他人に迷惑かけるべからず
「なあ志多野~」
「どーした?」
「何でしょうか?」
「何?」
俺、悠奈、夕真の順に答える。
「……みんな、志多野じゃねえか!」
ボルテージを上げて境が叫んでいた。
「そりゃ兄弟だからな。で、なんだよ。どうせ俺に用だろ」
「まあな。暇だしさ~、なんかやろうぜ」
夕真たちを隅に追いやりながら境もベンチに座っていた。お前……大人げねえな。
「なんかって? 本屋で何ができるんだよ」
「本屋じゃなくても、ほらすぐそこにエスカレーターあんじゃん?」
「エスカレーターゲームか? あれは他の人に迷惑かけるでダメじゃね」
すると境は目を閉じて考え出した。
夕真と悠奈は『戦争』と呼ばれる(正式には軍艦じゃんけんと言うらしい)、握手をしたままリズム良くジャンケンをして、勝った方が負けた方の握手している手の甲を思いっきり叩き、降参したら負けというドMな遊びをしていた。手の赤さからして夕真が負けている。
「そうだ! この本屋で面白い題名の本を探して、どっちがより面白いかを競う。制限時間は阿部たちが戻って来るまで。おけ?」
いきなり立ち上がった境は、何とも面白そうな勝負を提案した。
「おう! じゃあ俺ちょっと行ってくる……って、この二人には聞こえてないか」
まぶたに涙を溜めながらも痛さに耐えている夕真の姿が、実に男らしかった。
さすが俺の弟! そしてさすがあの父親の血を受け継ぐ者! 耐久力だけは凄まじいからな。逆に悠奈の手はほとんど赤みがかっていなかった。どんだけジャンケンつえぇんだよお前。
「よし、試合開始だ」
厳密には二人で行動し、その棚でそれぞれ見つけた本を見せ合うという至極単純なルールだ。
「あんたたち、今度は何を企んでいるのよ」
後ろを向いたら……奴がいた。みたいな状況で、後ろ振り向きたくないぜ!
俺たちは無言で目の前の本と睨み合っていた。冷や汗を流しながら……。
てか悪巧みとかじゃないし別に黙る必要ないんじゃないか? そうだよ何ビビッているんだ俺は!
「今勝負の真っ最中だぜ!」
後ろを向いたら……前澤がいる。やけに視線が怖い。
「どんな?」
な、なぜそんな怒りが込められたような口調なんだ……。
「どっちがより面白い題名の本を見つけられるか、っていう勝負だ」
はあ、と前澤の口から息が漏れる。
「それ、その本の作者に失礼じゃない?」
「………………やっぱ前澤は天才だな!」
そうじゃん! 作者が心を込めて付けた題名を面白いからって笑うなんて、失礼にも程がある! 俺たちはそんなことにも気付かなかったのか! 素直にエスカレーターゲームやっとけば良かった!
読んでくださってありがとうございます。
境は志多野を名前で呼ばないので兄弟みんな反応してしまいます!
紛らわしいなぁ。
感想などもらえると幸いです。
次回、ついにあのゲームが! お楽しみに




