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±0  作者: 日向陽夏
第4章 黒へと至る少女【後】 絶対零度編
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第17話 マゼンタの悪魔㉝【赤染アンリ視点】


 ――――来る。


 いばら姫から零れる殺気に意識を引き付けられ、私は目を見開く。

 上か、下か、正面か、どこからく――――


 《完全再現》――カンゼンサイゲン――

 《発狂密室》――ハッキョウミッシツ――

 《完全再現》――カンゼンサイゲン――


「指定、マグマ」


 天井が開け放たれたドーム状のジェネシスの密室。私を閉じ込め、いばら姫は外側にいる。

 頭上から降ってくるのは、マグマの雨。

 なるほど、良い攻撃だ。

 私の血液を燃やし、蒸発できる火の攻撃は最善手ではある。しかも火の粉は雨のように分散していて、回避が困難になるよう設計されている。

 且つ。

 いばら姫から、第三の腕が伸びてくる。

 《発狂密室》の天井部を超えて、私へと伸びてくる。

 マグマに視線を誘導されれば、あの手に絡めとられるというわけか。

 且つ。


 《曼殊沙華》――マンジュシャゲ――


 強烈な眩暈と吐き気、意識が一瞬苦痛とともに明滅する。

 三重苦の攻撃。

 上からはマグマ、正面からは第三の腕、内側からは毒。

 いばら姫は恐らく、私を殺せる確率を全て読み切ったが慢心せず、多方面から同時に攻めるという選択肢を取った。私も防御の為にクローンリリーから奪った《発狂密室》を使いたいところだけど、骸骨封じに使っているので無理だ。だが、血液を強化したところで、マグマを防ぐほどの強度は期待できない。

 目くらましに使用した血液を回収し、私の第三の腕に混ぜて強化しておく。


「フフフ……」


 無意識に私は微笑んでいた。

 お前が選んだ殺しのレシピは良い手ではある。でも、いばら姫。

 攻撃の選択肢を増やしたのは、同時にデメリットでもあるの……。

 私の所持能力には、セリカとシスターから借り受けた”反射”がある。

 攻撃手段を増やすということは、反射手段を増やすことでもある。

 そして。既に賽は投げられた。

 今なら、出し惜しんでいた《全理演算》で再計算する”価値”が生まれる。


《全理演算》――ゼンリエンザン――


 回避ルートを計算する。

 マグマの雨に打たれないルートを算出。消去法で100パーセントになるルートを計算しつつ、私もジェネシスの腕を出しながら地面を蜘蛛のように駆け抜けていばら姫の方へ走っていく。

 《発狂密室》で閉じ込められてはいるものの、ヒコ助から奪った《絶対強者》があればこの密室は破壊できる。


「……赤染、アンリ……っ!」


 《発狂密室》の向こうにいるいばら姫は、忌々し気に私を睨みつけてくる。

 この期に及んで、まだ攻める姿勢を見せる私が許せないのかもしれない。少しは弱気になり、無様に逃げるような姿を見たかったのかもしれない。期待に沿えなくてごめんね。

 毒の威力が上がっていくとともに、いばら姫の第三の腕が私に触れられる射程圏内に入った。……そろそろ、か。


 腹部に仕込んでいた能力を運用すべく、血管からはみ出た血の糸を引っ張り、”中和”を解く。そして、左脇腹から、小さな盾が飛び出し、いばら姫の第三の腕と衝突する。損壊した腹部は、《無限再生》で回復させておく。

 そう、私が腹部に仕込んでいたミニチュアサイズの二つの異能力の効果が、これで発動する。

 二つの能力とは、《快刀乱麻》の銀のレイピアと、《八咫之鏡》。

 両方とも、能力反射の能力。

 この二つの能力を衝突させてぶつけると、反射同士で中和され、無となる。

 無となった能力は確率の計算をすり抜けて、現在視点では透明化される。

 あとはこれを飲み込んで、腹部という器の中に隠せば、もう見えない。

 つまり、どう足掻いても、罠があることは計算できても、罠の正体までは見極められない。これが、いばら姫を倒す為の私の奇策。

 そして。

 いばら姫が、私を始末できると確信できる能力であればあるほど、反射していばら姫を殺せる確率も上がっていく。

 その腕で何をするつもりなのかは知らないけど、やればいい。

 お前の能力で、お前は死ぬ。


「…………」


「…………」


 言葉はなく、私たちはお互いの視線を絡ませた。

 私は殺意を込めて。いばら姫は真意を読むような目で。


 ――――静寂。


 だというのに、全身がどうしようもなく昂奮している。

 死の最前線だというのに。いや、だからこそか。


 恋にも似た甘い心地で、心臓が狂おしく軋んだ。


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