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青い半魚人  作者: 松下真名
第二章
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168/202

手紙㉚――スズカから侑子へ

ユーコちゃん


元気にしてますか?


まずはご報告。


歳納期に入ってすぐの日曜日、晴れて私はサクヤさんと結婚することができました。

 

なんだかこうやって文字にすると、照れくさいね。


結婚式の写真、送るね。

魔力を使わずに撮影できるカメラを、この日の為にアオイが頑張って作ってくれたの。

『画質はこれ以上上げられなかった』って、アオイにしては珍しく落ち込んでたけど、私もサクヤさんもとっても嬉しかったんだよ。皆の笑ってる顔、しっかり写ってるでしょう?

ユウキのこと多めに撮っておいたからね。


そういえば、ユーコちゃんのお兄さんの名前もサクヤさんって言うのよね。

名前だけでも親近感が湧くのに、年齢まで一緒って聞いたらもう、時空の隔たりなんて感じないほど身近に思えちゃう。

海外への転勤が決まったとのことだけど、ユーコちゃん、少し寂しくなっちゃうかな? そんな歳じゃないか……うちの妹は私が実家からいなくなっても、「部屋が広くなったー」なんて喜んでるんだよ。もうちょっと言葉を選んで欲しいよねえ。まぁ仕方ないかな。実家を出たって言っても、同じ王都内で引っ越しただけだし。


私とサクヤさんの家は、変身館の近くなの。

サクヤさんは職場が変身館だし、私も引き続きアルバイトで雇ってもらってるからね。

 

ライブハウスのことは、ジロウさんやユウキから聞いてるかな。

魔力不足は全国的に続いていて、インフラ設備が以前から整えられていた水道以外は、ほぼ使えない状況。

電気を使う楽器や音響機材は使わずに営業してるの。


でもね、意外とこれが楽しいのよ。

「使えない」とか「制限がある」って聞くと、窮屈で不自由な印象があるかもしれないけど。

皆新しいことを模索するのを楽しんでる。歌歌いや音楽家達って、きっと楽しみを見つける才能を持ってるよね。

 

それにね。

これは歌歌い達に限ったことじゃないけれど、あの政争の時とは違う。


前代未聞の事態が起こっていて、終わりは見えない。

そんな苦しい状況であることは、あの政争と同じだと言える。

だけど政争の記憶を皆覚えてるから……あの時の過ちや反省を心に刻んでいるから、繰り返すもんかって、皆どこかで踏ん張ってる。


魔力ってね、心を動かすような出来事を感じると増幅するの。知ってた?

楽しい音楽を聞いて踊りだしたくなった時、美しい虹を空に見つけた時、大好きな人が笑った時。

そういう時に魔力は上がるの。


そういう理由もあって、皆少しでも日々を楽しもうって意気込んでるんだよ。全員よ。だからもう、すごくエネルギッシュ。

暗くなってばかりじゃいられない。

取り乱して悪い考えに支配されたら、あの政争の悲劇が繰り返されるだけだから。


笑って、美しいと思う物に心を動かして、内側から力を感じるの。

そうすれば不思議と、この先もどうにかなるはずって気持ちになるんだよ。

根拠なんてないんだけどね。でも根拠が見当たらないからこその、強い力なんじゃないかな。


だって理由が見当たらないなら、そこに理由付けるのは、自分の心一つなんだからね。



スズカ


 

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