第112話 能力向上
順番に能力向上を行った。向上できること自体が想定外だったこともあり、みんな悩みながら行った。
結果は次の通りだ。
◆◆◆
(ヤマ)
現在スロット数53
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で60までは増やせません
スロット登録内容
調停者の証1
放電1
風1
思考速度10
動体視力10
反射神経10
形状生成能力10
放出能力10
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
土
水
◆◆◆
◆◆◆
(モカ)
現在スロット数46
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で60までは増やせません
スロット登録内容
水晶1
水1
思考速度15
動体視力4
反射神経5
形状生成能力10
放出能力10
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
光
風
◆◆◆
◆◆◆
(クルル)
現在スロット数47
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で60までは増やせません
スロット登録内容
水1
風1
思考速度4
動体視力13
反射神経8
形状生成能力10
放出能力10
護りのアクセサリーコネクト登録(最大1)
岩
◆◆◆
◆◆◆
(プリン)
現在スロット数49
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で60までは増やせません
スロット登録内容
風1
水1
思考速度4
動体視力8
反射神経15
形状生成能力10
放出能力10
護りのアクセサリーコネクト登録(最大1)
氷
◆◆◆
「思った以上に上げられたな。特に俺だけすごく上げられたな」
「ヤマはベルから吸収したじゃない。あれのおかげじゃない?」
「なるほどな。たぶん、他は俺とクルルはほとんど変わらなかったはずだから、あれだけで6も上がったのか…… すさまじいな」
「これで、コネクト能力が劇的に上がっているはずだから、戦いやすくなるかな」
スミロ人相手の場合はコネクト能力が本当に大事になることをみんな分かっているから、今回は全員、コネクト能力を最大に上げたのだ。
俺は、それとは別にもう1つ大事なことに気付いた。
「それとさ、『解析不能』じゃなくて、『調停者の証』になっているな…… これ、結局のところ、中身はよく分からないということだよな?」
「そうね。『解析不能』をそう置き換えただけね。ヤマ魔法であることには変わりないわ」
機械が俺たちの会話を聞いて疑問に思ったようだ。
「『ヤマ魔法』というのは何でしょうか?」
「特殊チップの特殊能力のことです。他の施設では『解析不能』と出て、ここでは『調停者の証』と出ました」
「なるほど。 ……では、もう1度触ってみてください」
「ん?」
なんかすごく嫌な予感がする。恐る恐る触ってみた。
◆◆◆
現在スロット数53
スロット数は現時点の最大
エネルギー変換細胞不足で60までは増やせません
スロット登録内容
ヤマ魔法1
放電1
風1
思考速度10
動体視力10
反射神経10
形状生成能力10
放出能力10
護りのアクセサリーコネクト登録(最大2)
土
水
◆◆◆
「えっ、本当に正式名称になっちゃった……」
「おお、すごいわね!」
「やっぱりこれが1番プイ!」
「そうナノ。これがいいと思うノ!」
「こんなことできるのか……」
「はい。マリの施設では『解析不能』を別の表示名とするように工夫されています。その表示名を変えただけです」
「いいじゃない? ぴったりよ!」
「「そうプイ(ナノ)!」」
「まあ、みんながそういうならしかたないか……」
まさかの正式名称化だった。機械は気を利かせたつもりなのだろうが…… それにしてもなんかみんなすごく楽しそうだ。
◇
みんながはしゃいでいる横でふと思い出した。
「あっ、武器とかも確認しよう」
「あ、そうね。見ましょうか」
第5施設などと同じように武器と護りのコートが並んでいた。そのため、これまでと同様に各武器と護りのコートをそれぞれレベルアップさせることにした。
さっそく新しい武器を握ってみた。
「うわぁ、紫だ」
「すごいわね」
「かっこいいプイ」
「ものすごく強そうナノ」
レベル6の武器は薄っすら紫色をしていた。
武器本体の強度もきっと上がっているのだろう。俺のロングソードでも普通の武器相手ならプリンみたいに斬れるのかもしれない。俺にその技量があれば、だが。
護りのコートの分厚さもこれまでと比べ物にならないくらい格段に上がった。
「ねえ、護りのコートだけど、ただ分厚くなっただけじゃない気がするわ」
「そう?」
「よく分からないプイ」
「ひょっとして、熱に強くなったノ?」
「たぶんそうよ。分厚くなっただけじゃなくて、なんとなく、皮膚と接している面積が減った気がするの。接していなければ、熱は伝わりにくいわ。ただでさえ細胞の中にある水分が熱を通しにくいから分厚くなるだけでも意味はあったけど」
「なるほど。これもスミロ人の火のコネクトに対応しているんだな」
俺たちが推測していると、気を利かせた機械が答えてくれた。
「さすがです。みなさんの推測通りです。この施設はスミロ人と話し合いができる強さを得られるよう研究された結果が残されています。おそらく、ここで能力を向上させ、かつ、ここの武器や護りのコートを使わない限り、スミロ人1人が相手でも勝つことはほとんど不可能でしょう」
「そうですね。1人相手には勝ったことがありますけど、すごくギリギリでしたわ」
「えっ? 戦ったことがあるのですか? 私に登録されている情報を超えていることが起きているようです……」
まさか、機械にすらはっきりと驚かれてしまった。
「私たち4人に、ユキさんの水のコネクトまで使って、ようやく勝てたんです。ヤマ魔法がなければ絶対に勝てなかったと言えるくらい、スミロ人は強かったですね」
「なるほど。ヤマ魔法はやはり特殊なのですね。これまで誰も使ったことがないものですので、私の知る範囲を超えたのでしょう」
やはりそのくらい特殊なことなんだな。それより、機械もヤマ魔法って言ってる…… 俺はヤマ魔法って言いにくいから、せめてオレ魔法にしよう……
さて、ここで今やるべきことはやれたかな、と思っていると、モカが思い出したように機械に質問を始めた。
「もう1つ聞いていいですか?」
「もちろんです」
「西側からしかレイシュトへの道の封印は開けられないと聞きましたが、どんな封印だったのですか?」
「レイシュト側からは扉に見えないようにした上で、こちら側から鍵をかけているはずです。そのため、こちら側からも鍵を持たない限り自由には東側には行けません」
「なるほど。じゃあ、強引に行くには壊すくらいしかないのですね」
「そうですが、岩でできているため、かなり力が無いと壊せないと思います」
「そういうことですか。分かりました」
スミロ人だから、力ずくで壊せたということだろう。これで、モカも聞きたいことが終わったようだ。
「私はとりあえず聞きたいことを聞けたけど、みんなはどう? 大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ」
「私も大丈夫プイ」
「私もナノ」
「じゃあ、キメラヴィルに帰ろうか」
「そうしましょうか。あっ、でもそろそろ夕方が近いんじゃないかしら?」
「じゃあ、ここで寝てもいいですか?」
「もちろんです。テンやマリもよく寝ていましたから」
俺たちはマリの施設で寝袋を出して、ゆっくりと休むことにした。
その姿を見た機械が少し驚いていた。
「さすが『世界の調停者』ですね。人間と亜人が仲良くみんなで寝袋に入って寝るなんて。テンが目指した世界を本当に実現できる気がしてきました。期待してますよ」
「あ、ありがとうございます。俺たちはいつもこんな感じなので、特別なこととは思ってませんでした……」
「だからこそ、あなたが『世界の調停者』なのですよ」
「へ?」
「ま、そこに気付かないのが私たちのヤマよね」
「「そうプイ(ナノ)」」
「私たち、みんなヤマの妻なんです」
「そうプイ。私が第2夫人プイ」
「私が第3夫人ナノ。モカがもちろん第1夫人ナノ」
「……大変納得しました。『世界の調停者』の情報として登録しておきます」
なんか、最後は機械にも呆れられたような気がする。というのと、ここに俺たちの情報が登録されてしまった気がするが、まあ、それは良いとしよう。
それはともかく、ここならキメラに襲われる心配もないため、ゆっくりと休むことにした。
◇
翌朝、マリの施設から出て、テンとマリのものと思われるお墓のそばをまた通った。
(俺たちがなんとか実現します。みんなで仲良く暮らせる世界を……)
そう心の中で語りかけつつ、外に出た。
遺跡となっている研究所跡を通るときに、一応、少し骨も回収しておいた。モミジさんの研究ネタになるかもしれないからだ。結果的に役に立たなくても研究者なら喜んでくれる気がする。
そのあと、研究所跡も離れたところで、とりあえず向上した能力を確認することにした。
「やっぱり、俺とクルルの風は確認しておかないと、いきなり実戦はきついよな」
「そうプイ」
「とりあえず追い風と、飛び上がるのをやってみるか」
(ヒュッ!)
「えっ、すごっ! こんなに速かったっけ?」
「私より速いノ」
(ヒュッ!)
プリンも試す。俺よりずっと速い。
「いやいや、俺より速いよ。コネクト能力が上がったからだな。俺たちはまだ使い慣れていないから、そのうちもっと速く動けるかな」
「私もやってみるプイ」
(ヒュッ!)
(ヒューッ…… スタッ)
「意外とすぐにできたプイ」
「俺も飛んでみよう」
(ヒューッ…… スタッ)
そんなに難しくない。コネクト自体は使い慣れているからだろう。
「これなら大丈夫そうだな。あとは実戦でいけるかな?」
「そうね。コネクト能力がものすごく上がっているから、威力が強くなりすぎないように気を付けましょう。間違って私たちに当たらないようにね」
「そうだな。キメラと戦いながら慣らしていこう」
「「分かったプイ(ノ)」」
しばらく歩くと、ワシライが襲ってきた。
「プリン、すぐに倒さないでね。ヤマ、プリン、かわす練習をしましょう」
俺たちがかなり強いことを知らないワシライは勢いよく向かってきた。鋭い爪のついた足での攻撃や土の弾丸攻撃だ。
(ブン! ブン!)
(ヒュッ…… ヒュッ……)
(ドドドッ! ドドドッ!)
(ヒュッ…… ヒュッ……)
なるほど、慣れれば簡単に使えそうだ。それに、俺はロングソードだから、プリンほどじゃないが、居合抜きみたいなことができそうな気がする。
「倒してみていいかな?」
「いいわよ」
(ヒュッ! スタッ)
(……ドサッ)
飛んでいるワシライ相手に飛び上がりつつ、居合抜きで斬った。プリンほどの威力はなかなか出せないが、普通のキメラ相手なら問題なさそうだ。
「ヤマ、すごいノ!」
「そう?」
「プリンとはまた違う感じの居合抜きね」
「まあ、居合抜きのカッコ良さはプリンには勝てないな。居合抜きは刀じゃないとね」
「それはそうかもしれないけど、攻撃手段が多いのは良いことよ」
「そうプイよ。2人揃っての居合抜きとかできるかもプイよ」
「それ、すごいノ!」
「もう少し慣れたら、かな。今やるとぶつかりそうだから……」
プリンの居合抜きの邪魔をしたくはないから、基本は使わなくてもいいかな、とひそかに思う。プリンの居合抜きも向上しているはずだし。モカもそれを気にしているようだ。
「あっ、それと、プリン。次のキメラはプリンが居合抜きで倒してみて。たぶん、速さがすごいことになってるから」
「分かったノ!」
しばらく行くと、ワシイノが向かってきた。プリンが構える。
(ヒュヒュッ!)
(……ドサッ)
「す、すごいな。めちゃくちゃ速いじゃん!」
「カッコいいプイ!」
「これなら、スミロ人にも当てられそうね」
「そうナノ。前はかわされたノ」
能力向上がすごい。となると、モカの光もすごいんじゃないだろうか。
「モカの光もすごいことになってない? 水晶と組み合わせたら、ほぼ熱線じゃない?」
「そうかもしれないわね。あっ、あれで試してみましょうか」
ワシザルが向かって来ている。サル系はずる賢いので注意が必要だが、光は想像以上だった。
(ボワッ!)
(キキッ!)
離れたところにいたワシザルの羽根が燃え上がった。
(ドォーン!)
そこにクルルの超巨大な岩が上から落ちてきて、一瞬で勝負がついた。
「光も岩もすごいな。あの岩を飛ばしたらすごいことになりそうだ。ちょっと手加減して……」
(ビューン! ドゴォーン!)
手加減しても以前の最大威力を上回っていそうだ。フルパワーで使うことはほぼなさそうだ。
(スッ…… スッ……)
邪魔になりそうなので巨大岩を消しておく。
「うん、どれもこれも強くなっているな。これなら1人でもキメラに負けることはほぼないくらいかもしれないな」
「そうね。わざわざ危険を冒す必要はないから、基本はこれまで通りでいいと思うわ」
「そうだな。協力し合うのが俺たちのやり方だからな」
「そうプイ」
「さすがヤマ、ナノ」
放電など、まだ試していないものもあるが、自分たちのコネクトや動きがどのくらい強くなったか大体分かってきたので、キメラヴィルに向けて歩き始めた。




