興味あるの?」

「ちょ、近いです」


 何故かルールを把握していたエマが妙にちょっかいを掛けているようだ。


「ちょっとやめてください」

「ん、(たま)ちゃんもかわいいね」


 妙を庇う環に今度は標的が移る。


「そういうのセクハラですよ」

「うわ、手厳しいな。ごめんね、環ちゃんかわいいからつい」

「か、かわいい? 私がですか?」

「かわいいよー。だってほら、このサラッサラな髪すごいよ。セインもほら」

「え、触っていいの環ちゃん?」

「えっと、じゃあ少しなら」


 マズイ、うちの環が蹂躙されている!! 妙と比べて自分は女性らしくないとコンプレックスを抱いているのでああいう扱いには滅法弱いんだ! 


「環ちゃんそんな照れちゃって!」

「照れて、ないです」

「お、妙ちゃんも羨ましいの?」

「へ!? そんなこと言ってないです私!」

「だって、じっとこっち見てるからそうなのかなって」


 セインが妙にも照準を合わせる。ババ抜きはつつがなく進行しているんだろうか。


「えい、二人ともかわいいんだから!」


 たぶんセインの手に片方ずつ俺の妹が捕らえられた。抵抗する声はなく、二人もそれを受け入れているようだ。


「早く二人のほんとのお姉ちゃんになりたいなー」

「え、え、どういうことですセインさん!?」

「お兄ちゃんと結婚するってこと?」

「そう、環ちゃん正解!」

「そんな、嘘ですお兄ちゃんには!」


 妙がおそらく雫の方をチラチラ見ながら慌てている。


「いやいやほんとほんと! だってタクミのこと一番好きなの私だし」

「あんなクソ野郎のどこがいいかわかんないですけど。それこそトランプでいうジョーカーみたいなもんですよ」

「環ちゃんそんなこといったらダメ! お仕置き」

「あ、ちょっやめ……」


 なにを!? うちの妹はどんなお仕置きをされているんだ!?


 妹たちの危機的状況に部屋を飛び出したい気持ちは山々だが、俺が出ていって状況が好転する気がしない。むしろ悪化する未来しか見えない。


「セイン。次引いて」


 荒れた場に雫の落ち着いた声が通る。場は鎮まり、空気が張りつめるのを感じる。


「えっと、雫怒ってる?」

「ううん。いいからほら」


 催促する雫に少し驚きながらゲームは進んでいく。しばらくして一人、また一人と歓喜の声が上がり、プレイヤーが減っていく。


 残っているのは、雫にセイン、アリアの3人だ。


「ほら、どれでもいいぞ」

「じゃあ、これ」


 終盤になり、ババのありかはもう誰もが知っている。ババが動く度に勝ち抜けたプレイヤー達は各々リアクションを取っているが、まだプレイ中の3人は真剣な声しか聞こえない。


 今度はセインが雫のカードを引くターン。


「あと二枚か。じゃあ、こっち」


 セインが一枚のカードに手を掛ける。


「雫、なんかめっちゃ力入ってて取れないんだけど?」

「力入れてないけど?」

「あれ、雫ちゃんルール知ってるよね? それって」

「……エマ」

「あ、ごめんごめん。ちゃんと意図があるのね」


 雫がセインに取らせまいとしてるカードはどうやらジョーカーらしい。なにやってんだよあいつ。


 一度仕切り直して手札をシャッフルする。そして、もう一度セインの前に残りの二枚を見せる。


「また一枚だけに力入れてる。てことはこっちがジョーカーじゃない方か」

「さあね」


 雫はゲームの勝敗そっちのけでジョーカーを死守したいらいしが、セインはそんな雫の心理がわかるはずもない。


「あ、あそこにいるのタクミじゃない?」

「え?」

「しめた!」


 雫の虚をつき(ついでに俺もビビった)、セインは力を込めていた札を奪取。


「よし、揃ったあがりだやったー!」

「あれ、雫ちゃんもしかして」


 どうやらセインは上がったらしい。ということは雫が取らせまいとしたのは普通の数字のカードということだ。


 なるほど、1回目はジョーカーを取らせまいして2回目はあえてジョーカーではない普通のカードを取らせまいとする。


 そうすることで力を入れた方を取ろうとするセインにジョーカーを奪われずに済んだというわけだ。


「これは、渡さないから」

「え、ジョーカー守ってたの? なにしてんの雫」


 セインはジョーカーを死守する雫の行動を理解できるはずもない。


 そのままアリアとの攻防を制した雫は見事最後までジョーカーを手にして敗北した。


「やった」

「雫、一枚脱いで」

「え? 最初はノーカウントって」

「ややこしくした罰。ほら」


 エマに催促され、雫は渋々靴下を片方脱いだ。


 その後、ジョーカーがあると場が乱れるということでババ抜きではなく、ジジ抜きでゲームが再開した。

 

 


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