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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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暗雲チラチラ

「どうだった?」

「私は問題ありませんでした」

「僕も疲労が蓄積してる程度で他は異常なしだったよ」


 モモの護衛で帰還した二人は先ず医務室で診断を受けることとなった。

 それが終わり結果を報告するとモモはそれは良かったと小さく笑い着席を促した。


「このまま休ませてあげたいところだけどそうもいかない」


 茶と菓子を用意しそう切り出すと二人は一つ頷き事情を語り始めた。

 話を聞くモモの表情は当然のことながら険しい。


「……参ったねどうも」


 ハジメの異能は最上級の秘匿事項だ。

 一部の人間にしか知らされていなかったはずのそれが漏洩している。

 それも恐らくはかなり前から。

 九課の長としてモモが渋い顔になるのも当然だろう。


「こうなるとあの少年からさっさと話を聞きたいが」

「さっちゃんの容態は?」

「君のお陰で命に別状はないよ」


 だがそれなりの期間、外法に心身を侵されていたのだ。

 ルイの禁術でもそこまでは帳消しに出来ない。


「少なくとも数日は目覚めないだろうね。年内いっぱいはという可能性も十分にある」

「……そっか」

「気に病む必要はないよ。むしろ誇るべきだろう」


 幸男の体にこびり付く残滓を見れば分かる。

 埋め込まれていたものは相当な呪物だ。

 普通なら引き剥がされた時点で死んでいる。

 運良く命は繋げても目覚めない可能性だって十分にあった。


「十二天将を代償にしたとは言え破格の成果だよ」

「……そうだね。欲張り過ぎるのは僕の悪い癖だ」

「その強欲が発揮されるのは誰かのために動く時だけじゃないか」


 美徳だよとモモは笑う。


「さて。ルイくん、君の見解を聞かせてもらえるかな?」


 幸男の背後に居る何者かについてだ。

 詳しい情報は幸男待ちだが現段階で話をしておく意義がないわけではない。


「個人ではなく組織に属する存在だと思う。ただその組織の意向に沿っているかどうかは怪しい」


 その証明が幸男だ。


『これからは俺がお前を護る。“奴ら”に手出しなんかさせない』


 幸男は確かにそう言った。

 ハジメが狙われるかもしれないという懸念ではなく事実があるのだ。

 でなければあの言葉は出て来ないし、あそこまでの執念には至らない。


「組織に知らせれば直ぐ彼女は確保される。でも君次第で黙っててあげるとか吹き込んだんだろう」


 リミットを設定しそれまでに強くなればハジメには手を出さない。

 守るつもりがあったのかはさておきそんな感じの取引があったと思われる。

 焦燥に駆られながら力を求めていた幸男を鑑みるにまず間違いないだろう。


「ただ、そそのかした誰か……だと長いな。とりあえずXとしようか。Xの目的が分からない」


 組織の意向に沿うならハジメの確保は必須。

 なのにそれ反してないない尽くしの一般人の少年に取引を持ち掛けた理由は?


「さっちゃん個人に興味を抱いてるとかならまあ分からなくもないけど」

「にしては扱いが雑過ぎる」

「うん。だからさっちゃんに関してはとりあえず保留にしておこうと思う」


 ルイの言葉にモモもそれで良いと頷く。

 一方、話題の中心であるハジメはぼんやりお菓子を食べていた。

 話についていけていないのか心底興味なさげだ。


「Xはお嬢さんについてどう見ていると思う?」

「……うん、僕もそこは気になってる」


 どの組織から見てもハジメの異能は喉から手が出るほどに欲しいものだ。


「言い方は悪いけどとりあえず確保しておいて損はないんだ」


 だからこそ解せない。


「何故、あの時動かなかったのか」


 あの時とはモモが迎えに来るまでの時間のことだ。

 強くはあるが消耗し切ったルイ。

 特異極まる異能の持ち主だが戦闘能力の低いハジメ。

 そこに意識を失った幸男というお荷物まで加わっていたのだ。


「あそこで仕掛けない理由があるか?」


 ハジメを確保しない。

 幸男を殺して口封じもしない。


「よしんば今は確保出来ない理由があったとしても」

「あの少年の口封じぐらいはやっておくだろうね」


 情報漏洩を防ぐ仕掛けがあるのかもしれない。

 だがわざわざ身柄を引き渡す必要はないだろう。

 さくっと殺してしまった方が手っ取り早い。


「さっちゃんには監視すらついていなかったんじゃないか?」


 少なくとも自分の感知ではそれらしい気配は見つけられなかった。

 モモはどうだったかと問えばふるふると首を横に振った。


「同じく私の感知には引っ掛からなかったね」

「モモさんほどの実力者が見つけられないとは思えない」


 ならば監視はなかったのだろう。

 そう言いつつもルイはモモの感知すらすり抜けられる存在を知っていた。


(……コイツを殺した奴とXは同一人物? いやでもな)


 情報が足りなさ過ぎる。

 情報収集がてらしばらく事の成り行きを見守るしかないだろう。

 そう内心で結論付けルイは話を締め括る流れに持っていく。


「ハジメさんに興味がないと見るべきか。慢心と見るべきか余裕と見るべきか」

「まあ余裕、と考えておくべきだろうね」


 興味がないならありがたいし慢心なら付け入る隙がある。

 だが往々にしてこういう時は都合の悪い事柄が真実であるものだ。

 何よりハジメという爆弾を鑑みれば警戒し過ぎるに越したことはない。


「何時でも取れるから遊んでる……最悪だね」

「ああ。そういうわけでお嬢さん」

「は、はい!」

「明日が終業式だったね? 終わったら真っ直ぐ家に帰って自宅待機だ」


 しばらくの間は任務もなしだ。

 九課の施設は自由に利用して良いが外出は出来るだけ避けて欲しい。

 モモの要請にハジメは素直に頷いた。


「感謝するよ」

「とりあえず明日は行き帰りは僕が護衛する。夜についても任せてくれて良い」

「夜?」

「前も言ったけど元々パーティをする約束だったからね。それなりに遅くまで担当出来るよ」

「……そうだったね」

「明日以降は近くに住居を用意してくれたら僕がそこに詰めるから」


 と、そこでハジメが小さく手を挙げる。


「どうしたの?」

「じゃ、じゃあさ。明日から私の家に泊まったらどうかな? その方が色々手間を省けるだろうし」

「いやしかし女の子の家に男がというのは」

「ルイくんなら大丈夫だから」


 ルイはそんなことしないから大丈夫なのか。

 ルイになら手を出されても大丈夫だから、なのか。


(……明言しないところが鬱陶しいな。セコい女!!)


 などと悪態を吐くが、


「……」


 はたしてこの場でヘイトを溜めているのはルイだけなのか。

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― 新着の感想 ―
このヒロインよくよく考えなくても世界の滅亡の原因だし、ヒロインの皮被ったラスボスだったわ、カレピに馬鹿みたいなスパダリ求めるしナチュラルにモモちゃん煽ってるし
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