第13話 フローリアとの初夜と大口取引
「はい、あ~~ん」
「あ、あ~ん」
「シュン君、私のもはい、あ~~ん」
「あ、あ~ん」
「わたくしのも是非お食べ下さいまし、あ~~ん」
「あ、あ~ん」
風呂から上がったシュンは、キスの雨あられの次は、
皆からのあ~ん攻撃であった。
次々に食べさせられるシュンだったが、どれも美味しく、
意外な事に女王であるアイリーンまでもが、
料理を美味しく作れていた事に、
シュンは胸の内で吃驚していた。
そんな食事が終盤に向かい、恒例の酒盛りへと突入し、
やはり酔ったシュンはセクハラ魔人と化し、
大騒ぎの内に食事が終わって行った。
「うふふふ、では、わたくし達はこの辺で」
「また明日ですぅぅ」
「シュン様、おやすみなさい」
「シュンさん…、風邪をひかないようにお気を付けて下さいね」
ギムダイン国に住む恋人達が、ドアの前で挨拶をして帰って行った。
そしてその後にはサランとエレア、ルーミアも後を続いて帰宅して行った。
残るはフローリアであったが、フローリアもベロンベロンに酔っ払い、
今は少し酒の抜けたシュンが恋人達を見送った後、説得をしていた。
「大丈夫?俺が送って行こうか?」
「いーやらー、今日はここれ寝るんらー」
「おいおい、呂律まで回んなくなっちゃって、どうしたもんかね~」
「ご主人様とー、寝るのー、わらしはそう決めたのー」
「うふふ、シュンちゃん、今日は帰らすのは無理そうですし、シュンちゃんのお部屋で泊まらせて上げたらどうでしょう?」
「ん~、いいけど、ユウちゃんはいいそれでいい?」
「いいですよ~、お風呂の中でお約束もして貰いましたし」
「そうそうー、お風呂場であんなの見せられたらー、帰りたくなくなっちゃうよー」
「あっ、やっぱりばれてたんだ…」
シュンに縋り付くようにくだを巻くフローリアは、
風呂場での事を指して帰りたくなくなったと喚いた。
実はあのキスの雨あられ状態の時こっそりユウと愛し合っていたのだが、
それを見られていたらしく、フローリアは癇癪を起こしたのだった。
「うふふ、あれでばれないと思うのはシュンちゃんだけですよ」
「うっ…」
「と言う訳で、今日はフローリアちゃんと一夜を共にする事になりましたね」
「ふふふ、フローリアさん、わざわざ酔った振りなんかしなくても大丈夫ですよ」
「あら、私のもばれていたのね…、少し恥ずかしいわ」
「え?え?演技?」
「ふふふ、そうですよ?あのくらいのワインで酔うのはご主人様だけですって」
「……そうなんだ」
「はい、では、行きましょう」
「おいおいおいおい」
「うふふ、いってらっしゃ~い」
「フローリアさんも頑張って下さいね~」
酔った振りをしていたフローリアはそれがばれた途端正気に戻り、
シュンを椅子から引っ張り上げて掴み、部屋まで駆けて行った。
それをサリィとユウは笑顔で見送って、
片付けをしてから部屋に戻って行くのだった。
「ご主人様、最初から縛ったりとかは?」
「しないしない、そんなことしないって」
「そう、ですか、じゃあ、その、普通にするって事でいいのですか?」
「うん、まあ、その、そう言う趣味は追々に、ね、初めは、その、ちゃんと愛し合いたいし」
「うふふ、ご主人様らしい、実に嬉しいお言葉ですよ」
「そう?」
「ええ、異常な性癖の持ち主の私ですが、やはり初めての事で、その、緊張していますし、正直少し怖い」
「そっか、でも、うん、優しくして上げるから、怖がらないで」
「ふふふ、罵って頂きたかったのですが、その温かいお言葉もまた、心に染み渡っていい物ですね」
「そうかな?まあ、正直もう我慢が出来ないから、襲っちゃうけど、いい?」
「ぷっ、お構いは要りません、緊張も解れましたから…、ご主人様、どうぞご賞味下さい」
部屋に入って早々に、服を脱がし切られたシュンは、
同じく全ての服を脱いで貰ったフローリアと共にベッドへ入り、
少しの会話を交わした後、シュンはフローリアの身に被さって行った。
「ユウやサランに比べて、大分小さいのですが…」
「ははは、そんな事気にしなくたっていいよ、それだけが女の人の魅力じゃないんだし」
「そうですか?」
「うん、この長い髪の毛も十分魅力的だし、何より、フローリア自身から感じる雰囲気が凄く魅力的だもの」
「ふふっ、お世辞で言っていない所が凄く嬉しいですよ、ご主人様、私の、初めて口と口でするキスを………ちゅっ」
圧し掛かられたフローリアは、その肢体で唯一残念に思っている、
控えめな胸の膨らみを嘆いた。
そんなフローリアにシュンは、
茶色の膝まである長い髪を撫でながら褒め、
更にフローリアが醸し出す、その歳ではありえない妖艶さも褒めた。
それをフローリアは本音で言っているものだと感じ、
微笑を浮かべながら喜んで、自らファーストキスをして行った。
そして2人は愛の交わりを交わして行くのだった……。
深夜も過ぎ、熱く長い交わりを終えた2人は、
就寝間際の重い瞼を何とか開けながら会話をしていた。
「ご主人様、初めてで4回もは、流石にハードでしたね」
「う、うん、ごめんね」
「いえ、私は嬉しいからいいのですが、ご主人様が明日、支障を起こさないか心配で…」
「うん、全然大丈夫だよ、こっちに来てから疲れなんかほとんどないし」
「そ、そうでしたか、なら良かった…で、す……」
「ん?寝ちゃったか、ちょっとやり過ぎちゃったね、ごめんね、フローリア、…ちゅっ、おやすみ」
初体験で4度も中に愛を注がれたフローリアは、流石に限界だったのか、
シュンへの心配が解消されるや否や眠りの世界に旅立った。
そんなフローリアにシュンは、軽く口付けをして自分も寝入って行った。
いつもの様にサリィに起こされたシュンは、朝食を取った後、
隣国のギルドへ向かいカノンとパーティーを組んでから、
洞窟へ行った。
ユウ達はアイリーンとモニカ、ニキが合流していない為、
山へ行って小遣い稼ぎをしながら基礎を復習していた。
「どれ、ニキさんが言っていたボスとはどんなもんかね…」
1層目の敵を集めて一掃したシュンは続く2層、3層の敵も、
同じように屠った後、扉の前に立ってボスのステータスを窺った。
するとボスのレベルは500台と高い物ではなかったが、
スキルには無属性以外無効と書かれ、ニキの言っていた通りであった。
「まあ、全くの無敵じゃないし、儲けさせて貰いましょうかね~」
扉を開けると女王アリが居た部屋みたく、
色とりどりのミストで多い尽くされていたが、
シュンの魔法で全てを一掃し、呆気なく勝利を収めた。
そしてその部屋には大量の魔法石が転がっていた。
その中で、ボスが居た場所には今まで見た事がない魔法石が転がっていた。
「ん?7色全部が混じった石か、後でニキさんに解析して貰おう」
小さい石ではあったが7色の色が入った石を手に入れたシュンは、
後でニキに渡してどんな効果があるか聞く事として、
残された石を全て回収して、魔法で洞窟の外へ出て山に向かった。
「あれ?シュン様、もう出て来たんですか?」
「うん、ボスをやっつけてね、区切りが良かったから出て来ちゃった」
「そうでしたか、では、私達も区切りがいい所までやって帰りましょうか」
「はい」
昼食には早い時間に現れたシュンに、ユウはもう出て来たのか尋ねた。
区切りがいい所で出て来たと聞いたサリィは、
自分達も区切りがいい所で止めて帰ろうと言い、皆もそれに同意した。
この山での戦闘も慣れたのか大コブラを50匹倒して、
討伐の依頼を済ませてギルドに戻り報酬を貰い、
カノンと共に自宅へ帰った。
「シュンさん、レ、レベルが一気に300近くになってます」
「おお、良かったね~、これで仕事もこなし易くなるかもね」
「はい、シュンさんのおかげです…」
「ははは、いいって、ところでニキさん、ボスを倒したらこんなの残して行ったんだけど~」
「???七色の魔法石ですか?こんなの初めて見ましたよ!」
「あら、ニキさんも見た事がなかったか、アイリーンさんはなんか知ってる?」
「ん~、存じ上げませんわね…、申し訳在りません」
「あ、いや、謝る事はないって、ニキさん、それの解明出来そう?」
「はい、一日頂ければ必ず」
「じゃあ、宜しくお願いね」
「はい、了解しました」
昼食が始まりカノンのレベルがどのくらい上がった聞いたシュンに、
カノンは300近く上がったと驚きながら報告をしお礼を言った。
そのお礼を笑いながら制したシュンは、今度はニキに向けて手を出し、
七色の魔法石を渡した。
その魔法石は誰も正体を知らないようで、ニキは一日くれと言って、
研究欲を掻き立てられたようだ。
「午後からはどうしよっか?」
「私達は島の洞窟の中を少し見てみようかと思います」
「シュン君は引き続き魔法石集めの方をお願い出来ますか?」
「うん、それはいいけど、そっちも気になるな~」
「お兄様、盗賊が居た洞窟でやったあれやりましょうよぉ」
「あぁ、あれね、うん、どのくらい離れても使えるか分からないけど、試してみようか?」
「あれとは?」
午後からどうするか聞かれサリィは島の洞窟を探索したいと言って来た。
そしてルーミアがシュンは魔法石の入手を引き続きして欲しい頼むが、
シュンは危険があるかも知れないと、着いて行こうとしていた。
そんなシュンにモニカはテレパシーを思い出し、
それをやろうと言い、その手があったとシュンは頷いた。
しかし話が見えないアイリーンはシュンへ首を傾げて説明を求め、
シュンはテレパシーのやり方を伝えて、アイリーンを驚かした。
「魔法にこんな使い方があったなんて」
「私も知りませんでした…、シュン様はやっぱり凄いですね」
「あ~、いや、別に凄くはないって、じゃあ、洞窟に着いたらアイリーンさんが呼び掛けてみてくれる?」
「はい、畏まりましたわ、そうそう、飼い主様?」
皆でパーティーを組んで実際に頭の中での会話をした所、
魔法大国を造ったアイリーンとニキは凄いとシュンを絶賛し、
うっとりとしていたが、その後の会話にアイリーンが、
何かに引っ掛かった様で、シュンに向けて口を開いた。
「うん?」
「アイリーンさんと呼ぶのはその、お止め下さいませんか?」
「ほえ?」
「わたくしは飼い主様のペットですのよ?こう、もうちょっと、愛玩チックな呼び方がいいですわ」
「愛玩チック?どんな呼び方がいいの?」
「そうですわね……、やっぱり、雌犬とか?」
「ぶっ、おいおい、それは却下、雌犬だなんて絶対呼ばないからね」
「あら、いけずですわ、なら、そうですわね、サリィちゃんのようにリーンとお呼び頂けますか?」
「ま、まあ、それならいいよ?」
「うふふ、良かったですわ、皆さんもリーンとお呼び下さいね?家族同然の付き合いですし」
「それは私にも適用されるのですか?」
「と~ぜんですわ、ニキもわたくし達と同じシュン様の恋人でしょう?」
「そうですね…、了解しました、リーン様」
「うふふふ、それでいいのですわ、あっ、飼い主様は勿論、呼び捨てでお願いしますわ」
「ふぅぅ、りょ~かい」
呼び方の話で本筋からずれてしまったのを何とか修正しながら、
午後からの予定を決め、食事が終わってシュンは魔法石集めを、
恋人達は島の洞窟へと向かって行った。
【飼い主様、聞こえていますか?飼い主様~~】
【聞こえてるよ、どうやらいくら離れてても会話は出来そうだね】
【そうですね、では、これから中を探索してみます】
【うん、気を付けてね、何かあったらいつでも呼んでいいからね】
【はい】
祭壇の洞窟に入ったと同時にアイリーンから通信が入った。
どうやらテレパシーでの会話は距離に関係なく使えるようで、
シュンも少しは安心して魔法石集めに臨んで行った。
「ふぅ~、大分集まったな、指輪分ももういいし…、ちょっとユウちゃん達に呼び掛けてみるか」
洞窟に入ってから約2時間が経ち、
午前と合わせてかなりの量を集めたシュンはユウ達の様子が気になり、
呼び掛けてみた。
【お~い、そっちはどう?】
【あ、は、はい、今戦闘中です…】
【大丈夫?】
【はい、大コブラとか偶にリトルヒュドラとか出ますが、皆さん強いので全然問題ありません】
【そっか~、切がいい所でダードン国の武具屋に来てくれる?俺はもう向かうから】
【はい、分かりました】
シュンが呼び掛けた所戦闘中だったらしくカノンだけが応じた。
そこでシュンはカノンだけとの通信に変えて、
ダードン国に来るように指示を出し、シュンはダードン国に向かった。
「おっ、あんちゃん、早速だがいいかい?」
「うん?」
「これを見てくんな」
「どれどれ、おわっ、重鎧兵団100人分?これって…」
「あぁ、片手武器、盾、兜、重鎧、エンブレムのセットで100人分欲しいと言われたよ」
「エンブレム?」
「ああ、国旗を象った勲章でな、重鎧兵団の連中はそれを鎧に付けてるんだ」
武具屋に入ったシュンにグランは依頼書を見せて説明を始めた。
エンブレムはグランの説明した通りで、
重鎧とはルーミアと初めて会った際に来ていた甲冑の事で、
全身を包み隠して防御力は抜群であるが動きが制限され、
やや動き辛い仕様の鎧の事である。
「へ~、あぁ、あと、石の種類は?」
「片手剣に火、盾に水、兜が土、重鎧が木、装飾品に金をそれぞれつけて欲しいとさ」
「100個ずつか、1日30ずつ位になるけどいいかな?」
「あぁん?俺は1ヶ月は掛かると思ってたが、3、4日でいいって事か?」
「うん、まあ、余裕を持って1週間かな」
5種類100個ずつの魔法石が必要と聞きシュンは、
ボス部屋に入れば午前中だけでもその数は集めれると踏んでいたが、
何があるかわからない為、一応1週間と伝えた。
それでもグランからしたら驚異的な日数で、
1ヶ月掛かる所を4分の1の1週間で終わらせると聞き、
豪快に笑って続きを話した。
「がっはっは、そりゃいいや、その分ふんだくってやるから頼まぁ」
「ははは、おっけ~、出来た分から渡して料金を貰う形にする?」
「あぁ、あんちゃんがそうしたいならそれでも構わないぞ」
「じゃあ、100セット1週間で揃えるからその分料金を上乗せして貰ってね」
「あぁ、任せときな、で、これからくっ付けるのか?」
「そのつもりだけど~、オッサンの方は大丈夫なの?」
「あぁ、今の所20人前なら作ってあるぞ、はっはっは」
期間を短縮する分料金の上増しを約束するグラン。
それを聞いたシュンも笑ってお願いしたが、
もう魔法石を付けるのか聞いて来たグランに品物は出来ているのか、
聞いてみた。
するともうすでに20人前は揃っていると答えながら、
グランはまた大笑いした。
「うわ、凄いね~」
「がっはっは、徹夜すればそのくらい揃えらぁ、今日の夜から隣町の鍛冶屋も助っ人に呼んであっから、明日からは30人前揃えられると思うぜ」
「そっか、まあでも余り無理はだめだよ?」
「がっはっは、そうも言ってらんねーぜ、こんな大口な取引は久々だしな」
「じゃあ、この取引が終わったら宴会だね~、俺が金を出すから目一杯ドンチャンしようか?」
「そいつはいいや、まあ、まずは仕事が先だな、おい、あんちゃんを倉庫に案内してやれ」
「………大声で言わないでも聞こえてる、こっち」
「う、うん、じゃあ、おっさん、頑張って」
「ああ、そいつはうちの娘でおいらに似ないで無口だが、宜しくしてくれぃ、あんちゃんの事も気になってるみたいだしなっ」
「っ、………余計な事言って」
品物の製造の方は心配要らないと感じたシュンは、
オッサンの身を案じるがそれを笑い飛ばしたグランは、
シュンのすぐ近くに来た女性に倉庫へ案内するように指示をした。
どうやらこの女性はグランの娘らしく、
出口に向かう2人へグランは一声掛け、
娘さんは余計な事を言うなと軽く舌打ちをして呟き外へ出た。
「あ、シュン様」
「おっ、ユウちゃん、今から倉庫に行って品物を見に行くんだけど」
「そうなんですか?じゃあみんなで行きましょうか~」
「うん、あっ、カノンさん、早速仕事を頼みたいんだけど、いいかな?」
「はい…、頑張ります…」
外へ出たシュンに丁度来たユウが呼び掛け倉庫へみんなで行く事とした。
そこへ行く途中シュンはカノンの横に並び、
魔法石の取り付けをお願いしカノンも力強く頷き、倉庫に着いた。
「………ここ、今、鍵を開ける」
「うん」
グランの娘が鍵を開け、シュン達は倉庫内へ足を踏み入れた。
そこにはグランが行っていた様に20人分の装備が敷き置かれており、
かなり壮観な眺めであった。
そしてシュンはカノンと共に武器置いてある所へ行き、
火属性の魔法石をカバンから取り出して取り付けをお願いした。
「あ、あの、これ全部に付けるんですか?」
「うん、厳しいかな?」
「レベルが上がってMPは何とかなると思いますが、時間がの方が」
「あ、あぁ、一気には付けられない?」
「出来ない、と思います、MPではなく魔力が低いものですから」
「そうか~、ん~、俺も手伝えればいいんだけど…」
20人前としか聞いていなかったカノンは、
まさか武器から防具を合わせての20人前だとは思って居らず、
時間がかなり掛かってしまうと訴えた。
それを聞いたシュンがどうしたもんかと首を捻っていると、
アイリーンが1つの手段をシュンへ伝えて来た。
「飼い主様、協力してはいかがでしょうか?」
「ん?いや、それが出来ないから悩んでるんだけど…」
「あ、いえ、飼い主様がカノンちゃんへ魔力を伝えればいいのですわ」
「魔力を伝える?」
「はい、カノン様にシュン様が触れた状態で魔法を唱えれば、カノン様の代わりにシュン様の魔力が上乗せされると思います」
「そんな事出来るの?」
「ええ、魔法石を集める際には、魔法使いを大勢集めて、そのやり方で倒しているのですわ」
「なるほど…、じゃあ、早速やってみるか」
魔力の足りないカノンに自分の魔力を伝達する方法を聞いたシュンは、
早速魔法石取り付けに着手しようと、カノンの後ろから抱き着いて行った。
「あっ…、シュ、シュンさん?」
「ん?こうじゃないの?」
「シュンちゃん、肩に手を添えるだけでいいと思うんですけど~」
「あ、そ、そう?ははは、ごめんね、カノンさん」
「あ、あの、そのままで、そのままの方が頑張れる気がしますから…、抱き付いていて、欲しいです…」
「ふふふ、カノンもシュン君の恋人って事ですね」
サリィの指摘にシュンは苦笑いを浮かべて抱き付を解こうとしたが、
それをカノンから堰き止めた。
そしてカノンの独白を聞いたルーミアは微笑みながら見守り、
魔法石の取り付けが始まった。
「ふぅぅ、一気に取り付けられたね」
「はい、いつもだったら1個付けるだけでも疲れていたのに、今日は全然疲れません」
「MPが増えたおかげかな?」
「そうですね……、あれ?私のMPが減ってないです」
「もしかしたらお師匠様のMPが消費されたのではないでしょうか?」
「おお、それなら無限に作れちゃうじゃないか、毎日30セットもすぐ出来ちゃうな」
「無、無限って…」
「あぁ、俺ってMPだけなら無限らしいよ?」
「……シュンさんって~、恐ろしいです~」
「うむ、本格的に人の道から外れているな…」
「ちょ、エレアさんにフローリア、引かないで~」
「ふふふふ、お兄様、モニカはぁ、引いてないですからぁ、安心して下さいですぅ」
「う、うん…、まあ、終わらせちゃおうか」」
エレアとフローリアに若干引かれて傷付いたシュンだったが、
モニカの優しい一言に気を取り直して魔法石の取り付けを再開し、
30分もしない内に全てが終了した。
「んん?はっはっは、あんちゃん、もう休憩かい?」
「いや、20人前全部付けて来たよ」
「がっはっは、あんだってぇぇぇ」
「………煩い」
「親に向かって煩いとはなんだ、煩いとは、ま、まあ、そんな事より本当なのかい?」
「………本当」
「かぁぁ、大したもんだよあんちゃんは、おいおめぇら、チンタラやってらんねぇぞ、今日から3日間は徹夜だ、覚悟しとけよっ」
「へい」
「がってんでい」
「てな訳でよあんちゃん、おいら達は商品に手一杯だからよ、ザーナを連れて城に行ってくれねぇか?」
武具屋に帰って来たシュンを見てグランはもう休憩かと思い笑い飛ばすが、
全てが終わったと聞き豪快な笑いから絶叫へと変えた。
それを娘が耳を塞いで煩いと罵しりグランはまたもや大声を出すが、
すぐに冷静を取り戻し本当かどうか聞き、本当だと知るや否や、
後ろで作業をしている弟子達に徹夜を伝えて自分も工房へ行こうとした。
その際グランは娘を連れて城へ行って欲しいとシュンへ頼んだ。
「ザーナ?」
「………あたし」
「あ、あぁ、オッサンの娘さんか、って、城に行くって?」
「………商品を運ぶ、それから代金も貰う」
「あぁ、おっけ~、じゃあオッサン、ちょっくら行って来るよ」
「ああ、わりぃなあんちゃん」
「いいって、それに俺も依頼主を確認したかったし、料金のふんだくりはどうする?」
「あんちゃん達に任せらぁ、大してふんだくれなかったら代わりにザーナをやっからよぉ」
「オッサン、それはちょっと」
「………馬鹿親父、死ね」
「かっかっか、見た所あんちゃん達のパーティーには鍛冶師は居ねーだろ、そいつも一応は鍛冶師だからよ、考えて置いてくれや」
「ま、まあ、俺は、その、いいけど、本人の意思と言う物がね」
「………時間が勿体無い、行こう」
「う、うん、じゃあオッサン、行って来るよ」
「ああ、盗賊に気を付けろよっ」
グランとの話に怒ってしまったのか、
娘のザーナは顔を赤くして出て行ってしまった。
それを追い掛けるように店から出たシュン達は、
店先に用意された馬車に商品を載せようとしているザーナを発見し、
それを皆で手伝って城へと向かって行くのだった。




