第17話 マゼンタの悪魔㉞【赤染アンリ視点】
《全理演算》――ゼンリエンザン――
(演算開始。いばら姫が攻撃してくる確率は何パーセントか?)
(演算終了。95パーセント)
「……?」
いばら姫は凍り付いたような笑みを浮かべている。
思わず、無意識にいばら姫の殺気に呑まれ、《全理演算》を使用してしまった。
私への毒の能力は解除されてしまう。もう一つの反射を……読まれたのか。
そして、やつの第三の腕の、その指先が私の《八咫之鏡》に触れる直前。
背筋に嫌な悪寒が走り、一瞬私は硬直する。
そう。このまま、いばら姫の能力を反射すれば勝てる。……はずだ。
――――本当にそうか?
「…………っ」
あいつは私が反射できることを知っている。
この状況で攻撃するわけがない。
なのになぜ、”95パーセント”なんて高い数値が出てくる?
《全理演算》――ゼンリエンザン――
(演算開始。いばら姫の攻撃を反射して私が死ぬ確率は何パーセントか?)
(演算終了。100パーセント)
”反射”狙い。
つまりはカウンターのカウンター狙い?
いばら姫も”反射持ちの能力者”だというの?
いや、その可能性は低い。あれば、もっと早い段階で使えば私を殺せたはず。
瞬き一回分の逡巡。
お互いのジェネシスが狂おしく混ざりあう。
そして私たちは、殺意の視線を交差させる。
紙一重の攻防の最中、私はいばら姫の策を推理する。
《自在転移》を自分自身に対して発動、それを”反射”し自分ではなく私を転移させる。
どこへ?
私の《発狂密室》の中だ。骸骨と私の死体を閉じ込めた、二人分の狭いドーム状の中へ私を転移すれば、《発狂密室》によって私の肉体は内と外とで切断される。
即死せずとも、致命傷は避けられない。
私の反射を利用して私を殺す。
いばら姫の、神算鬼謀。
――――その思考すら罠だとしたら?
もはや躊躇している時間は無い。
結論が出ていないのに、決断しなければならなかった。
《八咫之鏡》の反射を発動するか、しないか。
交互ゲームに持ち込んだが、最後に同時ゲームに戻された。
この女……本当に……。
もうこうなってしまえば、どっちに転んでもおかしくはない。
知略は互角。限界まで殺し合い、徹底的に削り合い、能力に優劣は無かった。
完全に、互角。だからこそ、ここまで追い詰めたのに、ここまで追い詰められている。
はぁ……なんて、ツイてない。
私はヒコ助の時と同じように。
――――もう一度、死ぬ覚悟をせざるを得なかった。




