18.チート魔術師のボス攻略
リーブラのおかげでスムーズに最下層の扉の前にたどり着くことができた。
ダンジョンの最奥には必ず魔獣がいて宝物を守っているとリーブラが説明してくれた。イメージ通りの展開だ。
ゲームのストーリーではこのダンジョンに隠されている女神の祝福はシルファが高確率で確保しているため、問題なく進んでくれると私は予測しているが、シルファにこっそり確認してみる。
「戦った事があるから、倒し方はわかっているよね?」
「ええ。ここにいるボスは火を吹く大きなトカゲのような魔獣でリザードと呼ばれています。私の属性が水だから相性がよいのです」
魔術には相性がある。四大元素を元にした4つの属性が設定されていて、火>風>土>水という関係性だったはずだ。だからシルファはこのフロアのボスに対して有利に戦えるのだ。
「リーブラ様。互いの属性を確認しておくべきかと思うのですが。」
「そうですね。僕は一応火属性だと思うのですが、それ以上に強化魔術に特化しているので、シルファ嬢とアレンさんを強化して戦闘を援護出来ると思います。」
レオーネを強化して自分は後衛に徹するのがリーブラの戦い方だったと思う。
作中では彼自身が剣を振るっていた気もするのだが。
「あ、だからといって攻撃が出来ないわけでもないので僕を守ろうとはしなくていいですよ」
「炎の魔術を使うのですか?」
「いえ……自分に強化をかける事が出来るので、近接戦闘も少しは可能で……」
「ええ!?!?」
珍しくシルファが大声をあげた。
「自分にかけるなんて危ないです!」
「そうなんですか?」
「人に魔術をかけることも容易な事ではないのですが、それ以上に自分にかける事は危険を伴うのです」
「はい???」
そして彼は初めて知ったのだった。
この世界の魔術師の常識を。
「命を落とす事も稀にあると聞きました……最初に学ぶはずなのですが……」
「え……師匠…はそんなこと……一言も……」
リーブラはふらふらと壁の方へと歩いていき、そこで何やら壁に向かって話し始めてしまった。師匠への罵詈雑言なのは言うまでもないが。少しそっとしておこう……。
「ア、アレン君は剣士ということで良いんだよね?」
「以前にも言ったが、私に魔術適性はないんだ。友人は魔剣士なのだけどね。かっこいいんだよ!剣技と魔術の合わせ技!」
相手を斬ると同時に氷漬けにするのだと興奮気味にアレンは説明してくれた。
ゲームの中ではリオンとシリウスが魔剣士でリオンが襲ってきた魔獣を片っ端から凍らせているイベントがあったことを思い出した。
「氷の魔術はアレン君に魔術適正がないと難しいですね。でも、確か道具を光らせる魔術があったはず……リーブラ様!ご存知ありませんか?」
壁に話しかけているリーブラに向かって、シルファは遠慮なく話しかけた。
「えっと……本当にただ光るだけですけど……でもその方が目立って注意を引くことができるか……」
もっともらしい理由で、なぜかアレンの剣が無駄に光ることになった。
×××
かくしてダンジョンのラスボスである大型のリザードというドラゴン感満載の魔物に対して、無駄に光を帯びた剣でアレンが立ち向かい、ただ光っているだけなので本当にあまり意味はないのだが、振れば振るほど剣から光が尾を引き、まるでペンライトの様に残像を残しとにかく目立った。
「シルファ嬢!アレンさんの援護を!!」
「はいぃいい!!」
アレンが派手に注意を引きつけ、それによって生まれた隙に対し、シルファが水属性の攻撃魔術を放ち、こちらも上手く連携が取れていた。
私にとって使ったことのない魔術も勝手に体が反応し、いわゆるオート操作の様な感覚で今回も対応できたためありがたかった。ありがたいのだが……。
「うわぁあああ!!火ぃいい!!」
距離を取っていても火炎放射並にモンスターが火を噴くので、怖すぎて私には無理だった。
本当に申し訳ないのだが、私自身は眼の前の巨大モンスターに恐怖しひたすら泣きわめいているだけだった。
そんな状態でも体はシルファの意思によってしっかりモンスターとの適性距離を保ちつつ果敢に敵に立ち向かっていった。改めてシルファという魔術師の凄さを私は文字通り身を持って感じたのだった。
「だいぶ弱ってきたので、次で決めましょう、強化します!シルファ嬢、強めの魔術をお願いします!」
「シルファ!早く終わらせてぇえええ!」
リーブラの指示と共に、突然体が軽くなるのを感じた。
強化の魔術がかけられたのだろう。
私は泣きながら、その場に立ち止まり、深く息を吸ってそれから吐いた。
杖を地面につきたて力強く握りしめた。
「行きます!」
体中からビリビリとした感覚がせり上がりそれが杖に向かって流れ込んでいくのがわかった。そのまま杖の先をモンスターの方向へ向けると、溜め込まれていた何かが勢いよく杖から抜けていき、どこからともなく大量の水が流れ込み、モンスターを包み込むと、巨大な水泡を形成、その中でモンスターは消滅した。
「何が起きたの!?」
「……な……え?」
私の肩に止まっていたシルファも唖然としていた。
いや、こんな魔術表現ゲーム中でも見たことがなかった。
「で、あの水の塊みたいなのずっと空中に浮いてるんだけど……」
「ど、どうしよう……」
術者であるシルファですら、その巨大な水泡に戸惑っていた。
すると、水泡は水滴が地面に落ちる様にして、重力に逆らえなくなり、落下したのだった。
「!!!」
当然、水は激流となって四方八方に流れ込んだ。
青い小鳥は高く飛び上がり、難を逃れたが、地上にいた者達は大量の水に押し流され、水の勢いで押し開けられたフロアの扉から押し流されたのだった。




