表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

閑話①「母の目」

朝食の準備をしながらリクが起きてくるのを待った。


ガレンはもう出ていた。

「行ってくる」だけ言って振り返りもしなかった。

あの人もあの人で、昨日の件が頭にあるのだろうと思う。

言葉にしない分だけ抱えているものがある。


粥の塩加減を確認しているとリクが起きてきた。

朝食の手伝いをしに台所に来たリクの顔を見る。


変わらない顔だった。


泣いた跡もなかった。腫れてもいなかった。

荒れなかった。

何かを訴えるような顔も、しなかった。


ただ、いつもの顔で「おはようございます」とだけ言い、朝食を並べ始める。

昨日あんなことがあったのに、箸を持つ手も、茶碗を取る指も、変わらない。


朝食の準備を終え、食べ始める。

リクは何も話さない。私も何も話さない。


「悔しかった?」


気づいたら聞いていた。


「別に」


間を置かずに返ってきた。

嘘をついている顔ではなかった。本当に「別に」なのかもしれない。

それが——余計に、気になった。


悔しいのに悔しくない顔ができる子、というのは、2種類いると思っていた。


すごく強いか。

すごく我慢しているか。


どちらかは、私にはわからなかった。


「そう」とだけ言って粥を置く。

それ以上は聞かなかった。聞いても、答えが出てくるものではなかった。


リクは何も言わずに粥を食べ続ける。

きれいに食べた。残さなかった。「ごちそうさまでした」と言って茶碗を流しに持っていった。


「行ってきます」


それだけ言うと、リクは外に出ていった。

少ししてセナの声が聞こえて、2人分の足音が遠ざかっていく。


流しで茶碗を洗いながら考えていた。


ふと、思った。

この子のこういう顔、どこかで見たことがある。


誰の顔だったか。

思い出せなかった。


ずっと昔のような気がする。

でも、どこで見たのかはわからない。


窓の外で風が吹いた。

葉が、揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ