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とてもお久しぶりです。

前回投稿からかなり期間が空いてしまいました……申し訳ありません。

また更新再開していきます(できるだけ一週間に一回更新ペースにはしたい……)ので、よろしくお願い致します。





◇◆◇



 私という存在は、彼らにとって警戒すべきだと思われているということを知らされた――それと、一般人として過ごすにはちょっとハードな国の事情を聞かされてしまった翌日。

 早朝に私たちはフリンメルの森を出発した。


 ――そして現在、森を抜けた私たちはそれぞれ馬車に揺られ、王都への帰途についていた。


「ミオちゃんこれ食べる?」

「いえ、結構です」

「そんな辛いのより、女の子はこっちでしょ」

「いりません」


 私が魔力切れで倒れた後、グフィの群れは一掃されたらしい。

 気を失った私を連れ、メンバー全員一度は撤退したようだが、私の様子を見るために残ったマルセル以外が再び現場に向かったという。

 私が魔力切れを起こすこととなった攻撃は、グフィの群れをほぼ壊滅状態にまで追い詰めており、戻った後の討伐は楽だったみたいでお礼を言われた。


 今回の任務内容は、大量発生した魔物の討伐。

 その魔物というのがグフィと呼ばれる種類で、それを討伐したということはつまり、任務完了。

 私が思っていたよりあっさりと終わった初任務に、多少驚いたが、早く仕事が終わったと考えたら何もは問題ない。

 そう……それに関しては問題ない。


 問題なのは――


「じゃあ、酸っぱいのはどう」

「私のことは放っておいてください」


 何が「じゃあ」だ。と思わず突っ込みそうになる言葉を飲み込んで、ぴしゃりと突き放す。


 帰りの馬車、行きはベルンハルトとエドゥアルトの二人と一緒で、他の人は別の馬車、という組み合わせだったのに……何故、帰りはこのメンバーなのか。


 真ん中に座る私の両隣は、双子のミュラー兄弟。前には人懐っこい笑顔を浮かべる赤毛の青年がひとり。

 そして、先程からしきりに彼ら持参のおやつを勧めてくるのを全て断っているのが現状。


 何だ、この状況。

 おかしい。というか、態度の手のひら返しが凄すぎて、むしろ気持ち悪い。


 あれだけ邪険、もしくはいないものとして扱われていたのに、昨日から明らかに態度が違っている。

 今朝だってそうだ……いつもはひとりで朝食を食べていたのにも関わらず、約1名を除いて一緒にテーブルに着くことになった。

 一緒に食事というのだけで気まずいのに、親しげに話しかけられて戸惑った私の気持ちがわかる?


「ミオちゃんは何が好き?」


 にっこり、笑ったクラウスに、私は重々しくため息を吐く。

 素っ気ない態度をしているのに、何故こうも関わってくるのか……。


「私、仲良くする気はないって言いませんでしたか?」

「……昨日、似たようなことを言われたかなぁ」


 へらっと笑った顔に、私は目を細めた。


「監視したければどうぞ勝手に。ですが、それとこれとは別の話です。必要以上に絡んでこないでください。私は仲良しこよしの関係なんて望んでいません」

「手厳しいねぇ」


 しかし、私がきつい口調で言えば言うほど面白そうな顔をするからタチが悪い……まさか、Mなのか?

 私の冷めた視線をものともしないクラウスは、けたけたと何がツボに入ったのか笑い転げている。


「あーあ、上戸に入っちゃったね」


 そうこぼすのは、真正面に座る青年――カシミール・アイヒホルンだ。

 今日になって急に接触してきた人物である。


 人懐っこい印象を与えるものの、何となく腹の底は何を考えているかわからない。……というより、第四部隊は一癖も二癖もありそうな面倒な印象の人物が大半である。


 はぁっと、私はため息を吐いた。

 

 笑い上戸らしいクラウスはずっと笑っているし、それをうるさいと顔をしかめながら見るユリウスは、私に勧めてきた酸っぱいお菓子をもぐもぐ食べている。

 正直、間に挟まれている私の方が、笑い声被害が大きいと思うわ。


 カシミールは何を考えているかわからないし――フリンメルの森から王都まではどれくらいの距離だったっけ、と遠い目になった。


 魔術で飛んで帰っちゃだめかしら?



◇◆◇



「――……で、あの態度は、どういうつもりです?」


 優雅にコーヒーを飲むベルンハルトは、私の質問に首をこてんと傾げた。


「何のことかな?」


 帰ってきて早々、ベルンハルトの執務室へ足を運んだ私は、どこかとぼけた仕草をする青年にイラっとした。


 苦痛な帰路を乗り越えた私より先に王都へ到着したベルンハルトたちは、休憩を取る余裕があったようだ――こっちはずっと気を張っていて疲れたっていうのに。

 何か私に用があるらしく、呼び出されたわけだが、その前に言わせてもらいたい。


「何のことかな? じゃないですよ。何か妙なことを彼らに言っていませんか? 例えば、“私とちゃんと交流しろ”だとか」

「いいや? 私は何も言っていないよ」


 じとっとした目を向ける私に、エドゥアルトが面白げに口元を緩めた。


「そう。彼らがね……ちなみに、君は“みんなが自分を認めてくれたのかも”とは思わないんだ」

「逆にどうしてそう思えるのか教えてほしいものですね」


 あからさまに警戒されていたのに、どんな手のひら返しだ。

 ここで、「もしかしてみんな私と仲良くなりたいのかしら?」なんてお花畑思考になるわけがないでしょう。


「どう考えても裏がありますよね?」

「考えすぎじゃないかな?」


 いや、絶対何かあるでしょ。

 じとっと視線を送るが、ベルンハルトは首を傾げている。


「しかし、本当に私からは何も言っていないんだけどね」


 ベルンハルトは不思議そうにそう呟いた。……本当に何も心当たりがないのかしら。

 私はキツく細めていた目を伏せて、ため息を吐き出した。


「もうその話はいいです……それで、私を呼び出した要件はなんでしょうか」


 これ以上ベルンハルトに詰め寄っても無駄な気がする。

 何か裏があるにせよ、今の段階では何も知れそうにない……ならば、ここへ来た本来の目的を果たそう。


「うん、これを渡そうと思って」


 ぽいっと投げられたのは、分厚い本だ。

 慌ててキャッチして、表紙に目をやったが、何の本かよくわからない。ぱらぱらと適当に目を通し――私はげんなりと顔をしかめた。


「これ、マナーの本ですか?」

「言っただろう? 兄上が君を連れて来るようにとうるさいんだ」


 そう言えば、そういう話もあったな。


「……」

「登城の予定は今月中だよ。しっかり淑女らしく振舞ってもらわないと困るからね」


 文字は相変わらず怪しいが、振る舞いなどを絵図で表現されている分、何となく伝えたいことはわかる……が、これはなかなかハードだ。

 本を見つめ何とも言えない表情を作っている私に、ベルンハルトは爽やかに言った。


「大丈夫、マナー講師も呼んであるから」

「そうですか……」


 これは本格的な講習になりそうね。


 ベルンハルトの要件はそれだけだったようだ。

 戻っていいよ、と告げられ、私は分厚い本を抱えたまま彼の執務室を後にした。

 ああ、いろいろとモヤモヤするわ……。


 しんとした廊下にひとり立って、私は何度目かわからない重々しい溜息を吐き出した。



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