表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインに転生したのはいいけれど、悪役令嬢が廃課金勢だったので開始前から命の危機です。  作者: 藤 野乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/68

卒業パーティ

卒業パーティ

「どうせ中座するんだから、コルセットは緩めで……グェ」


 ユリと侍女たちが、容赦なくコルセットを絞りあげる。


「し、死ぬぅ」


「そんなに締めてませんよ、あと三センチはいけるはず」


「無理無理無理」


 ようやくドレスアップが終わる。

 光沢のあるクリーム色、シンプルゆえに生地の素晴らしさが映える。

 私は、そういう方が好み。

 リュリエ様から贈られた蛍石のパリュールが、布張りの盆に乗っている。


「本当にアーヴェルン・グリーンね」


 見事なネオングリーンの石だ。

 本当に私の瞳と同じ色。

 ユリが、普通の蛍石とブライヤー蛍石の違いを話し始めた。


「普通の蛍石は比較的安価ですが、ブライヤーの蛍石は別格です。濃密な魔力を内包しており、色は鮮やか。宝石質であることから非常に高価格で取引されています」


 少し不透明なはずの蛍石。

 宝石質かつ高魔力のブライヤー産は、エメラルドやサファイアと遜色ない煌めきを放っていた。


「せっかくの卒業祝だから、いただいたけれど……」


 私は煌めくグリーンを纏いながら首をかしげ、呟いた。


「リリィ様。ブライヤーからというのが大事なのですわ。先の革命を踏まえ、両国は円満だというデモンストレーション──歩み寄る必要があるのです」


「なるほど、ねぇ……」


 パチリとネックレス留め具がはまる音がした。

 ちょっと大きすぎるかな?と思えるような大粒の蛍石。

このネックレスの大粒の蛍石は鮮やかな緑色と青が混じりあい、エンジェルフェザーと称される羽のようにも見える内包物が下方に散っている。


「不思議な石ねぇ」


「蛍石は、どのような色も許されておりますから……皇女殿下は紫系の蛍石を身に付けられるようですわ」


「ああ、ローゼは瞳が赤紫だもの、きっと綺麗ね?」


 エスコートは、相変わらずお義父様だ。

 時間に余裕を持って馬車に乗り込む。


「リリィ、卒業おめでとう。今日は楽しむというより、第二のデビュダントという意味合いのパーティになるけれど」


「はい、お義父様」


「起きること全てに、気を払いなさい。すべての事に政治的思惑が乗っている」


「……はい」


 何が起こるというの?卒業パーティなのに。


「ああ、何か起こるわけではないよ」


 私の気持ちを察したように、お義父様が言葉を続ける。


「ダンスの順番、それぞれの子女の装い……全てに意味があると思っておくように。私からはこれくらいしか言えないのだけれどね」


(言えない事に、ヒントを与えてくれている──ということ?)


「はい、お義父様。アドバイス、しかと承りましたわ」


 ジルベールはホッとしたように微笑んだ。


「リリィ、君は私たちの誇りだよ。聡くて助かる」


「ありがとうございます、お義父様」


 馬車の窓から見える学園の夜会場が、灯火に包まれて近づいてくる。

 殿下に会える……胸の奥が少しだけ高鳴る。


(お義父様の言う通り──今夜はただのパーティじゃない)


 馬車が止まると御者が扉を開ける。

 私はドレスを整え、お義父様にエスコートされて会場へ足を踏み入れた。


 シャンデリアの光が床に散り、会場の視線が一瞬こちらに集まる。

 その中に、殿下の姿があった。

 蛍石のイヤーカフが、私の耳元と同じ色で煌めいている。


 しばらくは挨拶と談笑。

 やがて、照明が絞られてダンスタイムの合図。


 ふと気がつくと、先ほどまで女王のように中心にいたセレスティーナの姿がない。


「ヴァレフォール嬢はドレスのトラブルで、中座しているだけだよ」


 前を向いたまま、お義父様が呟く。


(やっぱり……大人たちは、ちゃんとなにか見せてくるのね)


 殿下は一歩前に出て、私の前に立った。


「アーヴェルン嬢、今夜はおめでとう」


「ありがとうございます、殿下も」


「一曲目、踊っていただけますか」


 お義父様が僅かに私の腰を押す。


(行け、ということか──)


 差し出された手を取ると、会場の空気がわずかにざわめいた。

 けれど、私は微笑んでその視線を受け止める。


(これも全部政治的、見せ場なのね)


「リリィ嬢」


 熱い吐息、密着する身体、少しだけ力強いリード。


「私は全て聞いている──リリィ嬢、私に三年くれないか?」


「えっ」


 音楽に合わせ、殿下が腕を引く。

 くるり、と私は駒のようにターンした。


「私は君を好いている。そして君もそうだと知っている」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ