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ヒロインに転生したのはいいけれど、悪役令嬢が廃課金勢だったので開始前から命の危機です。  作者: 藤 野乃


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思い通りに動かないヒロイン


 皇女と皇太子、その保護者と護衛を兼ねた私の父が来たのは八の月。

 来月からは、新学期となる。


リュリエ・ハルトリーゲル(皇帝の同腹弟)

ローゼ・ハルトリーゲル(第一皇女)

ハルトヴィヒ・ハルトリーゲル(皇太子)


 新学期前の長期休暇で寮を引き払い、帰宅。

 着々と事態は大人たちの予定通りに進んでいく。

 従姉妹のローゼはキャラ被りかと笑ってしまうくらい美しく、セレスティーナと雰囲気が似ていた。

 身分もローゼの方が上だし、セレスティーナはあまりいい気分では無さそう。

 

 私の従姉妹の内面は、面白がりで笑い上戸なのでセレスティーナとは全然違うけれど。

 

 ハルトヴィヒ様は物静かで、とても聡明だ。

 魔法と読書を好み、音楽も嗜む。


 私の父親、リュリエ様は──よくわからない。

 私から話しかけるのもちょっと躊躇われるし、向こうもそんな感じ。


(でも、嫌な人たちじゃなくて良かった。うまくやっていけそう)



 進級すれば、特別寮でリリィを孤立無援に追い込める。

 その計画が崩れたのは、新学期目前の休暇中だった。

 寮に置いてあったものを取りに行った時に、特別寮を取り仕切っているアンダーソン夫人に呼び止められ、セレスティーナは足を止めた。


「ごきげんよう、アンダーソン夫人」


「ごきげんよう、セレスティーナ様。来月部屋割りなのですが──」


 アンダーソン夫人が差し出した図面を見て、セレスティーナが呟く。


「あら? このお部屋はリリィ様のお部屋じゃなくって? 移動されるってことかしら」


「いえ、退去です。一昨日引き払われました」


「まあ、そうだったのですね。驚きましたわ。リリィ様、なぜ退去を? 体調は大丈夫なのでしょうか」


 セレスティーナは少し心配そうな素振りでアンダーソン夫人に尋ねた。


「お元気そうでしたよ? 退去理由はアーヴェルン家から学園長に伝えてあるそうで、こちらには特になにも──あ、使用人に焼き菓子は贈られてましたが」


 セレスティーナは落ち着いた様子で頷いた。


「わたくしは、授業でお会いできますもの。急に決まったことなら……寂しくはなりますが、仕方ありませんね」


 屋敷に戻る途中の馬車の中で、セレスティーナは窓から景色を眺めながら考え込んだ。


(いきなり退去する理由は……なに? そんな兆候、見逃すはずがないのだけれど)


 学期末のリリィの様子を思い返しても、特に変わった様子はなかった。


(メラニーにも、連絡がつかない)


 屋敷が使えなくなってから、しばらくメラニーとは連絡がつかずにいたのだが。

 サラに探らせた結果、メラニーは六の月に退職しており実家は四の月に騎士爵を返上していた。

 方々調べたが、実家の人間は国外に出たところまでしか足取りがたどれない。


(どこに行ったというの? メラニーは指示以外の事はしないはず……となると、本人の意思に関係なく?)


 王家との交流は順調、エドワールとも表面上は円満だ。


 順調なのは間違いないのだ。

 セレスティーナには弟が生まれ、父親も義母もそちらにかかりきりだったが……家族ごっこをするつもりはないので、ありがたいくらいだ。

 そのおかげでセレスティーナは多少動きやすくなっていたし、情報もしっかり収集出来ていたはずだった。


(でも、なにかおかしい)


 用心深いセレスティーナは、現時点で相当数の手駒を処分している。

 あと一年しかないのだから、身辺は綺麗にしておかなくてはいけない。


 屋敷に戻り、アイテムの薔薇地図を取り出しチェックする。

 これは王国の地図と同じだが、課金アイテムを使用した人間を地図上に光点で表示させる管理ツールでもある。

 便利なだけに、制約があって一度開いたら次回見られるのは五十日後。

 今日はようやく地図を開ける日だった。


「…………」


 死亡すれば、光点は消える。

 セレスティーナが現在使っている手駒は十七。

 だが、光点は三十を超えている。


(手駒が死んだ場合、消えるけれど精度が良くないから、数年表示され続けたこともあった……)


 そこは人数が少ない時に、確認してある。

 表示される場所も変な場所になってることが多々ある。


(薔薇地図、ゲーム同様バグが多すぎてあてに出来ないけれど─)


 名前まで表示されれば、もう少し信用できるのだけど。

 セレスティーナは溜め息をつき、地図の内容をノートに書き入れた。


 サラは有能だけれど、ユリを仕留めきれないでいる。

 先日も、何故か毒物が効かないと報告を受けた。


(これについては、なんとなく理由はわかる。イルマはわたくしがなんの毒を持っているか知っているし、取引先も知っている。予測していれば解毒剤を用意するのは容易い)


 特殊な毒はリスクが高い。

使うなら、誰にでも入手可能な毒でなければ。

 セレスティーナは次期王妃……嫌疑をかけられる、それだけで大ダメージになりかねない。

 それが無罪になったとしても、だ。


 在庫が少ないので多用は出来ないが、絶対に検出されない毒物はある。

 もちろん、一度は試してみた。

 イルマ抹殺は最優先だからだ。

 

 だが──


(信じられないのは、課金アイテムの毒を弾いたこと)


 サラの使い方が悪かったか、偶然に回避したのか。

 何もなかったようにふるまうリリィの侍女。


(耐性がある? まさかね)


 使うタイミングが悪くて、ステータス異常を起こす課金アイテムの薬剤は不発に終わることが稀にある。


 その稀が起きたというのだろうか?


(落ち着いて。これからどうするのが最適か、判断しなくては)


 セレスティーナは机上のお茶会への招待状に、返事を書き始めた。

 攻略対象の婚約者たち、彼女たちからの情報もまた、有益だ。


(これ以上、アクションを起こすのは得策じゃなさそう……この一年、完璧にやり過ごして成婚するのが目標だわ)


 邪魔者の抹殺は──王妃になってからでも、間に合うもの。

 むしろその方が効率的かもしれない。


「ふふ、王妃になってからね。焦る必要はありませんわ」



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