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±0  作者: 日向陽夏
第4章 黒へと至る少女【後】 絶対零度編
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第17話 マゼンタの悪魔㊲【赤染アンリ視点】


 土の感触。全身が痛く、口の中から砂の味がする。


 いつの間に、眠ってしまっていたのか。

 気付けば、私はいばら姫の死体の前に全裸で、うつぶせに倒れていた。

 血のドレスすら具現化できない無様さに自嘲する。

 ……ジェネシス切れで気絶したのか、私は。

 起きてなお、倦怠感がぬぐえない。

 全快とは程遠い。正確な睡眠時間は分からないけど、せいぜい1時間にも満たない感じがする。《全理演算》を使えばわかるのだろうけど、そのジェネシスすら惜しい。

 壮絶な死闘だった。

 今でなお、勝てたという実感が無い。

 最後の最後の一撃は、本気で不可避だった。

 血のドレスと赤い靴を具現化し、手のひらで頬を張って、無理やり意識を覚醒させる。


「行かなくちゃ……」


 勝利の余韻に浸っている余裕は、ない。

 セリカのもとに……戻らなければ。

 私はいばら姫の死体に背を向け――――


「――――っ!?」


 強烈な殺気を感じ、前方へ転がるように跳んだ。

 背後で衝突音が鳴り響き、私は早急に振り返る。


「外したか」


 ――――そこに、”何か”がいた。


 くぐもった低い声は、幾重もの人間の声が重なったような、気味の悪い音がした。

 黒いジェネシスを身体に身にまとい、肌が見えない。

 小さな体なのに、えげつない死臭。

 顔がぐちゃぐちゃで、目と口と耳と鼻が大量に詰め込まれた歪な顔。人間の形をしていない。

 いつの間にか、いばら姫の生首を左手に取り、頭蓋骨を砕いて中身をすすっている。

 新手か。だが、見たことがない。

 誰だ……こいつは。


 《食物連鎖》――ショクモツレンサ――


「SSは美味い。やはり別格……だ」


 脳を食べる能力者。

 といえば、連想するのは一人しかいない。


「だが、失望した。あのいばら姫が、まさか負けるとは。あんなに強かったのに。弱かったんだな」


「ずいぶんオシャレな恰好になったのね。――――ヒキガエル」


 ああ、最悪だ。

 ゼロ、骸骨、いばら姫、立て続けの連戦で、全快とは程遠いのに。

 いつかゼロに言ったっけ。


 ――――それも含めての勝負よ。お互いに万全の状態で戦おうだなんて、オリンピックじゃないんだから。子供みたいなこと言わないの。


 なんて、ね。

 自分がやられて分かるこの苦渋。正直、ごめん被りたいところではある。

 なんか色も変わってるし。ヒキガエルは本来、パープルのはず。


「赤染アンリ。お前は、僕の、餌だ。お前の血液を操る能力を奪い、僕は”完成”する」


「…………熱烈な視線ね。その片思い、はっきり言って迷惑よ」


 どう、切り抜けるか。

 まるで勝てる気がしない。

 いばら姫戦で私はガス欠だ。全快でも今のこいつに、勝てるかどうか。


「関係ない。殺す。食べる。お前の全てを」


「…………ちっ」


 さすがにマズいな、この状況は……。

 覚悟も準備も決まらないまま、ヒキガエルは黒い翼を広げ、跳躍の構えを取る。

 来るか……。


 そして直感する。


 この殺し合いが、最後なのだと。

 生き残るにせよ、死ぬにせよ。

 全ては、ヒキガエル戦の為に。

 私はセリカによって生かされたことを、この後知ることになる。


「食べる、食べる、食べる」


 うわごとのように呟きながら、化け物がやってくる。


「……あー。怠いなぁ」


 私は残ったマゼンタジェネシスを迸らせながら、殺意を解き放った。


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