第21話 ドラゴン!?
意を決して、キメラの肉を水たまりに投げた。
(バサッ!)
すごい音がして、キメラが飛び出し肉をひと飲みにした。デカい。デカすぎる……
「なんナノ、あれ。大きすぎるノ」
「羽根が鳥っぽいだけで、完全にドラゴンって感じね」
向こうもこちらを敵と認識したようだ。空に飛び上がった。と思ったらいきなりモカに攻撃をしかけてきた。
(速い!)
「モカ、あぶないノ!」
(ビューッ!)
「うわっ!」
(ブン!)
プリンの機転で風でモカを吹き飛ばした。吹き飛ばされたモカはクルルのそばに転がった。おかげで、間一髪、爪攻撃をかわせた。
「大丈夫プイ?」
「大丈夫よ。ありがと、プリン!」
今度はこちらからすぐに攻撃しなくては。俺が考えているうちにクルルが動く。
「まずは水で行くプイ!」
(ズバババン!)
絞ったたくさんの水の弾丸をクルルが放った。それを器用にかわしたり、分厚い皮膚で難なく受け止めるワシワニ。それと同時に、一部の水が凍ったか、あるいは氷が出たように見えた!
「やっぱり氷よ!」
「反応を確かめてみるノ」
(ヒュッ!)
(カン!)
プリンの居合抜きが爪で防がれた。プリンの動きがちゃんと見えているようだ。
「あぶないプイ!」
(ビュン!)
(サッ)
「ナ! イタタタ……」
氷の刃がプリンを襲う! すばやく飛び退いたおかげでかすり傷のようだ。
「大丈夫プイ?」
「護りのコートのおかげナノ! 軽い切り傷ですんだノ」
そういうことか! 護りのコートを貫くほど危険な攻撃なようだ。
「氷を気を付ければ何とかついていけそうナノ。だから、私が爪とかを抑えておく隙に何とか攻撃してほしいノ」
そう言うとプリンは飛び出した。
(カン! カン! カン!)
見事な速度で小太刀と爪などがやり合う。たまにワシワニの皮膚に当たるものの、皮膚が硬く分厚いため、攻撃はあまり効いていないようだ。
「クルルとヤマは羽根と後ろ足を狙って!」
「「おう(プイ)」」
(ズバババン!)
(ドドドドッ!)
水と土の塊でワシワニに攻撃した。
ワシワニはプリンの攻撃を全て受け止めつつ、あごで土の塊を砕き、羽根を器用に動かして水をやり過ごす。強い!
だが、気配を消していたモカの賢さのほうが上だ。
(ピカッ!)
(キィーッ!)
俺たちも驚くほどの光の筋がワシワニの目を焼く。しかも2本の光の筋で両目をだ!
それを見たプリンが羽根を斬り落としにかかる。しかし、クルルが慌てて止めた。
「プリン! よけるプイ!」
「ナ!」
(ヒューッ!)
クルルの言葉にとっさに反応するプリン。プリンが飛び退いたところに巨大な氷が降ってきた。
ほぼ同時にモカのところにも降ってきた!
「モカ、動くな!」
(スッ!)
「え? きゃっ!」
(ドン!)
俺は細いモカだけが落ちる落とし穴をあけた。とても横に逃げられないほど大きな氷だったからだ。モカは氷でふたされた格好だが大丈夫なはずだ。
さらに、大きな氷が2つになったことで、俺も頑張ってみる。
「いけっ! ダブル氷だ! プリン、念のため当たったあとに羽根を狙ってくれ!」
(ドォーン!)
(キィーッ!)
2つの巨大氷で挟んだことでようやくまともなダメージを与えられたようだ。
次の瞬間――
(ヒュッ!)
(ドサッ)
「羽根を落としたノ! でもまだ生きてるノ!」
「クルル、水で動きを封じててくれ! プリンは俺をあいつの真上に飛ばしてくれ!」
「「まかせるプイ(ノ)」」
(ズバババン!)
水の弾丸がたくさん飛んでいくが、ワシワニは倒れかかりながらも、腕で攻撃をいなしている。
その隙に俺はプリンの風に吹き飛ばされ、ワシワニの真上に。そして、ロングソードをしっかり構え、落ちる勢いを使ってワシワニの頭を貫いた。
(ブスッ!)
(……ドサッ)
「ふぅ…… これでなんとか勝ったかな…… モカ! モカ! 大丈夫か?」
(ダイジョウブヨォ)
くぐもった声が聞こえてきた。
俺はモカの真上の氷のふたを消し飛ばし、モカを落とし穴から助け出した。
「なんとか勝ったよ! 今回はモカとプリンが押しつぶされそうだったな」
「プリンはともかく、私はとてもかわせなかったわ。落とし穴に落ちたのなんて小学生以来だけど助かったわ!」
「ふふっ。そうだ! プリンの傷は大丈夫か?」
「大丈夫ナノ。血はもう止まってるし、護りのコートも修復されているみたいナノ」
「そうか、一応、傷薬つけといたほうがいいかな」
俺はインベントリから傷薬を出してプリンに渡した。
「ありがとうナノ」
「それにしても今回もギリギリだったな。みんなそれぞれの能力をほとんど使い切ったし、あと少し何か起きてたら誰か死んでたかもな」
「そうね。でも、氷を消さずに私を落とし穴に落としたのは、氷を2つ使うためでしょ? 2つ無いと厳しいくらいギリギリだったってことね」
「さすが、気付いてたか。挟まないとダメージにならなさそうだったんだよ」
「ふふっ。そういえば、水たまりの中にはもういないわよね?」
「えっ…… 怖いこと言うなよ…… 一応、水を消しておこう」
ソロリソロリと水を消したが、キメラはいなかった。これで安心して進めるな。
「ふう。で、奥はどっちだ、と。えっ、水たまりの向こうだったのか……」
「知らずに水に近づいたら完全にやられるパターンね……」
「こわすぎプイ……」
「跳んで越えても、あのキメラは飛べるから食らいつかれるノ……」
「……」
「……なあ、羽根が見えてたのって、実はたまたまなんじゃないか?」
「私もそんな気がすごくしてきたわ…… まあ、いいじゃない。運も実力のうちよ。勝ったんだから」
「そうだな! みんな無事だから問題なし!」
「ふふふっ、じゃあ、奥にいきましょう。きっと施設があるわ」
◇
奥まで行くと、思っていたとおり扉があった。
腕輪をかざして中に入ると、中は第1施設とほぼ同じ見た目だった。
そこで、奥の機械のところまで行くと、やはり機械が声をかけてきた。
「よく来ました。護り人たちよ。珍しく4人なのですね」
「はい。私たちは訳あって4人で護り人になっています。仲良しですし」
「そうナノ。師匠たちに負けないくらい仲良しナノ」
「? ああ、あなたはあのウサ人の弟子なのですね。期待していますよ」
「頑張るノ!」
「ところで、第1施設では色々教えていただきましたが、ここでも何か教えていただけるのですか?」
「もちろんです。私はそのためにここにいます」
「あなたたちは仲が良さそうなので、気付かなかったかもしれませんが、護りのアクセサリーは1人1つしか身に着けられません。それは、護りのアクセサリーと生体AIチップの結合力のためです」
「あっ、1つしか着けられないのは知っています。試したことはありませんが」
「そうでしたか。腕輪は人間しか着けられないのですが、その理由も知っていますか?」
「それは知りません。なぜでしょうか?」
「亜人を含むキメラは、キメラの状態を維持するために、AI細胞がエネルギー変換細胞を使って結合力を高めています。そして、護りのアクセサリーを身に着けるのにも結合力が必要なのです。特に腕輪では2つのスロットを維持するために結合力がたくさん必要なのです。そのため、亜人が腕輪を身に着けようとすると、結合力が足らなくなり、AI細胞が脳に働きかけてやめさせようとするのです」
「人間も2つ以上身に着けようとすると、同じように結合力不足が発生するため、結果的にみんな1人1つしか身に着けられないのです」
「なるほど。どうして結合力を高められるかは謎だけど…… でも、だからキメラは必ず生体AIチップを持っているのですね」
「はい」
「ということは……」
モカがだまった。さすがの俺にも理由が分かった。
「聞いていいプイよ。私もプリンも、もう分かってるプイ」
「えっ?」
「私たち亜人も含めて、キメラは作られた存在ということナノね?」
「そうです」
「「……」」
俺とモカは言葉が出てこなかった。
「もう1つ教えてほしいプイ。どうしてそのことを教えてくれるプイ?」
「護り人として、生体AIチップのことを詳しく知っておく必要があるためです」
「……何から何を護れば良いのでしょうか?」
「残念ながら、それは私も知らないため教えられません。おそらく、4つか5つ施設を訪れた頃に分かるでしょう」
「……」
モカがしょんぼりしている。
「ま、そのうち分かるならいいじゃん。それに、モル人やウサ人を誰かか生み出したとして、別に人間と大して変わらないよ。人間だって、昔カミサマに作られたっていう話もあるじゃん」
「さすがヤマ! それもそうね!」
「それにこんなにかわいいモル人やウサ人なら作りたくなっても不思議じゃないさ。俺は昔からこういう人たちに囲まれていたかったし」
「「プ(ナ)!」」
2人の顔が赤くなっている。ちょっと言い過ぎたかな? でも嘘は全く言ってないから問題ないだろう。
「ふふっ。もうヤマったら、2人とも照れちゃったじゃない」
「ありゃ…… でも、1番かわいいのはモカだからな!」
「もう!」
モカの顔も赤くなる。そして、俺も赤くなっていることだろう。
「やっぱりヤマと一緒に来てよかったノ!」
「そうプイね!」
「「ふふっ」」
和やかな雰囲気になっていた俺たちに、機械が少し呆れた口調で聞いてきた。
「……ところで、あなたたちは何をしに来たのでしょうか? 能力向上とかはしないのでしょうか?」
「あ…… すみません。忘れてました……」
あらためて、ここでできることを機械に触れて調べた。
ここはやはり『第2施設』だ。第1施設とはレベル等の上限が違うようだ。
違う部分は以下だった。
◆◆◆
■AI細胞増加(増加後の最大スロット数6)
■AI細胞への登録
脳サポート機能(それぞれ最大レベル2)
コネクト能力向上(それぞれ最大レベル2)
コネクト接続先(『水』、『風』)
◆◆◆
「なるほど、ここは水と風か。じゃあ、前話したみたいに俺とモカかな」
「そうね。あっ、そうだ。スロット数とかレベルの上限は施設の場所によって異なるのですか? それとも、訪れた施設の数ですか?」
「訪れた数で変わります。施設の機械ごとにAI細胞を進化させる方法がわずかに異なっています。そのため、積み重ね、組み合わせることで、より高く能力を上げられるようになります。訪れる順番では変わりません。訪れる順で変わるのはコネクト接続先を登録できる順だけです」
「なるほど、分かりました」
つまり、どこか良い場所に先に行って一気に上げるとかは無理ということか。そういう仕組みならしょうがない。育てる目的と言っていたし、きっとそれにも意味があるのだろう。
とりあえず聞きたいことは聞けたので、全員の能力向上をした。
今回もキメラをたくさん倒していたので、細胞吸収量は十分だったようだ。全員が今の上限まで一度に上げられた。
結果は以下だ。
◆◆◆
(ヤマ)
現在スロット数6
スロット数は現時点の最大
スロット登録内容
解析不能1
動体視力1
形状生成能力2
放出能力2
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
土
水
◆◆◆
◆◆◆
(モカ)
現在スロット数6
スロット数は現時点の最大
スロット登録内容
思考速度2
形状生成能力2
放出能力2
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
光
風
◆◆◆
◆◆◆
(クルル)
現在スロット数6
スロット数は現時点の最大
スロット登録内容
動体視力1
反射神経1
形状生成能力2
放出能力2
護りのアクセサリーコネクト登録(最大1)
水
◆◆◆
◆◆◆
(プリン)
現在スロット数6
スロット数は現時点の最大
スロット登録内容
動体視力2
反射神経2
形状生成能力1
放出能力1
護りのアクセサリーコネクト登録(最大1)
風
◆◆◆
モカの頭の回転の速さとプリンの攻撃の鋭さがさらに増しそうだ。クルルと俺はコネクト能力が強化された感じだろう。バランスはそのままに、みんなまた強くなった感じだ。
「武器とかも見たいノ!」
「そうだな」
「第1施設よりさらにすごそうな武器に見えるわね。私はこの少し長い短剣、グラディウスって言うんじゃないかしら? これを投げる用を含めて2本にするわ」
「俺はロングソードをより丈夫そうなのにして、ブーメランは刃付きにしよう」
「私は棘付きメイスをより鋭いやつにするプイ。最近あんまり使ってないプイけど」
「私は小太刀をこっちのカッコいいほうにするノ。これ業物に見えるノ」
「なあ、プリンは2本持っていったらどう? 1本はインベントリに入れておいてもいいから」
「どうしてナノ?」
「物理攻撃はプリンが要だからだよ。もし小太刀が折れたときの替えが必要かなって」
「なるほどナノ!」
「替えになるという意味では、俺も太刀にしてみてもいいけど、今はまだ刺したりできるロングソードでいいかな」
もう少し強くなったら武器の種類を変えてみるかな。
さて、次は護りのコートだ、
「護りのコートは同じかな?」
「いや、なんか違わない? こんなに塊大きかったかしら?」
「ほんとナノ。大きいノ」
「細胞の数が多いんだわ。分厚くなれば防御も固くなるわ。こちらに変えたほうが良さそうよ」
「じゃあ、みんな変えるか」
「うん」
護りのコートは意識すれば脱げると言われてはいたが、これまで脱いだことはなく、今回初めて脱いでみた。脱いで横に置いてみると大きさの違いは一目瞭然だった。
そのまま置いていってもいいけど、第1施設にそのうち返したいからインベントリにしまっておこう。
そのあと、新しい護りのコートをみんな身に着けた。
「護りのコートのおかげでプリンは助かったんだよな」
「そうナノ。でも、コートを身に着けていても皮膚まで届いたノ……」
「今度のは分厚いし、細胞数に余裕があるから、必要なところだけ分厚くするとかもできるんじゃないかしら?」
「ナ! なるほどナノ…… 本当ナノ! 試したらすぐできたノ」
「すごいな! 反応さえできれば、より傷を受けにくくなりそうだな」
「そうナノ!」
また俺たちは強くなれたようだ。
まだまだ、解けない謎も多く、むしろ増えていくことのほうが多い気もする。だけど、モカ、クルル、プリンとともに過ごしているこの時は、これまでの人生の中で最も貴重な、宝物のような期間と言える。無理せずにゆっくりと進んでいこう、と決意を新たにした。




