手紙㉖――侑子からユウキへ
ユウキちゃんへ
風邪、やっと治ってきたよ。
昨日から学校にも行ってる。
熱を出したのなんて、何年ぶりだっただろう。
二週間後には学園祭。
ステージ発表に向けて、練習も本格的になってきたところだったのに、喉をやられちゃって、まだ咳が止まらないの。
熱は二日で平熱に戻ったけど、まともに喋ることもできない。
歌えない。
ボーカルがいないんじゃ、練習にならないよね。
皆は心配してくれてるけど、申し訳ない。
だから部活中は、ギターの練習ばかりしています。
声が出ないって、思ってたよりずっと不便。
話したいことがあっても、声にできないし。
歌いたいのに、歌えない。
来週にはちゃんと声が戻ってるといいな。
そっちは皆、元気ですか?
魔力のことは、相変わらずなんだよね。
また地震があったって聞いたよ。
最近、大きな揺れが珍しくなくなってきてない?
地震のことで騒がれ始めた頃は、弱い揺ればかりだったのに。
心配しないでって、ユウキちゃんは言ってくれるけど、そんなの無理だよ。
心配するに決まってるでしょ?
地震も、台風も、水害も。
絶対に大丈夫だなんて、誰にも分からないよ。
だから、安心なんてしないで。
学校は楽しい。
部活も好き。
友達も好き。
家族も好き。
私は今、ちゃんと幸せだよ。
それでも、そっちの世界に行きたくてたまらない。
なんで私は、戻ってきちゃったんだろう。
ユウキちゃんの声、聞きたいよ。
歌を聞きたい。
ユウキちゃんの歌を聞きたい。
そばに行きたい。
揺れた時、手を握っていたい。
大丈夫?ってすぐに聞いて、抱きしめたい。
怖くてたまらない時には、触れて確かめたい。
ちゃんとここにいるって、確かめたい。
今日、自分の声がほとんど出なくなって、なんだか急に怖くなった。
声って、目に見えないでしょう。
触ることもできない。
聞こえなくなったら、どこにも残らないような気がして。
絶対にそんなことないって思ってる。
だけど本当は、ずっと怖い。
ユウキちゃんの声を、忘れちゃうんじゃないかって。
そんなことありえないよって、目の前で笑ってほしい。
声が聞きたいよ。
どうして会えないの?
侑子




