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第74話 インベントリ機能拡張

 プルンアラモードを満喫した俺たちはマポリンの家をあとにし、宿屋に戻った。



「ドスシウダはなんか俺たちの拠点って感じだな」


「そうよね。ここは衛兵隊員証も持ってるし、マポリンも住んでるし、催事場でお菓子作り大会も開かれるし」


「いつか、お家建てるプイ?」


「それもいいかもナノ」

「そうね。いろいろ落ち着いたらそういうのもいいわね」


「たしかに、自由に世界を行き来できるようになったときの接続拠点にできるかもな……」




「そうよね。そのためにも次に行くラパンで試すことが超重要よ!」


「そうだな」




 改めてモカのメモを確認させてもらった。たしかに、記録地点を増やせるかどうかは超重要だ。


「新しい大事な言葉として『遺物』っていうのがあるよな」


「そうね。いろいろな謎の答えそのものか、そうでなくても答えに関係してそうよね」


「やっぱりフューラスタードから直接北に行かなくて正解だったな」


「そうよ。ここまでいろいろ分かるとは思ってなかったけど、突入してたら悲劇が起きたかもしれないわね」




「このあと、ラパンに行って、エーンスタットに行くと思うけど、エーンスタットでは何か用事ある?」


「うーん。特にはないかな?」

「私もないプイ」

「私もないと思うノ」


「じゃあ、ガトアルデにまでさっと行くか」




「ガトアルデには行きたいのね?」


「ゲンタがいるしな。ゲンタのおかげでいろいろ分かったことがあるから、お礼がしたくて」


「そうね。また何か作るつもりね」


「ふふふ、お楽しみに」




 候補はあるのだが、まだ内緒だ。でも、材料を聞いた時点でモカには気付かれると思うが。


 俺がのんきに作るものを想像していると、プリンがさらに先のことを気にし始めた。



「そのあとは、モルジクに行くと思うけど、その前か後に確認したいことがあるノ」


「ん? なにかしら?」


「師匠のお墓ナノ。お墓から第1施設の洞窟まで本当につながっているか確認したいノ」


「それすごく大事なことだよな」


「ええ、ものすごく大事なことよ。お墓と第1施設の間を1回往復してもいいかもしれないわ。何か分かることがあるかもしれないし」


「ありがとうナノ」




「あとはモルジクから森を通って研究所に行くか、エーンスタット経由で行くか……」


「森を通る必要はないけど、道を通ると向こうから見られちゃうかしら?」


「そうかもしれないプイ。でも、エーンスタットの東の道がどうなっているか見てみたい気もするプイ」


「そうね。研究所の人たちはそっちを通るわよね」


「まあ、モルジクに着いてから考えてもいいけどね」


「そうね。どんどん新しいことが分かるものね」




 とりあえずの方針が決まったので、明日に向けて、モカは長風呂に出かけた。





◇


 翌朝、ラパンに向けて出発した。


 ラパンは何度か行っている。たぶん次で4回目くらいだろう。途中の道も特に変わりなく、安定している感じでよかった。



 次の日の昼過ぎにはラパンに問題なく到着した。


 比較的近いラパンとドスシウダの間でもキャンプなしでは移動するのは難しい。やはり、移動を頻繁にするようになるには馬車が必要になりそうだが、肝心の馬の調達ができなさそうだ。


 意外とキメラ車になるのが将来の絵姿かもしれない。そうすれば人数が多くても移動が楽になりそうだ。数人で仲良く移動しているドグ博士のような人たちもいるのだから。



「あっ…… ボコ隊長にドグ博士のことを聞くの忘れた……」


「まあ、いいんじゃない? そのうちどこかでまた会えるわよ」


「そうだな」




 ラパンに着くと、プリンの家に一緒に向かった。


「とりあえず、少し休憩したら、一旦インベントリのものを出したいんだけど、場所あるかな?」


「あるノ。あっちのほうに使ってない部屋があるからそこにするノ」




 プリンの家は本当に広い。これだけ広さがあれば、インベントリの中のものを一旦すべて出しておけそうだ。


 ひと息ついたあと、インベントリの中身を出し始めた。



 インベントリの中は気付いたら結構たくさん物が入っていた。


 武器もたくさんあるし、冷蔵庫まで入っているから当然だ。部屋を汚さないように気を付けてみんなで並べていく。


 冷蔵庫だけは重いから、出す前に場所を決めてから出した。思っていたよりも多かったことから記録地点が増やせるか試す前に話が盛り上がる。



「ずいぶん入っていたわね」


「これ全部持ち歩くのは無理プイ」


「そうナノ。師匠たちはどうやっていたノかな?」


「そうだよな。最小限だけ持ち運んで、あとはキメラ肉を売って都度買ったりしたんじゃないかな?」


「そうよね。少なくとも、寝袋は持ち歩かないわよね」




「そうだろうな。キメラに襲われることもあるから、身軽にするのが基本だと思うよ。あるいは、誰か1人が持って、2人が周りを警戒するとか、役割分担したんだと思う」


「それはあるわね。役割分担は私たちも普通にやるわけだから、制限が多ければ間違いなく必要になるわね」




 役割分担の話をしていてふと思った。


「そういえば、護り人ってなんで3人組がこれまで多かったのかな? 4人のほうが絶対やりやすいと思うのに」


「たぶんだけど、人間2人は固定としても、一緒に行動できる亜人の候補が1人しかいないというのが多かったんじゃないかしら? ユリの直系の子孫の1番の親友が行動を共にすることが多かったんじゃないかなって思うわ」


「なるほどな。そうなると俺たちはいろいろと例外だらけだな。俺はクルルにもプリンにもいてほしいな」


「「うふふプイ(ナノ)」」




 3人の制約があったらどうなったのだろう。プリンにネックレスを渡せなかったら3人のままだったわけか。


「そういえばさ。護りの腕輪とかネックレスって外したら腕輪の中の登録情報は消えるとは思うけど、もともとの生体AIチップの中身はそのままなんだよな、きっと」


「ん? そうだと思うわよ。腕輪とかのために結合力を使っているはずだから、外せば負担が逆に軽くなるはずだわ。ただ、腕輪がないと施設に入れないわよ」


「そうか」




「どうしてそれを気にしたプイ?」


「いや、いつか護りの腕輪とかを返すときがくるのかもなって思っただけなんだよ。俺やモカもそうだし、プリンのだって、元はリアさんが着けるはずのものだったはずだし」


「そうね。そのうちユキさんたちと相談することになるのかしら」




 クルルが何か気付いたようだ。


「……それって、ユミさんたちもそうだったプイ?」


「ユミさん? あっ、たしかにそうよね。ユミさんがユキさん達に譲るときもそうだったはずだわね」


「となると、ユミさんたちはコネクトの種類は減っても強いままだった?」


「そうかもだし、強さのレベルを下げて、コネクトを維持したかもしれないわ」


「そうか。それもできるのか。それって、普通に生きてる分には十分すぎるほど強いよな」


「そのはずよ。でも、孫のユキさんが既に結婚してるのよ。さすがにユミさんは戦う年齢じゃないわよ」




「そうだった…… 力とかが強くなるわけじゃないからな。となるとコネクトの力だけ維持するのが1番だろうけど、それでも洞窟のキメラ相手だと厳しいかもな」


「そうよね。 ……ユミさんってまだご健在なのかしら?」


「どうかな? 今現在の話が全く出てこなかったし、ネコ人の神様で生きているのは俺だけって聞いた気がするし、普通に考えたら亡くなってそうだよな」




「うーん。そうね……」


「何か気になる?」


「いや、私たちの腕輪が実はユミさんたちのものだったっていう可能性を考えただけよ。でも、リアさんたちから聞いている話とは合わないからそれはないなって。ただ、護りのアクセサリーが6個しかないって決まったわけじゃないわよね」


「そうかもな。9個とかあってもいいわけだし、3の倍数の必要もない気がする」


「そうそう」




 モカはいろいろ考えているようだ。


「……たしかなのは、ノエさんとユイさん夫婦が同じ時期に殺されたことよ。あとはノエさんが腕輪2個とネックレスを持っていたこともダブル爺の話から間違いないわ。だって、ユミさんの親友とリアさんはネコ人なんだから、ウサ人の護り人はノエさん以外にいないわ」


「なるほど。でも、ノエさんが持っていた腕輪とネックレスの持ち主がユミさんたちのものの可能性がゼロじゃないということか……」


「ほとんど可能性はないとは思うわよ。ユミさんたちがエーンスタットの北の森にでも隠していて、それを取りに行ったとかでもない限り」


「ユミさんたちがそんなところに隠す理由なんてあるプイ?」


「……思い付かないわね。普通はレイシュトの家の中で大事に保管するか、直接次の世代に渡すわよね。護り人をしている時は、護りのアクセサリーって外す必要が全くないじゃない」




 気付けばずいぶんと話が脇道にそれちゃったな。


 俺とモカは昔からそうだったな。話が好きだから、しゃべっているうちに気付いたら違う話になっている。


 俺が気付くより先にプリンが気付いた。



「……ところで、ヤマ魔法の記録地点を増やせるか試さないノ?」


「あ…… 話に夢中で忘れてたわ……」


「今のインベントリの位置を忘れる必要はないから、追加できないか確認してみようかな。ちょうどよさそうなところないかな?」


「畑とかはどうプイ?」


「それいいと思うノ」




「大丈夫かな…… つないだところに誰かいると巻き込んじゃいそうだよな」


「そうよ。普段私たち以外誰も来ない場所がいいわ」


「となると、家の中の別の部屋くらいしかないノ」


「とりあえず今はそれでいいか。増やせることが知りたいから。あと、記録場所を入れ替えられることも一応確認しておくか。最初のときにも確認はできているけど」




 プリンに2つほど部屋を案内してもらった。目印となりそうなものとして、見た目が違う石ころをいくつか拾ってきて持っていく。


「じゃあ、まずはここだな」


 ここをつなげる場所として意識した。インベントリとは別の場所として。うまく説明できないけど、なんとなくできた気がする。


「とりあえず部屋を出たら、この石ころを目印として入れておくよ」




 同じようにもう1部屋試した。石ころを目印として入れるときに、ちゃんと別の部屋として認識できた。これならいけそうだな。


「いけそうだと思う。今の部屋につなぐときにまだ前の部屋へつなげられる感じが残ってるよ」




 今の部屋にも石ころを入れた。そのあと、1つ前の部屋から別の石ころを出した。


「ヤマ、すごいじゃん! 元のインベントリも使えるまま?」


 肝心なことを忘れてた。元のインベントリにつないでみる。


「うん。無事につなげられるよ。今のところ3カ所は覚えられるね。じゃあ、次は2番目だけ入れ替えることができるか確認するか」




 もう1部屋に行く。プリンの家じゃなきゃとてもできない実験だ。


 入れ替えのときには2番目を意識しつつ、新しく覚える感じだ。きっとAI細胞が助けてくれているのだろう。なぜかは分からないができる気がするという不思議な感覚になる。


「……たぶん、できたかな」




 インベントリと2つの部屋を順につなげられるか確認してみる。いけそうだ。上書きしたであろう場所は思ったとおりつなげられなくなっていた。


「うん。想像通り」


「やったわね!」


「夢に向かって1歩前進だな」


「ねえねえ、つないだ穴をいつか通るプイ?」


「そうね…… 大丈夫なのかしらね」




「どうだろう? 死ぬことはないと思うよ。俺たちだってここで生きてるわけだし」


「それはそうね。それぞれ別の世界として時間が流れていくだけだから影響はないのかな? もともと私たちがいたところは別の世界だし。うーん……」


「そうだな。近い世界間で移動すると混乱しちゃいそうだな」




 モカの頭がフル回転していそうだ。




「……そうか。危険性ってそれかしら。帰って来れなくなることを気にしたのかもしれないわ」


「なるほどな。別々の世界を歩むわけだから。どんどん世界が分岐するとして、これがつながるのは、どれか1つを選択した世界なわけだな」


「不安になったのでしょうね。自分が選択しない側に帰って行くことになったら会えなくなるって思ったのかしら」




「……でも、そんなことあるのかな?」


「うーん…… そうか…… ここから先は私の予想よ。予想というよりは推測かもしれないけど。間違っているかもしれないから、ヤマの感触と違っていたら教えてね」


 モカの推測や予想が間違っていたことのほうが少ないので、きっと何かすごいことを思い付いたのだろう。




 実際、語られた内容はとても難しかった。


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