舞い踊れ! 変態!
「おい境! やるぞ! あのゲームを!」
まだ硬直が解けていない境の体を揺さ振ると、額の汗を拭って、
「やるのか! あのゲームを!」
舞台となる、その適当な場所に移動して行く境の後を、俺と前澤は着いて行く。
一言も話さず五分程歩くと、境が急に止まった。
「ここ、何かを感じる」
静かな口調で境が言う。
「奇遇だな俺もだ」
何かこう、覇気というかオーラというか……この〝エスカレーター〟から漢のニオイが漂う。
「全く分からないわ。というかこれ、エスカレーターじゃないわよ」
「前澤の言う通り! これはエスカレーターじゃない」
「そう、これは本屋にある極普通のワゴン。しかし! 人はこれをこう呼ぶ……〝エスカレーター〟と」
「そう呼ぶのはあんたたちだけだわ」
境と俺はエスカレーターゲームの真意について語りだす。それを前澤は紫外線のような眼差しを向けて聞いていた。
「なぜこのワゴンが良いのか」
「それはワゴンの高さだ。肩辺りまでの高さのワゴンじゃないといけない」
「なんでよ」
「エスカレーターに乗るためだ!」
説明を境、俺と交互に言っていく。
「エスカレーターに乗れば動く必要はない」
「その間、普通体は動かさない」
「…………」
口をぽかんと開けながら、前澤が硬直していた。
「まあ、説明なんかより実際にやった方が早い」
「じゃあやるぞ」
境はワゴンの反対側の右端へ移動する。そして俺と前澤を見て、
「しっかり見てろよ!」
そう言ってから、俺がカバンからビデオカメラを取り出す。
「ちゃんと撮るぜ」
「……?」
前澤のこんなおどおどした表情見たことがなかったので、ついビデオに収めてしまった。
「よっしゃ行くぞ」
左に体を向けてそのまま真っ直ぐ境は見据えた。
「スタート!」
俺は録画ボタンを押す。
そして境はワゴンからはみ出ている肩から上を微動だにさせずに、まるでエスカレーターの如く、ゆっくりと前進すると同時に、ちょっとずつ境の姿が見えなくなっていく。
「…………!!」
声にならない叫びを前澤がしていた。
完全に境の姿が消えた少し後、消えたところから頭が出てくる。先ほどと同様にゆっくりと来た道を前進した。それと同時にちょっとずつ姿が見えてきて、最後はスタート地点へ戻る。
「どうだった!?」
「境……いつの間にそんな上手になったんだ。前進するペースと姿が消えていくペースがほぼ完璧だ……でもやっぱ体が少し動いてたな」
的確に境の良かった点と問題点を評価する。対戦相手だからと言って全否定なんてことはしない。
「そうかやっぱり体が動いてんのか……」
境はアゴを押さえて目を瞑っていた。改善する方法でも考えているのだろう。
「今のは、何なの?」
「ああ、今のがエスカレーターゲームの『演舞』だ」
読んでくださってありがとうございます。
エスカレーターゲーム来ました!
このゲームのせいで更新が遅くなるという自体がおきてしました。
感想などもらえると嬉しくて作者も演舞しちゃいます。
では次回に。




