第18話 第1施設再び
話し終わった頃には夕方になっていた。
というのも、クマシカとの戦いを思い出したところで、クルルが号泣し始めてモカに抱きつき離れなくなってしまって、なだめるのに時間がかかったからだ。
「本当にモカがいなかったら私は死んでたプイよぉ」
「ま、それはそうだな。クルルだけじゃなくて、俺もモカがいなけりゃ死んでたさ」
「でも、クルルの水のコネクトがなければ、私たちなんかイノウシの子どもにやられてたわよ?」
「「たしかに!(そうだったプイね!)」」
「プゥプゥッ! 本当に仲良しナノね!」
プリンが珍しくウサギが喜んでる時みたいな声を出した。よほど俺たちのやりとりが面白かったのだろう。
そのあと、プリンが俺たちに聞く。
「ところで、このあとはどこに行くノ?」
「そうね。ドスシウダに行こうと思ってたの。私たちの予想が正しければ、そのそばの洞窟の奥に第2施設とかがあるはずなのよ」
「そうナノね…… でも、今はドスシウダに行けないノよ」
「えっ?」
「ドスシウダに行くためには、橋を渡らないといけないんだけど、今は壊れてて修理中ナノ。もうじき直るって聞いているけど、あと3、4日は通れないと思うノ」
「そうなのね…… どうしようかしら」
橋が直るのを待つ間どうしようかな、と思っていると、プリンが真剣な顔で言い始めた。
「お願いがあるノ。もし時間に余裕があるなら、第1施設に私も連れて行ってほしいノ。みんなの足手まといにならないように同じくらい強くなりたいノ」
「あっ、そうね! それすごくいいアイデアよ! 第1施設に行けば、護りのコートもあるわ。それにあの洞窟なら私たちは戦い方を知っているし」
「クマシカがいなけりゃいいけど、まあ、出たとしても、今度は普通に勝てるかな」
ということで、次の日、元来た道を戻ることにした。
武器とか以外の荷物はインベントリにしまったため、すごく身軽だ。
ちなみにプリンは小太刀を使っていた。ちゃんと見るのは初めての武器だったが、本人曰く、『長いのは使いにくいノ』だそうだ。
途中のキメラを倒したあとは基本的にプリンに吸収させることにした。吸収量が足りないとスロット数を増やせないためだ。ただ、エーンスタットまでは、行きもそうだったがほぼキメラが出なかった。
◇
ほとんど戦う必要もなく2日目の夕方にエーンスタットに着いた。
「久しぶりにエーンスタットに来たノ。変わってなくて良かったノ」
「変わるときもあるの?」
「強いキメラが押し寄せて来たりするとそういうこともあるノ」
「なるほどね。そういう意味では、洞窟の奥の強いキメラを倒したから、しばらくは大丈夫だと思うわよ」
「すごすぎナノ。良かったノ」
「今度はこの西門そばの宿屋に泊まろうか。モカもみんなもお風呂入りたいでしょ? 洞窟に行くのは明日にしよう」
「そうしましょう」
次の日、1泊してリフレッシュしたところで、洞窟に向かった。
以前に比べ身軽だった影響もあり、まだ十分明るいうちに着いた。そのため、とりあえずそのまま進む。
「あっ、ここに出るイノウシとか、トカコウとか、他のところにいる個体より強いから気を付けてね!」
「そうナノね。私はどうしたらよいノ?」
「プリンは風を使えるのよね?」
「そうナノ」
「じゃあ、トカコウみたいに飛ぶ相手には風をぶつけてもらえると助かるわ。これまではクルルの水をぶつけてたの。威力があっていいんだけど、周りが水浸しになるのよね」
「ププッ、たしかにそうプイね。プリンがいると攻撃の幅が広がるプイ」
「その他のキメラは、たぶん風とそんなに相性よくなさそうだから、武器で斬りかかる役目がぴったりだわ。斬るのがこれまでヤマしかいなかったから、特にヤマがコネクトを使わないといけないキメラは大変だったの」
「分かったノ。やってみるノ!」
最初に出てきたのは今回はトカコウだった。
せっかくなので、プリンの風が見たいから、モカが目くらましをした隙に風をぶつけてもらうことにする。
「じゃ、いくわよ」
「行くノ!」
(ピカッ)
(キッ)
いつものように光でひるませた。次の瞬間――
(ビューッ!)
(キキッ!)
トカコウがバランスを崩して吹っ飛んだ。そこに俺がロングソードで翼を斬り裂き勝負あり。余裕だ。
「余裕ね!」
「2人とも強すぎナノ。光もすごいけど、そのロングソードもすごい切れるノね」
「そうだな。あっ、第1施設にいけばプリンの小太刀もいいやつがあった気がするな」
「うん、見た気がするわよ」
「そうナノ? 楽しみナノ!」
プリンが吸収しつつ、近くにいたキメラたちをサクサク倒しながら先に進んだ。
途中で、最初に撤退したサイガメに出会った。
「あれが、最初は私たちも撤退したサイガメよ」
「あんなの勝てないノよ、普通……」
「そうよね。ヤマのコネクトで落とし穴を作る方法でしか私たちも勝てなかったわ。今回はどうする? 今なら光を使っても簡単に倒せると思うけど」
「落とし穴を見たいノ!」
「よし、やってみよう! 落とし穴に落としてひっくり返ったら、小太刀で一気に頭を攻撃するようにな」
「分かったノ」
久しぶりの落とし穴だ。
(よいしょっと)
(スッ! スッ!)
(グォーッ!)
「なんナノそれ! すごすぎるノ! 覚悟するノよ!」
落とし穴作戦に驚きつつも、しっかりとサイガメの頭を斬り落としたプリン。運動神経抜群な感じだ。
「なあ、モカ。プリンって、すごく運動神経良いと思わないか?」
「うん、すごいと思う。たぶん、物理攻撃は私たちの中で最強よ」
「だよな!」
「現時点だと、『解析不能』に加えて攻撃もコネクトも使いこなす器用なヤマ、物理攻撃最強のプリン、水のコネクト最強のクルル、後方支援と作戦立案の私って感じね」
「いい感じの組み合わせプイね!」
サイガメから吸収して、ピョンと落とし穴から跳んで出てきたプリンが驚きながら言う。
「本当にすごいノ。こんな強そうなキメラをこんなにあっさりと普通は倒せないノ…… 師匠たちみたいナノ」
「うーん。たぶんだけど、師匠たちのほうが私たちよりずっと強いわよ」
「ああ、だろうな。施設に行った数が違うだろうな」
「ええ、そうよ」
「だから、私たちも、もっと強くなれるわよ」
「ナ!」
「そうだ、ヤマどうする? このまま奥まで行く? それとも、1回戻って、キャンプしてからにする? 時間かかると暗くなりそうだから」
「1回戻ろう。暗い洞窟内でキメラがどうなるか分かってないから。まだ、護りのコートを身に着けていないプリンに万一のことがあるのは嫌なんだ」
「そうね。そうしましょう」
◇
そのあと、洞窟の外に出たら夕方になっていた。
やはり判断は間違ってなかったようだ。以前キャンプしていたあたりで、インベントリから必要なものを取り出して、キャンプをすることにした。
「町とか都市から離れた場所で、これだけ自由に荷物を使えるのはものすごく便利よね」
「感心してるけど、これ、モカのアイデアなんだからな」
「ふふっ」
「そこのお二人さん、楽しそうにしてるけど、気を付けないとイノウシの肉が焦げるプイよぉ」
「えっ!」
「おっ! それは困る!」
「本当いつも楽しそうナノね。私も幸せな気分になるノ」
お肉を頬張りながらモカが答える。
「(もぐもぐ……)でしょ? 楽しく支え合って、って感じでいいでしょ?」
「すごくいいノ!」
今日も楽しくキャンプした。
◇
次の日、前日と同じようにキメラを倒しつつ、1番奥まで行くことにした。
キラキラしたところの手前で一旦止まって、そっと奥の様子を伺う。
「クマシカはいなさそうプイね」
「そうみたいね」
「さすがにあいつだけは油断できないからな。今のうちに第1施設に行こう」
「そうしましょう」
同じようなキメラが出てくるようになるまでの期間が分かっていないので、こういうところは慎重に行く必要がある。
さて、久しぶりの第1施設だ。
「こんな部屋があるノね……」
「こっちにいらっしゃい。プリンはこの文字読めるかしら?」
「ナ? なんナノこの文字? 初めて見たノ」
「やっぱり読めないか。でも私とヤマが読めるから、大丈夫よ」
俺たちの訪問に気付いた機械が話しかけてきた。
「また、来てくれたのですね。護り人が1人増えたようですね」
「彼女の能力向上もさせてもらって良いですか?」
「もちろんです。説明は要りますか?」
「あっ、もう私から説明したから大丈夫です」
「分かりました。困ったことがあれば聞いてください」
「ありがとうございます。あっ、そうだ。これまでの護り人は皆さん何人くらいで来てましたか?」
「能力向上させるのは人間2人と亜人1人が多いですが、既に能力が高い護り人と一緒に来ることが多いですね。大体5、6人で来ていました」
「7人で来たことはありますか?」
「一度もないですね」
「なるほど……」
機械は淡々と答えてくれた。モカの予想が当たっていそうな答えだった。
一方のプリンは機械とのやりとりに困惑していたが、モカに促されるまま、機械に手を置いた。
すると、今のプリンの状態が表示された。
◆◆◆
現在スロット数1
スロット数は3まで増加可能
スロット登録内容
風1
護りのアクセサリー登録(最大1)
無し
◆◆◆
「ここまで集中的に吸収してきたから、スロットを3まで増やせるわね。じゃあ、どの能力を向上させるか選びましょう」
「そうナノね」
相談しつつ、決めた結果は以下だ。
◆◆◆
現在スロット数3
スロット数は現時点の最大
スロット登録内容
反射神経1
形状生成能力1
放出能力1
護りのアクセサリーコネクト登録(最大1)
風
◆◆◆
プリンらしい選択だ。物理攻撃がさらに強くなりそうだ。そうだ。武器とかも探さなくては。
「プリン、こっちに武器と、護りのコートがあるんだ。おいで」
「ナ! いま行くノ」
武器にまず目が行く。斬れ味良さそうな小太刀があるからだ。
「これすごそうナノ! 軽いし、ものすごく斬れそうナノ!」
「たぶんよく斬れると思うよ。俺のロングソードもそうだったから。あっ、今持ってる小太刀はインベントリにしまっておく?」
「それがいいノ」
「ついでに以前俺たちが置いていったのも一回回収するか」
「それがいいわ。あとで返したいものもあるし」
気付いたらプリンがキョロキョロしている。
「ところで、護りのコートはどれナノ?」
「これよ」
「ナ! なんナノそれ?」
(カン!)
モカがダガーで軽く叩いて硬さを伝えた。
「ナ!」
「こんなに硬いのに、体中を器用に覆って護ってくれるのよ。お風呂に入るときは体の中に溶け込ませればいいし、すごく便利よ」
「そうナノね。どうやって身に着けたらいいノ?」
「肌で直接触れれば大丈夫よ」
「こうナノかな?」
恐る恐るプリンが触れた。
例によって生き物のように動きながらプリンの身体に広がっていった。
「ナ! すごすぎるノ……」
「これで、プリンも私たちと同じ強さよ! 次は第2施設を一緒に目指しましょう!」
「分かったノ!」
帰り道も難なくキメラを退けて、あっという間に洞窟から出てきた。まだまだ明るい時間だったから、一気にエーンスタットまで帰還した。




