第14話 護り人に与えられる力
「『解析不能』って…… どういうことですか?」
「今までになかったことです。何か登録されていますが、何なのかは分かりません。分からないため、削除したり、変更したりできません」
「なるほど…… まあ、これを変えるつもりは無いから別にいいか」
3人分の状況を確認できたところでモカが口を開く。
「ねえ、ヤマ。皆、スロットを3つまで増加できるから、何を登録するか考えないと。特にコネクトの接続先は2人が1つずつしか登録できないわよ」
「私は水があるから、ヤマとモカが登録するといいプイ」
「そうだな。特にモカは絶対登録すべきだな。モカは土と光、どっちがいい?」
「ありがと…… うーん。光……かな」
「いいけど、どうして?」
「説明を見た限り、身体の力そのものを上げるようなことはできそうにないから、武器での攻撃は私よりヤマのほうが適任よ。だから、私はサポートできる力がほしいの。光なら目くらましとかできそうでしょ? それに、ヤマの能力は光より土のほうが断然相性いいと思うの。自分で土を出したり、消したりできるようになるのよ」
「なるほど! そうしようか。他にも施設があるみたいだから、そこでまた別のコネクト接続先が登録できそうだしね」
「そうね。あと、説明からすると、コネクト接続先の登録はアクセサリー側にすべきね。そのほうがスロットを有効に活用できるわ」
「そうだな。クルルの水のコネクトもネックレスに移動すれば良さそうだな。俺のこの解析不能ってやつだけはどうにもならないけど」
「そうするプイ!」
「じゃあ、あとはそれぞれ好きな能力を上げる感じかしら?」
「うーん…… 迷うところだけど、コネクト能力向上はしたほうがいいんじゃないかな? 最後はコネクト能力が頼りになることが多そうだよね」
「たしかにそうね。そうしましょう」
方針は決まった。モカが機械に聞く。
「どうやったら登録とかできますか?」
「先ほどと同じように身体で触れながら、画面を操作するだけでできます」
「なるほど。それなら簡単そうね」
「プ?」
まるで、タブレットを使うような感じで簡単にできそうだ。
だが、俺たちと違ってクルルは戸惑っているようだ。それでようやく気付いた。画面には漢字が使われていたのだ!
「モカ、今気付いたけど、漢字で書いてあるよな、これ」
「あっほんとだ…… すみません。護り人は皆さんこれを読めるのですか?」
「読めない人も多くいます。読める人が読んであげていることが多いです。大体1人か2人だけが読めることが多いですね。以前来た護り人から聞いた話によると、長い年月を経て外では漢字が使われなくなったようですが、護り人の中でだけ伝えられているようです」
「なるほど…… 代々引き継がれているのかしら。だから、直系の人だけが教育されていて読むことができて、残りの人は読めないのかもしれないわ」
「なるほどな。俺たちは俺とモカの2人が読めるから、クルルをサポートしてあげれば問題無しだな」
「そうね」
護り人のことをほんの少しだけ想像できた気がする。
そのあと、登録作業を開始した。最初にモカが試し、次に俺がやり、最後にサポートしながらクルルの登録をした。
結果はこうだ。
◆◆◆
(モカ)
現在スロット数3
スロット数は現時点の最大
スロット登録内容
思考速度1
形状生成能力1
放出能力1
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
光
◆◆◆
◆◆◆
(ヤマ)
現在スロット数3
スロット数は現時点の最大
スロット登録内容
解析不能1
形状生成能力1
放出能力1
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
土
◆◆◆
◆◆◆
(クルル)
現在スロット数3
スロット数は現時点の最大
スロット登録内容
動体視力1
形状生成能力1
放出能力1
護りのアクセサリーコネクト登録(最大1)
水
◆◆◆
「モカの思考速度は分かるけど、クルルはどうして動体視力を選んだんだ?」
「実はモル人はもともと視力があまり良くないプイ。だから動体視力だけでも良くなったらと思ったプイ。 ……ププ? 視力そのものも上がったプイ? ヤマたちがいつもよりはっきり見える気がするプイ!」
「脳の処理をAIがサポートしているようだから、脳で何とかなる部分は良くなるのかしらね。脳内での処理か、目の筋肉操作とかが改善したのかしら?」
「予想外だけど、すごくうれしいプイ!」
目が悪いならメガネをかければいいのに、とメガネっ娘になったクルルを想像してしまった。だけどメガネっ娘だと戦いで不利だろうから助かるな、と効果に感心していると、モカのそばが明るくなった。
「やった! 使えたわ!」
「「おお(プイ)!」」
「これ、暗いところとかすごく便利じゃない? 使いすぎると疲れると思うけど」
「そうね! 洞窟もここみたいに明るいところばかりじゃないと思うし。うふふっ」
モカは本当に嬉しそうだ。
これでもう、足手まといなんて思わなくて済むだろう。俺も喜びに浸っていると、モカがふと思い出したように機械に向かって言う。
「そう言えば、この部屋にある武器とかはどういうものなのですか? 持っていっていいのですか?」
「護り人用の武器と、専用防具である護りのコートですので、好きなものを好きなだけ持っていって構いません。役割が終わったり、より良いものを手に入れたりした後に、これまでの護り人たちはここに戻しに来ていました」
「なるほど。武器は分かるけど、専用防具? 護りのコートってどれのことかしら? それらしいものが見当たらないわね……」
「奥のほうにある透明の塊たちが護りのコートたちです。護りのアクセサリーと同じように細胞でできており、護りのアクセサリーを身に着けている人が肌で直接触れると、身体の表面に広がり、硬い細胞で薄く覆ってくれます。もちろん強力な攻撃は完全には防げませんが、深く切られなければ肌は傷つかないはずですし、切れた部分は自動で修復します」
奥のほうには透明で巨大なわらび餅のような塊があった。きっとこれのことだろう。
「すごいわね! それに腕輪も細胞でできていたなんて」
「ここ以外の施設にも同じように武器などがあることでしょう。残念ながら、ここにあるのは5つの施設の中でもおそらく1番弱い物です。今後も施設を訪れながら、より良いものに交換していくことをおすすめします」
「分かりました。いろいろありがとうございます!」
まず武器を選ぶことにした。
俺は今のロングソードより斬れ味が良さそうなものがあったのでそちらに変えつつ、ブーメランももらっていくことにした。
モカもより良さそうなダガーに交換していた。
クルルは棘付きメイスに交換していた。攻撃力が大幅アップしそうだ。
ただ、武器の名前までは書いていないし、材質も分からないので、とりあえず呼び名は変えないことにした。
「ヤマはブーメランも使うのね?」
「うん。クマシカと戦ったときにロングソードを投げようかと思ったんだけど、長いから投げにくいなと思って。ブーメランなら投げやすいでしょ?」
「なるほど! なら私も投げる用にもう1本ダガーを持っておこうかな」
「いいかもね。腰の両側に身に着けるようにすれば特に邪魔にはならないと思うよ」
さて、次は護りのコートだ。機械が言うように透明な塊がいくつか置いてあるのだが、大きさも色も見た限りでは区別できない。
「この塊ね…… 見た目から強さとかを判断するのは難しいわね……」
そう言いながらモカはダガーで軽く叩いてみる。
(カン!)
「えっ? これものすごく硬いわ!」
見た目からぷにぷにしているのかと想像していたら、実はカチカチだった。
他のものを叩いても同じ感じだった。たぶんここにあるのは同じ性能なのだろう。
「どれでもよさそうな感じね」
「俺もそんな気がする。適当に選ぶか」
「「うん(プイ)」」
モカも同じ意見みたいなので、それぞれ適当なものを選び触れてみることにした。
腕輪を身に着けたときと同じで、触れると生き物のように動き、身体中に広がっていった。細胞なのだから、腕輪もこのように動いて当然だったわけだ。
腕輪と同じく、着けている感覚は全くしないし、見た目にも分からない。護りのコートと名付けられたのは、コーティングみたいになるからだろう。モカが身に着けることを思えば、ごつい鎧じゃなくて良かった。ごつい鎧を着たモカを見てみたい気もしなくはないが。
「これすごいわね…… 叩いたり切ったりしても全然平気だわ。弱いキメラの攻撃なら効かないかもしれないわ。エーンスタットで売っていたものより丈夫そうよ。それでいて動きやすさへの影響が全くないのよ」
ダガーで自分の腕を軽く叩いたり切ったりしながらモカが感心していた。
「でも、わざと攻撃を食らう必要はないから、万一のときの保険って考えるべきだな」
「そうね。ところで、これってどうやって脱ぐのかしら? お風呂入るときに困らないかしら?」
「あ…… たしかに……」
話を聞いていたのか、機械が教えてくれる。
「意識すれば外すことができます。ですが、細胞でできていますので、身体に溶け込ませることもできます。ですので、機械や水に直接触れたいときには、わざわざ外さずに溶け込ませるのがよいでしょう」
「便利ね。たしかに機械には肌で直接触れてって言ってたわね。それに、外すと人目に触れる危険があるから、そういう機能がついているんだわ、きっと。それにしても、腕輪もコートも生体AIチップも全部細胞でできているなんて、すごく生物学が発達しているのね」
「でも、私たちは原理とか何も分かってないプイよ?」
「そっか。そういえば『奇跡の超天才』がいたってクルルが教えてくれたわね」
「そうプイ!」
(よく覚えてるな、そんなこと…… さすがモカだ)
さて、これでここでやるべきことは全部終わったように思う。
「モカ、他に何か気になることある?」
「うーん。もうないかな…… 私たちの前の護り人のことが気になるけど、なんか聞いちゃいけない気がするしね」
モカがそう小声で言った。
それもそうか。俺たちはダブル爺が拾ったものをもらったけど、普通は本来の持ち主から引き継ぐのだろう。
「クルルももう大丈夫かな?」
「大丈夫プイ」
「じゃあ、そろそろ久しぶりにエーンスタットに戻ってゆっくりしますか」
「賛成(プイ)!」
「あっ、帰りもキメラはいるはずだから気を付けようね」
「おっ、そうだった。ワープできるわけじゃなさそうだしな」
◇
俺たちは第1施設から出て、洞窟の外に向かった。
途中でキメラに何体か出会ったが、戦い方が分かっていることに加え、俺たち自身が強くなっているため、余裕を持って倒すことができた。
「もともと倒せたけど、かなり余裕になったな。それにしても、モカの光のコネクトの目くらましってすごく便利だな」
「そうね。思っていたより強い光を出せるから、目をくらませたり、一瞬目を閉じさせたりして隙を作れるのよね」
「使ってみてどう? 疲れる?」
「今のところそんな感じはないかな。キメラを倒すうちに、ヤマも最初よりも疲れなくなっていったわけだし、私は既にその状態なんじゃないかしら」
「なるほどね」
「ヤマの新しいロングソードはどう? ダガーはもともと戦いにはあんまり使ってなかったから比較が難しいの。クルルのは明らかに強くなってるのが見た目で分かるけど」
「そうだな…… 思ってたよりも強くなってる感じがするよ。かなり斬れ味が良いんだよ」
「へえ、それ何が使われているのかしら? さすがに武器に細胞は使ってないと思うけどね。投げる武器もあるわけだし」
「そうだな…… 意外と軽いしな、合金なんだろうけど。クルル分かる?」
「プ? もちろん、分かんないプイ!」
「ふふっ。そんな自信たっぷりに言わなくても……」
最初に洞窟に来たときとは別人のように強くなった俺たちはそのまま余裕をもって洞窟の出口までたどり着いた。
さすがに往復に時間がかかったため、このままエーンスタットに向かうと、着くまでには暗くなってしまいそうだ。そこで、これまでと同じように一旦洞窟のそばでキャンプして、明日、エーンスタットに向かうことにした。
(2026/10/16)
見やすさの改善をしました。内容に変更はありません。




