第116話 定期任務南方編
フューラスタードそばの洞窟は久しぶりに入ることになる。
入ってみて思い出した。ここにはクルル人形とプリン人形を配置しておいたんだった。
「クルル人形とプリン人形が案内してくれるから楽ちんだな」
「そうね。時間が経っていても崩れていないということは洞窟そのものが安定していたのね」
「ここって前は1番奥に何がいたっけ?」
「前はクマゾウかしら?」
「あっそうだ。強そうな男の名前みたいだと思ったんだった」
「うふふっ、なにそれ。ヤマはそんなこと思っていたのね」
「ヤマらしいプイ」
「のんきナノ」
思い出したことを言ったら笑われてしまった。
たしかにあのときの俺たちには結構な強敵だったはずだから、のんきなことを考えていたものだ。
「たしかあのときはクマゾウの岩の攻撃を俺とクルルはかわしきれなかったんじゃなかったっけ?」
「そうプイ。護りのコートのおかげでなんとか大丈夫だったプイ」
「今ならよけられそうだよな」
「大丈夫プイ!」
「あのときより私たちはずっと強いし、向こうはそこまでまだ育っていないはずだから、余裕はあるはずよ。もちろん油断はダメだけどね」
「そうだな。岩につぶされたらかなり危険だからな」
前ときのことを思い出しつつ、襲ってくる多くのキメラを瞬殺しながら奥に進んだ。
途中、洞窟内の川のところでは、今回はキメラ肉を使わずに普通に歩いていく。
(バサッ!)
(ビリビリビリビリ!)
(ヒュヒュッ!)
(……ドサッ)
いきなり襲ってはくるものの、濡れているから放電がものすごくよく効く。そのあと居合抜きを放てば簡単に仕留められた。
その後の川の傾斜上りも今度はみんな一瞬で風を使って上った。そうやって、簡単に1番奥まで来た。
やっぱりここにいたのはクマゾウだった。
「やっぱりここはクマゾウか。さすがに他のキメラじゃ、ここのボスに成り上がれないんだな」
「そうね。前の個体よりは年長っぽいから、実は前のボスとか、ボス手前のキメラだったとかなのかもしれないわね」
「そうか。じゃあ油断大敵だな」
「そういうことね」
(ドドドン!)
(ヒュッ)
(ヒュッ)
岩の弾丸がクルルとプリンに向かって飛んで来たが2人とも簡単に風を使ってよけた。岩ではよけられると思ったのかクマゾウは突進してくるようだ。前も突進された気がする。
(ドドドドドドッ!)
(ザバッ)
(パォン!?)
クルルに水をかけられたクマゾウは少し戸惑っている。効かない攻撃と思ったのだろう。その油断はまだまだ賢さが足りないことを意味している。
(ビリビリビリビリ!)
(パ、パォ……)
(ヒュヒュッ! ヒュヒュッ! ヒュヒュッ!)
(……ドサッ)
放電でほぼ気絶寸前のクマゾウを居合抜き複数連発で斬り刻んで勝負ありだ。前のように最後に岩攻撃を食らうこともなかった。
「プリンの居合抜きの威力も上がっているわね。クマゾウも倒し切れる段階に達したわね」
「そうだよな。最後に岩攻撃されるかと思ったけど、倒し切っちゃったな」
「えへへナノ」
「クルルもしっかりよけられたし、今度はみんな無傷だな」
「えへへプイ」
「無傷が1番よ」
「じゃあ、第4施設で休ませてもらうか」
「そうしましょう」
◇
すぐそばの扉に護りの腕輪をかざして第4施設に入った。今回はモカのあいさつが間に合わず先に声をかけられた。
「よく来ました。護り人たちよ」
「あっ、こんにちは。今日はここには特に用事は無くて、ちょっとキメラの様子を見に来ただけなんです。ここで休ませてもらってもいいですか?」
「もちろんです」
「ありがとうございます! 休んだら、すぐに出発しますね」
「そうですか。分かりました」
第3施設とほとんど同じ応対をしたあと、みんなで施設内で食事をし、寝袋に入って休むことにした。
◇
次の日、第4施設をあとにした俺たちは、第3施設のある洞窟と同じように、キメラの気配をクルルやプリンが感じたら風を使って高速で走り抜け、それ以外は歩くようにして外に出た。
やはり、まだ朝の時間帯のうちに出られた。
「じゃあ、次はフィナルメンシウタットのそばの洞窟ね」
「山越えになるかな?」
「道に人の気配があるか次第ね。まずこのあたりは東側からまわってフューラスタードから離れたところを通りましょう」
「そうだな。あの山あいの道のあたりまでいけば、そんなに高く飛ばなくても行けるだろうし。とりあえず様子を見ながら行こう」
「「行くプイ(ノ)」」
(ビューッ!)
(バサバサッ!)
(スーッ)
俺たちは一斉に飛び立った。
「こっちよ。ついてきてね」
(バサバサッ!)
モカの指示に従って方向を整え、まずは南南東くらいの方向を目指す。
少し飛んで、フューラスタードより十分南に来たところで、進路を相談する。
「山あいのほうに行かずに東側から回れないかな?」
「見た感じ行けそうね。ただ、海に近いと風が強いかもしれないわね」
「そうか、それはやっかいだな」
「やっぱり山あいの道のそばを通るしかないんじゃないかしら? その代わり、見つからないように高く飛ぶのよ」
「あんまり高いと高山病みたいにならない?」
「そんなに高く飛んじゃダメよ。人って分からなきゃいいんだから。鳥だと思われればいいのよ」
「なるほどな」
「じゃあ、高いところに行きましょう」
(ビューッ!)
(バサバサッ)
今回は昨日湖を越えたときよりも高く上がった。
もはや飛行機に乗っている感じだが、実際はたぶん数百mから1kmくらいなのだろう。低い山を越えられる高さだ。ここまで高いと、山の向こうにあるフィナルメンシウタットが見える。
だが、フィナルメンシウタットの西側は山が長く続いており、どこまであるかは分からない。
「フィナルメンシウタットは見えるけど、西側はここからだと分からないな」
「そうね。マリの施設はここの西側あたりだと思うんだけどね。レイシュトより西側まで飛ばないといけないから結構遠いわよ」
「そっか。レイシュトから飛んだほうが近そうだな」
「そうだと思うわ」
いろいろ話しているうちに山を越え、フィナルメンシウタット越えて、洞窟の上空まで来た。
「洞窟の南側から降りて行きましょうか。目立たないように」
「そうしよう」
高度が高かったから降りるのに時間が少しかかったが、無事に洞窟のそばに到達した。
(スゥーッ)
(スタッ)
例によって、洞窟のそばでキャンプして明日に備えた。
◇
フィナルメンシウタットそばの洞窟も久しぶりだ。
ここは迷路があった洞窟のはずだ。
「ここって広くて迷路になってたところだよな? 前はクルル人形とプリン人形を置きながら進んだけど、今回どうする? とりあえず第5施設に向けてまっすぐ行くだけでいいかな。少し迷路のキメラを倒していく?」
「中に入ってキメラの数と強さを見てからかしら。あんまり多くないならまっすぐ行ったほうがいいわ。1番強いキメラさえ倒せばいいって感じになるかもしれないから」
「なるほどな」
「ここは前にあのすごい土のコネクトを使ってきたキメラがいたところプイよね?」
「そうよ。あのときほど強くないはずだけどね」
「でも、油断できないノ。ゾウ系は皮も硬いノ」
「そうね。今回は私の光も使う必要があるかもしれないわね」
「そうだな。ゾウトラだと反応もいいから光のほうが効果的な気がするよな」
「そうよ」
前来たときのことを思い出しつつ、俺たちは洞窟に入った。
「やっぱり1番奥はゾウトラかな?」
「分かんないけど、ゾウ系だと思うわ。ゾウ系が今まで戦った中では1番強いわよね?」
「たしかにな。クマ系とかゾウ系が強いよな。あとは何気にたまにやたら大きいシカ系がいるよな」
「いたわよね。それとゾウが合わさると危険よね」
「ねえ、そういうのって……」
「あっ、きっと大丈夫よ。それに、そうだとしても別に勝てないとは思わないわ」
「まあ、それはそうか。たしかにスミロ人以外は油断しなければ大丈夫だと思うな」
「でしょ」
(ヒュヒュッ!)
(……ドサッ)
気付いたらプリンがキメラを倒している。
「2人とも話し込んでいるとキメラに襲われるノ」
「いつものことだけど危ないプイよ」
「ごめんごめん。でもまあ、それだけ俺たちはプリンやクルルのことを信頼しているんだよ」
「ナ!?」
「プ!?」
「ならしかたないノ。夫に信頼されるのはうれしいノ」
「そうプイね」
「じーっ」
「もちろんモカのこともすごく信頼してるよ!」
「うふふっ。ならいいわ」
そうこうしているうちに迷路に着いた。以前作った地図をインベントリから出す。
「あっちに行けば1番奥に行けるのかな」
「そうね。キメラもそれほど多くないし、思ったほど強くないから、1番奥に行きましょうか」
「そうだな。強く感じないのは俺たちが強くなっただけだと思うけど、そんなに多くないのはそのとおりだと思うから奥に行こう」
「「分かったプイ(ノ)」」
◇
迷路の1番奥に行くと、ゾウトラがいた。
今回はフラグじゃなかったようだ。大きなゾウとヘラジカが合わさったらどんな大きなキメラになるのだろうと少し興味はあったが。
「やっぱりゾウトラか」
「あの最後の土の攻撃をさせてはダメナノ」
「そうよね」
「となると、居合抜きに俺も加わって短時間で斬り倒すしかないか」
「岩だと最後に反撃してきたものね」
「でも、クルルには岩攻撃もしてほしいな。いざというときには岩自体が必要だし、そもそもクルルの岩の威力も上がっているはずだし」
「まかせるプイ」
「そうね。私の光とクルルの岩で動きを封じて、ヤマとプリンで斬るって感じかしら。ある意味力押しね」
「ああ、だけど、それが1番安全かもしれない。もちろんいざというときに土は消すから大丈夫だよ」
話している間に向こうがこちらに気付いたようだ。
(ドン!)
壁を作ろうと土を放ってきた。だが、前に戦ったゾウトラよりは弱そうだ。
(ヒュッ! ドゴォン!)
クルルが居合抜きの要領でメイスを叩きつけて土壁を粉砕した。
(パ、パォーン!)
まさか一瞬で壊されると思っていなかったゾウトラは声を上げる。怒ったらしく、突進してきた。
(ドドドドドド!)
「じゃあ、いくわよ」
「分かったプイ」
(サッ)
(ドォーン!)
(ピカーンッ!)
(パォ!?)
最初のクルルの巨大岩はなんとかよけたものの、その後のすさまじい光は対処しきれなかったようだ。大きな隙が生まれた。
(ヒュヒュッ! ヒュヒュッ! ヒュヒュッ! ヒュヒュッ!)
(ヒュッ! ヒュッ!)
(……ドスン)
(ヒューッ グサッ!)
プリンのすさまじい居合抜きの連発に加え、俺もロングソードを繰り出した。ゾウトラが倒れたところで、最後は俺が飛び上がり高いところから一気に突き刺した。
「ふう、ほとんど何もさせずに倒せたかな」
「クルルが吸収してみたらどうかしら?」
「そうだな。いいかもしれない」
「分かったプイ」
試してみると、しっかりとクルルが細胞を吸収できた。つまり、無事に倒せたようだ。
「よし。じゃあ、第5施設で休ませてもらうか」
「あっ、その前に、このキメラは大きいから埋めておきましょうよ。それと岩も消さなきゃ」
「そうだな」
(スッスッ)
(ドサッ)
穴を作り、ゾウトラを埋めておいた。改めて第5施設に向かった。
◇
すぐそばの扉に護りの腕輪をかざした。中に入るとおなじみの言葉をかけられた。
「よく来ました。護り人たちよ」
「こんにちは。今日はここに用事は無くて、ちょっとキメラの様子を見に来ただけなんですけど、休ませてもらってもいいですか?」
「もちろんです」
「ありがとうございます! 休んだら、すぐに出発する予定なので」
「そうですか。分かりました」
ここでもほとんど同じ応対をしたあと、モカが俺たちに言う。
「ねえねえ、休憩はどのくらいする?」
「朝までじゃないノ?」
「違うプイ?」
「あっ、まさか」
「そうよ。だって次はレイシュトに行くんだもの」
「そっか。なら少し休んだら行こう。次のキメラが来る前に移動しなきゃ」
少し座って息を整える感じだ。30分も休憩していないが、疲れがほとんどないことに気付く。それはみんなも同じようだ。
「休んでみたものの、実はそんなに疲れていないかしら?」
「私は全然平気プイ」
「私も平気ナノ」
「やっぱり? じゃあ、行こう」
「短い休憩でしたけど、私たち行きますね」
「分かりました。気を付けて行ってきてください」
第5施設をあとにした俺たちは、キラキラしたドーム状の部屋の片隅にある死角になるところで、キメラなどが周りにいないことを確認してから、レイシュトに移動する。
(ヒュン)
俺の部屋で靴を脱いで、手に持つ。俺の部屋はいつも通りという感じなので、すぐにレイシュトに移動する。
(ヒュン)
「ただいまって感じだな」
「そうね。なんかホッとするわね。今日はゆっくりお風呂入れるわ!」
「そ、そうだね」
「おいしいものも食べるプイ」
「そうナノ」
久しぶりの、と言っても移動距離の割にはものすごく短期間ぶりの家で俺たちはくつろいだ。第3から第5施設まで行けたから、これで定期任務の南コースは完了だ。




