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第69話 リアさん情報

 お菓子屋さんにきた目的を思い出した俺たちは、またお店の奥に行く。


「何か買い忘れですノ?」


「いや、お菓子じゃなくて、少し教えてほしいことがあって」


「モカ様のためなら、何なりとお申し付けくださいノ!」




「そんな大げさなものじゃないわ。私たち研究所の人に会いたいというか、研究者と仲のよいネコ人のお友達に会いたいの。でもその研究者の人が家に帰っているときは忙しそうだから、研究所にお仕事に行っている空いている時間に誘おうと思っているの」


「なるほどナノ」


「だけど、研究所ってみんないつ仕事しているか分からないし、もし知っていたら教えてもらえないかなって」


「難しいですノ…… この辺にはあまり研究者の人たちは来ないですノ。あっ、でも、今日とか明日あたりは休みの人が多くて、この辺にも来るかもしれないノ。そのネコ人の方のお名前は何ですノ?」


「リアさんよ。髪の長いきれいなネコ人よ」




「ナ!? リアさんってあのリアさんですノ? ユキ様夫婦と仲の良いネコ人ですノ?」


「そうよ! 知っていたのね」


「もちろんナノ。レイシュトでユキ様のことを知らない人はほとんどいないですノ。たしかにユキ様たちならいつ研究所に行っててもおかしくないかもナノ……」


「そうなのよ」


「あっ、でもユキ様なら今はレイシュトにいらっしゃらないと思いますノ。用事があって遠いところに行くらしく、護衛の方数人とお菓子を買っていかれましたノ」



「えっ? そうなんですか? 遠くなんですね……」



「そうみたいナノ。場所までは分からないノ……」


「テルさんやリアさんは?」


「テル様やリアさんはご一緒じゃなかったノ。テル様は基本毎日研究所に行ってると思いますノ。前にユキ様がいらっしゃったときにプイプイ言っていたノ」



 プイプイ言うのはモル人だけだけど、あまり家に帰らないと愚痴っていたということかな。



「そうなのね。じゃあ、遠慮なくリアさんに会えそうね」


「そうだと思いますノ」





◇


 お菓子屋さんを出て、リアさんたちが住む北西のほうに向かう。



「ユキさんはどこに行ったのかしらね」


「遠くか…… たぶんキメラ研究所っていうことはないよな」


「遠いとは思うけど、聞いた雰囲気だけだとなんか違う気がするわよね」


「やっぱり北の方のあそこかな」


「そんな気がするわよね。まあ、研究者なんだから、行ってもおかしくはないわよね」




「リアさんに聞けば分かるかな」


「でも、あっちのほうって、ユイさんたちが殺されたほうよ。心配かけまいと言わないかもしれないわ」


「その可能性はあるな。でも、何かあったときにどっち行ってるか分からないとみんな困るから、何かしらは伝えるんじゃないかな?」


「たしかに、そうね……」




 少し不安に思いながら向かう。


 前は南北を貫く大通りを研究所に向かって進んだが、どうせ最後に西に行くことが分かっているし、なんとなく不安だから、違う道を行ってみることに。つまり、先に西に行ってから北上する。


 西のほうに行くと、催事場みたいなものが南側あり、周囲がにぎやかだ。さらに進むと集合住宅のような感じの家々が並ぶのが正面に見えてきた。レイシュトの人口はそれなりに多そうという感じが前からしていたが、ここに大勢住んでいたようだ。


 集合住宅のそばを北上すると、こっちにも商店街があった。こちらの商店街も活気がある。


 売られているいろいろなものに目を奪われていると声をかけられた。



「もしかして、ヤマ様ですかニャ?」


「えっ? あっ、リアさん!」


「やっぱりそうニャ。お久しぶりですニャ」




 なんとリアさんとばったり会うことができた。


 リアさんに気付いてもらえなければ、そのまますれ違いで家に行ってしまうところだった。驚いているとモカが話をつないでくれた。



「ちょうどよかったわ。久しぶりにリアさんとお話したいと思って、リアさんたちのお家にでも伺おうとしてたところだったの」


「そうだったのですかニャ。今、ユキ様はお出かけしてるし、テル様も研究所に行っているけど、大丈夫かニャ?」


「大丈夫ですよ。久しぶりにレイシュトに来たのでリアさんとお話したかっただけですから」


「うれしいニャ。何かお昼ご飯でも食べながらお話しますかニャ。おいしいお店があるニャ」


「いいですね!」



 商店街の中にある食事処に入った。広々していて、個室もあるレストランという感じの場所だった。料理からすると、ステーキ屋さんと言ったほうが適切かもしれないが。


 個室を取って、ステーキを食べながら、話を始める。が、思ってたより肉がおいしい!


「うぉっ、このお肉おいしいな! 何肉なんだろう?」


「たぶんブタウシだと思うプイ」


「ブタウシって何回か食べたことあるけど、ここまでおいしかったっけ?」


「それだけここの料理人の腕がいいってことよ」


「ブタウシなら、ひき肉にしたらハンバーグもいけるかな?」


「あっ、そうかもしれないわね!」



 モカのレシピがまた増えるかもな。だが、あまりのおいしさで本来話すはずのことを置いてけぼりにしていたことに今さら気付いた。


 しかたないから話の方向性を修正しよう。



「そういえば、キメラって攻撃的なものから、こんなにおいしいものまでいるんだよな」


「そうよね。モミジさんも言ってたじゃない。強いもの同士が合わさったものと、おいしいキメラに大別されるって」


「ニャ? ヤマ様たちはモミジさんとも知り合いなんですニャ?」



「最近、トライオラシで仲良くなったんだよ。研究所のこともいろいろ教えてもらったんだよ」


「そうなのよ。キメラ研究所のことも教えてくれて、それで、キメラにはそういう分類があるって」


「そうだったのニャ。モミジさんも優秀な研究者ニャ。たしかモミジさんのお姉さんとユキ様が仲良しニャ」




 新しい情報だ!



「モミジさんにお姉さんがいらっしゃったんですね」


「今、ちょうどお姉さんがいる研究所にユキさんが行ってるはずニャ」


「ん? キメラ研究所じゃないとすると、もっと遠いところ?」


「そうニャ。北の方に、なんだっけニャ。そうそう、ヘーコー世界研究所っていうのがあるらしいニャ。ユイ様たちが殺されたところに近いからってテル様も心配してたニャ」


「そうなんですね。今度私たちもそっちのほうに行って様子見てこようかしら」


「研究所の中にまでは入れないかもしれないけど、そばでユキ様たちが困っていたら助けてあげてほしいニャ」


「もちろんよ」



「並行世界研究所って何を研究しているのかしらね。私みたいに料理を研究しているわけじゃないでしょうし」


「私も全然分からないニャ。そもそもユキ様たちは頭が良すぎて話している内容がよく分からないニャ」


「なんかすごく分かる気がするよ。俺たちもモカの頭の回転が速すぎて話している内容が分からないことがたまにあるよ」


「「そうプイ(ナノ)!」」



「そうかしら? あとでゆっくり説明してるじゃない」


「そう言えばそうかもな…… 簡単にして教えてくれている感じだな」


「モカさんはすごいニャ。ユキ様とテル様が研究の話をしているときは完全に2人の世界ニャ」


「仲良しなんですね」


「そうニャ」




「今回はユキさんだけで行かれたんですね?」


「テル様はこっちで研究したいことがあったみたいニャ」


「テルさんも優秀な研究者なんでしょうね。どんなこと研究しているのかしらね」


「優秀な研究者だと思うニャ。でもそばにいるのに何を研究しているかはさっぱり分かんないニャ」




「リアさんと俺は一緒だな!」


「そうなのニャ!」



 変なところで意気投合してしまった。




「ところでモミジさんのお姉さんってどんな人? モミジさんに似ているのかしら?」


「似てるニャ。ただ、なんか目のところに透明なもの付けてるニャ」


「ん? 眼鏡のことかしら?」


「そんな感じの名前だったニャ」




 これはドンピシャの可能性が高そうだな…… 先にモミジさんと仲良くなったのが吉と出るか凶と出るか。


「モミジさんはいい人だったから、お姉さんもいい人なんでしょうね」


「ユキ様と仲良しだし、間違いないニャ」


「ならなおさら会ってみたいわね」


「どうせ北の方に行く予定だから行ってみるか。ひょっとして、そこってエーンスタットからフューラスタードに行くほうの道を行った先かな? 前、そっちに行ったっていう研究者の人の話を聞いたんだよ」


「あっ、たぶんそうニャ」


「そうかあ。遠いな…… まあ、モルジクに行くついでと思えばいいか」


「そうプイ」




「でも、そんなほうに研究所があるとか、あまり知られていないんじゃない? これまであまり聞いたことないわ。そういうことが書いた本とかがあるわけじゃないみたいだし」


「そうかもニャ。私はユキ様から聞いただけニャ。そういえば、本はレイシュトには結構あるらしいニャ。でも、謎の文字で書かれてて読めないから、大事に保管しているだけみたいニャ」


「研究所の中にあるの?」




「研究所の中にもいっぱいあるらしいニャ。でも、研究所の外にもあるニャ。行ってみたいかニャ?」


「行ってみたいわ。私たちでも見られるの?」


「大丈夫ニャ。単なる昔のものとして飾られているだけだからニャ。管理している人はネコ人の知り合いだから、ヤマ様たちの頼みなら見せてくれると思うニャ」




 またもや、予想外の情報だ。どんな本かは分からないけど、何か知らないことが分かるかもしれない。


 そのあとは、モカプルンの話で盛り上がりながら、食事を楽しんだ。





◇


「お腹もいっぱいになったし、そろそろ本があるところに行くかニャ。本があるのは、私たちの家のすぐそばニャ」


「うれしいけど、リアさんは大丈夫なの? 用事あったんじゃないの?」


「もともとおいしいご飯が食べたくて来ただけだから大丈夫ニャ」


「そうだったのね。一緒に食べられてよかったわ」




 リアさんに連れられて、リアさんたちの家のほうに向かって北上した。もうすぐリアさんの家、というところで右に曲がった。曲がった先を少し行ったところの右側の建物にリアさんが入っていった。


「ここニャ」


「リアさんたちの家からすごく近いわね」


「そうなのニャ。近いからユキ様はたまに来ているみたいニャ」




 なるほど。来ているのはただ単に近いだけじゃないかもしれないが。


 中に入ると、奥の方にネコ人がいた。


「ニャ? リアちゃんニャ。こんにちはニャ」


「こんにちはニャ。今日はお友達と神様を連れてきたニャ。本を見たいらしいニャ」


「神様ニャ? ま、まさか、ユミ様…… じゃないのニャ?」




 先に言われてしまったのでしかたなくお守りを見せた。


「たぶん俺のことかな…… これをゲンタからもらったんだよ」


「ニャ! 本当に神様ニャ! また神様に会えるなんて感激ニャ!」


 このお守りの威力はほんとすごい。今度ガトアルデに行ったらネコ人ホイホイを追加で作ろうと心に決める俺。


「こちらニャ。どうぞニャ」



 本がある場所まで案内してくれた。これはすごい。そこには想像以上にたくさん本が並んでいた。



「わぁ、これは図書館ね」


「トショカンって、そう言えばユミ様も昔そう言っていた気がするニャ。やっぱり神様たちの言う事は同じなのかニャ」



 リアさんがユミさんの話をしてくれた。


「リアちゃん、この方も神様なのかニャ?」


「知らなかったのかニャ?」

「モカは『ネコ人の神様』じゃなくて『お菓子の神様』プイ」

「そうナノ」


「ニャ! まさか『モカプルン』のモカさんなのかニャ! やっぱり神様たちの言う事は同じなんだニャア」



 なんか変な納得のされ方をしてしまった。


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