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うたた寝

 昼食が多すぎたのだ。

 朔也は遅くなると言っていた。おそらくデートだ。夕食はどこかで済ませてくるだろう。

 冷蔵庫の中の残り物を、無駄にしたくない一心で消費した。胃の要領ぎりぎりの量を食べると、眠くなるものだ。

 空調で整えられた室内で、心地の良いソファに体重を預けて、少しだけ寛ぐつもりだったのだ。


――ぐっすり眠っちゃったなぁ


「あ……もうこんな時間」


 結局あみぐるみには何も手をつけないまま、すっかり夕方になっていた。

 日はまだ落ちていないが、大分低くなっている。

 制服も着替えていない。


――とりあえず部屋に戻ろう


 スマートフォンを手に取ると、ちょうど数分前に望美からメッセージが入っていた。


『そろそろ来る?』


 という内容だった。


『今から着替えたら出ます』


 そう返信して、スマートフォンはテーブルに置いたまま、二階の自室に向かった。



◆◆◆



「着替えたら来るって」


 返信を確認した望美は、従姉妹が来るのを今か今かと待つ娘を、可笑しそうに笑った。


「なんだ。制服から着替えてすらなかったのか。結構ずぼらだな」


 俺ですら既に着替えてるのに! とどこか自慢げな遼を、蓮は不思議そうに見つめていた。


「ゆうちゃんは兄ちゃんみたいに無駄に動かないから、あんまり汗もかかないんだと思うよ」

「蓮おまえなー」

「あ! お父さんお帰り!」


 賢一が帰ってきた。

 望美が時計を確認すると、午後六時を回ったところだった。


「今日ゆうちゃん来るんだって? まだ来てないの?」


 帰りがけに寄ったのだろう。

コンビニ袋からアイスを取り出している。


「さっきもう家を出るって連絡きてたから、そろそろだと思うんだけど」

「途中まで迎えに行ってやるか」


 仕事着のまま、再び賢一は外に出た。侑子たちの家まで徒歩で二十分程。後ろから「私も行く!」と愛佳が、「俺花火買いに行く」と遼が続いた。


 湿気を含んだ夏の夕方の空気が、鼻孔をくすぐる。

 今夜も熱帯夜だな、と賢一は思った。

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