変態の弟妹
「なあ、イスならそこにベンチあるんだが」
それを聞いた途端、カチ、というスイッチが切り替わる音が脳内に響いた気がしたと同時に、背中に座っている悠奈を気にせずに立ち上がると、悠奈は床に投げ出された。
何かを言わせる前に、近くにあったベンチに悠奈を座らせる。
これこそが、兄の本当の務めなんだろうな!
「ベンチやあ~だぁー! お兄ちゃんのイスに座るぅ!」
こういう時に限って子どもみたいに泣くんだよなー。まあどうせ心の中では黒いことを考えているに違いない。無視するのが一番だな。
「夕真! お前も悠奈の兄だろ。後は頼んだぜ!」
「え……でも」
モジモジすんな! それでも男か!
「大丈夫だ! あの両親の血を受け継いでいるんだぞ!」
勢いで言い過ぎた。今のは褒め言葉じゃなかったわ。
「僕悠奈苦手だよ……」
ぼそりと呟く。昔から苦手だったからな。
しょーがない、最終手段を使うか……。俺はカバンから五枚の写真を取り出し、こっそり夕真に渡す。
「兄貴、これ……」
「後は頼んだぞ」
そう耳打ちすると、夕真は本日最初の笑顔を見せた。
「兄貴! 僕やるよ!」
さっきまでの小心者の夕真はいない。今ここにいるのは歪んだ恋に燃える夕真だ。
「あの写真何なの?」
境は知らなかったっけか。夕真の正体を。
「阿部の写真だぜ」
「……阿部!? 何で!?」
「声でけえって。夕真はな、ずっと前から阿部が好きなんだよ」
「まじで!? 意外だな!」
「だから声でけえって」
昔、なぜ阿部が好きか夕真に聞いたことがあった。その理由が『太ももが綺麗』という、ほんとにお前小学校低学年なの!? とツッコんでしまいたくなるような理由だった。実際にツッコんだけど。
それから、俺ら三人兄弟は変態ということが発覚した。悠奈のことは、夕真の正体を知るもっと前から知っていた。
幼いのになぜあんなSで腹黒なのだろう……。教育上かなり良くないぞ。
読んでくださってありがとうございます。
次は夕真が正体を現しました。
感想、評価などもらえると嬉しすぎて腕立て伏せするかもしれません。
では次回に




