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第117話 定期任務北方編

 レイシュトで休んだ俺たちは今度は北ルートに向けて出発した。



「他と比べると、ユキさんの家の離れからレイシュトを出るまでの時間が意外と長いよな。今まではそんなこと考えもしなかったけど」


「そうね。さすがに西側の壁を越えて都市から出るのも目立つからしかたないわよね。それでも、フィナルメンシウタットからここまで来るよりはずっと早いわよ」


「まあ、それもそうか」


「今日はドスシウダに向かうノ?」


「そうよ」


「そのあとにエーンスタットに行くプイね?」


「ええ、そうなるわね」



「そこまで行くならついでにカエデさんのとこにも行く? モミジさんの状況を共有してあげてもいいと思うんだけど。キメラ研究所に行ってモミジさんがどこに行ったか分からないと心配すると思うんだよ」


「それいいわね!」

「「いいと思うプイ(ノ)!」」





◇


 その後、レイシュトの中を突っ切って、都市の外に出た。しばらく歩いて、ようやく以前いろいろ試したあたりに来た。


「じゃ、そろそろドスシウダのそばの洞窟まで一気に行きましょう」


「だな」



(ビューッ!)

(バサバサッ!)

(スーッ)



 俺たちは一斉に飛び立った。



「ドスシウダより北のほうは都市の間隔が狭くて、地上から見えにくい飛行経路がないから、高く飛んで移動しましょう」


「そうしよう」


「「分かったプイ(ノ)」」


(ビューッ!)

(バサバサッ)



 フィナルメンシウタットに向かったときくらいの高さまで上げた。


「川に沿って行きましょうか。ドスシウダとラパンの間を通って行けば洞窟のほうに行けるはずよ」


「そうだな。あの川って湖につながっていたんだな」


「そうね。ここからだとそれも見えるわね」


「こんな地形だったノね」


「高く飛ぶといろいろ分かって面白いプイ」


「そうそう、昔説明したことがある地図っていうのは、こうやって高いところから見たような感じでどこに何があるかを絵にしたやつなんだよ」


「ようやくちゃんと分かったプイ!」



 ドスシウダ方面はトライオラシに比べて少し近い。飛んでいるとそれも感覚的に分かりやすい。


 歩いているとキメラの遭遇率や強さの影響も受けるので、ちゃんと分かるのは俺たちくらい強くなってからだ。そういう意味もあって、普通の人は地図を作っても距離感と合わないだろう。でも、将来的には役に立つかもしれない。





◇


 そのあと、周りを見渡しながら、空の旅を楽しんでいるとあっという間に洞窟の上空に着いた。


「じゃあ、洞窟の向こう、ドスシウダから遠いほうの東側から降りましょう」


(スゥーッ)

(スタッ)



 飛び始めてからの時間は短かったが、レイシュトから出るまでにかなり時間がかかっていたため、洞窟のそばでキャンプして明日に備えることにした。




 翌日、洞窟に入った。入ってみて思い出した。この洞窟だけは暗いのだ。モカが今回は迷わずに光をつけた。


「この洞窟だけ暗いのよね」


「光を使うとキメラが寄ってくるかな?」


「いいんじゃない? 別に困りはしないでしょ」


(ヒュヒュッ!)

(……ドサッ)


「見えたほうが楽ナノ」


「そうだよな。ここのキメラは見えにくいのを利用して襲ってくることが多いから、明るい時点で俺たちに有利か」


「そうよ。私たちのほうがずっと強いわけだしね」



 ここの洞窟は暗かったせいもあって、他ではあまり見ないキメラが多かった気がする。フクロウ系とかが特徴的だ。いつかモミジさんに教えてあげたほうが良さそうだ。



 ここは暗さが無くなると進みやすい部類になるため、比較的短時間で1番奥に着いた。それでも倒したキメラの数は多いほうだ。前もそうだったが、とにかくサルコウが多い洞窟だ。たくさん住んでいるのだろうが、倒しすぎないように気を付けよう。



 1番奥にいたキメラは見たことがないキメラだった。


「あれは見たことない気がするけどどうかな?」


「そうね。見た目からすると、フクトラ?」


「そんな感じプイね」


「ここは暗い洞窟だからナノね」


「そうよね。水の中に隠れていない分、私たちには戦いやすいわね」



「目が良さそうだし、反応も早そうだから、ここは光が有効だよな?」


「そうだと思うわ」


 向こうは既に気付いているようで、クルルに急襲してきた。やっぱりフクロウ的にはモルモットとかを狙いたくなるのだろうか……



(ビューッ! ブンブン!)

(サッサッ…… ガン! ヒューッ)



 クルルは爪攻撃をかわし、メイスで爪を叩いたあと風を使って距離を取る。クルルのほうがフクトラよりもずっと動きが速い。


 クルルの攻撃で片方の足の爪はもはや使えなさそうだ。となるとコネクト攻撃に来るだろう。だが、それをさせる必要もないので、攻撃態勢に移る。



(ピカーンッ!)

(ホゥ!)

(ヒュヒュッ! ヒュヒュッ!)

(……ドサッ)



 今回は俺の出番はなかった。もともと定期的に来ている範囲では3人いれば十分攻略できる強さだし、俺たちはそれ以上に強いから、4人で全力を出すシーンはまずなさそうだ。



 このあとは第2施設でのお決まりのやりとりを実施して寝泊まりさせてもらった。時間的には外まで出るのはたやすいが、外でキャンプするより施設内のほうが周りを気にしなくていいからだ。





◇


 翌朝、第2施設をあとにした俺たちはささっと洞窟を出た。


 いつもと違うのは、モカが光を使い続けないといけない都合上、風を使った高速移動のときに、俺がモカをお姫様抱っこをしたことくらいだろう。


 しかたがないことではあるのだが、少し気になったので洞窟から出たあとに軽く聞いてみる。


「なあ、モカって、光と風を同時は無理でも交互に高速で使えるんじゃない?」


「ん? いいじゃない。たまにはこういうのも」


「ちょっとうらやましいプイ」

「そうナノ」


「ほら、みんなもうらやましがってるし」


「うふふっ。みんなも今度やってもらいなよ」


「「そうするプイ(ノ)!」」


「えっ、そっち? ま、まあ、いいけど……」



 やはりモカは単にお姫様抱っこをして欲しかっただけだったようだ。今度クルルとプリンもしてあげよう。差別は良くない。



「じゃあ、次はエーンスタットそばの洞窟だな。あそこは1番最近行ったところだから、1番奥のあたりだけ確認すればいいよな?」


「そうね。行きましょう」


(ビューッ!)

(バサバサッ!)

(ビューッ!)

(バサバサッ!)

(スーッ)



 今度は一気に高い高度まで上った。


 川を越えたあと、モカは少し東回りのルートを選んだ。エーンスタット上空を通らないようにしているためだろう。このまま行くと、湖を越える形になりそうだ。


「モカ、今回も湖越えかな?」


「そうよ。既に高度は高いからこのままで大丈夫だと思うわ」


「森も見えるプイ」


「広いノね」



 北のほうには見渡す限り森が広がっている。左の方に細く森が切れているところがモルジクへの道だろう。森の終わりははっきりとは分からないが、北の方にも山が見えるからそこまでずっと森なのだろう。


 前方にある湖は横長で、その先、東のほうから川が出ている。その先が並行世界研究所のほうになるはずだ。





◇


 周囲を見回しながら飛んでいき、森がどんどん近づき、夕方に近づいた頃には視界いっぱいになり、洞窟の上空に着いた。


(スゥーッ)

(スタッ)


 今回も洞窟の東側から降りた。


 夕方も近いので、洞窟に入るのは明日にした。このあたりは昔ベルが現れた場所でもあるので、自然と気が引き締まる。




 翌日、洞窟の中に入った。


 数カ月前に来たときと特に変わりはなさそうだ。できるだけ戦いを回避しながら足早に奥を目指す。キメラの数はそれなりに多い。試しに戦ってみたが、強さはまだまだだった。



 1番奥まで行くと、今回はサイガメがいた。ここの競走を勝ってきたキメラなのだろう。クマシカはまだ子どもしかいないのかもしれない。そのうちまたここにクマシカが鎮座することもあるのだろう。


「サイガメを見ると最初に撤退したことを思い出すよな」


「そうね。どのキメラが1番強くなっているかは運もあるから、あのときは幸運だったのかもしれないわね」


「というと?」


「クマシカだったら撤退できなかったわよ」


「ああ、なるほど。背を向けたら追ってくるから?」


「そうよ」


「たしかにな。俺たち、結構、運が良かったこと多いよな」


「今思うとそうよね。ギリギリで生き残ったことも多いし」



「普通はそうならないように、強い護り人と一緒に行くしかないってことか。強い護り人がいなくなったら継承できなくなるわけで、そういうときがいつかは来るだろうとテンは予測したわけだよな」


「そうよ。実際にそのときが来たわけだし」



 話していたら向こうに気付かれたようだ…… すぐに突進してきた。途中で水も使い始めた。


(ドドド! ズバババン!)

(サッサッサッサッ)


 俺たちは簡単にかわした。強さ的には最初にあったサイガメより少し強い程度だろうか。周囲が濡れて危ないので俺の放電は使えない。自然とモカの光を使うことでみんなの意識が統一された。


 クルルが岩で行動制限を狙う。俺も土で支援に入る。逃げる方向が見抜かれたキメラに勝ち目はない。


(ドォン! ドンドン)

(ピカーンッ!)

(グォーッ!)

(ヒュヒュッ! ヒュヒュッ! ヒュヒュッ!)

(……ドサッ)



 サイガメは硬いから、これが1番奥に待ち構えていると強くなる前だとやっかいかもしれないと少し思った。あらためて見てみても身体も大きく甲羅も大きい。


 特に甲羅が残ってしまいそうなので、埋めておく。それと岩も消しておく。


(スッスッ)

(ドサッ)



 これで5つすべての洞窟のキメラの強さ調整は完了だ。


 あらためて終わってみると、この定期任務で護り人が殺される可能性は低そうだ。継承できなくなるのを予想したということは、テンはスミロ人の動きまで予想したのだろうか。テンならあり得るかもしれないが。


「キメラたちの強さを考えると、護り人が継承前に先に死ぬって病気とか以外だとあまりないよな。寝ているところをキメラに奇襲されるとかくらいかな? まさかテンはスミロ人の動きを予想したのかな?」


「どうかしらね。1万年も続くと予想してなかったみたいだし、油断したときにキメラに殺されることとかを考えたんじゃないかしら」


「たしかに油断して岩とか食らうと危ないもんな」



 クルルとプリンもそこはそう思うようだ。


「やっぱりヤマ魔法があって消せる私たちが特別なんだと思うプイ」


「そうナノ。普通の護り人より攻撃も護りも手段が多いノ。ヤマ魔法がなかったら私たちもいつも余裕じゃないかもしれないノ」


「そうよね」



 そうか。俺たちは秘策がある分、心に余裕があるんだろうな。今回の定期任務では攻撃には使わずに済んでいるわけだから、ある意味本気を出す前に勝てていると言えそうだ。


「そうか。それもそうだよな。無事に全部回りきったことだし、第1施設で休もうか」


「そうしましょう」



 このあとは第1施設でのお決まりのやりとりと宿泊コースとなった。





◇


 翌朝、第1施設をあとにした俺たちはささっと洞窟を出た。


 このあとは、ちょっと寄り道で、カエデさんたちに会いに並行世界研究所に行こう。ここからなら今日中に着けるのではないだろうか。


「次は並行世界研究所だな。森の上を飛んでいくイメージかな?」


「そうね。森は広いから方向感覚を失わないように注意しましょう」


「そうだな」



(ビューッ!)

(バサバサッ!)

(スーッ)



 今度はそんなに高くない高度で飛び始めた。ここだと近くに都市や町はないから安心だ。




 俺たちは森の上を飛び、東を目指した。


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