第14話 ダードン王に謁見とか宴会とか
「ん~、馬車の中は賑やかだね~、俺も中で話したいけど、馬を引く人が居ないとだめだしな、まあ、女性同士話たい事もあるだろうし、たまにはいいか」
大型の馬車の中に荷物を載せ馬を引くのは1人でいいと言う事で、
シュンは1人馬を引いて歩いていた。
馬車の中は姦しいと言った表現がまさにぴったりの状態で、
ザーナも交えて会話を楽しんでいた。
「えへへへ、そりゃもう~、シュン様の事は大好きですよ~、毎日愛して貰ってますし、えへへへ」
「あらあら、いいですわね、わたくしも早く城を抜け出したいですわ」
「もう少しの辛抱ですよ、それに、ギムダイン国の為にはあの計画も進めないと行けませんし」
「計画?」
「うふふ、秘密です…、あっ、間違ってもシュン様に害のある計画ではないのでご安心下さい」
「そんな事になったら~、首刎ねちゃいますからね~」
「うぅぅ、怖いですよぉぉ」
「ふふふ、それだけ愛していると言う事ですわ、でも本当にそんな事にはなりませんから」
「うふふ、それより~、私はザーナちゃんの事が気になるわ~、ぶっちゃけどうなの?シュンちゃんに一目惚れしちゃった?」
華やかに会話をしていた最中ニキが含みのある話題をして注目を集めた。
しかし全くの秘密としてしまい、エレアは少し噛み付いた。
それに対してモニカは怯えるがアイリーンは笑い流し、
そんな事には絶対ならないと伝える。
その話にサリィは深く突っ込まず、代わりにザーナに標準を合わして、
槍玉とした。
「………してない」
「本当かしら?さっきだってお父さんの言葉に顔を赤くしただけで否定はしていなかったんじゃない?」
「ぐっ、………こんなに恋人が居る誑しなんか興味ない」
「本当にお師匠様の事、興味ないんですかー?」
「………ないったらない、あたしが惚れるのは強い男だけ、あんなヒョロヒョロなんか」
「ふふふ、シュン君は弱くなんかないけども?」
「………それは貴女達が守って上げてるだけでしょう?」
「いいえ、そんな事ないですよ?だってシュンちゃんは~~、うん?さっきから動いてないですね」
「そうですね~、揺れがないと思ったら~、シュンさ~ん、どうかしましたか~?」
ザーナへの尋問を楽しんでいた恋人達は暫く揺れがない事に気付き、
馬車が動いていない事を感じ取った。
何かあったのかとエレアがシュンへ声を掛け馬車から飛び降りた。
「えっ、盗賊に~、襲われたんですか~?」
「ん?あ、うん、まあ、5人しか居なかったからすぐ何とかしたけど、気になる事を言ってたから、ボス格の奴を捕まえて置いたよ」
飛び降りたエレアの目には少し身体を震わせたシュンが映り、
その手には血の付いた魔剣が握られていた。
そしてその周りには首のない死体が4体転がっており、
魔剣の握られていない手の先には縄で縛られた盗賊が1人居た。
恋人達が話に夢中になっていた頃シュンに何があったか振り返ってみる。
「やっぱり盛り上がってるな~、ザーナさんも打ち解けたかな?オッサンが言ったように鍛冶師も仲間にしたいんだよな~、ザーナちゃんも無口だけどみんなと同じくらい可愛いしな~、うん?」
会話の内容までは分からなかったがザーナも会話に参加しているみたいで、
恋人達とは打ち解けたと考え、ブツブツ独り言を吐いていた。
そこに、明らかな盗賊が5人現れシュンへ口を開いて来た。
「おい、後ろの荷物を渡しな、そうすりゃ、命までは奪わねぇぜ?」
「荷物?何の事かね~?」
「恍けんじゃねぇ、重鎧兵団に売る装備が詰まってるんだろ?」
「なんでそれを?」
「はん、上から頼まれたんだよ」
「おい、おめえら、余計な事言うんじゃねぇ、おい、残念だがお前の命は奪わなきゃいけなくなっちまったようだ」
「ははは、最初から助ける気なんか無いくせに、よく言うね~」
「へっ、舐めた口聞きやがって、まあ、積荷と女は貰って行くぜ」
「いい女ばっかり連れやがってよ、お前が死んだら俺らが代わりを務めてやるよ」
「はっはっは、飽きるまで使い潰してやるよ、その後は売っちまえばいいしな」
「そんな事はさせない」
口の軽い盗賊達はペラペラとしゃべり油断しまくっていた。
見た目ではひ弱なシュンだからではあったが、
余りにも油断が過ぎていた為、
怒りが爆発したシュンの動きには目がついて行かず、
魔剣を握って飛び出したシュンに盗賊達は一瞬にして首を刎ねられ、
ボス格と思われる盗賊は柄で頭を殴られ気絶した。
全く持って呆気ない戦闘が終わり、ボス格を縄で縛り終えた所で、
エレアが飛び出して来た、と言う事だった。
「お怪我はありませんでしたか…?」
「うん、大丈夫だよ」
「シュンちゃん…」
「シュン君、また1人で無理をして…」
次々と飛び出して来た恋人達の中でカノンは、
血を見た事と身体を震わせている事を見て大急ぎで駆け付け、
怪我はないかと尋ねて来た。
そんなカノンにシュンはニコッと微笑んで大丈夫だと伝えたが、
サリィとルーミアはまたもや人を殺した事へ、
罪悪感に囚われていると察知してシュンを抱き締めた。
そして気持ちを和らげようと勤め、
シュンもその気持ちを受けて身体の震えはなくなっていった。
「………どう言う事なの?」
「あ、うん、盗賊を撃退しただけだよ」
「………そうじゃなくて、なんで盗賊を殺したくらいで身体を震わせてたのか聞いてるの」
「あ、あぁ、俺は盗賊でも人を殺すのには躊躇いがあってね」
「………じゃあ、殺さなければいいのに……、脆弱」
シュンを心配する恋人達の脇でザーナはシュンへ質問をした。
そしてその答えにザーナは興味がなくなったのか馬車へ戻って行った。
それに対して恋人達は少々の怒りを覚え顔付きを変え、
ザーナを追いかけ様としたがシュンにそれを止められた。
「いいって、間違った事を言った訳じゃないしね」
「そうですが……」
「確かにシュン様ならば全員を捕らえる事も出来ましたのに」
「いや、みんなを使い潰して売るとか言われて、ついカッとなっちゃって…」
「そうだったのですか、それならば仕方ありませんね」
「お兄様、馬車で少し休みますかぁ?」
「ん、いや、1人で城まで馬車を引くから、モニカちゃん達は馬車でゆっくりしてて」
「畏まりましたわ、さぁ、皆さん、戻りましょうか」
「は、はい、あの、シュン様、疲れたら言って下さいね」
「うん」
あながちザーナの言っていた事は間違いではないと言うシュンは、
ニキに殺さない事も出来たのではないかと聞かれ、
ついつい怒りの余り殺してしまったと白状した。
それを聞いた恋人達はシュンの事を誇らしく見つつ、
1人になりたいのだろうと察したアイリーンが、
シュンを残して馬車の中へと引き返して行った。
ちなみに捕まえた盗賊は荷を引く馬に積み、
4つの首も袋に入れて馬の横に吊るして運んで行った。
馬車の中の雰囲気は先程とは違い暗い物であったが、
サリィが重い口を開いて行った。
「ザーナちゃん、見誤らないで下さいね、あの子は、私の大切なシュンちゃんは貴女が思っているほど脆弱じゃありませんよ」
「………盗賊を斬って置いて嘆く男が?」
「ええ、シュンちゃんは元々この世界の人じゃないの」
「ちょっと、お母さん」
「うふふ、いいのよ、ユウちゃん、だって、ザーナちゃんはシュンちゃんの事が好きになっているんですもの、シュンちゃんも、ザーナちゃんの事が好きになっていると思いますし」
「………勘違いも甚だしい」
「そうかしら?じゃあ何故あんな風に問い詰めたのかしら?」
「………疑問に思った事を聞いただけ、それにもう、軽蔑してる…」
「それも嘘、本当に軽蔑しているならなんでそんなに外が気になるの?話を聞いていて私達の事で怒ったのを知って、貴女が思っていた事とは違かったから謝りに行きたいんじゃないの?」
「………そんな事、ない」
「うふふ、頑固と言うかなんと言うか、ザーナちゃん、シュンちゃんの事教えるわ」
シュンの秘密をいきなり言おうとしたサリィにユウは止めようとしたが、
サリィはユウに微笑んだ後、ザーナの心を読んだ様に話を続け、
ザーナは返答に窮して行った。
そしてシュンが異世界から来た人物で覇王である事も告げた。
そして力はあってもこの世界の人間とは考え方が少し違う事も。
その言葉を俄かに信じられなかったザーナではあったが、
恋人達の表情から嘘を言っていない事を悟り、
呆然としてしまった。
「ふふふ、ザーナちゃん、シュンちゃんと少しお話しして来てはどう?」
「………何を話せばいいの?あたしは酷い事を言っちゃったのに」
「簡単な事よ?謝らなくてもいいからちゅぅの1つでもしたらシュンちゃんは喜ぶわよ?」
「………ちゅぅって、キス?」
「ええ、キスして、好きになったから困らせてみたかったとでも言って置けば、シュンちゃんは結構単純だから上手く行くわよ」
「………それで本当に上手く行くの?」
「勿論、私が実証済みだから、さぁ、いってらっしゃい」
「………うん」
「……お母さん?そんな事したの?」
「する訳ないわよ、私はシュンちゃんと初めっからラブラブだもん」
「はぁ、でも、ザーナさんが、シュン様の事好きなのは本当みたいですね~」
「でしょ、それにシュンちゃんがいつまでも落ち込んでたら、これからすぐの計画もだめになってしまうかもだし、ね、リーンちゃん?」
「ええ、サリィちゃんには勝てないわね、うふふふ」
物事を円滑にすべくサリィは口八丁でザーナを動かし、
成り行きを見守るだけであった。
さて、馬車から出たザーナはすぐにシュンの下へ向かっていた。
「………」
「ザ、ザーナ、さん…、馬車を引くのは俺だけで大丈夫だから、中に居ていいよ」
「………全部聞いた」
「ん?」
「………覇王様だって聞いたし、この世界の人じゃないのも聞いた」
「あ、あぁ、騙してた訳じゃないけど、黙っててごめん」
「………それはいい、それにあたしは、あたしは……」
「ん?」
「………ちゅっ、これがあたしの気持ち、ファーストキス上げたからあたしも貴方の、恋人」
「え、ええ?」
「………あたしを恋人にしたんだからもっと強くなって、強くなったらあたしの全部上げるから…」
「え、え、ちょ、ザーナさん?お~い」
シュンの横に並んだザーナはキスをして言いたい事を言って、
逃げる様に馬車の中へ駆け込んで行った。
その様子を窺っていた恋人達は、顔を赤くして帰って来たザーナを、
盗賊が現れる前みたくからかい、馬車の中に明るさが戻った。
「な、何だ一体…、まあでも、うん、俺を強くしたいって気持ちであんな風に言ってくれたのかな?てか、ザーナちゃんも俺の事を好きだったんだ、いや~、参っちゃうな~、なんか分からないけど元気が出て来たぞ~」
「………単純」
「うふふ、言った通りだったでしょ?でも余りきつい事は言わないで上げてね、ナイーブな子だから」
「………その弱さを直す為にあたしも恋人になった、だから文句は言わせない」
「あらあら、新参者の癖に」
「………関係ない、あんだけ喜んでくれてるんだから」
「まあ、御主人様はああ言う人だから」
「そうですね、でもそこが可愛いんですよ」
「そうですね~、サランさ~ん、夜に~、あれ貸して下さいね~」
「あれ?あぁ、エレアさんは恥ずかしがり屋ですもんね、お貸ししますよ、うふふ」
馬車の中同様シュンにも明るさが戻り、恋人達もホッとしていた。
そしてシュンの様子を口々に言い合いながら馬車で揺られ、
やっとこさ城に辿り着いた。
「あの~、グランのオッサンに頼まれて荷物を持って来たんだけど」
「ん?あぁ、装備の依頼か、少しそこで待っていろ」
門番に来た理由を説明し重鎧兵団の隊長が現れ、
装備を引き渡したシュン達はそのまま王の部屋に通された。
そこに出迎えたのは50手前の精悍な顔付きの王で、
アイリーンを見るや否や驚いた顔になった。
「お、おぬし、何故ここに?」
「うふふ、いつぞやはどうも…、余は別に貴様に会いに来たくて来た訳ではないぞ?」
「ふっ、相変わらずきつい女子じゃ、まあ良いわ、だがまあ、納得行ったわ」
「ふふっ、その考え、近からず遠からずと言った所かの、残念ながら余は直接この取引に関与してはいないぞ?」
「なぬ?しかし、おぬしの国でしか取れぬ魔法石を、ここまで大量に運び出しているではないか?」
「くくく、国絡みでやっている事ではないわ、このお方が1人でやっている事…、それにのぉ、余はこのお方の雌犬じゃ、くっくっく」
「なんじゃと?女王の身でありながら1人の男に尽くしているとでも言うのか?」
「うむ、そうじゃ、くくく、昔はよく貴様に口説かれたが、あの誘いに乗らなくて正解じゃったぞ、ほっほっほっほ」
「くっ、臣下の前でその様な話をするでないわ」
「くくっ、まだまだあるぞ?余の名前を叫びながらテントの中で1人やましい事を…」
「止めい、お、お前ら、出て行け、そしてこの女狐の言った言葉を信じる出ないぞ」
「ハ、ハッ、では失礼いたします…」
「くっ………臣下の前で恥を掻かせおって」
アイリーンとダードン国王は英雄同士一緒に旅に出た事もあった様だ。
その中で執拗に口説かれた事や野営のテント内での、
恥ずかしい自慰行為について話し出したアイリーンに、
国王は顔を真っ赤にして激怒し臣下をみんな引き下げさせ、
アイリーンに怒鳴ろうとした。
そんな国王に対してアイリーンは涼しい顔をして口を開いた。
「うふふふ、そう怒るでないわ、それから王妃よ、今のは昔馴染みの冗談だと臣下に言っといて貰えぬか?」
「え、はい…、しかし貴方、後でじっくり聞かせて頂きますわよ?」
「あ、あぁ、くっ、おぬしのせいで要らぬ怒りを買ってしまったではないか」
「ふふふ、まあまあ、ダードン国王よ、今から余が話す内容は他言無用じゃ」
「ん?なんだ、改まって?」
「飼い主様、このダードンと言う筋肉馬鹿は、信用に足る人物なのでお話させて頂きますが、宜しいですね?」
「ん?リーンがそう言うならいいし、もうそう言う流れでしょ?」
「うふふ、すみませんわ、後でじっくり躾を受けさせて頂きますから」
まずは王の隣に座っていた王妃に後でフォローする様に言ってから、
アイリーンはダードン王を直視し重々しく口開こうとしたが、
その前にシュンへ断りを入れた。
だが流れ的に話は進み埒が開いた状態であり、
口を封じる事は出来ないと判断していたシュンはそれを了解を出した。
その言葉にアイリーンは性を匂わす言葉で謝罪し、
それを見ていたダードン王がまたしても怒鳴り散らして来た。
「なんじゃなんじゃ、人を筋肉馬鹿と罵ったり、わしには1度たりとも見せた事のない女の顔をさせおって」
「あ~な~た~」
「ん、いやなんじゃ、おぬし、はよ言え、何が目的じゃ?」
「ふふふ、端的に言えば余の、いや、わたくし達の味方になって欲しいのですわ、重鎧兵団の火力に、魔法石を組み込ませればまさに野戦随一となるでしょうから」
「それはまあ、魔法石に関しては感謝するが、味方とはどう言う意味じゃ?そこのわっぱと手を組めと言いたいのか?」
「ふふふ、わっぱとは誰の事かしら?わたくしの飼い主様を侮辱するなら、今ここで消し炭にして差し上げましょうか?」
「い、いや、本当にそこのわっぱがおぬしの主人なのか?」
「ええ、御覧なさい、……ちゅっ」
「……くっ、何故昔惚れた相手のキスシーンを見ないといかんのだ?不快だ」
「まあまあ、だから筋肉馬鹿だと言われるのですわ、足りない頭でもう少し考えて見なさい、わたくしを従える程の力と、惚れさせる事が出来る人物とは」
「な、何を言いたんだおぬしは」
「わたくしを抱いていい人物とは覇王様だけと、昔言ったでしょうに、まあ、飼い主様が覇王じゃなかったとしても惚れてしまっていたでしょうけど」
「覇、覇王?わ、わっぱが覇王様じゃと?
女の顔をシュンに向けた事に何より怒るダードン王に、
王妃がこれまた怒りを表し落ち着いた話し合いになって行った。
だがシュンとアイリーンのキスを見て憤怒が再発して、
今にも暴れだしそうなダードン王であったが、
アイリーンの発した覇王と言う言葉に冷静を取り戻した。
「ええ、そうですわ、そこでもう1度確認したいのですが、火急の自体の際、重鎧兵団を貸して頂けますわよね?」
「う、うぬ…、そ、それで、わしの過失は許されるのか?」
「さぁ?飼い主様にお聞き致したら?ちゃんと謝罪したら腕の一本くらいで許して下さるかも知れませんわよ?」
「おいおい、リーン、俺はそんな事しないって」
「うふふ、良かったですわね、協力さえしてくれれば無罪放免だと仰って下さってますわよ」
「あ、有り難きお言葉、このダードン国は覇王様に協力する事を誓いましょう」
「そんな、いいっていいって、リーン、これじゃあ、俺が悪者になっちゃうじゃないかよ~」
「うふふ、ダードン王は単純ですから、このくらい言って置かないと、コロッと他の者に騙されてしまいますから、魔人の件も然り」
「くっ、そうじゃった、もうあんな真似はせんわ」
初めから協力を求めるのが計画済みであった流れに、
シュンは少し冷や汗を掻いた。
多分にこれはニキと事前に話し合っていたのだろう。
装備の充実の為にダードン国を推挙して置きながら、
魔法石での儲けも視野に入れるだろうと読み切り、
受注を増やす為に兵団への依頼の聞き込みを行い、
それに伴っての火力増進された重鎧兵団を味方に付ける。
この流れる様な一連の読みの深さに加え、
利益にしか繋がらない操作の仕方を見て、
シュンは見事としか思えなかった。
そんな事を考えていたシュンであったがその間に話が進んで行った。
「それから、荷物を狙った馬鹿を持って来ましたわ、どうやら大臣が私腹を肥やそうと盗賊を飼いならしているみたいですわね」
「な、なんじゃと、まことか?」
「ええ、馬鹿に吐かせましたわ、きちんと処分する事をお勧め致しますわ」
「あ、ああ、分かった」
「ふふふ、交渉成立ですわね、あぁ、そうそう、ダードン王、飼い主様の事は他言無用ですわよ?」
「うむ、何度も言われんでも解っておるわ、しかしおぬし、自分の国はいかがしたのじゃ?」
「あぁ、その説明がまだでしたわね、わたくしは女王を辞めて、飼い主様と暮らそうと思っていますの」
「そう言う事か…、それで我が軍の協力を?」
「ええ、期待していますわよ?」
「あぁ、あい分かったわ」
「うふふ、ん?飼い主様?いかが致しましたか?」
アイリーンとダードン王の話が進む中ボーっと考え込んでいたシュンに、
アイリーンが訝しみニキも堪らず声を掛けた。
「シュン様?お気に召さなかったのですか?」
「ん?な、何が?」
「いえ、もうお気付きになられている様ですし…、私達が相談もなく進めてしまった事に」
「あぁ、いや、そうじゃなくて、感服してたって言ったらいいかな、ここまで見事に計画されちゃうと脱帽だね~、凄いの一言だよ」
「そう仰って頂き、感謝の極みです」
「そんな、いいっていいって、こっちこそありがとうね」
「ふっ、完敗じゃな…、全幅の信頼を置いて尚、勝手な真似まで許す度量の持ち主とは、アイリーンが惚れるのも無理はないか」
「ええ、貴方も素晴らしい方ですけども、覇王様はそれ以上ですね…」
「お、おい、お前、お前までやる気はないぞ?」
「うふふ、本当に貴方はお馬鹿なんですから、行く訳ないでしょう」
「そ、それなら、うん、いいのだが」
アイリーンとニキの仕組んだ計画を手放しに褒めるシュン。
勝手にやった事なのに褒め称えるシュンを見たダードン王は、
そんなシュンを褒め王妃も後に続いた。
王妃のそんな様子にダードン王は焦るのだが、
王妃は笑いながら諭し、軽くお惚気て見せた。
そんな2人をアイリーンは思わず笑ってしまった。
「くっくっく、良い王妃を貰ったわね、ダードン王、では、話も終わりましたし、帰らさせて頂きますわ」
「待て待て、折角来たんだし、食事でもどうだ?」
「それは装備を全て引き渡してからで良いですわ、それに相変わらず口説くのが下手ね」
「ば、馬鹿を申すな、口説く分けなかろう、そんな事したら命がいくつあっても足りんわ」
「うふふ、では、ダードン王、いえ、昔のようにお呼び致しましょうか?ブルックス」
「ダ、ダードンでよいわ」
「ふふふ、では、ダードン王、またお会い致しましょう」
「ああ」
協力交渉を終えたシュン達は王の謁見室から開放されたのだが、
閉まるドアの向こうからアイリーンに最後、
名前で呼ばれた事にニヤついたゴードン王が、
王妃に怒られている声を聞いた。
その声に皆も笑いを抑えていたがシュンは、
人柄の良い協力者を得た事でも喜びの笑みとしていたのだった。
城から戻る際行きとは違い魔法を使って戻り、武具屋に入った。
「オッサン、ただいま」
「おお、おせぇから盗賊にでも襲われたかと思ってたぜ」
「いや、ちょっと王様と話し込んじゃっててね、いい物をどうもって言ってたよ」
「そうかそうか、で、分け前だが、どうするね?」
「ん~、今日はちょっと時間が掛かっちゃったから、明日、装備をそのお金で買わせて貰うよ」
「そうか、じゃあ、明日また宜しくな」
「うん、あんまり無理しない様にしてね」
「がっはっはっは、あんちゃんに心配されるほど柔じゃねえって、まあ、どうもな」
「………あたしも一緒に、行きたい」
「ん?ザーナさんも俺の家に?でも、オッサンの手伝いが」
「………夜は手伝いがないからいい」
「あぁ、店はもう閉めるし、明日の朝送ってくれりゃぁそれでいいよ」
「分かった、じゃあ、ザーナさん、行こうか」
「………ん」
帰りが遅い事にグランは心配していたみたいだが、
シュン達が見せに入って来たのを見て安心したようだった。
そして、今日は遅くなったから帰ると伝えると、
ザーナも一緒に行きたいと言い出しシュンは少し困ったが、
夜は手伝いがないとザーナとグランが言い、
シュンはそのままザーナを連れて自宅へと帰って行った。
「もうそろそろ隣町へ行ってみる?」
「そうですね、宴会に顔を出してみましょうか」
家で一服した後昨日の約束通り、
ギルドのお姉さんを誘い隣町へと魔法で飛び、
お姉さんのお母さんが住む家へ赴いて行った。
「お母さん、居る?」
「うん?お姉ちゃん、お母さんなら宴会に行って……あぁっ」
「あ、昨日の」
「あれ?妹の事知ってたの?」
「うん、ヒュドラと戦ってた所でちょっとね」
「ちょっとって言うか、私は助けて貰ったの、ヒュドラの火で燃やされそうになった所を庇ってくれて」
「なっ、身体の方は大丈夫だったの?」
「うん、怪我させないようにちゃんと庇ったから安心して」
「妹じゃなくて、貴方よ、ヒュドラの火を浴びたら家だって燃え上がっちゃう筈でしょ?」
「ああ、俺?俺も全然平気だよ、あの程度だったら火傷しないし」
「………」
お姉さんの家に入るとそこには昨日助けた金髪ガールが居て、
シュンを見た瞬間大きな声を上げシュンも同時に声を出した。
その様子にお姉さんは面識があるのか聞いて、
シュンはちょっとねと言葉を濁したが妹の方が助けて貰ったと説明した。
それによってお姉さんに心配されたシュンだったが、
ヒュドラの火では何ともなかったと聞きやっぱり引かれてしまった。
「それでお姉ちゃんは何しに来たの?」
「え?あ、ああ、宴会が開かれるって誘われて」
「ふーん、じゃあ着替えるから少し待ってて」
「その格好でいいじゃない」
「嫌よ、折角服を買ったんだから…」
宴会に参加する為着替えようとする妹に姉は、
そのままでいいじゃないかと言ったがどうやら妹は、
宴会用に服を買っていたらしくそそくさと奥に引っ込み着替えて来た。
「ちょっと、なんでそんなフリフリの可愛い服を」
「い、いいじゃない、私だって女なんだから…」
「ふふっ、気合入れちゃって」
「っ……、わ、悪い?今日は楽しみにしてたんだから」
「なっ、そ、それは私だってそうなんだから、あんたには負けないわよ」
「なによ」
「なによってなによ」
「むーーー」
「ぬーーー」
「あ、あの~、そろそろ行きませんか?」
気合の入った可愛い服を着て現れた妹に噛み付く姉を、
妹はムーっと睨みそれに負けじと姉もヌーっと睨み返した。
なんとも不毛な争いにユウは耐え切れないように行こうと言って収め、
なんとか外へ連れ出す事に成功した。
「あっちに行ってみましょうー」
「いいえ、こっちの方が美味しそうですよー」
「………そっちからいい匂いがする」
「ちょっ、そんなに引っ張ったら」
「うふふふ、楽しそうですね、シュンちゃん」
「ええ、しかし、今日だけで3人も増えるとは」
「まあ、街を造るには人材も必要ですし、人が増える事は悪い事ばかりじゃないですよ」
「確かにそうだけれども…、飼い主様に構って貰える時間が減るのは頂けないですわ」
「そうですぅ、お兄様ともっと遊びたいですぅ」
ギルドのお姉さんとその妹にザーナの3人がシュンに侍りながら、
町に出されている無料の露店をどこがいいか引っ張り合いをしていた。
それをサリィは温かい目で見ながら微笑みルーミアも同調したが、
1日で3人もの女性が増えてしまった事に少々悲観気味だ。
だがニキはこれから人材も必要だと納得させようとし、
アイリーンが首を縦に振った。
しかしながらシュンとの時間が減るのは寂しそうにして、
モニカも母であるアイリーンの意見と同じようだった。
「おぉー、いい姉ちゃん達がこんな所に固まってどうした」
「俺達と一緒に飲まなーい?」
「いいえ、結構です」
「おいおい、つれねぇな」
「ちょっとだけだから、なっ」
「私達に~、お構いなく~」
「まあまあ、なっ、あっちに行って飲もうよ、なぁ」
「しつこいです、お師匠様が来る前に向こうへ行って下さい」
「けっ、なにがお師匠様だ、澄ましやがってよ、上等じゃねぇか、そのお師匠様とやらを呼んで来い」
シュン達とは少し離れた露店で焼きそばを買って会話をしていた、
フローリアとエレア、サランに酔っ払いが絡んで来た。
余りにもしつこく絡んで来ていた為ルーミアがそれに気付き、
止めに入ろうとした。
「どうした?何かあったのか?」
「ルーミアさ~ん、この人達がしつこいんです~」
「そうか、すまんが、折角の楽しい宴会で気分を害すような事は止めて欲しいのだが?」
「んー、なんだって?姉ちゃんがお師匠様だってか?」
「いや違うが、なんだ、シュン君を呼んで欲しかったのか?」
「お、おい、ルーミアって、あの、騎士団団長じゃ?」
「ははは、まさか、町を救いにも来なかったあの騎士団な訳ないだろう」
「ん?いかにも私は騎士団団長ルーミアだが?」
「な、な、本物かよ…」
「どうしたの~?なんかあった?」
「お師匠様、酔って絡んでくる人が居るんです」
ルーミアに気付いた1人が酔って赤くしていた顔を青褪めさせた時、
手招きをされたシュンが侍っていた3人を何とか振り解いて駆け付けた。
そして駆け付けたシュンにサランが事情を説明していたが、
もう1人の方もルーミアが本物だと気付き、顔を青くしていた。
そこに騒ぎを見ていた町人数名が駆け寄って来て、
シュンを見て声を上げた。
「なんだなんだ、どうかしたのか?おおお、町の英雄じゃないか」
「おおっ、本当だ、昨日はありがとな、金まで出してくれたおかげで町は祭り騒ぎだよ」
「あ、ああ、昨日の、なんかさ、俺の恋人達が絡まれちゃったみたいなんだけど」
「あぁん、なんだってぇ、どいつだい?町の英雄の彼女に絡んだ馬鹿は」
「ま、町のえ、英雄?マ、マジかよ」
「や、やべえぞ、町の英雄ってヒュドラを一撃で倒したって話に聞いたぞ」
「なんだ、若いくせに逃げ回っただけのボンクラどもか、お前ら、働きもしなかったくせに、一丁前に酒だけは飲んでるんだな?」
「かぁ、申し訳ねぇ、町の恥さらしが気分を悪くさせちまって」
「いやいや、俺は何もされてないけど」
「私達も別に、さっさとここから居なくなってくれればそれでいいよ」
「流石町の英雄とその彼女さん達だ、おい、おめえら、こう言ってくれてる内に帰りな」
「あ、あ、わーーー」
「ひーーー」
「ふぅ、ごめんね、ちゃんと見てれば良かったね」
「いえいえ~、シュンさんが~、謝る事はないんですよ~?」
「そうです、それに折角ですから、みんなで楽しみましょう」
「うん、そうだね」
駆け寄って来た男性はシュンがヒュドラを倒した際に居た人のようで、
シュンを見てすぐ町の英雄と囃し立てた。
それを聞いた酔っ払いは更に顔を青くして男性達に言われるがまま、
逃げて行ってしまった。
なんとかその場は収まったが、町の英雄に申し訳ないと、
男性達はゆっくり座って飲める宴会場へシュン達を案内した。
「へ~、椅子じゃなくって直に座るのか~、本当に宴会の雰囲気が出てていいね~」
「おお、良かった、町には余り椅子とかがなかったから、間に合わせで作ったけど、喜んで貰えたようだ」
「ささ、この席にどうぞ、俺達は世話になったやつらを呼んで来っから」
「あ、うん、おっけ~、いや~、しかし、俺の住んでた世界じゃ、宴会と言ったら直に座ってが一般的だったから、なんか懐かしいな~」
「ほ~、そうなのですか?」
「うん、靴を履いたまま家に上がる事もしない生活だったんだ」
「そうなのですか、では、引っ越す際はそう言う風にお造りし直しましょうか?」
「あ~、別にいいよ、まあ、俺の部屋だけそうして貰いたいかもだけど」
「了解しました、その様に致しましょう」
連れて来られた宴会場はテーブルに椅子ではなく、地面に敷物を敷いて、
座る高さに合わせて作った簡易的な木の机が置かれた、
和風に近い形であった。
それを見たシュンは元の世界の事を少しだけ思い出し、
感傷に浸りつつ男性に勧められた席に座って恋人達と会話を楽しんだ。
「昨日はどうもでした、ささ、一杯どうぞ」
「酒はごめん、俺、酒苦手だから」
「まあまあ、そう言わずに」
「ん~、飲んでもいいけど、暴れても知らないよ?」
「いっ…、そ、それは、ははは、では、お茶をお持ちしますね」
『おい、酒はだめだ、酔って暴れるかも知れないって言ってたぞ』
『なんだって、おい、茶だ、茶を急いで持って来い』
「うふふ、あちらで何か騒いでいますね」
「そりゃそうでしょう、ヒュドラを倒す所を見ていたのですから、暴れるかもと言われたらああなりますよ」
会話を楽しんでいたシュン達の下に町の英雄が来た事を教えられた町民が、
次々と集まりシュンへお礼を言いに来た。
その際若い女性達は軽く色気を振り撒こうとしていたが、
周りに居る恋人達を見るや綺麗どころが揃い過ぎていた為、
普通にお礼を言って去って行った。
そしてヒュドラを倒した時に居たと思われる男性が酒をシュンに勧めたが、
酔って痴態を晒してしまうのを自覚しているシュンは軽く脅す事を言って、
酒を断った。
それを聞いてその男性は駆け出して行って仲間達にその事を伝えて、
急いでお茶を用意させていた。
それをサリィとルーミアはクスクス笑いながら眺めていた。




