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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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空振り

「ルイくん!」


 幸男を抱きかかえ地上に下りて来たルイに駆け寄るハジメ。

 ルイは安心させるように小さく微笑み、語り掛ける。


「さっちゃんなら大丈夫」

「あ、うん」


 反応薄くね?

 とルイは内心小首を傾げるが、


(いや当然か)


 ハジメからすれば昔の友達がいきなり発狂してやって来たのだ。

 死んでないのは結構だがそれはそれとして何? となるのは当然である。


「ねえ、幸男くんは何で」

「……ハジメさんの能力についてかなり昔から知ってたんだろうね」


 それが原因でその身に火の粉が降り掛かることも。

 だから彼は力を求めていて、そこに誰かがつけ込んだ。

 悲し気に目を伏せるルイに待ってよとハジメがストップをかける。


「それ、おかしくない?」


 ハジメが異能を自覚したのは今年の夏。

 そして特対がモモを通じてそれを把握したのも同時期。

 それ以前から幸男が異能を把握しているのはおかしい。


「うん。けど間違いないと思う」


 ルイが幸男に出会ったのもハジメが覚醒したのとほぼ同時期。

 その段階で既に幸男は狂おしいまでに力を求めていた。


「さっちゃんの(無駄な)積み重ねはここ数か月とかそういうレベルじゃなかった」


 それよりもずっと前から。

 ここから導き出される推測は一つ。


「君はあれ以前に異能を覚醒させていたんだ」

「そんな記憶は」

「ないだろうね。多分、消されてる」

「け、消されてるって誰に?」


 分からない、と首を横に振る。


「そこらはさっちゃんが目覚めてからだね」


 と話を打ち切るがルイには大体の予想はついていた。


(コイツが異能を覚醒させた時、そこにさっちゃんも居たんだ)


 恐らくは幸男を守るような形で異能を目覚めさせたのだろう。

 だが話はそこで終わらない。

 第三者も居たのだ。

 そいつは裏の人間で幸男を裏の世界に誘った張本人と見て良いだろう。


(大方、コイツの異能の危険さを語って罪悪感を刺激したってところか)


 これならば幸男が追い立てられるように力を求めていたことにも納得がいく。

 問題はその第三者の目的だが今ある情報からは推し量れない。

 だが大まかな流れとしてはそんなところだろうとルイはそこで推理を打ち切った。


「とりあえず迎えを呼ぼう。事が事だ。出来ればモモさんに来てもらいたいが」

「迎えって……あ、そっか。ご、ごめん忘れてた」


 慌てて頭を下げるハジメにルイは軽く目を見開く。


「禁術の反動、だよね?」

「うん。そうだけど気付いてたの?」


 禁術の存在は授業で習っただろう。

 だが実際に行使している場面は見たことがないはず。

 にも関わらず気付かれるとは思っていなかったのだ。


「……何か、すっごく嫌な感じがしたから」


 式神と形見の指輪を代償として支払いはした。

 だがそれは禁術によって生じた膨大な力を行使する際の反動を消せるものではない。

 ハジメは自信なさげに言うがその指摘は全て当たっていた。


「本当にごめんなさい。私のせいで」


 苦労して修復した十二天将。

 そして何より大切な両親の形見が未来永劫、失われてしまった。

 俯くハジメにルイは優しく諭す。


「前も言ったけどハジメさんに責任はないよ」


 力を持って生まれたことが罪であるかのように言うのは間違っている。

 再度、あの時と同じ言葉を伝えこう続けた。


「ハジメさんと二人で作り上げた十二天将。思い出が沢山詰まった指輪。

惜しむ気持ちがないと言えば嘘になるよ。でも、大切な人とは比べるまでもない」


 それに、とルイは少し冗談めかして言う。


「あそこで躊躇ってたら父さんと母さんに叱られちゃうよ。今のルイは百点満点じゃないってね」

「ルイくん……」

「だから、さ。謝るよりも褒めてよ。頑張ったねってさ」

「……うん。ルイくんは本当に頑張った。世界で一番カッコいいよ」

「それはちょっと褒め過ぎかな」


 言いつつルイはモモに連絡を入れた。

 電話は繋がらなかったのでメッセージ。

 直ぐに既読はつかなかったが仕方ない。


(……さて。どうなるかな)


 この場に留まることを選んだ理由は反動だけではない。

 幸男の背後に居る者を警戒してというのが一番の理由だ。


(さっちゃんが動いたんだ。監視の目があっても不思議じゃない)


 今、こちらは幸男という情報源を確保している。

 自分が敵なら口封じに動く。

 幸男を消し、ハジメを捕らえるなら今が絶好のチャンスなのだから。


(今の消耗した僕に撃退は不可能だろう)


 十二天将という札が消え、禁術の反動もある。

 そんな状態でダーク幸男より強いであろう相手と戦えるわけがない。

 やれば確実に負ける。

 しかし、この場でならばある程度の時間稼ぎは可能だ。


(戦いの影響で僕とさっちゃんの霊力が色濃く滞留してる。それを利用すれば)


 幸男を穢した怨敵の顔を拝める。

 復讐相手の情報を少しでも収集するためにルイはここに留まることを選んだのだ。


「はぁ」

「どうしたの?」


 メラメラ闘志を燃やしていたがハジメの溜息で中断されてしまう。

 無視したいが無視するわけにはいかないのがスパダリの辛いところだ。


「や、何か、私ってついてないなあって。だって今日イブだよ?

なのにこんな……はあ。明日はルイくんとクリスマスを楽しむはずだったのに」


 この状況じゃそんなことも言ってられない。

 そう零すハジメだが、


「いや大丈夫だと思うよ? 出かけるのは難しいけど元々ハジメさんの家でって話だったし」


 ハジメのために用意された九課の官舎だ。

 常駐戦力も付近にあるので家の中でクリスマスパーティをするぐらいなら何の問題もない。


「今日は多少事情を聞かれるだろうけど明日は何もないだろうからね」


 何なら九課的にも都合が良い。

 家でクリパをするということはルイというモモに次ぐ最高戦力を配置出来るということなのだから。


「いや、でも……ほらルイくんはそんな気分になれないでしょ?」


 気遣うような視線は未だ目覚めぬ幸男に注がれていた。


「何も考えず楽しめるかって言えば難しいね。でも僕はめいっぱい楽しむつもりだよ」


 幸男が罪悪感に苛まれることは避けられない。

 だが少しでも減らしてあげたいと思うのが友達だろう。


「さっちゃんが気に病む要因を一つでも減らしてあげたいじゃないか」


 だから、とルイはハジメの手を握る。


「ハジメさんもめいっぱい聖夜を楽しんであげてよ」

「……そうだね。うん、確かにそうだ」


 少し良い雰囲気になりかけたところで、


「――――すまない、待たせたね」


 モモが転移で現れた。

 慌てて駆けつけたようで少し息が乱れている。


「はぁ……これで一先ずは安心かな?」


 モモに目を向けたルイは気付かない。

 ルイを見つめるモモもまた気付かない。


「……」


 ハジメが今どんな目をしているのか。

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― 新着の感想 ―
幼馴染(仮)が死にそうな目に遭ってるのにクリスマス事を気にするとお前ヒロインか?
コイツ……まさかヒロインの皮を被った偽ヒロインか!?
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