第27話 戦争開戦前編
一応グロ注意です。
【シュン、グルダボ国の艦隊は最速前進でそちらに向かってるよ、あと30分と掛からずダードン国に着くね】
【了解、ララさんはそのまま警戒を宜しく】
【ああ、いつ戦闘になっても平気だよ、取り敢えずは上陸阻止を遂行するつもりだから】
【うん、こっちもそろそろ来る頃だから】
【分かったよ、シュン、頑張ってね】
【ララさんこそ、怪我しないでね】
グルダボ国の艦隊を警戒態勢で監視していたララから、
シュンにテレパシーで報告が入った。
どうやらグルダボ国の艦隊は他には目もくれず戦場を目指しているらしく、
シュン達の住み島を通り越し後30分も掛からずに到着するようだ。
その報にシュンはそのまま警戒態勢でいてくれと頼み、
いつ海戦になっても平気だとララは答え海戦にならずに到着したとしても、
上陸はさせないようこちらから打って出る作戦を敢行するつもりのようだ。
それはシュンとも事前に打ち合わせをしており、
シュンは怪我をしないよう頑張ってと伝えて会話を打ち切り、
城砦から皆出て陣を敷いた。
「ライネック王、あの女の情報通り、数も少なく野戦装備しかしていないようですな」
「はっはっは、この戦、余裕としか言いようがないな、グルダボ国が暴れる前に終わらして、我が国でダードン国はおろか、シュモン国も領土としますか」
「うむ、余のアイリーンとモニカを取り返し、他にも飼っている女も余の物にしようか、ふっふっふ」
「王様、我らにもお零れを下さいませよ?」
「ああ、いいともいいとも、ダードン国の女はお前らが好きにしろ」
「はっはっは、さっさと打ち滅ぼして楽しませて貰いますかな、あっはっはっは」
ライネック、ムルクスバンダミン連合は国境に差し掛かった所で、
シュン達の陣容を目視した。
その目に映ったのは向かって右翼にダードン国重鎧兵団、
左翼にルーミア率いる騎士団で、中央にはアイリーンにチュヒ、ダードン王と、
サライネフ王の4覇者とその婦人達に率いられたメイド衆及び、
ハーフエルフの母親と言った援護軍と言った陣で待ち構えていた。
「ライネック王よ、ダードン国は任せたぞ、わしらは裏切り者の騎士達を力で屈服させてやるわ」
「はっはっは、好きなようにせい、ただし、ルーミアとか言う団長は生かして置いてくれよ?なかなかの美人だからな、余の慰み者として使おう」
「ふん、良かろう、グルダボ国の戦艦が見えたらまずは我が国から先陣を切る」
「どうぞどうぞ、一騎打ちなぞ我が国は興味ないからな」
相手の陣に合わせるようにムルクスバンダミン国の騎士団が、
ルーミア達を見据える形で陣を取り、ライネック国の魔法兵団は、
ダードン国の重鎧兵団を見据えるように陣を張った。
そして中央にはライネック王を守るように四大魔術師が控え、
更に魔人と思しき者達が3人見受けられた。
「あれ、魔人だね、1人多いな」
「サライネフ王も前線に来ましたからな、急遽見つけて来たのでしょう」
「ふふふふ、魔人を調達する為に一ヶ月近く行動を起こさなかった訳かぇ、さっさと攻め込めば勝てたかも知れるのにのぅ、愚かな事じゃ」
「まあ、そうしないように偽の情報を送っていたのですわ、まあ、愚かなのは全面的に同意ですけど」
「はっはっは、おぬしらは相変わらずだな、そんな余裕を見せてたら相手が警戒してしまうぞ?」
「それならそれで構わんよ、シュン殿はわしがこの身を張って護るからな」
「ほっほっほ、ガチムチ脳筋よりわらわが護った方が旦那様は嬉しいと思うがのぉ」
「それを言うならわたくしがですわ、ガチムチ脳筋や、白化粧より遥かにわたくしの方がいいですわよね?飼い主様?」
「あ、いや、大丈夫だって、それよりもみんな、自分の事を大事にしてよね?」
「御意、シュン殿がそう申すならこのダードン、全力を持って己の仕事をこなしましょう」
「はっはっは、切り替えの早い男だな、まあ、我も久方ぶりに全力を出しましょうぞ」
スニータからの報告にはなかった魔人が1人増えている事に、
警戒を示すシュンだったが4覇者は特に気負った様子は見受けられなかった。
談笑している4覇者とその婦人達であったが、
グルダボ国の艦隊が到着しフォックス海賊団と貿易商義勇軍の艦船とで、
上陸を懸けた睨み合いが勃発したのを確認するや真剣な顔へと変えて行った。
それは相手陣内も同様のようで、無駄にお喋りをしていた連合軍の中から、
1人の騎士が歩み出ると一気に静まり返り、
シュン達の陣に向かいその騎士は名乗りを上げた。
「ムルクスバンダミン国騎士団団長サボクここに推参、開戦を告げる一騎打ち、誰が受け立つか?」
事前にルーミアが言っていたように案の定、
騎士団団長であるサボクと言う若者が名乗りを上げて来た。
そのサボクの口上にルーミアが歩みを進め、ルーミアも声を上げて返答した。
「決まっておろう、ルーミア連盟国騎士団筆頭が受け立つ」
「ふふふ、やはりルーミア様でしたか……、貴女が去ってからも鍛錬を怠らなかった私の槍、貴女に避けれるかな?」
「ふっ、やってみなければ判るまい?掛かって来い」
「行くぞ」
ルーミアとサボクが会話を終わらせた後、
サボクから鍛錬を重ねられた馬を疾走させ馬上用のスピアを身構え、
ルーミアに突撃を仕掛ける。
大した距離のない両者が一瞬にして近付いて行きルーミアにスピアが迫る。
「速いな、だが」
間を詰めてくるサボクに対してルーミアも自分用に鍛えられた白馬を駆らせ、
サボク同様馬上用のスピアを掲げて持ち、サボクのスピアを叩き落して行った。
「くっ、私の突進をその様な事で」
「その程度の突進で私を貫けると思ったか?」
「くそ、舐めやがって、だが」
スピア同士激しい音を奏でて両者の間が広がり、
ルーミアに全くダメージを与えられなかったサボクは苦い顔をしていた。
そんなサボクに対しルーミアはフルフェイスの兜の面を上に上げ、
挑発するようにサボクへ口を開いた。
その行為に舐められていると感じたサボクだったが、
馬を横にして話している隙を突いてルーミアに再度突進を掛けて行った。
「馬を横にして、愚かなっ」
「ふっ、まだ甘い」
「がっ、ま、まだだ」
「馬から振り落とされなかったか、その技術だけは及第点だな」
不利な体制からの突撃に対してルーミアは、
身長以上にある大きなスピアを器用に使い、
今度は下から振り上げてサボクのスピアを払い除け、
サボクからスピアを手放させた。
下から上へと払い除けられた衝撃でサボクの馬は前脚を上げて急停止し、
サボクも馬から投げ出されそうになったが、上手く馬を操り事なきを得た。
それを見たルーミアは素直に褒めたが、サボクはやはり苦渋の表情をし、
撥ね落とされたスピアの代わりに手槍を構え、
近距離からの一騎打ちへと切り替えて行った。
「ふふふ、来い、騎士団団長」
「おらぁぁぁ」
「ふっ、そんな槍捌きでは我が軍の誰にも勝てんぞ?」
「くっそぉぉ、おら、はっ、くっ」
突撃から肉弾戦へと切り替えたサボクに合わせルーミアも手槍に持ち替え、
応戦して行った。
ルーミアはサボクの槍を弾きながら誰にも適わないと叱責染みた言葉を言うが、
サボクの槍捌きはなかなか鋭く、覇者達でも避け切るのは難しいと思われた。
「凄い、あんな攻撃仕掛けられるなんて、それを避け切ってるお姉ちゃんも流石と言うしかないけど」
「そうですわね、わたくしではかわせませんわね」
「わらわもじゃ、半分もかわせんわなぁ、あれは」
ルーミアとサボクの激しい打ち合いにシュンは勿論、
アイリーンやチュヒも両者の戦い振りを息を呑んで見ていた。
「ふふっ、相変わらず脇が甘い」
「がふっ、かっ」
30合ほど打ち合った所でサボクの癖を見抜いているルーミアは、
槍を受け流された際に生じる右脇の隙へ石突きを叩き込み、
一瞬仰け反ったサボクの胸元へもう1度石突きを突き当て、
鎧越しにダメージを与えて気絶させた。
「なかなか楽は出来なかったな…、ムルクスバンダミン国騎士団団長サボク、討ち取ったり、皆の者掛かれー」
「流石だな、重鎧兵団及び軽鎧兵団も騎士団に遅れるなよ、掛かれ」
「な、な、お、お前達、応戦しろ、これ以上騎士団の恥を見せるな」
「くっ、ムルクスバンダミンの騎士団団長も不甲斐ない、魔法兵団を前へ」
電光石火の突きを出したルーミアはサボクを突き殺したように騙し、
相手国の動揺を誘い、見事動揺したムルクスバンダミンの騎士団へ、
自分が指揮する騎士団に号令を掛け一斉に突撃させた。
それに合わせてダードン王も重鎧兵団とその後ろに控えている軽装兵団に、
号令を出し兵を魔法兵団へ襲い掛からせて行く。
シュン達連盟国の両翼が襲い掛かって来る状況で、
動揺を隠せないライネック、ムルクスバンダミン連合軍は、
なんとか迎撃の命を兵達に出し、両軍入り乱れた戦が開始されて行った。
「奴らを上陸させるんじゃないよ、海戦ならあたし達の方が上手いんだ」
「ふっふっふ、フォックス海賊団、やりよるわ、貿易商も使って上陸を阻むとは、少し甘く見ていたか…、誰か赤狐を黙らせる者は居ないか?」
「拙者が行きましょう」
「お前がか?いいだろう、黙らせて全軍上陸させよ」
「はっ」
両軍が開戦したその頃海上でも動きがあり、
グルダボ国の兵達が上陸をしようとそれを阻む連盟国との艦隊と、
海戦が起こっていた。
最強と謳われているグルダボ国兵ではあったが海戦はそこまで得意ではなく、
船団同士の衝突では指揮を取るララの方が一枚上手で、
グルダボ国の兵は誰1人も上陸には至っていなかった。
そこでグルダボ王はララを倒して士気を乱し上陸させようと部下を差し向けた。
「フォックス海賊団船長、赤狐殿、お主を倒して、陛下と兵達を上陸へと導かせて貰おう」
「ふふふ、どうやらなかなか骨がありそうだね、お前達手出し無用だよ」
「はい、お頭、ここで勝てばシュン様のお気に入り間違いなしです、頑張って下さいね」
「頑張って下さい、お頭様、ここで抑えれば今夜妊娠するまでシュン様が愛して下さいますよ」
「ふふっ、そうだといいね、うん、ちゃんと勝って活躍すれば、シュンの子を身篭らされて貰らえるかもね、ふふふ」
曲刀を携えたグルダボ王の側近と思われる男がララの居る首領船に降り立った。
自身の前に近付いて来たその男にララは手出し無用と1対1の勝負を部下に伝え、
それを聞いた側近の2人は、
真剣勝負を行おうとする者に向けての応援とは思えない言葉で声援を送り、
ララもそれを受けてにやけた後、サーベルを抜いて男と対峙した。
「ふっふっふ、たかが海賊と侮れんな……」
「ふぅ、迂闊に動けないね、これは」
お互い余裕を持っていたララと曲刀を持つ男だったが、
対峙してすぐにその認識を改めた。
その両者は互いに得物を構えたまま微動だにせず、
5分ほど睨み合う形で時間が経過して行き、
独特の雰囲気にララの側近2人も手に汗掻いて見守っていた。
「一太刀で決まるな…」
「一撃で決まっちゃうね」
対峙している2人とも同じような言葉を呟いて息を吐き、駆け出して行った。
そして距離が詰まった所でお互いが攻撃を繰り出して行き、
曲刀を横に払った男に対してララはサーベルを握った右手を顔の位置まで上げ、
握ったサーベルの切っ先を斜めに突き出して行った。
防御を考えないその一撃を男は曲刀を持っていた右腕に浴び、
切り取られなかった物の上腕に重症を負い敗北を悟ったのだった。
「く、僅かに及ばずか」
「ふぅ、あんた、回復魔法は使えないのかい?」
「ふふ、使えん、さあ、殺せ、拙者の負けだ」
「残念ながらそれは出来ない相談だね、うちの総大将に死者は出すなって言われてるからね、さっさと戻りなよ」
「はっはっは、赤狐よ、なかなかやるな、余の1番信頼している男をあっさり破るとはな」
「へ、陛下、申し訳在りません、力及ばず」
「よいよい、赤狐よ、貴様らの総大将はお前より強いんだろうな?」
「ああ、あたしなんか指一本でも負けちゃうよ」
「ほう、それはなかなか…、おい、貴様は戻って治療しろ、そして赤狐、貴様はこのまま余の兵達に海戦のいろはを教え込んでくれ」
「何を?グルダボ、あんたもあたしが」
「はっはっは、貴様も弱くないが総大将の命を守れなくなるぞ?それにそちらの総大将も余と戦う気満々のようだしな、では行くぞ」
一騎打ちが一瞬で勝負が付き男は腕を押さえながらララに殺せと言って来た。
だがララはシュンに死者が出ないように頼むと命を受けており、
それを伝えて治療しに戻れと返事を返した。
それをいきなり現れたグルダボ王が笑って聞き、
腕を負傷した部下が謝って来るのを寛容に受け入れた。
そしてララにシュンの強さを聞き、
聞き終えてすぐ一緒に首領船に来ていた者達と戦場へ飛んで行こうとした。
それをララは引き止めようとしたがグルダボ王は、
シュンとの約束を守れなくなると言ってララを制し戦場へと消えて行った。
「ま、待て」
「止めて置け、赤狐、陛下にはお前でも適わないぞ?それにお前が命を張って足止めする必要もない、陛下はこの戦、本気ではないからな」
「どう言う意味だい?」
「シュンと言ったかな?そちらの総大将は」
「そうだけど?」
「覇王なんだろ?」
「な、なんでそれを」
「くっくっく、お前は正直過ぎるな、覇者達なら顔色を変えずに否定すると思うが、まあ、そんな事はどうでもいいか、陛下はこの戦、適当な理由を作ってお前らの総大将、シュン クルスと戦いたいだけだからな」
「な、じゃあ、あんたらは全てお見通しだったと?」
「ああ、来る途中の島が本拠地なのも知っているが、あんな島では全力で戦えないしな、陛下と覇王が戦ったらそれこそ皆殺しの目に合うのは必定だ」
「ふふふ、なるほど、やっぱりあんた達は戦争狂だよ、いや、戦闘狂か、狂ってるね」
「ははははは、褒めてくれてどうも、さて、お前に斬られた腕も痛くなって来た、今回は不覚を取ったが次はこうは行かないからな、ではさらばだ」
「……、皆に伝えろ、グルダボ兵の上陸だけは絶対阻止だと」
「了解です」
腕を斬られた男からグルダボ王の真意を聞かされ、
後はシュンに任す以外ないと判断したララは、
男が自船に戻って行ってすぐ絶対専守を側近に伝え命を出させた。
そして自分も指揮を執り直して戦が終わるまで海戦を続けて行った。
グルダボ王第一の側近をララが破った報はすぐにシュン達の下に伝わり、
さらに士気が盛り上がる中、相手の連合軍は兵数で劣っている連盟軍に、
押され続けていた。
「くそ、役立たずの兵どもが、お前ら、突撃部隊の力を示して参れ」
「はっ」
「俺達も共に行こう、副団長として騎士団の力、見せて来ます」
「ああ、行け、行け、負けて帰って来たら命がないと思えよ」
「了解しました、では副団長、参りましょう」
劣勢を強いられているムルクスバンダミン王は、
やや癇癪気味に突撃部隊長であるモリスとドンクーに命を下した。
その命に副団長のハンスイとバーミンガムも呼応して行動を共にし、
ルーミア率いる連盟軍の騎士団達へ突撃部隊を繰り出して行った。
「ふふふ、あいつらを横槍させろ、盗賊も少しは役に立つだろうから」
「はっ、畏まりました」
突撃団達が進軍して行ったのを見送ったムルクスバンダミン王は、
親衛隊の兵の1人に耳打ちをして隠れ潜ませていた盗賊達を差し向けさせた。
どうやらこの戦に盗賊を使って手を汚させてから処分をし、
名声も得ようとしていたらしかったが、
まさかの劣勢の為、形振りを構っておられず、
隠し玉まで使う羽目となってしまったムルクスバンダミン王であった。
「突撃部隊が業を煮やしてやって来たぞ、副団長及び部隊長は頼む、私は騎士団を指揮し、突撃部隊を足止めする」
「はい、行きましょうかー」
「………うん」
「はい…」
「いよいよですね」
「うん、頑張ろうー」
突撃部隊と言うだけあってその突進力はかなりの物で、
押し気味に進めていたルーミア達騎士団もなかなか抑える事が難しく、
副団長のハンスイとバーミンガム両名がシュン達の居る中央、
本陣へと斬り込んで行った。
しかしそれを事前の打ち合わせ通りエレアとファンが遮って馬上から落とし、
1対1の形へと持って行き、本陣への進出を抑えた。
それと同時に突撃部隊長のモリスはジャンが、
ドンクーはカノンの射撃によって挑発し、この両名はザーナとスニータとで、
対峙して突撃部隊の指揮を乱して行くのに成功した。
「く、小娘が、馬から落としただけでいい気になるなよ?」
「いい気になってるかどうか試してみる?」
「く、舐めるなっ」
ファンによって馬から落ちたバーミンガムは
怒りを抑え切れないように槍を構えてファンに飛び掛って行った。
その横では怒りこそ込み上げている物の、
バーミンガムよりかは冷静なハンスイがエレアと対峙していた。
「く、読み切られていたと言う事か、だが、所詮は一介の戦士、騎士の私に適うかな?」
「それは~、やってみないと分かりませんよ~?」
「く、間延びした口調がまた腹ただしいな、副団長の私と対峙した事を後悔させてやるわ」
怒りを抑えていたハンスイだったが戦場では似つかわしくない口調のエレアに、
冷静さを失ってこちらも飛び掛って行った。
そのやや後ろでは挑発に乗ったモリスがジャンの弓をかわしながら、
ザーナのハンマーを弾き返していた。
そしてドンクーも同様にカノンの暗器から放たれる魔法の矢を避けつつ、
スニータの扇による攻撃をなんとか弾き返していた。
指揮者を分断させられてしまった突撃部隊はルーミアの指揮の元、
騎士団によって足止めを余儀なくさせられていたが、
突然盗賊たち約300人ほどが騎士団達に横槍を入れ、
乱戦となって行ってしまった。
「盗賊?」
「何故ここに…」
「まさか王が?」
「馬鹿な、しかし、やつら、あちらの騎士団にしか攻撃をしていないぞ」
盗賊達の乱入に聞かされていなかった副団長と突撃部隊長達4人は、
攻撃の手を止めて驚いてしまっていた。
シュンの恋人達もそれは同様で盗賊の来襲までは読んでおらず、
思わずあたふたしてしまっていたが、エレアだけは様子が違った。
「あ、あいつらは……、グァァァァ、ウォォォォ」
「え?何?」
「やばい、あいつ等はエレアの両親を殺した盗賊団」
「スニータさん、ここ、任せれますか?私はエレアさんが抜けた穴を」
「はい、大丈夫です」
「ザーナちゃん、私もあっちに行くね、なんか嫌な予感がするんだ」
「………ここは任せて行って上げて」
突然エレアが理性を失ったように盗賊団に向かって走って行き、
その様子を見たルーミアは盗賊団に見覚えがあり、
昔エレアの両親を殺害した奴らだと気が付いた。
それによってエレアが抜けたハンスイとの相手をカノンが受け持ち、
ジャンも嫌な予感がすると言ってエレアの後を追って行った。
「盗賊など貴様等を倒してからゆっくり処分すればいい話か、まずは小娘、貴様からだ」
「掛かって来なよ、私も急いで向こうに行きたいからね」
「調子に乗るなよ、はっ」
「おっと、副団長の名前は伊達じゃないみたいだね」
一瞬の驚きから気を取り直したバーミンガムがファンに向かって槍を払い、
立て続けに振り払って連続の攻撃を繰り出して来た。
しかし武道家のファンの速さも相当な物で、ひょいっと避けつつ、
隙が出るのを窺っていた。
「ふっ、敵を前に暴走して行ったか、この機に本陣へ、なっ」
「シュンさんの所には行かせませんよ…、エレアさんの代わりに私が相手です」
「ふふふふ、本当に舐められたもんだな、錬金術師風情が私の相手とは、女は斬りたくなかったが仕方ない」
ファンとバーミンガムが衝突して行った頃、ハンスイはエレアがいなくなり、
シュンの居る本陣へと歩み出て行こうとしたが、
そこにエレアの変わりに掛け付けたカノンが魔法の矢で威嚇射撃をし、
ハンスイの足を止めて対峙した。
ハンスイにとっては錬金術師なぞ非戦闘職だと舐めて掛かり、
得意の得物である槍ではなく、腰に佩いている剣を抜いて斬り掛かって行った。
「舐めてくれて良かった…、剣の間合いなら」
「がっ、くそ、暗器か、しかしこの矢、ただの魔法が込めてあるのとは違うな」
「そこ」
「がぅ、馬鹿な、何故鎧を貫通する、はぐっ」
素早く槍を振るわれていたらカノンは避けるだけの戦いとなっていただろう。
しかし剣による攻撃の間合いなら勝機は格段に上がり、
事実カノンは暗器の小さな矢を次々と命中させて行った。
しかもその矢はシュンから貰った、
七色の魔法石が込められた暗器から放たれている物で、
無属性と言う名の防御力無視の攻撃であり、
ハンスイはその正体が読めないまま矢を喰らい続けて行った。
「あぐっ、く、くそ、私が錬金術師なんかに……」
「ふぅ、なんとか役に立てました…、私もエレアさんの所に」
四肢にダメージを負ったハンスイは身動きが取れなくなり、
カノンは最後に金属性の魔法の一撃で頭に衝撃を与えてハンスイを気絶させた。
非戦闘職であるカノンが騎士団副団長を破る快挙上げたが、
当の本人はさほど喜びはせずエレアの身を案じ走り向かって行った。
「くそ、何故当たらねぇ」
「それはね、プライドだけ高いあなた達が大した鍛錬をして来なかったからだよ」
「はぐ、な、舐めるなよ、小娘風情がぁぁ」
「小娘で結構だよ、とりゃー」
「あぐっ、な、なんだと」
カノンが勝利する少し前ファンはバーミンガムの攻撃パターンを全て把握し、
大振りした隙を突いて胴体へ蹴りを放って行った。
その一撃で鎧は粉々に弾け飛び思わず焦ったバーミンガムは最大級の隙を与え、
ファンはバーミンガムの兜の上からこめかみを狙って拳を振り抜き、
兜も粉々に砕きつつテンプルにヒットさせて気絶へと追い込んだ。
「はあ、シュンちゃんと練習してなかったら殺してたかも知れないなー、さて、私も向こうに行くかな」
戦争までに期間があったので素手による戦闘をシュンにも見て貰い、
練習していたファンはその成果が出たのか見事バーミンガムを破ってみせた。
そんな事を思いながらポツリと独り言を呟いたファンは、
勝利したカノンと同時にエレアの下へ駆け出して行くのだった。
突撃部隊長の相手を任されたザーナとスニータも、
カノンとファンとほぼ同じタイミングで打ち破っていた。
「へっ、鍛冶師かよ」
「………だから何?」
「はん、俺の相手にはならないって事だよっ」
突撃部隊長のモリスはいきなり手に持っていた槍をザーナに投げ付け、
それを盾で防いだザーナの足を狙って剣で斬り付けて行った。
しかしザーナも瞬時に盾を投げ付けて斬り掛かるモリスを迎撃した。
「がはっ、ふざけやがって」
「………投げたのはそっちが先、ふざけてるのはお前」
「お、お前だと、小娘がぁぁ」
「………馬鹿め」
盾を頭に喰らったモリスははらわたが煮え繰り返るほど怒り、
更に年下の女にお前呼ばわりされ我も忘れて飛び掛って行った。
そんな安い挑発に引っ掛かったモリスにザーナは、
両手で持ったハンマーをスウィングして横腹にぶち当て、
あっさりと気絶させて勝利を収めた。
「………下らない、あっちの方が面白そう」
モリスが気絶した事を確認したザーナは、
投げた盾を拾って装備した後エレアが向かって行った盗賊団の方へと、
小走りで向かって行った。
「ほらほら、どうした?へへへ」
「くぅ、あなた強いですね、私の負けです、私をあなたの物にして下さいまし」
「へへへ、そりゃいいや、まだ戦闘中だが、キスくらいはいいだろう、ん~~」
ドンクーを相手していたスニータは勝てる相手ではないと負けを認め、
構えを解いてドンクーに近付いて行きあなたの物にしてくれと言った。
そんなスニータにドンクーは戦闘中だがと前置きを言って、
スニータへ口付けをして行った。
「ふふふ、幻惑に惑わされて、無様ね」
「ぎゃん」
キスをしようとしたスニータは幻惑されたドンクーの妄想で、
汚物でも見るような目でスニータはドンクーの脳天に扇を打ち据え、
何とも簡単に気絶させて終わった。
戦力では1番劣っているとスニータはチュヒの下で、
踊り子の戦い方を学び、幻惑させるスキルも取得していた為に、
ドンクーを軽々と打ち破る事が出来たのだった。
戦闘が終わったスニータも先の3人同様エレアの下へ向かって行った。
場面は少し戻って盗賊団へ向かって飛び出して行ったエレアは、
騎士団に襲い掛かって来る盗賊を達の首を斧で跳ね飛ばしながら、
仇敵のボスを目指していた。
殺人マシーンと化しその鬼気迫るエレアの前に盗賊達はおろか、
ルーミアさえも止める事は出来ずにいた。
「な、なんだあいつは、おめえら、さっさと殺しちまえ」
「で、で、でも、親分、あいつ、異常ですぜ」
「ああ、あれは無理だ、に、逃げ出しましょう」
「馬鹿言うな、おい、おめえ、クロスボウでやっちまえ」
「へへへ、あいあいさ、どけ、俺様が一発で顔を打ち抜いてやるからよ~」
どんどん迫り来るエレアに恐怖を抱いた盗賊のボスは、
子分達に何とかしろと喚き立てたが子分も恐れをなして動こうとはしなかった。
しかしクロスボウによる射撃に自信がある子分が呼ばれ、
呼ばれた子分は自信満々に他の子分を掻き分けてエレアを狙い矢を放った。
「不味い、エレア避けろ」
盗賊とムルクスバンダミン国の騎士団を相手しながらルーミアは、
エレアを狙う狙撃手に勘付きエレアに大声で注意を喚起したが、
暴神化スキルを発動させているエレアの耳には届かず、
そのままボスの下へ向かう為邪魔な盗賊達の首を刎ねていた。
そんなエレアに子分の放った矢が差し迫り顔を打ち抜かれると思った瞬間、
その矢は真上に跳ね上がり、エレアの顔に風穴が開く事はなかった。
「ふぅ、危なかった、嫌な予感的中だったよー、さて、お掃除、お掃除」
「ふぅ、お前ら、足止めに全力を尽くせ、盗賊はエレア達に任せて置け」
危機一髪でジャンの放った矢によってエレアに迫った矢を弾き飛ばした。
そして軽く溜め息を吐いたジャンは事も無げに、
エレアの道を開けるべく盗賊達に威嚇射撃をしエレアの援護を行った。
それを見て、更に掛け付けて行くカノンとファン、
それにザーナとスニータに盗賊達を任せ、
部下達にムルクスバンダミンの騎士団を優先して足止めさせるよう命を出した。
ジャンの助勢を借りてエレアは仇敵である盗賊のボスの下へ辿り着いた。
狙撃を得意とする子分はジャンが相手をしており、
残る子分達はカノンとファン、ザーナとスニータとで蹴散らしており、
盗賊のボスはエレアと一騎打ちせざる得なくなった。
「ははは、そんな狙撃じゃだめだめー、甘いよ?」
「くそ、なんで全部打ち落とされる、俺は天才なのによぉぉ」
「天才?ああ、残念だったねー、紙一重の馬鹿だったんじゃない?あんたは」
「んだと、ごらぁぁ、舐めるな」
「はいはい、私はシュンくん以外舐めないし、舐めて欲しくないから、ばいばーい」
「はひゅっ……」
エレアがボスの面前に立っていた頃、
ジャンは狙撃手をからかいながら相手をしていた。
そして暴神化したエレアから距離を取れた事を確認したジャンは、
長い矢と短い矢を同時に放ち長い矢はかわせた狙撃手だったが、
同時に短い矢も放っていたとは思わず、その矢を喉に浴びて絶命して行った。
そしてジャンは残る盗賊達にも射撃をして次々と殺害して行くのだった。
「く、くそ、お前、確か俺に歯向かって来た馬鹿な夫婦の子供だったな、きゃっはっは、親も親なら子も子だな」
「グォォ、シネェェェ」
「おっと、あ、危ねぇ、きひひ、俺を舐めるなよ、これをこうして、お、おお、おおお、来たぞ、来たぞ、はっはっは」
ボス前まで来たエレアは暴神化スキルが切れて正気に戻っていたが、
盗賊のボスが思い出したようにエレアの親を馬鹿にした為、
再度暴神化スキルが発動してしまったエレアは、
斧ではなく素手で殴り掛かって行った。
それをなんとか避けたボスは怪しげな薬の入った注射器を取り出し、
自らに打ち込み薬剤を投与して行った。
「きゃっはっはっは、これで俺は無敵だぁ、魔人になった俺に敵はいねぇぇ、はぶしゅ、あが、あぶっ、あぎゃぁぁ」
「シネ、シネ、オマエハシンデシマエ、グォォォ、シネェェェ」
魔人になる薬だとムルクスバンダミン王に騙されて受け取っていたボスは、
殴り掛かって来たエレアの拳をわざと喰らって強さの証明をしようとした。
しかしその注射器に入った薬はただの栄養剤でしかなく、
実際はなんの変化もないボスはエレアの拳で歯を全てかち割られ、
連打の殴打によって顔は血だらけとなり、最終的には岩へぶん投げられ、
木っ端微塵に破裂して死んで行った。
「ハァハァハァ、トウゾクハシネェェ」
「く、やばいな、誰か、誰かエレアを正気にしてやってくれ」
「うん、待ってて、お~い、エレアさん、可愛い声で死ね死ね言ってたら怖過ぎだよ?」
「ハァァァァ、ハァ、はぁ?あれ~、シュンさ~ん、おはようございます~」
「シュンちゃん?なんでここに?」
「あ、うん、やばいと思ってね、でもすぐに戻るね、グルダボの王が待ってるから」
「え?」
「え?」
暴神化が極まってしまったエレアの下に、
ルーミアの叫びが届いたのかシュンが現れエレアを抱き締め鎮めて行った。
正気に戻ったエレアはポカンとシュンに目覚めの挨拶をし、
ファンは何故ここに居ると声を上げた。
その答えに曖昧な返事をしたシュンはグルダボ王が居るからと即戻って行き、
カノンとスニータは何故グルダボ王が?と言った表情で、
帰って行ったシュンを眺めていたのだった。
戦闘表現下手過ぎだと思いますが、今の技量ではこれが限界です…。
次回は魔法戦となる予定です。
シュンの出番はまだ未定です。




