第54話 迷路の終着点
道を戻り、左右に分岐があるドームに戻ってきた。
おそらく、右奥に行けば、最初の部屋から見て左側のドームに通じているのだろう。わざわざ迷路を全探索する必要はないだろう。
「あっちは行かなくていいよな」
「とりあえずはいいんじゃないかしら? 宝箱があるわけじゃないし」
「そういうのがあるといいプイね」
「野菜とかが入っているとうれしいノ」
「そうね。オシャレな服とかアクセサリーとかが入っていてもいいわよね」
「「そうプイ(ナノ)」」
何かちょっと宝箱を勘違いしているかもしれないが、3人ともお茶目スイッチが入って楽しそうだ。
「そうだよな。まあ、ここを作った人がそういうのを用意してくれなかったのは残念だな」
「私たちが作るときはそういうのを置きましょうね」
「え? あ…… そうだな」
お茶目スイッチ全開かと思いきや、意外とモカは本気かもしれない……
とにかく、今は奥に進もう。
さらに左奥に行き、元のドームに戻った。
元のドームの右奥にはクルル人形が置いてある。そっちが入り口のほうだ。だから、左側の通路が進むべき道だ。
「左側に行くんだよな」
「そうね。あっちが最初のところから見て、右奥になるわ」
モカは図を見せて説明してくれた。みんな理解したところで、先に進むことにした。
次のドームもキメラはいなかったが、また道が右側と正面にあった。
ただ、このドームに来るまでの道が左に曲がっていた。モカはちゃんとそれを理解しており、図に書き込んでいた。
プリン人形を入り口に置きつつ、モカに聞く。
「なあ、奥のほうって、右の道だよな?」
「ヤマの言う通りよ。そろそろ最奥に近いと思うんだけど」
「なるほど。じゃあ、この次のドームはキラキラ部屋かな」
「可能性は結構高いと思うわよ」
「じゃあ、行くか」
「うん」
「「行くプイ(ノ)」」
最奥と思われるほうに俺たちは進んだ。
◇
予想通り、この先にあるドーム状の部屋はキラキラしてそうだ。
部屋に入る前に、モカが中をそっとのぞき見ている。
「やっぱりキメラはいるのね…… あれは、ゾウ……トラかしら?」
「俺にも見せて。 ……たしかにゾウトラだな。大きいな……」
「第4施設はクマゾウという感じだけど、今度のはゾウトラという感じよね。ゾウの攻撃力を上げたキメラという感じだわ」
「そうだな。ゾウだと斬るのが大変だよな。やっぱり落とし穴かな?」
「いや、トラが混じっているなら出てきちゃうかしら?」
「そうだな。落とし穴に落とすのと同時に岩攻撃もしないとダメだな」
「あいつのコネクトは何プイ?」
「最悪なことに土っぽいわ。土の山がいくつかあるわ」
(やっぱり…… フラグだと思ったよ……)
「ん? ヤマどうした?」
「いや、モカの予感は当たるなあって思ってさ」
「あ…… まさかフラグだったかしら」
「おっ、気付いたみたいだね」
「……まあ、しかたないわ」
ようやく気付したモカだが、プリンは前向きだった。
「ここに来る前にいろいろ考えられたからいいと思うノ」
「そうね。私とプリンは基本的に支援にまわらないと危険だわ。風で、ヤマとクルルを護るのよ」
「そうだな。武器はあまり効かなさそうだし、それがいいかもな」
「最後は落とし穴を使うとして、そこまでどうする?」
「水と放電が効けば1番安全よね」
「じゃあ、そのチャンスをみんなで作る感じだな」
「俺たち自身がぬれないように気を付けよう」
「どうしても短期決戦になるわね」
「向こうのほうがどう見ても体力があるからな。時間が経てば経つほど、不利になるだろうな」
意を決してキラキラしたドーム状の部屋に入った。
ゾウトラはすぐにこちらに気付いた。まだ距離はあるが油断はできない。距離がありすぎるとさすがに戦いにくいために、徐々に距離を詰めていく。
先制攻撃をしてきたのはゾウトラのほうだった。
(ダダダダッ!)
その巨大な身体からは信じられない速さで突っ込んできた。
迫力満点だ。このまま突っ込んでも回避されることは予測しているだろう。何をしてくるか…… 俺たちは互いの距離を少し取って構えた。
(ドン! ドン!)
「ナ! 壁を作られたノ!」
「そう来たか。クルル、特に上に気を付けよう!」
「分かったプイ!」
(ドゴン!)
(ヒューッ!)
遠くで壁が崩れる音とともに風で回避する音が聞こえる。モカかプリンだが、音の感じだと1番遠いモカだろう。
(ピカッ!)
(パォ!)
(ヒューッ、スタッ)
「あっ、モカ、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。プリンとクルルとの間の壁の一部を消して」
「そうか!」
(スッ! スッ!)
人が通れるだけの隙間を作り、4人でまとまることができた。
「来るわよ。今は逆に4人まとまっているのを狙われるかもしれないわ」
「上ナノ!」
(ヒューッ! ヒューッ!)
(ドサッ!)
モカとプリンのダブル風で4人とも後ろに回避した。
危なく生き埋めにされるところだった。敢えて後ろに回避して、回避したことに気付かれにくくしたが、向こうはゾウトラだ。においですぐにバレるはずだ。
「プリン。なんとか鼻を斬れないかな」
「隙を作らないと難しいノ」
(ダダダダッ! ドン! ダダダダッ! ドン!)
すごい音とともに2つあった土壁を突っ切ってゾウトラが登場した。
(ドドド! ドドド!)
(ヒューッ)
プリンが氷を、クルルが岩を出して応戦した。モカは一旦横に離れた。おそらく目を狙うつもりだろう。
(バリン!)
(ガン!)
ゾウトラは氷や岩をあっさりはねのけた。2人が飛ばせる大きさの氷や岩では勝負にならない。
だが、ゾウトラの気をそらすのには役に立ったようだ。
「行けっ!」
珍しくモカの叫び声だ。
(ピカッ!)
(パォーン!)
絞った光がゾウトラの右目に当たる。右目に大ダメージを与えたようだ。
「プリン。俺をあいつの右側に飛ばしてくれ!」
「まかせてナノ!」
「クルル、水だ!」
「行くプイ!」
(ビューッ!)
(ザバッ)
「しまった!」
クルルの上に巨大な土の塊が出現する! クルルではとてもかわせない!
(ヒューッ!)
「危なかったわね、クルル」
「ありがとうプイ」
さすがモカだ。
先回りしてクルルに飛びつき一緒にかわしてくれて助かった。
なら俺のやることは1つだ。
(ビリビリ!)
(ビクビク!)
(パォ、パォーン!)
さすがに気絶はしないようだ。だが、かなり効いたようだ。
「これでどうだ! クルル、行くぞ!」
「プイ!」
(スッ)
(パ、パォ!?)
(……ドゴォーン!)
(ガァン!)
(パ……)
見事に落とし穴に落とし、その上から岩の攻撃を放つことに成功した。だが、油断はできない。
「クルル。もう1発行くぞ! モカ、俺を落とし穴の中が見える高さまで飛ばして」
「分かったわ。プリン。みんなの防護をお願い」
「分かったノ」
(ヒューッ)
俺が飛び上がった直後だった。
「ナッ!」
「うそっ!? 無理よ! こんなの!」
「プイィ!」
「みんな動くな! 俺に任せろ!」
超巨大な土の塊が4人を完全に覆う広さで上空に出現した!
みんな俺を信じて止まってくれた。俺は4人の真上にだけ、急いで穴をあける。
(スッスッスッスッ)
(ドスゥゥン!)
巨大な土の塊が落ち、衝撃で地面が揺れているような感じだ。
なんとか対処できた今がチャンスだ!
「クルル!」
「行くプイ!」
クルルが岩を出す直前、クマゾウの様子が見えた。クマゾウの上の岩をどかさないと大きなダメージは与えられなさそうだ。
覚悟を決めて岩をどかす。
(スッ)
(パォ!?)
「いけっ!」
(ドゴォーン!)
(……ガァン!)
「……ふぅ」
岩がどいた瞬間、クマゾウは動こうとしたが、その前に岩を俺のコネクトで思い切りぶつけた。その上からクルルが出した岩がゆっくりと落ちて当たった。
(ヒューッ、スタッ)
モカの風で俺はゆっくりと着地した。
おそらく勝負あっただろう。
プリンが様子を見に行った。
「……今度は大丈夫だと思うノ」
「プリンが吸収してくれないか? 風で出られるし、万一のとき、1番よけられる確率が高いのはプリンだから」
「いいノ?」
「どうせみんな後から最大まで上げるから気にしないでいいわよ」
「分かったノ」
(ヒューッ)
(……ヒューッ、スタッ)
プリンが吸収して戻ってきた。
無事に倒せたようだ。
「じゃあ、埋めるな」
「うん」
(ドサッ)
(スッスッスッスッスッスッ……)
周囲に大量にある土もついでに消しておこう。それにしてもすごい量の土だ。
「なんとか無事に倒せたな。さすがに最後の土は焦ったな……」
「そうね。さすがにあれはヤマ魔法無しだと打つ手なしだったわよ……」
「そうプイ」
「あれは私も逃げ場が無かったノ」
「あれを使わせないか、そもそもあそこまで強くしちゃダメってことね」
今まで俺たちが戦った中でおそらく1番強かったキメラを無事に倒し、まだ少し興奮が収まらない感じだ。
だが、もう、最奥はすぐそこだ。気持ちを落ち着けて進むことにしよう。
「……じゃあ、奥に進もうか」
「そうしましょう」
「「そうプイ(ナノ)」」
◇
奥に進むといつものユリの模様の扉があった。
この扉はいつ見ても傷1つない。あれだけのキメラのそばにいてもだ。
そのため、もしキメラが寝ててくれたり、気付かれない間にここに入れてしまえば安全かも、と少し思った。実際は、あの広いドーム状の部屋に入った瞬間に気付かれてしまうわけだから、とても無理なわけだが。
いつものように腕輪を当てて、中に入った。
中の様子は他の施設とほとんど変わらないのはここも同じだった。
「よく来ました。護り人たちよ」
いつものように声をかけられた。ここではどんな話が聞けるだろうか。
「こんにちは。あの、ここではどんなことを教えていただけるのでしょうか?」
「私に託された情報は一言で言えば、歴史です。長いですが聞きますか?」
「……ちょっと待っててください」
珍しくモカがストップをかけた。
「長いみたいだから、先に能力向上させてみない? もう夕方に近そうだし、場合によっては途中でキャンプして日をまたぐかもしれないし」
「なるほどな。俺たちはさっきの戦いで結構疲れたし、落ち着いて話を聞くのもいいかもな」
「そうなのよ。すみません、先に能力向上させていただきますので、少し待っててください」
「分かりました」
ここでできることを機械に触れて調べた。
分かっていたことだが、ここは『第5施設』だ。5つ目の施設になり、レベル等の上限がさらに上がった。
違う部分は以下だった。
◆◆◆
■AI細胞増加(増加後の最大スロット数30)
■AI細胞への登録
脳サポート機能(それぞれ最大レベル10)
コネクト能力向上(それぞれ最大レベル5)
コネクト接続先(なし)
◆◆◆
「ここにはコネクト接続先はないのですね」
「はい。できた当初は『火』を登録しようとしましたが、危険過ぎるため、登録をしなかったと記録されています」
「なるほど。まあ、火は強すぎますよね」
「はい。後ほど歴史をお教えすれば理解できると思います」
「分かりました」
「じゃあ、能力を上げるか」
さて、どこまで上げられるかな。
結果的に今は以下まで上げられた。あとで何日か鍛える必要がありそうだ。
◆◆◆
(ヤマ)
現在スロット数26
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で30までは増やせません
スロット登録内容
解析不能1
放電1
思考速度4
動体視力5
反射神経5
形状生成能力5
放出能力5
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
土
水
◆◆◆
◆◆◆
(モカ)
現在スロット数26
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で30までは増やせません
スロット登録内容
水晶1
思考速度8
動体視力2
反射神経5
形状生成能力5
放出能力5
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
光
風
◆◆◆
◆◆◆
(クルル)
現在スロット数26
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で30までは増やせません
スロット登録内容
水1
思考速度2
動体視力8
反射神経5
形状生成能力5
放出能力5
護りのアクセサリーコネクト登録(最大1)
岩
◆◆◆
◆◆◆
(プリン)
現在スロット数28
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で30までは増やせません
スロット登録内容
風1
思考速度3
動体視力4
反射神経10
形状生成能力5
放出能力5
護りのアクセサリーコネクト登録(最大1)
氷
◆◆◆
ついでに武器も全員新しくした。
武器は見た目がさらに良くなった気がするが、やはり1番は握った時の色の違いだ。
今度のは薄っすら橙色になった。レベル5の武器ということだろう。
護りのコートもこれまでの施設と同じように塊が大きいものがあったため交換した。
あとは、機械から話を聞くことにしよう。




