表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインに転生したのはいいけれど、悪役令嬢が廃課金勢だったので開始前から命の危機です。  作者: 藤 野乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/60

セレスティーナの焦り

セレスティーナの焦り

「……何が起きているのかしら」


 セレスティーナは囁くような声で、呟いた。


(何もかも進まない)


 五歳から十六歳までは、ほぼ思い通りに周囲を動かしてきた。

 リリィという雑音はあったけれど。


(ネリネを処分しきれなかったのが大失敗だった)


 きゅ、と捻られたハンカチをひっぱる。

 明らかな失敗が続いていた。


 ミア、ネリネの襲撃。

 セレスティーナはどちらも足が付くはずないルートで実行班を手配していた。

 だがミアの件で四名、ネリネの件で三名貴重なアイテムを使った手駒を失った。


(持っているのは前世で実際に買ったアイテム分だけ。……どこかで売っているわけでもないし、補充されるわけでもない)


 大量にあったアイテム。

 計算通りならば、学園卒業時点で充分在庫を残したままいけるはずだった。


 だが、卒業まであと一年以上あるというのに『課金アイテム』は想定外に減っていっている。


(よく考えるのよ、この残ったアイテムは無駄撃ち出来ないのだから)


 セレスティーナが大量に持ち込んだのは、魂解の雫──文字通り魂を解体して再編成する液体だ。

 思考能力を奪い、どんな命令も拒めない悪役令嬢ハードモード専用アイテム。

 転生スタート時は百個以上あったのに、今は七つを残すのみ。


(使いどころを考えないと、卒業までもたない)


 サラやメラニーに使った『敬愛のルージュ』の在庫はもう無い。

 絶対的敬愛を勝ち取り、主を裏切らないという効果があるけれど思考は奪わない。

 バランスのいい性能なだけに、特別パックにしか入ってない希少アイテムだった。


「確認しないと」

 

 小さい吐息と共に言葉も吐き出して。

 伏せられた長い睫毛が、愁いを帯びた頬に影を落とす。

 セレスティーナは残ったアイテムを確認し、計画を練り直す。



「ふふ、典礼の教養やマナーは、なかなかセレスティーナ様には追い付けませんわ(それ以外は余裕ですけどね)」


「まあ。首席のリリィ様にそう言っていただけるなんて!典礼やマナーは……わたくし、六歳から王妃教育受けておりましたので(孤児でしょ、あなた)」


 特別寮のサロンで、私とセレスティーナは和やかに談笑している。

 新入生に特別寮に入った令嬢はいない。

 つまり、寮にいるのは私とセレスティーナ、進級後、寮長になったフローラ・モートン侯爵令嬢だけだ。


「二年生はレベルが高いって先生方も、仰ってましたわ」


 かわいらしい小鳥のような雰囲気のフローラ様が、囀ずるような声でサロンの雰囲気を和らげている。

 私は控えめな笑顔で答える。


「それは間違いありませんわ! 二年生には王太子殿下の婚約者がいらっしゃるのですもの。仲睦まじくいらっしゃるし……成人を控えて、お忙しいみたいですけれど(最近、構われてないっぽいけどね!)」


 セレスティーナは口角を上げ、首を傾げる。

 見事な銀糸の髪が、さらさらと肩を流れていく。


「ふふ、婚姻のドレスデザインも、そろそろ決めないとって昨日話したばかりですわ(王妃になるのは、わたくしよ)」


 きゃぁ、とフローラ様は喜び話題は流行りのドレスや装飾品ヘ穏やかに移行して、その後少しだけ政情に触れることになった。


「私は、卒業後に帝国の貴族に嫁ぎますから、セレスティーナさまの婚姻パレードは見られないかもしれませんの」


 フローラ様が残念そうに、自分の薬指の指輪を眺めた。


「ああ、ブライヤーは去年革命がありましたものね。オラトリオ王国でも婚約者のすげ替えや交替で大騒ぎで」


 そう。

 隣国ではあるが終戦後ずっと緊張状態にあったブライヤー帝国では、去年クーデターが起きている。

 新皇帝は、穏健派の公爵家が出した正妃の産んだ子。

 

 排斥された皇帝は、寵妃──過激派の侯爵令嬢の産んだ子だった。


 新皇帝は腐敗した政治を正すべく、年の離れた異母兄を廃し自ら皇帝となったのだ。

 これにより、政治バランスは大きく崩れたのだが…………。

 周辺諸国は、平和に向かって動き始めているブライヤー帝国の変化を概ね好意的に受け止めている。


「帝国は変わっていきますわ、フローラ様。わたくしたちは家を繋ぐことしか出来ない微力な女性ですけれど。だからこそ、正当な婚姻には意味があるのです」


「そうですわね、政略ではありますけれど。帝国と王国を繋げる大事なお役目と思って、嫁ぎますわ」


 貴族子女って本当に大変。

 役目を厭って駆け落ちしたお母様が、アレコレと未だに悪く言われてるのも納得だ。


(来期、私たちが最上級生になればセレスティーナが寮長。新入生では二家から寮生が来る……)


 ヴァレフォールの分家の二つだ。

 この情報が入ってから、カーティス、ヴィユノーク、アーヴェルンは水面下で根回しを始めた、


(寮に居続けるのは、あまりにも危険──)


 どうにか『通学』に切り換えられないか、ということだ。

 だが、通学となると侍女は付けられない。

 あと数ヶ月で、打開策が必要だった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ