手紙㉒――侑子からユウキへ
ユウキちゃんへ
リリーさんの赤ちゃんが生まれたってお知らせ、受け取ったよ。
直接おめでとうって言えたらいいのにな。
文字だけじゃ、伝えきれないね。
エイマンさんの手紙に、リリーさんが手が震えて字が書けないって書いてあったんだけど、大丈夫?
赤ちゃんの名前は、どんな名前になるのかな。女の子なんだよね。
楽しみだな。決まったら教えてね。
なんとなくだけど、エイマンさん、すでにメロメロにされてそう!
私の方は、部活の合宿が終わったあとも、毎日のように音楽に触れて過ごしています。
夏休みのはずなんだけど、ほとんど毎日、部活で学校に通ってるよ。
この間の合宿でね、みんなの前で野本くんと二人でユウキちゃんの曲を歌ったの。
中学の時に、佐藤先生と二人で歌ったこともある曲だよ。
やっぱりユウキちゃんと一緒に歌った時より、ずっと難しく感じた。
どうしてだろうね。
ずっと考えてたんだけど、はっきりした理由は思い浮かばなかった。
強いて言えば、ユウキちゃんが私に合わせるのが上手だからかなぁ。
理想通りの出来とは言えなかったけど、評判はよかったみたい。
もっと完成度を上げて、学祭で披露しようって話が部活の中で進んでるんだ。
そんなわけで、今はいつものバンドメンバーで練習してる。
野本くんが「この歌難しい」って苦戦してるけど、きっと大丈夫。
もっともっとみんなに、ユウキちゃんの曲のすごさを伝えたい。
あと……ちょっと聞きたかったんだけどさ。
私の手紙、もしかして素っ気なく感じる?
ユウキちゃんみたいに、思ってることをもっと素直に書けたらと思うんだけど……好きとか、愛してる……とか。
恥ずかしくて、どうしても書けなくなっちゃうの。
だけどユウキちゃんの手紙を読み返すたびに、こんなふうに……なんていうのかな。
もっと素直に気持ちを伝えられたらなって思うんだよ。
だって手紙を読むたびに、私はすごく幸せな気持ちになれるから。
私もユウキちゃんのこと、同じ気持ちにさせたいなって。
いつもユウキちゃんのことを考えてる。
声を忘れたくなくて、歌い方を思い出したくて、だからいつも歌ってるよ。
合宿の間、あの曲を歌ってる時、ユウキちゃんと初めて会った噴水広場を思い出してた。
青い鱗。
昼間から夜に変わる空の色。
拍手の音。
人形を操るユウキちゃんの指。
楽しかったな。
本当に全部、全部大切な記憶になってる。
ダメ……記憶って書くと、ダメかも。
悲しくなっちゃう。
過去になっちゃう。
いつも近くにいたいのに。
悲しいって感情を、この言葉に吹き込みたくないのに。
全部、ユウキちゃんがいたから……。
私も抱きしめたい。
本当は一緒に歌うなら、あなたとがいい。
侑子




