手紙㉕――アミから侑子へ
ユーコちゃん
ずっと返事が書けないままだった。申し訳ない。
ユウキからも聞いていると思うけど、親族に不幸があってね。しばらく帰れない日が続いたんだ。
たくさんの資料をありがとう。
そちらの世界の『昭和』という時代には、大きな戦争があったんだね。
以前送ってくれた世界史年表とも照らし合わせてみた。興味深かったよ。
人類の歴史が戦争の歴史でもあることは、こちらもそちらも変わらないらしい。覇権がどの国、どの地域に渡るかによって、他の国々が受ける影響が微妙に変わってくるだけだ。
魔法の存在しない世界の戦争とは、どんなものなのだろう。
核爆弾というものも気になった。聞き慣れない言葉だった。
ニホンが唯一の被爆国だということも。
ユウキからは、あまり怖い話を書くなと念を押されている。
だけどユーコちゃんは、何も知らされない方が嫌だろう。
俺は、そういう子だと思ってる。
だから、最近この国で騒がれていることを書くよ。
魔力を持たない子供が、生まれるようになった。
どういうことか分かる?
生まれた時から、魔力を全く持っていない赤ん坊が確認されるようになったんだ。
ヒノクニでは、母親の中で命として芽生えた時から、子供には魔力が生じ始める。
それが、なかったということ。
一時的なものでもない。
生まれてから時間が経っても、魔力が生じない。
魔力を見ることができる者が確認しても、何も見えない。
保有する魔力が、完全にゼロなんだ。
一人だけではないよ。
地震が頻繁に起こるようになった頃から、そういう子供の誕生が報告され始めた。
モモカちゃんもだ。
彼女にも、魔力がない。
これから成長していく中で魔力が生じるのか、それはまだ分からない。
もう一点ある。
こちらは、ヒノクニに暮らすほぼ全ての人間に起きている。
消耗した魔力の回復が、以前より明らかに遅くなった。
全く回復しなくなった人もいる。
程度には個人差があるけれど、以前と同じように魔力を回復できる人間は、ほとんどいない。
魔力を持たない子供が生まれるようになったことより、今はこちらの方が大きく騒がれている。
当然だろうね。
ほとんどの人間が、当事者なのだから。
俺もそう。
ユウキも。
だから今は皆、なるべく魔法を使わずに生活している。
ただ、一人だけ例外がいる。
ツムグくんだ。
彼だけは、以前と変わらない速さで魔力を回復させることができている。
今のところ、俺たちに分かっている違いは一つ。
ツムグくんの魔力が、無属性だということだけだ。
これが何を意味するのかは、まだ分からない。
進展があれば、また知らせるよ。
アミ




