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第49話 黒鋼の双璧


挿絵(By みてみん)

【挿絵→リネア・ギアライト】



森の訓練場で最後の試験を終えた翌日。

リネアは、丁寧に手入れした旧式魔導狙撃銃ロングファングをバルドへ返却した。


「ありがとうございました」


木製の銃床には、長い年月の中で刻まれた無数の傷がある。

黒い銃身も色褪せていたが、錆は一つもない。リネアは分解できる範囲まで部品を外し、訓練中に付着した汚れを落としてから、可動部へ薄く油を差していた。

バルドは銃を受け取り、機関部を確かめる。


「随分と綺麗にしたな」


「借りていたものですから」


「俺が使っていた頃より調子がよさそうだ」


「少しだけ、気になるところはありましたけど」


リネアは銃床の後部へ目を向けた。


「でも、勝手には直していません」


「ようやく道具を弄る前に、持ち主へ聞くことを覚えたか」


「最初から知っていました」


「人の銃床を削ろうとしていた奴が、よく言う」


反論できず、リネアは口を閉ざした。

バルドは《ロングファング》を肩へ担ぐ。


「こいつは俺の身体と射ち方に合わせてある。お前には銃床が長い。重心もわずかに前へ寄りすぎているな」


「はい。構え続けていると、左腕に負担がかかります」


「引き金も、お前には少し重いだろう」


「それは、もう慣れました」


「慣れることと、合っていることは違う」


バルドは、リネアの右眼に収まった《アルゴス・レプリカ》を見る。


「狙撃手として生きるつもりなら、次に手に入れるべきものがある」


「新しい銃ですか?」


「ただの新しい銃じゃない」


バルドは《ロングファング》の銃床を軽く叩く。


「長く使う狙撃銃は、射手の癖を覚える。どこへ重心を置き、どう呼吸し、どの瞬間に引き金を引くのか。手入れを重ね、壊れるたびに直していけば、やがて自分の身体と区別がつかなくなる」


「身体と……」


「自分の片割れになるような銃を手に入れろ」


借り物の銃でも、訓練標的へ弾丸を当てられるようにはなった。

だが、これから向かうのは訓練場ではない。風も、地形も、敵も、毎回違う。わずかな違和感が、引き金を引く瞬間の迷いにつながる。


「そんな銃、売っているでしょうか」


「売っていなければ作ればいい」


バルドは当然のように言った。


「お前は修理師だろう」


リネアは思わず瞬きをした。直すことばかり考えていたことを自覚したのだ。

すでにある銃を買い、自分に合うよう改造する。そのつもりだった。

けれど、最初から自分のために専用兵装を作るという選択もある。


「作る……私の銃を」


「誰かに作ってもらうだけじゃない。銃が何をする道具なのか知った今なら、自分で必要な形を決められるはずだ」


そう言われてリネアは自らの右眼に触れた。

義眼との接続、ルクスから送られる標的位置情報の活用、小柄な身体でも制御できる重量と反動。

必要な機能が、少しずつ頭の中へ組み上がっていく。


「心当たりがあります」


「なら早く行け」


「はい」


返事をしたリネアへ、バルドが付け加える。


「射程と威力だけを欲張るなよ」


「分かっています」


「それと機能を詰め込みすぎるな」


「義眼で一度失敗しましたから」


「今度は道具の性能を言い訳にするなよ」


「それも、もう教わりました」


リネアはバルドのお節介にわずかに頬を膨らませた。


「私、そんなに信用ありませんか?」


「あるから言っている」


バルドは短く答えて、にやりと笑った。


「次に会う時は、お前の牙を見せろ」



▲▽▲―――▲▽▲



専用狙撃銃製作にあたって必要な素材は、灰貨商会を通じて集めた。

高い魔力伝導性と耐圧性を持つ魔鉱鋼。機関部に使用する軽量合金。

発射時の熱へ耐える冷却金属。義眼との接続に用いる微細伝導線。

反動を分散させるための緩衝材など、どれも安価な素材ではない。


ヴィオラは請求書を眺め、机の向こうに座るリネアへ尋ねた。


「本当に全額払うつもり?」


「そのつもりです」


「私の提案で狙撃手を目指したのだから、追加出資として扱ってもいいのよ」


リネアは首を振った。


「ルクスを直す時は、ヴィオラさんに助けてもらいました。でも、これは私がこれから使う武器です」


金級冒険者として受け取ってきた依頼報酬。

ヴァレリア防衛で支給された特別報酬。

これまで修理の仕事で少しずつ蓄えてきた金。


その全てを失うほどではないが、軽い買い物でもなかった。

それでも、自分の片割れを誰かから与えられるだけのものにはしたくない。


「自分のお金で、自分の銃を作りたいんです」


ヴィオラはリネアを見つめ、やがて小さく微笑んだ。


「分かったわ。商会として、正規の価格で売りましょう」


「ありがとうございます」


「礼を言われるような取引ではないわ。代金はきっちり受け取るもの」


翌日、購入した素材を積んだ荷車を伴い、リネアとルクスは王都を離れた。

目的地は、王都衛星工房都市グロムロード。武器、鎧、魔道具、建材。王都で使われる数多くの品が作られる、職人たちの都市だった。


市壁をくぐった瞬間から、ハンマーが金床を叩く甲高い澄んだ音が聞こえてくる。

炉から立ち上る煙と、熱せられた鉄と油の匂い。

部品を積んだ荷車が大通りを行き交い、工房の軒先では職人たちが声を張り上げている。

久しぶりに姿を見せた黒い四脚機兵へ、通りの人々が足を止めた。


「見ろ、あの従魔……」


「前にも、この街へ来ていなかったか?」


「随分と立派になったな」


ルクスは周囲の視線を気にすることなく、リネアの隣を歩く。

黒い装甲には、これまでの戦いで刻まれた修理跡が残っている。

新品の綺麗な姿ではないが、だからこそ、リネアには今の姿が誇らしかった。


「もうすぐ着くよ」


『目的地まで残り百六十七メートル』


「覚えてたんだ」


『過去の移動記録と一致』


大通りから一つ外れた職人街。

懐かしい看板の下で、オーレン工房の炉は以前と変わらず燃えていた。


「ごめんください」


リネアが扉を叩くと、最初に顔を出したのは、ガルム・オーレンの娘のミラだった。


「はい、今行きま――」


言葉が途中で止まる。

ミラはリネアを見て、次に入口の外で待つルクスを見上げた。


「リネア?」


「お久しぶりです、ミラさん」


「本当にリネアなの?」


ミラは駆け寄ると、リネアの義眼となった右眼に気づき、一瞬だけ息を呑んだ。

だが、何があったのかをその場で問い詰めることはしなかった。


「お父さん!リネアが来た!」


「聞こえている!」


工房の奥から、親方ガルム・オーレンが姿を現す。

太い腕に熱と煤に焼かれた作業着。職人を睨みつけるような鋭い眼差しも、以前のままだった。

ガルムはリネアを頭から足元まで眺める。


「随分と面構えが変わったな」


「使えるものが増えました」


リネアが右眼の義眼アルゴス・レプリカを指す。


「眼を一つ失って、使えるものが増えたと言う奴は初めて見た」


「私も、こうなるとは思っていませんでした」


ガルムの視線がルクスへ移る。

黒い四脚機兵が、工房の前で静かに頭部を下げた。


『ガルム・オーレン、ミラ・オーレン。再会を確認』


「こいつも喋るのが随分と上手くなったな」


ガルムは工房から出ると、ルクスの胸部を見上げた。


「そういえば、あの時渡した星紋部品は役に立ったのか?」


「星紋出力増幅器ですね」


リネアはルクスを振り返った。

あの部品を組み込むまで、ルクスは星紋仮設動力環の出力を十分に武装へ送れなかった。


機体出力を一時的に高める《フィジカル・ブースト》

クリードディフェンダーの刃表層に高密度のエネルギー刃を形成する《エナジー・ブレード》

どちらも星紋出力増幅器があって初めて、実戦で使用できるようになった機能だ。


「はい。とても役に立っています」


リネアの顔に、満面の笑みが浮かぶ。


「あの増幅器がなかったら、ルクスは何度も危機を切り抜けられませんでした。私も、今ここにはいなかったかもしれません」


『星紋出力増幅器は、現在も当機の高出力機能に不可欠です』


ルクスも合わせて報告する。


『《フィジカル・ブースト》および《エナジー・ブレード》の安定運用は、当該部品の搭載によって実現しました』


「そうか」


ガルムはそれだけ答えたが、太い眉の下にある目元が、わずかに緩んでいる。

ミラが隣から父親の顔を覗き込んだ。


「お父さん、嬉しそう」


「余計なことを言うな」


「だって、あの部品を渡してよかったのか、ずっと気にしてたじゃない」


「ミラ」


「はいはい」


ガルムは咳払いをし、リネアが運んできた素材へ目を向けた。


「それで、今日はルクスの修理か?」


「いいえ」


リネアは首を振る。


「作りたいものがあって来ました」


「何を作る」


「狙撃銃です」


工房内の空気が、かすかに変わった。


「私だけの狙撃銃を、一から作りたいんです」



▲▽▲―――▲▽▲



設計は、その日のうちに始まった。

リネアが求めたのは、弾倉給弾式のセミオート狙撃銃。

一発ごとに手動で機関部を操作するボルトアクションの《ロングファング》とは異なり、発射圧力の一部を利用してボルトを後退させ、排莢と次弾装填を自動で行う。


ガルムが銃身と機関部。ミラが弾倉、給弾機構、銃床。

リネアは義眼と接続する照準器の設計を担当した。


「射程だけなら、もっと長くできる」


設計図を前に、ガルムが言う。


「だが、その分だけ銃身が重くなる。嬢ちゃんの身体では長時間構えられんぞ」


「伏射だけでなく、ルクスの背部や遮蔽物からも撃ちたいです。銃身は少し短くしてください」


「威力が落ちるわよ」


ミラが指摘する。


「代わりに弾丸へ魔力を乗せる機構を追加します。最大威力より、必要な場所へ続けて撃てることを優先したいです」


リネアはルクスへ振り返った。


「機関部に使う素材は、これで耐えられる?」


『通常弾使用時の耐久性に問題なし。魔力加速弾を連続使用した場合、機関部温度が許容値を超える可能性があります』


「なら、ここの放熱経路を増やそう」


「増やせば砂や泥が入りやすくなるぞ」


「開口部は作りません。冷却金属を機関部の内側へ通して、銃床下部へ熱を逃がします」


リネアが設計図に線を引き、ガルムとミラが、その設計を覗き込んだ。


「修理屋の考え方だな」


「駄目ですか?」


「逆だ。壊れた時のことまで考えて作る奴は少ない」


そして部品の製造が始まった。

熱した魔鉱鋼を打ち延ばし、銃身を成形する。内部を寸分の狂いもなく削る。

軽量合金から機関部を切り出し、遊底、撃鉄、排莢機構を組み込む。


ミラは試作弾倉を何度も作り直した。

弾丸の角度がわずかにずれれば、次弾が薬室へ入らない。ばねが強すぎれば遊底を妨げ、弱すぎれば連続給弾に追いつかない。


リネアも照準器の製作へ没頭していた。

《アルゴス・レプリカ》から出力される情報。距離、風向、対象構造。ルクスから送られる標的位置と識別印。

それら必要な情報だけを照準器へ送り、視界の中央へ重ねる。


ただ機能を増やせばよいわけではない。何を表示し、何を切り捨てるのか。

これまでに学んだことを、今度は自ら作る道具へ反映していく必要がある。



数週間後、最初の試作銃が組み上がった。

工房裏の射撃場で、リネアがそれを構えて伏せる。


義眼と照準器を無線接続し、遠方の標的へ照準を合わせて、発砲。


一発目は、標的の中央近くへ命中した。機関部が動き、空薬莢が横へ飛ぶ。

次弾が装填され、二発目。弾丸は一発目よりわずかに右へ外れた。三発目は、さらに下へずれる。


「銃身が歪んだか?」


ガルムが銃を受け取ろうとする。


「待ってください」


リネアは照準器を外し、固定部を確認した。問題は銃身ではなく、給弾にも異常はない。

発射時の振動によって、義眼無線接続用の微細伝導線がかすかに揺れている。その一瞬だけ照準補正に遅延が発生し、二発目以降の表示が実際の銃口と一致しなくなるようだ。


「照準器の固定方法が原因です」


「もっと強く固定する?」


ミラの提案に、リネアは首を振った。


「固定を強くすれば、振動が全部照準器へ伝わります。間に、振動を逃がす部分を作ります」


微細なばねと緩衝材を組み合わせ、照準器を軽く浮かせる。

銃身と機関部の振動を直接伝えず、射撃後には必ず同じ位置へ戻る支持機構だ。

さらに、義眼との接続が失われた場合に備え、照準器内部へ物理的な照準線も残した。


「高性能義眼があるのに、普通の照準線も要るの?」


ミラが尋ねる。


「義眼が見せるものが、いつも正しいとは限りませんから」


リネアはバルドの言葉を思い出す。

義眼に頼っても見えるものが増えるだけ。

どれを撃つかは、自分が決めろ。


「接続が切れても、私は撃てるようにしておきたいです」


改良後の試射では、三発続けて好調な結果が続いていた。乾いた銃声が続けて響く。

三発の着弾点は標的の中央ではなく、その外装を固定していた小さな接合部周辺へ集中させ、精度を確認した。


『三射の着弾範囲、許容値以内』


弾着観測をしていたルクスが報告する。

排莢、給弾、機関部温度、照準同期、その全てが正常。


「今度はどうだ?」


ガルムに尋ねられ、リネアは銃床へ頬を当てたまま、確かな手応えを感じつつ答えた。


「これなら撃てます」


「撃てる、じゃないだろう」


ミラが笑う。


「あなたの銃なんだから、名前をつけないと」


完成した狙撃銃が、作業台の上へ置かれる。

ルクスと揃えた、光をほとんど反射しない色である黒い塗装。

長銃身と弾倉式の機関部。リネアの体格に合わせて短く調整された銃床。

銃身直上には《アルゴス・レプリカ》とつながる専用照準器。

それはどの既製品とも異なる、リネアのためだけに作られた狙撃銃だった。


リネアは黒い銃身を撫でる。


「バイナリー……」


『二つの要素により、一つの体系を構成する概念です』


ルクスが思わずつぶやいた古い技術用語の意味を補足してくれる。


義眼と照準器。射手と銃。リネアとルクス。

二つの視点と判断が、一つの射線へ重なる。


「決めました」


リネアは新しい狙撃銃を持ち上げる。


「この銃は《バイナリーライフル》」


そして傍らに立つルクスを見上げる。


「私とルクス。二人で撃つための銃です」


『名称を登録』


ルクスの碧い単眼が、静かに明滅した。


専用狙撃銃バイナリーライフルを、新戦闘連携装備へ追加します』



▲▽▲―――▲▽▲



専用狙撃銃完成から数日後。


グロムロード全域に、激しい警鐘が鳴り響いた。

工房の槌音が止まる。炉を扱っていた職人たちが一斉に顔を上げ、通りへ飛び出した。


「王都から緊急伝令!」


飛行魔術で到着した伝令兵が、中央広場で声を張り上げる。


「王都近郊にアーキテクトの大規模軍勢が出現!外縁防衛線ではすでに戦闘が始まっている!」


その凶報に、広場が騒然となる。


「グロムロードへ緊急派兵要請!戦闘可能な兵士、冒険者、魔術師を急募する!武器、治療物資、魔導兵器も可能な限り王都へ輸送せよ!」


王都グランベルが落ちれば、グロムロードも無事では済まない。

それ以前に、この街で作られた数え切れないほどの武器や装備が、王都で暮らす人々を支えている。

その数多の人々の安寧を守れずして、グロムロードは衛星都市を名乗れない。

故に、工房都市の返答は早かった。


「戦闘員は中央門へ集まれ!」


「輸送馬車を出せ!」


「予備の鎧を全部持ってこい!」


「治療魔導具の在庫を確認しろ!」


兵士が武器を取り、冒険者たちが次々と参加を申し出る。

職人たちも倉庫を開け、自分たちが作った武器と装備を運び出していく。


その人波の中を、黒い四脚の機械獣が悠然と進んだ。

背部搭乗席には《バイナリーライフル》を背負ったリネアが座っている。


「金級冒険者、リネア・ギアライト」


緊急派兵団の兵士へ識別証を示す。


「特殊従魔ルクスとともに、王都への増援部隊へ参加します」


そのとき、周囲にいた冒険者の一人が、驚きとともにルクスを見上げた。


「まさか、あれは……」


別の兵士もリネアの姿に気づく。


「《黒鋼の双璧》だ」


知らない名だった。

リネアは搭乗席から振り返る。


「黒鋼の……何ですか?」


「知らないのか?」


年嵩の冒険者が心強そうな顔をした。


「あんたたちの通り名だよ。ヴァレリアから戻った連中や、街道で助けられた冒険者たちが話している」


黒き鋼の従魔と、その主人。

二人が颯爽と駆けつけた戦場では、守りたいもの全てが守られる。

その風評から、いつしか《黒鋼の双璧》と呼ばれるようになったという。


「全てが守られる……」


リネアは言葉を繰り返した。

その脳裏に、折れた正刀《白雨》が浮かぶ。


ユズリハを守れなかった。

ヴァレリアでは、多くの兵士や冒険者が命を落とした。

自分も右眼を失い、ルクスにも深い損傷を負わせた。


全部なんて、到底守れていない。


『リネア』


ルクスの声が届く。


『通称《黒鋼の双璧》を記録』


「ルクスは、それでいいの?」


『当該通称は、過去の結果を完全に示すものではありません』


碧い単眼が前を向く。


『今後期待される役割を示すものと判断します』


「これからの……」


『肯定』


過去に守れなかったものがある。

だからこそ、次に守ることを諦める理由にはならない。

リネアは背負った《バイナリーライフル》の位置を確かめる。


「分かった」


すぐに、その名に相応しい存在になれるとは思わない。

それでも近づいていくことはできる。


「行こう、ルクス」


『王都グランベルへの最短経路を設定』


グロムロードの中央門が開いた。

王国兵、冒険者、戦闘用魔道具を携えた職人。

治療部隊、武器と物資を積んだ輸送馬車。


王都を守るために集まった増援部隊が、次々と門を出ていく。

工房の前から、ガルムとミラがその姿を見送っていた。


「リネア!」


ミラの声に、リネアが振り返る。


「帰ってきたら、使い心地を教えて!」


「はい!」


「いっそ壊しても構わん!」


ガルムが続ける。


「だが、必ず持って帰ってこい!次はもっと良くしてやる!」


その豪快な宣言にリネアは思わず笑い、大きく頷いた。


「私もルクスも、一緒に帰ってきます!」


ルクスが四脚で大地を蹴る。工房都市の街路を抜け、王都へ続く街道へ。

遠い空には、既に黒い煙が上がっていた。低く響く砲声が大地を伝わってくる。

地平線の向こうで、戦端は開かれているのだ。


王都を破砕するため《砲花》がその牙を向ける。

王都を守るため《黒鋼の双璧》が駆けつける。


リネアは新たな狙撃銃を背負い、ルクスとともに戦場を目指す。


今度は守られるだけではない。

二人で見て、二人で選び、二人で撃つ。


専用狙撃銃バイナリーライフルを携え《黒鋼の双璧》は王都グランベルへ急行していった。



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