↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い半魚人  作者: 松下真名
第二章
PR
149/206

手紙㉒――侑子からユウキへ

ユウキちゃんへ


リリーさんの赤ちゃんが生まれたってお知らせ、受け取ったよ。

直接おめでとうって言えたらいいのにな。

文字だけじゃ、伝えきれないね。


エイマンさんの手紙に、リリーさんが手が震えて字が書けないって書いてあったんだけど、大丈夫?

赤ちゃんの名前は、どんな名前になるのかな。女の子なんだよね。

楽しみだな。決まったら教えてね。


なんとなくだけど、エイマンさん、すでにメロメロにされてそう!


私の方は、部活の合宿が終わったあとも、毎日のように音楽に触れて過ごしています。

夏休みのはずなんだけど、ほとんど毎日、部活で学校に通ってるよ。


この間の合宿でね、みんなの前で野本くんと二人でユウキちゃんの曲を歌ったの。

中学の時に、佐藤先生と二人で歌ったこともある曲だよ。


やっぱりユウキちゃんと一緒に歌った時より、ずっと難しく感じた。

どうしてだろうね。

ずっと考えてたんだけど、はっきりした理由は思い浮かばなかった。


強いて言えば、ユウキちゃんが私に合わせるのが上手だからかなぁ。


理想通りの出来とは言えなかったけど、評判はよかったみたい。

もっと完成度を上げて、学祭で披露しようって話が部活の中で進んでるんだ。


そんなわけで、今はいつものバンドメンバーで練習してる。

野本くんが「この歌難しい」って苦戦してるけど、きっと大丈夫。


もっともっとみんなに、ユウキちゃんの曲のすごさを伝えたい。


あと……ちょっと聞きたかったんだけどさ。


私の手紙、もしかして素っ気なく感じる?


ユウキちゃんみたいに、思ってることをもっと素直に書けたらと思うんだけど……好きとか、愛してる……とか。

恥ずかしくて、どうしても書けなくなっちゃうの。


だけどユウキちゃんの手紙を読み返すたびに、こんなふうに……なんていうのかな。

もっと素直に気持ちを伝えられたらなって思うんだよ。


だって手紙を読むたびに、私はすごく幸せな気持ちになれるから。

私もユウキちゃんのこと、同じ気持ちにさせたいなって。


いつもユウキちゃんのことを考えてる。


声を忘れたくなくて、歌い方を思い出したくて、だからいつも歌ってるよ。


合宿の間、あの曲を歌ってる時、ユウキちゃんと初めて会った噴水広場を思い出してた。


青い鱗。

昼間から夜に変わる空の色。

拍手の音。

人形を操るユウキちゃんの指。


楽しかったな。

本当に全部、全部大切な記憶になってる。


ダメ……記憶って書くと、ダメかも。


悲しくなっちゃう。

過去になっちゃう。


いつも近くにいたいのに。

悲しいって感情を、この言葉に吹き込みたくないのに。


全部、ユウキちゃんがいたから……。


私も抱きしめたい。


本当は一緒に歌うなら、あなたとがいい。


侑子

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。