↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/131

第114話 定期任務出発

 翌日、俺たちは各都市にある洞窟巡りに出発することにした。少し早いものの、護り人としての定期任務でもある。


「そろそろ行くか。護り人としての任務でもあるしな」


「そうね。ユキさんたちへの報告はまだいいわよね」


「まだ中途半端だしな」



 クルルが行き先の確認をする。


「ねえ、今回行くのは全部の施設でいいプイ?」


「そのほうがいいわ。エーンスタットを最後にしたいから、トライオラシからフューラスタードとフィナルメンシウタットに行って、またここに戻ってからドスシウダとエーンスタットに行けばいいわ」


「……ねえ、施設というか洞窟巡りでふと思ったノ。施設で能力向上させなくても、細胞を吸収するとコネクトは強くなり続けると思うノ」


「そうね。使えるエネルギー量は増えるわね」



 前から分かってはいたことだが、何やらプリンは考えている。


「……じゃあ、長年洞窟巡りをしていたらもっと強くなるノ?」


「そうだと思うわよ。でも、細胞吸収だけで強くなる分より、施設で1つだけでも能力向上させるほうがずっと強くなるように思うわ」


「たしかに感覚的にはそうだな。でも、施設での能力向上が頭打ちになったあとは細胞吸収しかないんじゃない?」




「それもそうね。だけと、無限に吸収できるわけじゃないでしょうから、それもどこかで頭打ちが来るんじゃないかしら?」


「なるほど…… それもありそうだな」


「プリンはノエさんより強くなったのかを気にしているのね?」


「そうナノ」


「私はノエさんに会ったことがないから分からないけど、たぶん、今のプリンはノエさんよりも強いと思うわよ」


「そうナノか……」


「ノエさんにいい報告ができるように頑張ろうな!」


「ナ! 頑張るノ!」



 準備を整えた俺たちはレイシュトの東門に俺たちは向かった。





◇


 東門から出て、しばらく歩き、レイシュトが見えなくなったあたりでモカが止まった。


「レイシュトが見えなくなったわね。このあたりで試したいことがあるの」


「そういえばキメラヴィルでそんなこと言ってたな」


「何をするプイ?」

「ワクワクするノ」



 いったい何を試すのだろうか。都市の中じゃないということは、人に見られたくないことのはずだ。


「そんな大したことじゃないかもしれないけど、以前、並行世界研究所からレイシュトに向かうときに、プリンが風を使ったらもっと短い時間で移動できるんじゃないか、って言ってたわよね?」


「ナ!? 言った気がするノ」


「あのときはまだ、風を私とプリンしか使えなかったから試さなかったじゃない?」


「そうか、今なら4人とも使えるな」



「そうなの。極端な話、歩くより10倍の速さで移動できたらほとんどの都市の間を1日で移動できるわよ」


「すごい話だな。でも、1日中コネクトを使い続けられるかな?」



「そこが問題なのよ。大きな穴を開け続けるにはエネルギーがたくさんいるわ。だから小さい穴を維持して、シャワーのように風を出すといいかなって。あとは、ずっとじゃなくても、風の移動と歩きを交互にやるだけでも十分だと思うわ」


「なるほど、何がいいか試してみよう」



 ある意味、俺たち専用の車みたいなものだろう。車というよりは陸上帆船かもしれない。あっ、帆船か!


「なあ、試す前にだけど、なんか帆みたいなものを広げたほうが効率的だよな?」


「あっ、それいいわね!」


「ホって何プイ?」


「船で海を進むために使う大きな布みたいなものよ。風を受けてくれるから、風を効果的に使えるの」


「こういうことナノ?」



 プリンが何かしている。目を凝らしてもよく分からない。


「ん? プリン、何している?」


「護りのコートを広げているノ」


「なるほど! ちょっと触ってみていい?」


「もちろんいいノ。ヤマは私の夫ナノ!」


「あっ、そういう意味じゃなくて……」



 急な妻アピールでひるんでしまったが、プリンの周りを触ってみた。たしかにうまく張れていそうだ。


「そうそう、こんな感じだよ。マリの施設の護りのコートは第5施設と比べてもずっと分厚くて丈夫だからできるんだな」


「これ、居合抜きのときには少しだけでも張ればさらに威力が上がりそうナノ」


「たしかに! それすごいな。回避のときに腕と体の間だけでも広げればいいかもな」


「ムササビみたいプイ」


「そうそう、かわいい動物の名前が出てきたな。さすがクルル」


「えへへプイ」


「いい感じね。戦うときはムササビ戦法で、移動するときは帆船、つまり帆を張った船のようにして飛んで移動するのよ」



 さすがモカ、なかなか思い切った案だな。だけど、うまくいくのだろうか?


「走るんじゃなくて飛ぶの? 浮く分の風もいるんじゃない?」


「そうよ。だって、あんまり速く移動すると地面の動きに足が付いていかなくて危ないんじゃない? 車の下から足を出すようなものよ」


「あっ…… そうか。長時間だと間違いなく足がもつれちゃうな」



 足がもつれて転ぶと、そのときの速度が速ければ速いほど危なさそうだ。足がフル回転している様子を俺がのんきに思い描いている間に、モカの頭がフル回転しているようだ。


「それに、浮かすことができるのは風のコネクトの力だけじゃないわ」


「えっ?」


「揚力よ。つまり、飛行機の翼を護りのコートで作るのよ」


「えっ、でもかなりの低空飛行だけどできるの?」


「私たちは軽いからできるんじゃないかな? ただ、ちょっと普通の飛行機とは違うわよ」


「?」



 人間が飛ぶからという意味じゃなさそうだが、何か難しいことを考えていそうだ。


「まず、私たちは後ろから風を受けて進むのよ。だから翼も普通の飛行機と前後逆じゃないと浮けないの。それと、鳥の羽根を広げるようにして、身体を倒すと、風を受ける部分が減るから、護りのコートの帆を上下に伸ばすのよ」


「ん? 帆を上下に細く伸ばして、前後逆の翼を左右に伸ばして、それで後ろから思い切り風を当てるの?」


「そうそう、そんな感じ。速さが上がるまでは普通に後ろからの風を受けて走るのよ」


「なんとなく、言っている意味は分かるけど…… クルルたちが分かるかな?」


「分かんないプイ」

「せめて絵を描いてほしいノ」



 紙をインベントリから出すとモカが絵にしてくれた。


 普通はジェットエンジンとかで後ろに噴射するけど、コネクトだと後ろから風を当てるからかなり特殊だ。護りのコートは単に形を変えて維持しているだけだから疲れはしない。あとはコネクトで風を送り続けられるかだ。


「これって、体重が重いほど大変だよな?」


「もちろん。だから、ヤマか1番大変で、クルルが1番簡単よ」


「だよな…… とりあえずモカができるか試してみてくれる? 俺たちは少し横に離れて並走するから」


「分かったわ」



 モカが走り出した。これだけでも風のコネクトを使うと、自転車より速いくらいの速度を維持するのは難しくなさそうだ。


「じゃあ、行くわよ」


「うん」



 モカが一気に加速した。


 それと同時にジャンプして、身体を倒す時間を稼ぐと同時に翼を広げたようだ。透明なのでほとんど見えないが、なんとなく分かる。


(スーッ)



 飛んでいる! モカが飛んでいる! しかも速い!



 だが、モカはすぐに飛ぶのをやめてしまった。何か問題があるようだ。


「飛べるし、ものすごく速いんだけど、これは長時間は無理だわ。とてもじゃないけど維持できないわ。せいぜい5分くらいかしら……」


「そうか。やっぱり、風を当て続けるのは難しいんじゃない?」


「そうね。でも、高く飛ぶキメラを攻撃するのには使えるわ」



 さすがのモカでも難しいようだ。でも、アイデアは悪くないはずだ。結局地面に足をつかなければいいはずだ。やはり、あれしかないだろう。


「やっぱり車輪がいいんじゃない? 車輪なら惰性でも進んでくれるから、常に風を当てなくてもいいと思うよ」


「そうよね。でも、道具を使わずに行きたかったんだけどなあ」


「なるほどな…… でも、動力がコネクトだけだと辛くないかな?」


「動力…… そうか!」



 何かモカが思い付いたようだ。俺の言葉の何かが良かったのだろうか。


「ヤマ、ありがとう! これなら行けるわ。グライダーよ!」


「グライダー? あっ、動力がない飛行機みたいなやつね?」


「それよ。グライダーは離陸のときは別の動力がいるけど、そこは風のコネクトを使って短時間で勢いをつければいいのよ。上昇気流が足りないときだけ風のコネクトを使えば遠くまで楽に高速で行けるわ。もちろん翼は護りのコートを長く広げるのよ」


「なるほど、行けそうな気がする。日が出ているときならいけるのかな」


「基本はそうだと思うわよ」


「プ? もう少しどういうことか説明してほしいプイ……」

「私もナノ……」




 クルルとプリンが困っている。当然だろう。モカはまた絵を描いて説明してくれた。


「まず、翼はこんな感じですごく長くするのよ。あとは、簡単に言えば鳥が羽ばたかずに飛んでいる状態と同じよ」


「なるほどプイ」


「なんで羽ばたいちゃダメナノ?」




 プリンの素朴な疑問がモカに思い切り刺さったようだ。


「えっ!? いい……かもしれないわね……」


「つまり、護りのコートを鳥の翼代わりにするんだな! なんだ、1番それが簡単かもな」


「でも、そんなに速く動かせるかしら?」



 軽く試してみよう。


(バサバサッ)


「えっ? めちゃくちゃ簡単だよ?」


「なるほど、AI細胞がやってくれるのね! もう、一生懸命考えて損したわ」


「そんなことないよ。モカが一生懸命考えてくれたから、みんなも考えたんだよ」


「そうプイ」

「モカのおかげナノ」


「もう、みんな…… ありがとう。それにしても羽ばたかせるエネルギーはどこから来るのかしら?」


「さあ、チップは寄生しているっていうくらいだから、俺たち自身のエネルギーじゃない?」


「まあ、そうよね。ダークエネルギーでできるイメージはないわね」




 とりあえず謎はクリアしたようだ。あとは試すのみ。


「よし、じゃあ飛んでみるか!」


「そうね。飛び立つのは大変だと思うから、最初はコネクトで飛び上がって、勢いをつけるのがいいわ。そのあとは、翼を広げて飛ぶのよ。翼の形はさっきの絵みたいな形にしないとうまく飛べないから気を付けて。あとは長い翼にしてほとんど羽ばたかなくても飛べるようにするのが理想よ」



「翼の形はこんな感じプイ?」


 クルルが翼を作ってみたようだ。


「そうそう、その形よ」


「私も見てほしいノ」


「プリンも正解よ」



「お、俺は……」


「もう、ヤマったら。これなら大丈夫そうね」




 よし、準備完了! かと思いきや、モカが紙にまた何かを描き始めた。


「あと、空を飛ぶと風の音がうるさくて会話できなさそうなの。だから、耳の前にこういう壁を護りのコートで作るのよ」


「へえ、こんなので音が防げるんだ」


「あとは、例えば右にいる人に話すには、口の前にこんな感じで声を反射するものを作るのよ。たぶんこの2つがあれば、あまり速すぎなければなんとか会話できるんじゃないかしら。ダメならすごく大声で話すしかないわね」



 試しに作ってみた。なんとかなりそうだ。これで、今度こそ準備完了だ。


「じゃあ、行きましょうか。落ちそうになったら、風のコネクトを使いながら降りればいいわ。あと、護りのコートで目も護るのよ。じゃないと風が強くて目が開けられないと思うわ」


「なるほど、たしかにそうだな。あとは実践してみよう。じゃ、行こう!」


「「行くプイ(ノ)!」」



(ビューッ!)

(バサバサッ!)

(スーッ)



 俺たちはコネクトで飛び上がったあと、鳥のように飛んだ。




 コネクトの威力とマリの施設の護りのコートの性能のおかげだ。


「気持ちいい!」


「最高ね!」


「鳥になった気分プイ!」


「しかも速いノ!」


「それになんとか会話できそうね!」


「そうだな」


「じゃあ、ほかの人にバレないようにもう少し高いところを飛びましょう!」



(バサバサッ!)



「いい感じね。あんまり近づくと翼がぶつかるから気を付けましょう」


「分かった」


「この速さなら、すぐにトライオラシに着きそうプイ」


「今日中には着くわね」


「すごいノ!」



 俺たちの高さを飛んでいるキメラは見渡す限りいなかった。小さな鳥は飛んでいるのが見えたが。


「キメラってこの高さにはいないんだな」


「身体が大きい動物と合わさったから、そんなに長く飛べないんだと思うわ。鳥と比べたら少しだけ飛び上がれる程度なのかしらね」


「じゃあ、俺たちのほうがよっぽど鳥っぽいな」


「そうね」



 俺たちはまさかの飛行能力を手に入れることができた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。