うちと好きピは相性抜群♥
「「……」」
「モモさん?」
声をかけられそこでようやっとモモが我に返る。
パッと扇子を広げて口元に当て咳払いを一つ。
「……いやすまない。君が初めて作った式神が父と母だったかな?」
「ああ。それまではあまり縁のない技術だったからね」
「それが樹海から帰ったあたりだから夏。そこからまだ半年も経っていないわけだ」
感嘆の息を漏らしながらモモは言う。
「凄まじい才覚だ。こと式神作りという点では課長陣の中でも君には及ばないだろう」
「持ち上げ過ぎだよ。僕には十二天将という最上級の教科書があったからだし」
「だとしてもだ。ただ、幾つか質問良いかな?」
ルイが頷くとでは、とモモが気になった点について触れ始めた。
主に素材関係だ。
これとこれの組み合わせは何故? 上手く嵌まるとは思えないが。
ここはあの素材の方が良いのではないか?
これらの疑問は至極当然である。だってハジメの異能によって導き出された答えなのだから。
しかしルイに手抜かりはない。
「ああ。そこらは正直、実験のつもりなんだよね」
「「実験?」」
「ハジメさんと一緒に復元してる時にさ。僕なりに清明が見ていた世界を考えてみたんだ」
異能を用いればこれらの素材に辿り着くのではないか。
そんな推測の下に書いた設計図なのだとルイは嘘八百を並べ立てた。
「「――――」」
「合ってるかどうかは分からない」
そして合っていても自分では100%の適合までは持っていけない。
「だからそこはハジメさん頼みになっちゃんだけど……ハジメさん?」
「え、あ、ごめん。何か難しい話でぽけーっとしてた」
誤魔化すように笑いハジメは任せてと胸を叩く。
「確かめるぐらいなら全然楽勝だし!」
「ありがとう。駄目なところはビシバシ指摘してくれると助かるよ」
それで、とモモに視線をやると彼女は目を閉じなるほどと頷いた。
そういう意図の下に組み合わせたのであれば納得だと。
「実際に上手く行くかは分からないけど素晴らしいアプローチだと思うよ」
さて。ここで一つ、あまり関係のない話をしよう。
お題は創作におけるインスピレーションについてだ。
狙って得られるものではない。だが何となくパターンがあるのもまた事実だろう。
「だが」
芸術家が他の芸術家の優れた才に触れ刺激を受ける。
このケースは結構よくあるパターンなのではなかろうか?
例えばそう。自分が思い描いていたものを高く評価してる好きピが先にお出しするとか。
そんなことをされてしまえば大いに感性を揺さぶられても不思議ではない。
いやホント、今の状況とは何も関係ないんすけどね。
だって盗作野郎の作品に触れてビビ! っと来ちゃうとか馬鹿じゃないすか。
「――――まだまだ改良の余地があるね」
言うやモモはペンを取り出しノートに改善案を書き加えていく。
指摘しているのは主にハジメの異能に拠らぬ部分だ。
そこはまだ詰められる余地があったらしい。
まあ指摘している本人も今しがたそれを発見したばかりなのだが。
「……なるほど。いやはや、自分の未熟を思い知らされたよ」
心底感心したように言ってるが、
(ざっっっけんなやドブカスがぁあああああああああああああああああああ!!!!)
中身は浅間山もビックリの大噴火。
何でって?
(せ、折角僕だけの作品にしたのにお前が口出したら意味ないだろうが……ッッ)
これが些細な改善点だけなら無視出来た。
しかしモモが提示したそれはそんなレベルではない。
間違いなく一段上のクオリティに引き上げられたと断言出来る。
(最悪の気分だ……僕が一体何をしたっていうんだ……)
他人の成果を横取りしようとしたことですかね。
物語で主人公に手痛いしっぺ返しを食らう悪役まんまである。
さて。ルイからすればここまででも十分、最悪だが状況は更に悪化する。
「――――よし、私も式神作りを手伝おうじゃないか」
「え」
ハジメと二人だけの式神作成にまさかまさかのモモ参戦。
薄汚い野望が導いた新イベントである。
「机上で口を出すだけじゃ見えないものは確実にある」
実際に作っているところを見れば更に磨き上げられる。
だから協力するとモモは言うが、
「いや、あの、自分の立場理解してる……?」
ルイからすれば発狂ものの提案でしかない。
更にクオリティを向上させられてしまうということは、だ。
自分を踏み台にしてモモが高みに至ったようなもの。認められるわけがない。
だからこそ正論で何とかモモの参戦を防ごうとしている。
「理解しているとも。環境省特異災害対策局第九課、課長の一ノ瀬百ですどうぞよろしく」
「してないだろ!?」
幸男と古賀香澄から得られた情報により情勢は一気に逼迫した。
何時何が起きても不思議ではない。
だからこそ先んじて動かんとバディを組み襲撃を仕掛けるという話になったのだ。
「あなたが全力で関係各所に話を通してもだ」
三が日が終わるか終わらないかぐらいまで調整に時間がかかるはず。
式神作成になど関わっている暇はないだろう。
そう諭すルイに、
「お、嬉しいねえ。私の能力をしっかり把握してくれてる。バディの面目躍如だ」
などと冗談めかして笑う。
まあ言葉は冗談めかしていても嬉しいのは事実なのだろうが。
今のモモはそんな顔をしている。
「ふざけてる場合じゃ」
「ルイくんの言は尤もだよ。だが、君の戦力が向上するのも最重要の一つだろう?」
一人で解放戦線に仕掛けないのは手が足りなくなると判断したから。
だからルイを選んだわけだが言っては悪いがそれは消去法。
他に着いて来れる者が居ないからルイが選ばれただけ。
弱い側に足並みを揃えても一人でやるよりかはプラスになると思ったから。
「だがその君が私と足並みを合わせられるのであればかなりのアドバンテージだ」
普通に考えて短期間で異常戦力級まで強くなるのは不可能だ。
だが規格外の式神という外付け戦力を使えば実現は適う。
「単独でここまでのものを思い描けるんだ」
見事と言う他ない潜在能力とセンス。
そこにハジメが持つ規格外の異能と自分の手が加わるのだ。
出来上がる式神は確実に十二天将を凌駕するだろう。
「だったらここにリソースを注ぎ込むべきだ」
関係各所への根回しは形代を使う。
礼を欠いた行いではあるが、ある意味で丁度良い。
「非礼を承知でやらねならぬほど逼迫した状況下にあると伝わるだろうしね」
そんなこんなで三人での式神製作が決定した。
結果? そんなの決まってる。
“累百一式”。
それぞれの名から取られた七体の式神群は九十九一揃えを遥かに凌駕する性能となった。




