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第71話 新たな課題

 レイシュトで、いろいろな情報を得ることができた俺たちは、次はドスシウダに向けて出発した。


 ドスシウダではボコ隊長に話を聞けるだろう。ボコ隊長に会うのは久しぶりだから楽しみだ。



 レイシュトからドスシウダまでの道のりは3、4日といったところだ。途中にある分岐は、何度か通ったトライオラシに向かう道と、ラパンに向かう道だ。


 だが、そちらに行かずにレイシュトからドスシウダまでまっすぐ通るのは初めてな気がする。


 でも、俺たちももうすっかり旅慣れたためか、3日目の夕方にはドスシウダの西門に到着することができた。




 ドスシウダに着いたら、例によって、まず宿屋に行って、と思っていたら――


「ちょっと買い物してからでもいい? プルンの材料と果物がほしいのよ」


「ん? いいよ。今のうちに買って冷やしとくわけだね」


「そうなの」




 あれを作るつもりだろう。モカに連れられて材料を買いに行くことに。都市の真ん中にある円形状のお店がたくさんあるエリアで、材料と果物を探す。


「まださくらんぼはないよな」


「そうね。ヤマったらさくらんぼ好きなのね」


「いやあ、プルンと合わせるならさくらんぼのイメージが強すぎて……」


「うふふっ。この時期だから…… みかんがおいしいわよね。干し柿もあるわね。イチゴはさすがに露地物しかないのかな。売ってないわね」


「ハウス栽培はさすがにないってことか」


「りんごもないのね。あれはこの辺ではもともと生えてなかったからかな」


「そうか。流通だけじゃなくて、作物も違うのか……」



 この世界にいると、俺たちの世界がいかに便利なのかがよく分かる。売っているおいしそうなみかんやプルンの材料などを買って、宿屋に行った。





◇


 部屋に入ると、プリンに氷を補充してもらい、プルンの材料を冷やしておく。そのあとは、例によってモカが長風呂を楽しんでくるのをしばらく待ってから、明日のことを相談し始めた。



「やっぱり明日はまずボコ隊長のところだよな?」


「そうね。並行世界研究所のこととか教えてもらえるといいわね。でも、モミジさんも教えてくれたから新しい情報はないかもしれないわ。それでも、単純に久しぶりにボコ隊長に会いたいわね」




 俺たちとは違い、何やらプリンが難しそうな顔をしている。


「ねえねえ、1つ気にしていることがあるノ」


「ん? なあに?」


「その研究所に行ったら、モミジさんのお姉さんか、お姉さんの知り合いと戦うかもしれないノ?」




「私たちは戦うつもりはないけど、そうなる可能性はあるわね。それに、たぶんモミジさんのお姉さん本人の可能性が1番高いわよ」


「でも、私、モミジさんのお姉さんも、お姉さんの知り合いも斬りたくないノ……」


「もちろん斬るつもりなんて絶対ないからな。ケガさせるのも俺は嫌なんだから」


「よかったノ。でも、どうやったらいいノ? ボコ隊長との手合わせみたいに、模擬戦じゃないと思うノ」




 実に鋭い指摘だ。どうしようか……


「プリンの言うとおりだわ…… どうやって、相手をケガさせずに勝つかが大事ね。向こうが真剣に戦ってくる状態で」


「ユキさんに間に入ってもらうのもありかもだけど、俺たちは会ったことないしな…… そうだ! ボコ隊長に言って訓練場を使わせてもらうか。俺たちで模擬戦して、やり方を考えるってのはどう?」


「それいいと思うノ!」

「私もいいと思うプイ」


「私もそれがいいと思うわ。うまくいけばキメラ相手にも使える方策が見つかるかもしれないし」



 ドスシウダの訓練場が1番慣れ親しんでいる気がするし、いい場所で気付くことができた。





◇


 次の日、衛兵施設に向かった。途中で催事場の前を通り、少し気になったが、それはあとでいいだろう。



 衛兵施設の入り口で守衛に特別衛兵隊員証を見せて声をかける。


「おはようございます。お久しぶりです。今日はボコ隊長いらっしゃいますか?」


「おはようございますワン! おかえりなさいませワン。ボコ隊長は隊長室にいらっしゃると思いますワン」


「ありがとうございます」




 ドスシウダの衛兵施設は久しぶりだが、どこも似た衛兵施設なので、久しぶり感が全くしない。迷わず隊長室にたどり着いた。


(トントン)


「どうぞワン」


「おはよう。久しぶり! ボコ隊長」


「ワン! 久しぶりワン! 元気そうでよかったワン。こっちに座るワン」




 いつものようにソファに座った。


「ドスシウダは特に変わりないかな?」


「大丈夫ワン。キメラも落ち着いているワン」


「そっか、ならよかった」


「今回は何か用事があってドスシウダに戻ってきたワン?」


「もともとは北に行くついでにボコ隊長に会いに寄ろうって思ってただけなんだけど、途中でいろいろあってね。少し聞きたいことと、お願い事があるんだ。な、モカ」


 いつものようにモカに話を振った。



「そうなのよ。私たちがフューラスタードに行ったときに研究所の人がケガして休んでたことがあったんだけど、しばらくしたら北のほうに向かったって聞いたの。でも、そっちに研究所なんかあったかなって思ってリコ隊長に聞いたら、ボコ隊長なら分かるかもって教えてくれたの」


「そうだったのかワン。フューラスタードの北かワン……」


「たしかに聞いたことあるワン。あまり人が行かないところに研究所があって、たまに研究者の人が行き来してるはずワン。ドスシウダに来ずに直接エーンスタットに行く人も多いと思うけど、途中で休憩したり用事があったりしてドスシウダに寄る人もいるワン」




「やっぱりそうなのね。そう言えば、レイシュトにいるユキさんって知ってる?」


「ユキさんって、あの有名なユキさんのことかワン?」


「たぶん合ってるわ。私たち、ユキさんの親友のリアさんと仲良しなの。でも、ユキさんには会ったことがなくて、いつか会いたいなって思ってるの」


「忙しい人だと思うからなかなか会えないかもワン」


「そうなのよ。ここに来る前にもレイシュトに行ったんだけど、リアさんがユキさんは北のほうに行ってるって言ってて。もしかしたら、そこの研究所にでも行ったのかしら」




 ボコ隊長が考えている。


「ワゥン…… あ、そう言えば随分前にユキさんがドスシウダに来たって聞いた気がするワン。でも、随分前だワン。1カ月か2カ月くらい経っていると思うワン」


「そうなのね。ユキさんがいつから出かけてるかはリアさんに聞かなかったわ…… うーん。研究所は遠いから往復するのに時間かかるし、それに向こうで研究でもしてるのかしらね」


「そうだと思うワン。普通は移動回数をできるだけ減らすワン。みんなみたいに強くなければそうするのが安全だからワン」


「なるほど、納得だわ」




「じゃあ、モルジクとか行った帰りにでも、そっちに行ってみるか」


「そうね。それが1番近そうね」


「もし、その間にユキさんが来たら何か伝えといたほうがいいかワン?」


「そこまでしなくていいわ。私たちはユキさんには会ったことないわけだし」


「分かったワン。それがお願い事なのかと思ったけど違うのかワン。じゃあ、お願い事って何ワン?」




「お願い事はもっと単純で、訓練場を使わせてほしいなって」


「もちろんいいワン。みんなは特別衛兵隊員証を持ってるワン。何も問題ないワン」


「ありがとう。でも、みんなに見られるとちょっとなって思って。私たち、前来たときよりも強くなっているし……」


「それはすごいワン! ……たしかに衛兵たちには刺激的すぎるかもしれないワン。分かったワン。みんなが訓練しているときは訓練場の鍵を中から閉めておくといいワン」


「ありがとう」




「いつ使うワン?」


「空いているときならいつでもいいわ。今からでも」


「今日は訓練の予定がないから使っていいワン」




「じゃあ、さっそくどうかしら? みんなはいい?」


「モカがいいならいいよ」

「「問題ないプイ(ノ)」」


「じゃ、今から使わせてもらうわ」


「分かったワン。衛兵には伝えておくから気にしないで使ってほしいワン」


「ありがとう」





◇


 隊長室を出て、訓練場に来た俺たち。内鍵を閉めておく。これで、いろんなコネクトを使っても安心だ。


「さて、これで安心して模擬戦ができるけど、問題はどうやって、ケガもさせずに勝つかだな」


「そうなのよね」


「武器を使うのは難しいノ。小太刀だと斬っちゃうノ」

「メイスでも、当たると痛いと思うプイ」


「俺やモカの武器も同じだな。それに、プリンが使うなら木刀だとしても当たったらケガすると思うな」


「そうナノ。だから、手合わせのときはいつも寸止めナノ」




「うーん。勝ち方はともかく、どうなったら負けたって思ってもらえるかしら?」


「圧倒的に強いとか?」


「それをどうやって見せるプイ?」


「全部攻撃かわすとかはどうナノ?」


「あきらめてくれなければ、いつまでも攻撃は終わらないわね」




「あっ、それに、研究所の護衛っぽい人が5、6人もいるんだよな?」


「そうだったわ。私とヤマが最初に会った女の人以外は戦ってくると思うわ」


「その女の人がモミジさんのお姉さんプイ?」


「たぶんね」




「その人と一緒に動きの速い男の人もいたんだ」


「風を使う人ナノね?」


「たしかにそうかもな。あのときはあっさり縛られたからな」


「あっ、ヤマ、その時のロープ持ってない?」


「ん? これ?」




 インベントリからロープを出した。


「でも、焼き切っちゃったからな……」


「その紐で縛るプイ?」


「それがいいかなって思ったんだけど、2人くらいまでしか縛れないわね」




 これは思ったより難しいな……


「うーん。岩とか氷じゃ縛れないもんな。水や土だって」


「それに紐で縛れたとしても、仲間に切られたらそれまでよ」


「切れないものが要る?」


「たぶんそうね」





 とりあえずインベントリから最初に使っていたロングソードを出してみた。


「少なくともこのロングソードで斬れないものだよな。岩とか?」


「水晶ってどのくらい硬いノ?」


「うーん。こするだけなら水晶のほうが硬いと思うわ。でも、たたく衝撃には耐えられないんじゃないかしら? 岩なら剣だと壊せないと思うわ」


「とりあえず水晶の壁を作ってみて、壊せないか試してみる?」


「ちょっと待って。武器のほうが壊れるかもしれないわ。その武器はあとで返さなきゃいけないでしょ? だから、何本か別のものを買ってきましょうよ」


「それもそうだな」





◇


 一旦、衛兵施設を出て武器屋に行くことにした。武器を買うのは初めてだ。衛兵施設なら都市の真ん中の円形状のエリアに向かうと目の前に武器屋があった。


 前も見たことがあった量産品の剣などを何本か購入した。意外と色々な種類があったが、壊れるかどうか分かればいいから、種類を揃えることにはあまりこだわらずに購入した。


 ついでにどこかで役に立ちそうな木刀も買っておいた。





◇


 戻ってきて、色々試し始めた。


 まずは水晶だ。透明だから、壁を作ってもお互い見える利点は捨てがたいからだ。


 だが、モカはあまり乗り気じゃなさそうだ。難しいと分かっているのだろうか。



「まあ、一応やってみるわね」


(ドン)


 水晶の板というか壁を出してもらった。それに対して買ってきた剣で斬ってみる。


(よいしょっ!)

(ガン!)


「かたっ! 全然斬れないじゃん! 剣のほうが悪くなっちゃったっぽいな」


「そうよ。水晶は硬いの」


「じゃあ、これなら――」

「でも、メイスで叩いてみて」




「ん? クルルやってみて」


「分かったプイ」



 買ってきたメイスでクルルが叩いてみる。


(ブン!)

(パリン!)


「えっ! 割れた……」


「やっぱりそうよね。水晶は硬いけど靭性が高いわけじゃないのよ」


「へ?」


「要するに、傷付けるのは大変だけど、割るのはできるということよ。ダイヤモンドだってそうよ。こうやって割れるとかえってケガしそうで危ないわよね」



(スッ)



 破片が危ないので、消しておいた。



「そうなのか…… じゃあ、割れにくいのは?」


「なんだったかしら。ヒスイとかサファイアとかだったかしら。まあ、岩のほうが簡単だわよ」


「出してみるプイ」



(ドン!)



 剣とメイスで攻撃してみる。


(ヒュッ ブン!)

(ガン! ガン!)


「これならたしかに斬れないけどな。岩は重いしなあ。武器は壊れるし、岩の壁で囲っちゃったら中が見えないじゃん。相手は怖くなって余計に反発しないかな?」


「そうよね。話を聞いてもらうことが1番の目的よね」



 もっと考える必要がありそうだ。


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