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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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好きピと海外旅行

【……今のは私が悪いな。配慮に欠けていた】


 謝罪しよう。

 そう言って機人佰號は小さく頭を下げた。


「何で……いや良い。これ以上は話が進まない」


 何でそんな風に気遣いが出来るのに幸男をああしたのか。

 キャラ的にはそう問わねばならないがルイには分かっていた。


(無能に与える慈悲はないってことだろう。さっちゃんは無能だからこそ良いんだろうに分かってないなこのガラクタ)


 聞けばそのようなニュアンスの答えが返って来る。

 だがそれを聞いてしまえば私人としても公人(スパダリ)としても怒らねばならない。

 特に前者の怒りを発露した場合は都内消滅級になってしまう。

 なので一番それっぽい形で話を打ち切る流れを整えたのだ。


(そういう意味でも僕とは相容れないな。僕は無能にさえ慈悲をかけてしまうお人好しの権化だし)


 コイツが見てる鏡には一体何が映っているのか。

 怖いもの見たさで興味をそそられるがまあ今は置いておこう。


【では本題に入ろうか。ああ、君の言う通りだとも】


 偽造パスポートはルイに見つけさせるため自分が用意した。

 機人佰號は改めてそう明言した。


【何故かと言うなら私の目的と組織の目的が相容れるものではないから】


 ルイとモモを利用して解放戦線の目論見を邪魔したい。

 だから情報をくれてやる――舐めた動機だ。

 だがルイたちには何も出来ない。

 利用されていると分かっていても受け入れざるを得ないのが現状だ。


【だが一気にご破算にされてもそれはそれで困る】


 だから最低限。

 良い塩梅で動いてくれる程度の情報をそちらにくれてやると機人佰號は言う。


【君のことだ。使用済みの分を照会するつもりなんだろう?】

「ああ。モモさんの権限を使えば即日、情報が返って来るだろうからね」

【それで良い。だが一つだけアドバイスをしておこう】


 それがルイとモモを丁度良く動かすためのものなのだろう。


【渡航歴が判明した国を調査するなら他人任せにしない方が良い】

「……僕とモモさんで直接、調べろと?」

【ああ】

「何故?」

【言わないよ。君は僅かでも取っ掛かりが見つかればそこから切り崩して来るだろうからね】


 自分の目的を邪魔されないためにも与える情報は必要最低限。

 そのラインを動かすつもりは毛頭ないと機人佰號はキッパリ言い切った。


「……」

【では私はこれで。また会おう】


 そう告げて機人佰號は煙のように姿を消した。

 感知を全開にしていても尚、捉えられなかった。追跡は不可能だろう。

 ルイは小さく溜息を吐くと家探しを再開した。

 他に目ぼしいものはないだろうが念のためだ。

 一時間ほどで調査を終えると真っ直ぐ今使っている拠点へ帰還した。


「やあおかえりー……」


 ソファに背中を預け下着姿でビールを呷るモモがルイを迎える。

 その様子を見るにあちらの家探しは徒労に終わったのだろう。


「そっちはどう……と聞くのは酷か。まあ、仕方――――」

「あったよ」

「え」

「かなり大きな成果がね」


 空間収納から偽造パスポートを取り出し机に並べるとモモの目の色が変わった。


「……偽造パスポート? この数は」

「何かあるのは間違いないみたいだ。モモさんから出入国在留管理庁に照会頼めるかな?」

「分かった。少し待ってくれ」


 スマホを取り出しどこかに連絡を入れるとモモは偽造パスポートを転送した。

 恐らく九課の事務方に送ったのだろう。


「これで良し。早ければ一時間以内に連絡が来るだろう」


 それで、とモモは居住まいを正しルイを見つめる。


「何があった?」


 一つ頷きルイは拠点であった出来事を包み隠さず打ち明けた。

 話を聞く内にモモの表情がどんどん険しくなっていったのは当然だろう。

 そうして話を聞き終え、


「……すまない。私のミスだ」

「え」


 モモは深々と頭を下げた。


「単独行動に出るのはあまりに迂闊過ぎた」


 今のルイの背後を悠々と取れる者などそうは居ない。

 そんな実力者とエンカウントするなどまずあり得ないと思っていた。

 だからこそ単独で同時にというアプローチを試したが失敗だったとモモは言う。


「君に限って敵地で油断や慢心などあり得ない。ならばこれは私の判断ミスだ」

「いやそれは違うでしょ。機人佰號の実力については僕も見誤っていた」


 幸男に施された外法。

 あれだけで全てが分かるわけではないが、ある程度実力も窺える。

 少なくとも異常戦力級であろうことは分かっていた。

 その上で仮にエンカウントしても逃げることぐらいは出来ようと。

 だから決してモモの判断ミスではないと言うが、


「個別で動くと決めたのは私だ。ならばその責は私のものだよ。

今回は敵意がないから助かったがもし仮に奴がその気なら……」


 私は大切なバディを失っていたとモモは吐露する。

 その姿は普段の彼女からは想像も出来ないほど弱弱しい。

 普通ならそのギャップにクラリと来るかもしれないが、


(じゃあ今直ぐ腹切って死ねよ。そして僕に課長の椅子を寄越せ)


 悲しいかな。コイツには決して届かない。


「……らしくないねモモさん」

「……はは、自覚はあるよ」


 少しバツが悪そうにモモは苦笑しこう続けた。


「肩を並べられる誰かが居る。殊の外、私はそれが心地好かったようだ」

「……そう言ってくれると僕も冥利に尽きるね」


 互いに笑い合い、少し空気が軽くなる。


「で、どうする?」


 機人佰號の助言。それをどう捉えるのかと聞いているのだ。

 問われたモモは苦々しい顔で黙り込んでしまう。


「……この状況で国内を空けるのは論外だ」


 そもそも何のためにこんなことをしているのかという話である。


「が、無視するには些か以上に状況がよろしくない」


 解放戦線の目論見を邪魔して欲しい。けど壊滅は困る。

 だから矛先を逸らさせようとしているというのならまだ良い。

 だがそれはあり得ない。だって現状、二人は空振り続きなのだから。

 有効な手立てが見つからねば解放戦線を追い詰めることは出来ないだろう。


「これは明らかに不甲斐ない私たちへのテコ入れだ」

「……だろうね」


 解放戦線相手にロクな戦果を挙げられないのは都合が悪い。

 それゆえ二人を援護するために機人佰號は手がかりを示した。

 そう判断せざるを得ないから無視が出来ないのだ。

 乗れば確実に良い流れを掴めるのは確かなのだから。


「少し、時間をくれ」

「というと?」

「お嬢さんの警備体制をより強固にするよう取り計らう。そうでなければ君も不安だろう?」


 海を渡るのはそれが済んでからだ。


「……今回の件を反省して次からはもう、何をするにも一緒だ。良いね?」

「了解」

「よろしい。折角の海外だ。真面目にやりつつしっかり楽しもうじゃないか」


 任務とは言え気になるピと一緒に海外旅行とか良いご身分っすね()。

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― 新着の感想 ―
モモちゃん内心だと完全にピ扱いなんだな、今周回は別に告ってないし、なんならクリスマスデート誘って断られてる周回だよな(笑)
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