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ヒロインに転生したのはいいけれど、悪役令嬢が廃課金勢だったので開始前から命の危機です。  作者: 藤 野乃


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リリィの留学


「リリィ、パレードには見に行くの?自国の王族の結婚パレードでしょ?」


 ララという平民の女の子が、私に問いかけた。

 榛色の瞳が好奇心でキラキラ輝いている。

 魔法薬の素材の薬草を引っこ抜きながら、私は返事をした。


「一応、行くつもり。これでも貴族だから、行かない選択肢はないのよね」


 私とララは、お互いの泥で汚れたエプロンを見て笑い声を上げた。


「じゃあ、お土産話聞かせてね!」


「もちろんよ」


 ──ファピンでは、私はそこそこ自由にさせてもらっている。

 寮ではなく、一人暮らしだ。

 侍女もいないし、平民と変わりない生活をしている。

 三年は好きにさせて! と盛大にゴネて、勝ち取った生活だ。


 (そうは言っても、監視や護衛は付いているとは思うけど……)


 魔術学院に入学して一ヶ月半ほど経った善き日。

 私は気は乗らないままで一時帰国をした。

 オラトリオ王国皇太子、エドワール殿下とヴァレフォール家のセレスティーナ様の成婚パレードが行われるからだ。


 アーヴェルン家には観覧席が用意されている。

 私はお義父様と並んで腰掛け、日差しを避けるための白い日傘を広げている。

 広場は人で埋め尽くされ、沿道には色とりどりの花飾りと旗が揺れて実に華やか。


「さすがに盛大ね……」


 私の呟きに、お義父様は穏やかに笑った。


「国を挙げての祝祭だからね。国民に治世は安泰だと示すためでもある」


 やがて、遠くから楽隊の音が近づいてきた。

 ざわめきがひときわ大きくなり、人々が身を乗り出す。


 先導の騎士団、従者、花を撒く子供たち──

 そして、白馬に引かれたパレード用馬車に乗った王太子夫妻が姿を現した。


 セレスティーナは純白のドレスに、サファイアのティアラ。

 王太子の青いマントと響き合い、まるで青空の太陽と輝く月のようだった。


 私は無意識に息を呑んだ。

 隣では、お義父様が目を細めてその姿を見つめている。


「……見事ね」


 自分の声が、少しだけ震えているのがわかった。

 セレスティーナは、これ以上ないほどに美しい。


(これが、この国の選んだ表向きの未来──)


 私は視線を落とし、胸の前でそっと手を組んだ。

 これでいい、これでエンディングだ。


(このまま……私は私の道を行く。三年後、何を選ぶかはその時の私が決める)


 観覧席の拍手が波のように広がる。

 私は深呼吸をして、胸いっぱいに王都の空気を吸い込んだ。

 今日はセレスティーナの象徴である、バラの香りが王都に拡がっている。


 だけどこの香りは希望の香りではなく、政治家の思惑が作り上げた謀略の香りだ。

 国外や国民には幸せな結婚に見えるだろう。

 

(だけど、本当は──)


 何とも言えない気持ちだった。

 成婚した以上、セレスティーナはもう舞台から降りることも逃げることも不可能だ。

 待ち受ける未来はハッピーエンドじゃない。


「大人たちは既にお見通し……ということよね」


 私の言葉に、アーヴェルン伯爵は頷いた。


「本人はうまくやったつもりだろうがね、所詮は子供だ。綻びが見え始めた時点で勝負は決まっていたんだよ」


「ええ」


「年若い令嬢がそこまでやっていたと。我々が驚いたのは確かだけれどな」


 セレスティーナの誤算は大人を甘く見たことだ。

 疑いが向けられていなかった子供のうちに、悪事は辞めておけば良かったのに。


 (今更よね。いつか聞いてみたいものだわ。一体なにがセレスティーナをそこまでさせたのか)

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