第129話 ダンジョン探索
第2階層は予想通り水のコネクトを使うキメラしかいないようだ。というより、サイガメしかいない。これだけ同じ種族にしているのには理由がありそうだ。
「なあ、モカ。1種類の種族しかいないのは理由がありそうだよな」
「そうよね。繁殖を考えたのでしょうね。こっちには護り人もいないし」
「なるほど。同じ種族ならここで繁殖できるわけか。食事とか大丈夫なのかな?」
「だから草食動物と混じったキメラしかいないんじゃないかしら? 草とかは洞窟にしてはやたら多いでしょ? 木すら生えているし」
たしかに洞窟というより、草原と言っていいほど、草は生えている。ところどころ木も生えていて、壁と天井がなければ、外とそんなに変わらない気もする。
「なるほど。水は湖の水がどこかから流れているんだろうな。1つの階層が広すぎて確認できていないだけかな」
「そうかもしれないわね。それに雨が少しずつしみてきているのかもしれないし」
うまいこと作ってあるし、キメラのことも考えているようだ。だから明るいのだろう。
「スミロ人は暗くても平気だろうけど、キメラや草木たちは困るよな。だから、明るいんじゃないかな?」
「なるほどね! テンらしい配慮だわ!」
そのあと、第2階層をサイガメに見つからないように歩き回った。第3階層の下りる階段を探しながら。
もちろん、クルル人形もプリン人形を置きつつ進んでいるから帰るときには迷わないはずだ。だが、クルル人形を置いているときにこの先どこまで進むかが気になった。
「なあ、モカ。今日中に第5階層まで行って出口まで戻るのは無理じゃない?」
「そうね。それに、道が分かってても、これだけ階段同士が離れているなら1日で往復するのは大変ね」
「だよな。となると、洞窟の中で泊まらないといけないよな」
「そうね。もう少ししたらどこかの小部屋で泊まりましょう」
「きっと、スミロ人たちはもう少し大人数で来るんだろうな。もちろん、泊まれる準備もしてきて」
「でしょうね。私たちには不要だけど、普通はそうする気がするわね」
◇
階段を探しつつ、休むのにちょうどよい小部屋がないか探しながら進んでいった。
先に見つかったのは、階段だった。不思議とここにもキメラがいた。
「しかたないわね。倒すしかないわ」
「そうだな」
(ザバッ)
(グォ?)
(ビリビリビリビリ!)
(ビクビクッ……)
(ヒュヒュッ! ヒュヒュッ!)
(……ドサッ)
今度は首を引っ込められないよう、気絶方式を選んだ。サイガメもまさか水を普通にかけられるとは思わず油断したようだ。
俺たちは夕方になる前に第3階層まで到達した。
◇
第3階層に下りると、すぐそばに良い感じの小部屋があった。
「ここで休むことにしましょう」
「そうだな。ひょっとして、他の階層も階段を下りたすぐのところにこういうところがあるのかな?」
「うーん。たしかに第2階層のところにもあった気がするわね」
小部屋に入り、中を確認してみた。
もちろん休むための設備があるわけじゃない。ただ、狭い空間があるだけだ。明るさも問題なさそうだ。
とりあえず食事などを済ませたところで、ちょうど薄暗くなってきた。
「やっぱり自然に近くなっているのね」
「そうだよな。じゃないとキメラも生きにくいよ」
「そうみたいね。最初階層化されているときは宝箱でもあるのかと思っちゃったけど、やっぱりテンが作ったところは一味違うわね」
えっ、まさかお茶目スイッチが入る寸前だったのか。だいぶテン世界に慣れて最近はスイッチが入りにくいと思っていたのだが。
驚く俺に気付いたモカに指摘された。
「もう、ヤマだってそんな顔しているけど、ダンジョンみたいって思ったでしょ?」
「バレたか。そうなんだよな。俺たちの発想は同じか」
「もちろんよ」
「ダンジョンって何プイ?」
「知りたいノ」
そのあと俺たちの想像するダンジョンについて説明した。クルルとプリンは興味津々で聞いていた。
「面白そうナノ。たしかに似ている気がするノ」
「私たちにとってはここがダンジョンと思えばいいプイ」
「そうだよな」
「そうね。スミロダンジョンということにしちゃいましょう!」
こういう場所でも楽しく進むのが俺たち流だ。今はモカのお茶目スイッチがしっかりと入っているようだ。
「階段も探さないといけないし、なんなら飲み水がある場所を探すのもいいかもしれないわ。スミロ人は水のコネクトを使えないのよ」
「たしかに。水を得られる場所はそばにありそうだよな」
「そうなのよ。明日が楽しみね!」
「そ、そうだな。とりあえず入り口を岩でふさいでおく? キメラが入って来なくなるから安心だと思うんだけど」
「いいわね」
(ドン!)
クルルが岩でふさいでくれた。これで安心してみんなで寝られそうだ。寝袋を出して、洞窟、もとい、スミロダンジョンで初めて夜を過ごすことにした。
◇
翌日、しっかりと休めた俺たちは第3階層探索に出発した。
(スッ)
もちろん、ちゃんと岩も消しておいた。消さないと出られないから当然ではあるのだが、実は岩を消した直後にキメラが出てこないかヒヤヒヤしていた。実際は、そんなことは起きなかった。
しばらく歩くと、最初にクルルが反応した。
「たぶんキメラがいるプイ」
「たしかに。歩く音がするノ」
2人が気にしている方向からキメラが現れた。
大きいがたぶんニワウマだろう。不思議とここのキメラは全部大きい。
「ニワウマだな。大きいけど」
「そうね。とにかく大きい種族が好きみたいね」
「まあ、大きいスミロ人の鍛錬用だからかな」
「そうね。大きくてもニワウマなら土を使うはずよ」
(ヒヒン!)
(ドドド!)
こっちの様子に気付いたニワウマが向かってきた。土の弾丸とセットだ。
(サッサッサッサッ)
俺たちは軽くかわした。モカは今度は光を使うようだ。
(ピカーン!)
(ボワッ)
(ヒンッ!?)
たてがみを軽く燃やしたのだ。ニワウマは混乱し、走るのをやめたようだ。
(ヒュヒュッ! ヒュヒュッ!)
(……ドサッ)
あっさりと倒すことができた。第3階層でも強さは特に変わらなさそうだ。
「やっぱり強さは変わらないわね。コネクトの種類を網羅するのが目的のようね」
「そうみたいだな。なら今日中には1番奥まで行きたいな」
「そうね」
そのあと、第3階層の階段を探して歩き回った。
途中、ニワウマが群れている空間もあり、そこを避けて大回りしながら歩くなど、意外と時間がかかった。たぶん群れていたところは草が豊富にあるのだろう。みんな草をムシャムシャ食べていた。
第3階層はやはりニワウマばかりが生息していた。
それと、なんとなくだが、各階層の中央にキメラが集まりやすく、階段は端のどこかにあるような配置に思えた。
「階層の真ん中は突っ切らないほうが良さそうなんだな」
「そんな感じね。真ん中はキメラ育成用で、周辺が鍛錬用って感じね。周辺まで出てきた大人のキメラと戦う想定かしら」
「となると、階段を探すには外周を歩けばいいんだよな」
「そんな気がするわ。行ってみましょう」
なんとなく構造が見えた俺たちは外周を足早に歩き始めた。予想通り、外周にはキメラが少なそうだった。
そして、3分の1周を過ぎたあたりで階段を発見した。
今度はキメラはいないようだ。一応、周りを見回して隠れていないか警戒する。
「たまたまいないだけみたいね。普通に草を食べた跡はあるわ。戦った形跡も新しいものはなさそうだし。行きましょうか」
「そうだな」
俺たちはそのまま第4階層に向かった。
◇
第4階層に下りたところには第3階層と同じような小部屋があった。やはり、ここで休む想定なのだろう。
「第4階層は氷かしらね。岩は大体強いキメラが多いから最後じゃないかしら」
「そうだな。休憩は要らないよな?」
「大丈夫よ」
「平気プイ」
「このまま行くノ」
俺たちとっては1階層ごとに休むとかは不要だろう。単純に夕方になったから休むという感じだ。このまま行っても問題なさそうだ。
この階層は氷か。氷を使うキメラは何種類か戦ったことがあるが、そんなにたくさんいた記憶がない。モカもそうみたいだ。
「氷を使うキメラで、草食動物と混じったキメラって、チーシカくらいしか会ったことがないかしら」
「そうだよな。そもそも氷って使うキメラが少ないよな」
「そうね。私たちにとっては何より冷蔵庫に使えるから必須のコネクトなんだけど、戦いという意味では水より硬いけど、岩より軟らかいから、使いにくいのかしら」
「そうナノ。氷だけで倒すのは難しいノ」
「たぶん、氷は水と同じで元々は護り用なのよ。火から護る氷の壁を作ることを想定しているのだと思うわ」
「ん? ということは、この階層はスミロ人にとっては相性が良くないということかな?」
「ここに限らず、全部火とは相性が良くないわ。最初は、火を消したりあおいで方向を変えたりする風。次が、火を消したり熱から護れる水。さっきのがやっぱり火を消せるし壁で防護にも使える土。残っているのは、とにかく冷たくて熱を吸収できる壁を作れる氷と、壁として最強の岩よ」
「そうだよな。元々強いのだろうけど。コネクトに頼らずにキメラに勝てるようにさらに鍛えているのか。その上で最後に岩と対峙するわけか」
「そうね。火のコネクトを使えるとそれに頼りすぎて良くないのかもしれないわね」
いつものように議論しながら第4階層の外周を歩く俺たち。
今回は珍しくキメラが出てこない。大体こういうときはプリンが倒しているが、今回は耳をピクピクさせるものの何かを見つけた雰囲気はない。
その姿を見てモカが立ち止まる。
「プリン。音は何もしないのかしら?」
「何かはいると思うけど、分からないノ。たぶん水の音ナノ」
「においは少ししかしないプイ」
「だとすると、チーシカじゃないわね。カバ系かワニ系か」
「ああ、そう言えば、ワシワニも氷を使ってきたね」
「そうよ。ただ肉食動物の組合せだけどね」
「となると、会ったことのないキメラか」
「十分にあり得るわ。水の音が聞こえるのはどのあたり?」
「あっちナノ」
プリンは階層の中央のほうを指差した。そちらのほうに少し進み、見渡せそうなところからそっとのぞいてみた。
大型のキメラがたくさんいる。洞窟の中だが、広い池のようなものがあって、そこでじっとしている。
あれは……
「あのキメラは会ったことないな。カバウシ? バッファローみたいな角が生えてるな」
「そうね。水に入ってまったりとしているから、気付きにくいわね」
「特に戦う必要もないから、先に進もう」
「そうしましょう。階段のところで会うかもしれないわ」
この階層のキメラが分かったところで、外周を歩き始めた。
今度は半周を超えたところで、ようやく階段が見えてきた。
「キメラがいるノ。草を食べている音が聞こえるノ」
「まあ、そうよね。1度も戦わずには行けないわよね……」
「しかたないから戦うか。きっと氷だよな」
「分からないけど、その可能性が高いわ」
階段のほうに歩くとカバウシも気付いたようだ。氷の塊を上から落としてきた。
(ドン! バリンッ!)
氷は地面に当たると同時に砕けたようだ。俺たちは当然回避している。カバウシは怒って向かってくるようだ。カバ系ということで皮膚は濡れているようだ。
それなら――
(ダダダダッ)
(ビリビリビリビリ!)
(ビクビクッ!)
(ヒュヒュッ! ヒュヒュッ! ヒュヒュッ!)
(……ドサッ)
大きな個体だが、さすがに放電をまともに食らえば気絶してしまうようだ。あっさりと勝負がついた。
「あっ、忘れてたわ。ヤマ。倒したキメラは食べないなら埋めたほうがいいわ」
「あっ、そうか。ここのキメラは草食だった」
(スッ)
(ドン)
(ザザザ)
キメラの下に落とし穴を作り、上から土をかけて埋めた。他の階層のも帰りに埋めていこう。
そのあと、俺たちは階段を進み、第5階層に向かった。




