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ヒロインに転生したのはいいけれど、悪役令嬢が廃課金勢だったので開始前から命の危機です。  作者: 藤 野乃


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多層化した魂?

多層化した魂?

「……あなた、私が誰かとは聞かないのね?」


 カーティスの問いは、突然だった。

 ソファに腰を下ろし、私をじっと見つめる。

 彼の目は微笑みを浮かべているが、その奥底に別の冷たい色を宿している。


「まあ……知ってる、から?」


 私は憮然とした表情で答え、カーティスは満足げに頷いた。

 思った通り、彼は自分が何者かを説明する気はないようだ。


 ──でもそれでいい。

 

 こちらも「知っている」前提で進めていく。

 下手に初心ぶるよりよほど誠実だし、話も早い。

 この男とは駆け引きしてはいけないのだ。


「あなた──さっき私をおかしいって言ったわね」


「ええ。魂の話よ」


 カーティスは嬉しそうに目を細める。


「普通の魂じゃなかったの。正確には……多層化してる。あの茂みが反応した理由も、納得よ」


「多層化……?」


「そう。本来この世界に存在しない情報が、魂の基盤に組み込まれてる。まるで──別の物語を内包した構造体、みたいにね」


(──なに言ってるんだかさっぱりだわ。クールでミステリアスな設定のカーティス、どこ行った?)


 だが、私はうろたえなかった。

 むしろほんの少しだけ安心した。


(ゲーム通りじゃないのが、逆に利用できるのでは?)


 ──この人は、ゲームの隠しキャラ。

 設定としては意味不明の言動が多く、魂を識別し異常を見抜く、ワケアリ自由人。

 しかも──王家の血を引く隠しキャラなのだ。


 更に付け足すなら、正解ルート以外はすべてバッドエンド。

 ミスったら終わりだ。


「そんなあなたが、茂みに捕まった。魂に反応した魔術装置が作動したのは、当然といえば当然ね」


「なんで?」


「あれは本来、霊的干渉存在や異界体を捕らえる罠なんだから」


「えっと……私は、そういうものに分類されてるの?」


「現象的には、ね。でも肉体は人間で、健全に成長もしてる。なのに魂だけが異常。これはもう、観察するしかないじゃない?」


 カーティスは瞳を輝かせながらそう言った。

 ──完全に、研究対象を見る目である。


「……あなた、私が気味悪くないの?」


私の問いに、カーティスは肩をすくめた。


「怖い? どうして? 私にとっては、とても貴重な出会いよ。あなたが何者であれ、目の前にいるのは、一人の知的存在。怖がるなんてあり得ないわ。むしろ、歓迎?」


うわ、めちゃくちゃ変人だけど、思ったより話が通じる。


(いや、通じてるとはいえない気はするけど)


私は心の中でそっと評価を上方修正した。

距離の取り方は独特すぎるが、少なくとも悪意はない。

今のところは、味方に出来そうな雰囲気だ。


「じゃあ……私が、前世の記憶を持ってると仮定したら?」


「前世、ね? ──ふふ、言ったでしょう? その魂の多層化、まさにそれだと思ってたの。さあ、聞かせて。どんな記憶を持っているの?」


カーティスの目が、ほんの少しだけ危険な光を宿す。


私は唇の端を上げた。

さあ、ここからが勝負。

 

(どこまで話すかは慎重に決める必要がある……)

 

何しろ、ミスったら殺されちゃうんだから。


(ただ──今は、シナリオ外の期間。ある意味、すごいチャンスかもしれない)


「──お話しましょうか、順番に。興味があるのなら」


「もちろん。お茶を用意させましょう。紅茶がいい? それとも……話が盛り上がりそうなら、夜まで付き合う気満々よ?」


「お茶は、砂糖抜きでお願い」


「おやまあ、子供なのに渋いわね。了解よ、これは長くなりそうね」


 ──魂の正体、物語の構造、そして選択肢の話へ。

 会話は、次第に深みへとのめり込んでいく。



 私が口を開くと、カーティスの目の奥が明らかにギラリと輝いた。


「──前世、私は違う世界でゲーム──物語形式の遊びがある世界にいたの。プレイヤーは物語の主人公となって複数の相手を攻略していく」


「ふうん?」


「その中に、あなたのような……いえ、あなたにそっくりな隠しキャラも存在していた」


「ゲーム? 物語? 攻略? それって──選択によって未来が分岐するような!?」


椅子の背もたれに寄りかかっていたカーティスが、ガタンと音を立てて身を乗り出す。

まるで、長年探し求めていた答えを目の前にぶら下げられた学者のように。


「それはつまり、位相の確定前選択可能性が、個人の意思で発動するということ!? 因果律に干渉できる……それも感情の揺らぎや好意の傾きで!? きゃああ、最高じゃない!」


(やっぱり何を言いたいのか、良くわかんないんだけど……?)


「……落ち着いて?」


 私は引きつった笑みを浮かべつつ、紅茶を啜った。

 侍女がそっと退出してくれていて助かった、と内心で思う。

 誰かにこの様子を見られたら、完全に変な人に詰め寄られる八歳児にしか見えない。


「ちょっと! その攻略って具体的に何通り? それぞれにどんなルートが!? 恋愛の深まり方に応じて、世界の状態も変わったりした? 」


「落ち着いて、ねえ」


「環境の分岐は?国家の動向は!? ゲーム内時間は何年スパン!? 全ルートに通底する共通イベントって存在する!? 」


「質問が多い!」


「すっっっごく聞きたいのよォ……!」

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