第44話 洞窟探索
洞窟を慎重に進んだ。
このフューラスタードそばの洞窟は広く、道も複雑だ。迷わないようにしないといけない。
「道が複雑だよな。何か迷わないですむいい方法ないかな?」
「そうよね。目印があればいいかしら」
「ヤマが出した土で人形作って置いておくとかが面白いノ」
「いいわね!」
「まあ、人形じゃなくてもいいけど、たしかにそれが良さそうだな。インベントリからものを出しておくのももったいないなって思ってたんだ」
試しに、水と土を出し、硬めの泥にしてみた。それをこねて、小さな目印をいくつか作った。
「かわいいわね。さすがヤマね。いつもながら器用だわ」
「プリン人形だプイ!」
「ん? クルル人形もあるよ」
「プイ!」
「かわいいノ」
「モカ人形はないプイ?」
「いやあ、人間だと特徴つかむのが難しくて……」
「そうよね……」
「これはモカ人形を作ると愛情込めすぎて置いておけなくなるからプイね」
「絶対そうナノ」
「なぜ、そうなる……」
「なるほどね!」
なぜかモカがうれしそうに納得している……
「それに2種類作ったのにはわけがあって、交互に置いていきたいんだ。連続して見つけたら間違えたって分かるだろ? で、次に進む方向に片方の耳を向けると」
「それはいい考えね。でも、帰ることを考えたら、来た方向を指したほうがいいんじゃない?」
「たしかに…… そうしよう」
まずはプリン人形の片耳を倒して、入り口のほうを向ける。これで大丈夫だ。
「うん。良さそうね。かわいいし。じゃあ、先に進みましょう」
先に進んだところで道が分かれていた。
分かれているところにクルル人形を置き、来た方向の耳を立てた。モル人は耳が垂れているからだ。
こんな感じでどんどん進んでいくことにした。
◇
分かれ道をしばらく進むと何やら音が聞こえてきた。
「ん? 川?」
「洞窟の中に川があるのね」
「ってことは、洞窟の外にいたシカワニも出るよな」
「そういうことみたいね。流れる音で水面の音が聞こえないから大変ね」
「そうナノ」
「水の中までは良く見えないプイ」
「こういうときはエサ作戦だな」
「そうね。ヤマ、よろしく」
キメラ肉を上流から流すことに。
(ポイッ…… ポチャッ)
(ザバッ!)
「出たわよ! えっ、違う! カバ系よ。カバサイだわ」
「ついにカバ系まで出たか…… 強そうだから気を付けよう」
「そうね。でも、鱗は無いから武器でも斬れそうよ」
「そうナノ。けど、油断せずに行くノ。いざというときはヤマ魔法にしたほうがいいノ」
「そうしましょう。ヤマとクルル、私とプリンで組んで攻撃するのがいいわね」
カバサイはサイの角が生えたカバという感じの見た目だ。カバもサイも草食のイメージがあるけど、キメラ肉になぜか反応したようだ。縄張り意識かな?
そんなことより、カバだけでも厄介なのに、角が生えたため、危険度が増しているほうが重要だ。
(ダダダダッ!)
こちらがほとんど考える間もなく突進してきた。
「来たわよ!」
まずは4人が散って、攻撃機会をうかがうことに。
カバサイはプリンのほうに向かうことに決めたようだ。プリンはいきなり居合抜きを使うことはせず、氷を放った。
(ドドドッ!)
(ズザーッ!)
それに対して、いきなり強烈な水鉄砲で反撃してきた。
カバサイの放った水鉄砲が、プリンが飛ばした氷ごと迫る!
(サッ!)
プリンはギリギリのところで、横に大きく回避して、カバサイの突進コースからも回避した。
カバサイのコネクトが水と分かったことで、クルルは水は使わず、岩の弾丸を撃ち込むことにしたようだ。
(ドドドッ!)
横からの弾丸だったこともあり、脇腹にあたり、多少は傷がついたようだ。だが、すぐにクルルのほうに向き、また突進を始めてきた。
(くるっ! ダダダダッ!)
あれだとクルルが回避するのは難しいかもしれない。モカと目が合った。
モカが光を使おうとしたとき――
(ズザーッ)
(ヒューッ)
今度はモカに向けて水鉄砲がさく裂した。カバサイの視野は広いようだ。なんとかモカも横っ跳びで回避した。
そのままの勢いでクルルに突っ込んできている。
しかたない。落とし穴しかない。
(ダダダダッ!)
(スッ!)
(ブーッ!)
やはりこれはハマってくれた。驚きの声を出していた。
「クルル! あいつの真上に大きな岩を出すんだ!」
「プイ!」
(……ドゴォーン!)
(ガァン!)
重力だけで勝てるとは思えないため、俺のコネクトでもう一個岩を出して隕石のように急降下させた。そのあと、元の岩も落ち、岩同士が衝突する音が響き渡った。
「みんな大丈夫か?」
「うん、なんとか。あいつは?」
「プリン。音はするかな?」
(ピクッ)
「しないノ。様子を見てみるノ」
「気を付けて。クルルとヤマはいつでももう一発いけるようにして」
「「もちろん(プイ)」」
プリンがそろりそろりと近づき様子を見ている。反応からしてどうやら倒しているようだ。
「大丈夫ナノ。クルル、こっちナノ」
プリンがクルルを1番安全そうなところに誘導した。
「風で降ろすから、吸収するといいノ。何かあれば助けるノ」
「ありがとうプイ」
(ヒューッ)
(……コクリ)
(……ヒューッ)
無事に吸収できたようだ。クルルが戻ってきた。
「たぶんだけど、1発目で倒せてると思うプイ。だけど、2発目があったほうがこういう相手は安心プイ」
「なるほどな。たしかにダメ押しが大事かもしれないな。サル系とかは特に気を付けよう」
「そうね」
「それにしても、あれだけ重さがある相手だと岩や氷も小さいものじゃ効かないな」
「そうナノ。居合抜きを出すのも難しいノ」
「うまくプリンが横から行けないと難しいかな。でも、モカの光はそれでも防がれたよな」
「速かったわよね。ヤマ魔法がなかったら、結構危なかったと思うわよ」
「そうプイ。逃げ回ってプリンが居合抜きができるようにするしかなかったプイ」
「なるほどな。逃げ回る作戦もありか……」
「風が使える私とプリンはともかく、ヤマとクルルは危険よ。キメラってみんな足速いわよ」
「……たしかに、追いつかれたら終わりだよな」
まあ、とりあえずは落とし穴とか岩とかが通用するから安全に戦えている感じだな。
そう思い、先に進むことにした。
「上流に行くのかな?」
「方向的にはそうね。下流はたぶん海につながってるわね。あっちから上れそうよ」
川の脇のところがかなりきつい傾斜になっている。ただ、なんとか上れそうだ。
「その前に上が安全か見るノ」
「うん、お願い」
(ヒューッ)
プリンが真っすぐ跳び上がり確認している。
「大丈夫そうだから先に上って見張るノ」
(ヒューッ、スタッ)
プリンはそのまま風の力で上まで行った。
「ここから見張ってるから上ってきていいノ」
「落ちそうになったときに下から風を送れるように私が最後にするわ」
「うん、ありがとう」
◇
全員が無事に上ると、さらに道が続いていた。
この道から見ると水面は下のほうにあるから、川からいきなり襲われる心配はなさそうだ。
「水面が下にあるということは、湖の水面よりも上にいるのかな?」
「うーん、必ずしもそうじゃないと思うわ。海面よりは上でしょうけど」
「なるほど、じゃあ、このまま結構長く進むかそれなりの角度で下るかどっちかってところか」
「そうね。湖の水面より下の堆積物あたりを目指すならそうなるわね」
そのまま進むと、道は少し曲がりくねったり分かれたりしながら、ゆっくりと下っていった。俺の予想は両方とも当たっているとも、両方とも外れているとも言えそうだ……
「そろそろ湖のそばに来ても良さそうだわ。随分とキメラが少ないわね」
「……そうだな。まさかな……」
「どうしたプイ?」
「……1度少し戻らないか、少しだけ」
「なるほど、分かったわ。挟み撃ちされる危険性を考えているのね」
「うん、そうなんだよ」
「「なるほどナノ(プイ)!」」
この先に強いキメラがいるとして、そのときに後ろから別のキメラに来られたら大変だ。ここまでしばらくキメラに会っていないから、たまたますれ違って、今俺たちの少し後ろにいる、ということがありそうなのだ。
戻りながら、プリンに確認してもらうことに。
「とりあえず、プリン。変な音とか聞こえないか?」
(ピクッ、ピクッ!)
「ヤマ、大正解ナノ。何か少し離れたところにいそうナノ」
「どんな音かしら?」
「何かを食べている音ナノ。たぶん、キメラがキメラを食べているノ」
「前もそういうことあったプイね」
「あれかな。こっちに逃げてきたところを捕食された感じかな」
「そうかもね。とりあえず、後ろのキメラは倒しておかないと危なすぎるわ」
「行こう」
気配を消してゆっくりと戻ると、少し狭い幅の道のところにキメラの姿が見えた。たてがみのあるクマだ。
小声で相談を始めた。
「あれは、どう見てもクマライだな」
「ここはそんなに広くないから、首を斬りつけるのが1番良さそうね。首がたてがみで見にくいけど」
「たしかに横に広がりにくいな。クマ系ということは…… 岩とかを転がしてきたらどうする?」
「ヤマが利用したあとに、こっちにくるやつを消すとかどう?」
「なるほどな。正面に来たらそうしてみるか。まあ、挟める可能性は低いから打撃だけになるけどな。あとは王道の居合抜きだな」
「そうね。打撃でひるんだところで一気に居合抜きがいいわ」
「分かったノ」
「じゃあ、私は水や岩で向こうのコネクトを誘えばいいプイね」
「そうしましょうか。私が良いところで光で視界を奪うわ」
「腕力は向こうが明らかに上だから、短期決戦勝負で行こう」
(……サッ!)
(ドン!)
まずはクルルがクマライの真上に大きな岩を出した。これで片がつくなら楽なのだが、さすがのクマライは一瞬でかわした。
(グゥー!)
食べていたところを攻撃されたから怒っているようだ。
(ズバババン!)
(ドドドッ!)
(サササササッ!)
今度はクルルの水とプリンの氷の合わせ技だ。だが、クマライは器用にかわした。
そうか。俺もモカとの合わせ技があった。モカも思い出したようだ。目で合図し、集中力を高めて水の刃を発動させた。
(ササササッ!)
(スパン!)
これも見事な反射神経でよけたり、弾いたりするクマライだが、水の刃のうち1つが、クマライの尻尾を斬り飛ばした。
(グァー!)
(ゴロゴロ!)
ものすごく怒っているようだ。ついに岩攻撃をしてきた。
巨大な岩だ。これを活用しても直接当てると吹っ飛ぶだけで、逆に居合抜きができなくなりそうだ。
となると、プリンと反対側の肩あたりに当ててひるませるのが良いだろう。
プリンに目配せし、発動させることに。
(いけっ!)
(バキッ!)
(グァッ!)
クマライの肩が砕ける音がした。あとはこっちにくる岩を消さなければ!
(スッ)
(ピカッ!)
(グァー!)
(ヒュッ!)
(……ドサッ)
(グ……)
(……ドォン!)
居合抜きが無事に発動し――
(ん? 音が多い?)
よく見ると、大きな岩がトドメを刺していた。
「居合抜きでたぶん倒せていたプイ。ただ、声が聞こえた気がしたから、念のため岩を落としたプイ」
「正解だと思うわ。私もクマライが倒れたあと、うめいたのが聞こえたわ」
「私もナノ。首は斬れたから放っといても死んだと思うけど、死ぬ前に反撃されたかもしれないノ」
「そうだな。油断してケガするのは嫌だもんな」
「えへへ、プイ」
「あっ、そうプイ。今回はヤマが吸収するのがいいプイ。私の岩はこの洞窟からすると十分大きいプイ。それよりヤマの岩を飛ばす速さと当て所が大事プイ」
「そうよね。今回、うまく肩を狙ったわね」
「吹っ飛ばれると困るからな。プリンに斬ってもらえるように狙ったんだ」
「ヤマの器用さは普通じゃないプイ」
「ふふっ、そうね。昔からヤマは器用なのよ」
次も当てられるように俺が吸収しておくことにした。
これで後ろから挟み撃ちされる危険性が減った俺たちは奥に向かうことにした。
◇
先ほど戻った場所からさらに奥に進んだ。
遠くにキラキラしたエリアが見えてきた。そろそろ最奥だ。徐々に広くなる。ここからは音を立てないように慎重に進む。
そっと先をのぞいたモカが一旦下がるよう合図してきた。
合図を受けて、一旦この場を離れた。
しばらく戻ったところで、小声でモカが言ってきた。
「大きいわ。あれはきっとクマゾウよ」
(なんだその強そうな男みたいな名前は……)
「えっ? 鼻の長いクマ?」
「うーん。ゾウみたいに大きくて、足が太くて、耳が大きくて、見るからに皮膚も分厚そうで、鼻も長いのに、クマみたいな牙もあるし、手足の爪も鋭いの。しかも私が見たときは壁の方に向かって立ち上がってたわ」
「聞くだけで強そうなキメラだな。大体ゾウって刀で斬れるのかな?」
「少しは斬れるとは思うけど、一撃では無理だわ」
「ねえ、水の刃を、ヤマとモカ、クルルと私で1度に2つ出すのはどうナノ? 斬り倒せなくとも、皮膚にたくさん斬り傷をつけたら、刀も入りやすくなると思うノ」
「いいと思うわ。水や氷で気を引いたあとに合わせ技で行く感じね。あとは、向こうは怒るだろうけど、プリンが鼻を斬り落とせるかが勝負の分かれ目よ。ゾウの鼻は特別だから。鼻があるうちは首への攻撃は難しい気がするわ」
「トドメはどうするプイ?」
「……ゾウなら落とし穴以外にないわ。麻酔とかがあればいいのにね。落とし穴に落としたあと、岩と氷で攻撃ね」
「なあ、いきなり落とすのはダメかな。それにクマゾウなら向こうも岩を使うかもしれないよな?」
「そうね。でも、向こうのコネクトが分かるまでは危ないわよ。万一、風だと落とし穴は効かないわよ。プリンとクルルとヤマで巨大な岩や氷を当てるしかなくなるんだから」
「そうか。まあ、風以外だとして落とし穴に落とすのはいいけど、その後俺たちが攻撃しているときにこっちにも岩が降ってくると危ないよな」
「たしかにそうね。横にかわせるならいいけど、かわせないならヤマ魔法で消すしかないわ」
「だよな。俺が岩を勢いよく落とすのと、みんなを護るのと、どちらがいいか、だよな。俺としてはみんなを護るのが優先なんだが……」
「悩ましいわね。たぶん落とし穴に落とした後の1発目だけヤマで、残りは私たちでやるしかないわね。細かい岩ならかわすか弾いて、大きな逃げられないものはヤマに護ってもらう感じね」
「だな。ああいう、すぐに死ななさそうなキメラは最後が1番怖いよな」
「気を付けて行きましょう」
大体の作戦ができたため、いよいよ、奥に向かうことにした。
【お知らせ】
第1話の冒頭に少し加筆してプロローグとして独立させました。
引き続き本作をよろしくお願いいたします。




